第3章 梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性
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第3章 梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性
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次に,図3.11に表すL”区間(中立軸位置が梁断面の外側に存在する区間)の梁材軸に沿った 任意断面での圧縮縁ひずみを考える。L”区間の梁断面における圧縮ひずみ及び圧縮応力度の分布 は図3.12のように三角形から台形に変わる。L”区間の全断面においても圧縮合力の大きさは一 定であるため,各断面における圧縮ひずみ分布の面積は変わらず,その形のみが変化することに なり,この時の圧縮縁及び引張縁でのひずみの変化量(以下,縁ひずみの変化量ex)は等しくな る。ここで,前述した式(3-5)を式(3-7)に代入すると,図3.11のA点での圧縮縁ひずみ(nL') が求まり(式(3-8)),支持点位置(X2=L”)では圧縮縁と引張縁のひずみが等しくなるので,こ の位置での圧縮縁ひずみ(nL”)は式(3-9)から得られる。また,L”区間における縁ひずみは線形 的に変化するため,L”区間の梁材軸に沿った任意断面での縁ひずみの変化量(ex)及び圧縮縁ひ ずみ(nx2)はそれぞれ式(3-10)及び式(3-11)より算定できる。
𝜀𝑛𝐿′=𝑥𝑛𝜀𝑛
𝐷 (3 − 8) 𝜀𝑛𝐿"=𝑥𝑛𝜀𝑛
2𝐷 (3 − 9) 𝑒𝑥= 𝑥𝑛𝜀𝑛
2𝐷𝐿"𝑋2 (0 ≤ 𝑋2≤ 𝐿") (3 − 10) 𝜀𝑛𝑥2=𝑥𝑛𝜀𝑛
𝐷 −𝑥𝑛𝜀𝑛
2𝐷𝐿"𝑋2 (0 ≤ 𝑋2≤ 𝐿") (3 − 11)
ここで,𝑒𝑥:縁ひずみの変化量
𝑋2:L”区間におけるA点から材軸方向への距離
図3.12 L”区間における任意断面での圧縮ひずみ分布
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3.5.2 引張縁コンクリートひずみ分布の推定法
次に,図 3.13 に示す引張側 PC 鋼材位置及び引張縁での引張ひずみを考える。アンボンド
PCaPC梁部材においては,梁曲げ終局時まで梁圧着面での離間が最も大きく進展し,それ以外の
梁部分に生じる曲げひび割れの本数は少なく,かつそのひび割れ幅も非常に小さいことが筆者ら の既往実験[3.8]より確認された。そこで,引張側PC鋼材位置におけるコンクリートの引張ひずみ
(tp)は,コンクリートにひび割れが生じる直前,即ち弾性状態を考えれば良い。ここで梁断面 の引張縁ひずみをtexとすると,図3.13よりPC鋼材位置での引張ひずみ(tp)は,平面保持を仮 定すると式(3-12)となる。
𝜀𝑡𝑝=𝑑𝑝− 𝑥𝑛𝑥
𝐷 − 𝑥𝑛𝑥
∙ 𝜀𝑡𝑒𝑥 (3 − 12)
ここで,𝑑𝑝:圧縮縁から引張側PC鋼材位置までの距離(mm)
𝜀𝑡𝑝:引張側PC鋼材位置でのコンクリートの引張ひずみ 𝜀𝑡𝑒𝑥:引張縁コンクリートの引張ひずみ
ただし,上記の通り梁部分での曲げひび割れの本数は少なく,その幅は小さい。更に,図3.12 のように L”区間においては梁全断面が圧縮応力状態であるため,tex及びtpによる引張変形量は 梁圧着面での離間による伸び量に比べ十分小さく無視できると考える。
図3.13 引張側PC鋼材位置及び引張縁での引張ひずみ
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3.5.3 実験結果との比較検証
本節では,3.5.1 で説明した梁材軸方向への圧縮縁コンクリートひずみ分布の推定値と既往の実
験[3.9],[3.10]から得られた実験値との比較を行い,推定式の妥当性を検討する。本研究の試験体
(PCJ07~PCJ10)では,梁材軸方向への圧縮縁コンクリートのひずみ分布が計測できなかった。そ のため,アンボンドPCaPC十字形柱梁部分架構を用い筆者の所属研究室で実施した実験結果を参 照に,本推定式の妥当性を検証することとした。表3.3に検証対象となる試験体の寸法や材料特性 等の主要諸元を示す。また,図3.14に梁材軸に沿った圧縮縁コンクリートのひずみ分布を測るため のひずみゲージ貼付位置を示す。梁部材における圧縮縁コンクリートのひずみ分布は,同図の各測 定位置(梁圧着面から50mm,350mm,700mm)でのひずみ測定値を用いて算出した。
表3.3 試験体PCJ13及びPCJ14の諸元
試験体名
梁幅 b
(mm)
梁せい D
(mm)
圧着面から支持点ま での距離l’
(mm)
PC鋼材 全長L
(mm)
PC鋼材直径
(mm)
コンクリートの圧 縮強度c
(N/mm2)
PCJ13 250 400 1425 3750 17 53.1
PCJ14 250 400 1425 3750 23 49.4
図3.14 試験体PCJ13及びPCJ14におけるコンクリートひずみの計測位置
左梁 右梁
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図3.15に推定法による圧縮縁コンクリートひずみ分布と層間変形角R=2.0%時の実験値の比較を 示す。ただし,層間変形角R=2.0%時のコンクリートひずみの値が測定できない場合にはR=1.5%ま たは R=1.0%時の実験値を用いて比較した。同図の縦軸は圧縮縁コンクリートひずみを,横軸は梁 圧着面からひずみ測定位置までの距離を,○印は中立軸深さが梁せいとちょうど等しくなるA点を それぞれ表す。図中の黒色破線は式(3-7)と式(3-11)により計算した圧縮縁コンクリートひずみ分布 を表す。式(3-7)及び式(3-11)による中立軸位置分布の算定の際,梁圧着面での中立軸深さ xnは梁 曲げ終局時(R=2.0%)の実験値を用いた。
図 3.15 より,実験結果から得られた圧縮縁コンクリートひずみ分布は梁材軸に沿って大きく変 化し,提案式により求めた圧縮縁コンクリートひずみ分布線とほぼ一致した。
(a)試験体PCJ13 -4000
-3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (1.0%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (2.0%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (2.0%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (2.0%) 計算値
左梁上面圧縮時 右梁上面圧縮時
左梁下面圧縮時 右梁下面圧縮時
左梁 右梁
A点 A点
A点 A点
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(b)試験体PCJ14
図3.15 試験体PCJ13及びPCJ14における圧縮縁コンクリートひずみ分布 -4000
-3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (1.5%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (1.5%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (1.0%) 計算値
-4000 -3500 -3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0
0 300 600 900 1200 1500
コンクリートひずみ(μ)
圧着面から測定位置までの距離(mm) 実験値 (2.0%) 計算値
左梁上面圧縮時 右梁上面圧縮時
左梁下面圧縮時 右梁下面圧縮時
左梁 右梁
A点 A点
A点 A点
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3.6 まとめ
本章では,第2章の実験結果及び既往の研究に基づきPC鋼材の降伏以前に梁付け根コンクリ ートの圧壊が先行する梁部材の力学特性について詳しく検討した。まずアンボンド PCaPC 梁部 材に配筋される組立筋が梁曲げ耐力及び変形等に及ぼす影響について詳細に調べた。また,PC鋼 材が上下等量・対称配置されたアンボンドPCaPC十字形部分架構の梁部材を対象に,その地震時 挙動や力学特性を明らかにすべく,梁材軸に沿った任意断面における中立軸位置及び圧縮縁及び引 張縁コンクリートのひずみ分布の評価手法を理論的に提案した。更に,その評価精度を実験結果を 用いて検証した。本章で得られた知見を以下に列記する。
(1) アンボンド PCaPC 梁部材の主筋は主に肋筋を保持するための組立筋として存在するため,
RC梁に比べその主筋量は少ない。またその圧縮力及び引張力は,コンクリート圧縮力及びPC 鋼材引張力に比べ十分小さいと考えられる。よって通常の圧縮組立筋量(本研究では梁全断面 積に対する圧縮組立筋量の比が0.25%程度以下)であれば,組立筋が梁部材の曲げ耐力及び変 形等に与える影響は非常に小さいと推察された。
(2) アンボンドPCaPC十字形架構の梁部材では梁材軸に沿って中立軸位置が大きく変化し,実験 結果から得られた梁断面の中立軸位置分布は本章で提案した推定値とほぼ一致した。
(3) アンボンドPCaPC梁部材のひび割れの発生及び進展は,提案式による中立軸位置の分布線の 外側(引張域)に留まり,そのひび割れ発生領域を概ね推定できた。
(4) アンボンド PCaPC 十字形架構の梁部材では梁材軸に沿って圧縮縁コンクリートひずみ分布 が非線形的に変化し,実験から得られた梁部材の圧縮縁ひずみ分布は本章で提案した推定値 とほぼ一致した。
次章(第4章)では,第2章の実験結果及び第3章の検討結果に加え,力学的根拠に立脚した アンボンド PCaPC 造十字形柱梁骨組の梁部材における荷重-変形関係評価用マクロモデルを構 築し,複雑な数値計算ではなく簡易な形で PC 鋼材弾性限界時及び梁曲げ終局時の耐力及び変形 を定める実用的な評価式を提案する。
第3章 梁曲げ破壊するアンボンドPCaPC造十字形柱梁骨組の梁部材における力学特性
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