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日本産科婦人科学会雑誌第64巻第12号

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(1)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 5 号和文概要

Review of the pandemic(H1N1)2009 among pregnant Japanese women

日本における新型インフルエンザ(H1N1 2009)感染妊婦の実態―レビュー

1)日本医科大学産婦人科 2)富山大学産科婦人科 3)北里大学産婦人科 4)国立成育医療研究センター周産期センター産科 5)北海道大学生殖・発達医学講座 産科・生殖医学分野

中井 章人

1)

齋藤

2)

海野 信也

3)

久保 隆彦

4)

水上 尚典

5) 妊婦がインフルエンザに罹患すると重篤化しやすく,諸外国では新型インフルエンザ(pandemic[H1N1]2009)罹 患により多くの妊婦が死亡したが,日本での母体死亡は 0 であった.このレビューでは,その要因について考察し た.pandemic(H1N1)2009 当時に実施された 2 つの調査研究は以下を示唆した:感染者との濃厚接触後に,抗イン フルエンザ薬を予防服用した本邦妊婦数は約 4∼5 万人にのぼった;うち約 40%(1.6∼2 万人)が実際に発症し,こ れら妊婦は推定総妊婦発症者数 3 万∼4 万人の約 50% を占めた;少なくとも 181 名が入院治療を必要とし,うち少 なくとも 17 名が肺炎を発症した.入院例での早産リスクは一般妊婦集団の 2.5 倍であった.また 2 つの研究は以下 4 点が母体死亡 0 に貢献した可能性を示した:①新型ウイルスワクチンが接種可能になった後,1.5 カ月以内に 60% 以上の妊婦がワクチン投与を受けたこと;②ワクチンは妊婦発症を 89% 抑制したこと;③患者との濃厚接 触後,妊婦の多くが抗インフルエンザ薬の予防投与を受けたこと;そして④入院例の 90% が発症後 48 時間以内に 抗インフルエンザ薬を投与されていたこと. (757∼762 頁) 2012年12月 2319

(2)

Discrepancy between human T-cell lymphotropic virus type I

screening test and confirmatory tests in non-endemic areas

ヒト T 細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の非流行地域での

スクリーニング試験と確認試験の較差

独立行政法人国立成育医療研究センター周産期センター

花岡 正智

久保 隆彦

HTLV-I(Human T-lymphotropic virus type I)は CD4 陽性リンパ球に感染し,成人 T 細胞白血病(ATL),HTLV-I 関連脊髄症(HAM)などの疾患を引きおこすレトロウイルスである.キャリアは長い潜伏期を経て一部に,この ATL や HAM の発症に至る.感染経路として,母子感染は非常に重要であり,特に母乳を介しての感染が大半を占 める.HTLV-I キャリアは現在,日本人口の約 1% にあたる約 110 万人と推定され,近年この数に大きな変化はな いが,従来 non endemic area と云われていた関東・北陸・東海のキャリア率が増加し HTLV-I キャリアが全国に 拡散する傾向が明らかとなった.

2002∼2009 年に当センター管理となった妊婦 11,352 例に対して,HTLV-I スクリーニング検査(PA 法,CLEIA 法)を施行した.陽性者に対して,Western blot 法を施行し,その結果を検討した.CLEIA 法で 1 次スクリーニン グ検査を受けた例は 11,085 例で陽性者は 37 例,PA 法で 1 次スクリーニング検査を受けた例は 267 例で陽性者は 0 例であった.1 次スクリーニング検査陽性判定となった 37 例中,36 例に確認検査として Western blot 法を施行し た.36 例中,陽性:9 例(25%),陰性:20 例(55.6%),判定保留:7 例(19.4%)となった.今回の検討では,当セン ターのある東京などの non endemic area では HTLV-I スクリーニング検査陽性例に Western blot 法を施行する と,陰性となる頻度が高く,確認検査の重要性が再確認された.また Western blot 法を施行しても,判定保留とな る頻度が低くなかった.追加検査として,保険未収載であるが,PCR 施行も手段の一つである.

(793∼796 頁)

(3)

Congenital high airway obstruction syndrome

in the breech presentation managed by ex utero intrapartum treatment

procedure after intraoperative external cephalic version

骨盤位であったため EXIT 施行前に術中外回転術を行った

先天性上気道閉塞症候群の 1 例

1)山口県立総合医療センター総合周産期母子医療センター 2)山口県立総合医療センター産婦人科

三輪一知郎

1)

佐世 正勝

1)

中村 康彦

2)

長谷川恵子

1)

正裕

1)

上田 一之

2) 妊娠 26 週の胎児超音波検査で多量の腹水貯留,皮下浮腫,横隔膜の反転を伴った高輝度で腫大した肺,拡張した 気管,羊水過多を認めたので先天性上気道閉塞症候群と診断した.これらの超音波所見は妊娠 33 週までに自然消失 した.妊娠 36 週,胎盤は前壁から子宮底部に付着し,骨盤位であったため EXIT 施行前に子宮後壁からのアプロー チで術中外回転術を行った.頭位となった後に子宮下部横切開で EXIT を施行した.喉頭鏡検査で喉頭閉鎖と診断 し,気管切開を行った.骨盤位の症例に対して EXIT 施行前に術中外回転術を行うことは有用である. (854∼857 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2321

(4)

Large parasitic myomas in abdominal subcutaneous adipose

tissue along a previous myomectomy scar

筋腫核出術創の腹壁皮下組織内に発生した巨大異所性筋腫の一例

1)鹿児島大学産婦人科 2)鹿児島大学分子細胞病理学

簗詰伸太郎

1)

隆広

1)

義岡 孝子

2)

山崎 英樹

1)

吉永 光裕

1)

堂地

1) 異所性筋腫とは何らかの理由により,部分的もしくは完全に子宮より遊離し他より血液供給を受ける良性筋腫で あり,転移性平滑筋腫,静脈内平滑筋腫症などとは区別される概念である.元来より,有茎性の漿膜下筋腫が子宮 より脱落し周囲の組織に寄生したと考えられている.西暦 2000 年頃より症例報告が急増しており,その多くが腹腔 鏡下手術によるモルセレータが関与している.ポートサイトの腹壁に寄生した報告が多いが,腹腔内に飛散した報 告もある.しかし,開腹術後に発生した報告は稀である.症例は 46 歳女性で腹式子宮筋腫核出術および帝王切開術 の既往がそれぞれ 2 回ある.6 年前より皮下の腫瘤感および,月経開始日に疼痛と皮膚表面の発赤を認めていた. 7 カ月前より不正性器出血を認め,画像検査にて長径 26cm 大の子宮体部筋腫と長径 12cm 大の腹部正中術創直下 の皮下腫瘤を指摘.皮下腫瘤の頭側で開腹したが腹腔内との交通は認めなかった.腹直筋膜の欠損はなく皮下脂肪 組織に栄養血管を認めた.単純子宮全摘術+両側付属器摘出術+腹壁皮下腫瘤摘出術が施行された.腹壁皮下腫瘤 は病理学的に水腫様変化を伴う平滑筋腫であった.本症例では,おそらく過去の筋腫核出術の際の小さな筋腫が皮 下に trans-plantation され,生着し発育したものと考えられた.手術に伴って起こる医原性の異所性筋腫は開腹術も 例外ではなく,手術手技には良性腫瘍であっても慎重を要する. (875∼879 頁) 2322 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(5)

Carbon ion radiotherapy for recurrent malignant transformation

from mature cystic teratoma of the ovary

成熟囊胞性奇形腫悪性転化の再発に対する重粒子線治療

1)小牧市民病院 2)埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科 3)名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 4)愛媛大学大学院医学系研究科・生殖病態外科学

伊藤由美子

1)

森川 重彦

1)

加藤 真吾

2)

梶山 広明

3)

那波 明宏

4)

吉川 史隆

3) 成熟囊胞性奇形腫(MCT)は卵巣の中で最も一般的な腫瘍であるが, 平上皮癌の悪性転化(MT)の報告は稀であ る.今回,我々は MT-MCT に対し重粒子線治療が奏効した症例を経験したので報告する.症例は 78 歳女性で,卵 巣癌 stage IIc 期に対し腹式子宮全摘・両付属器摘出術を施行したが,骨盤内に 5mm の病変が残存した.病理結果 は成熟囊胞性奇形腫悪性転化であり,術後パクリタキセル・カルボプラチン療法を 6 コース施行した.しかし化学 療法終了 3 カ月後に病変が 5cm まで増大し直腸に浸潤したため,S 状結腸人工肛門造設術を施行.再発病変に対し て重粒子線治療を 64GyE!16 回施行した.病変は縮小し,治療後 53 カ月経過するが再発徴候は認めていない.重粒 子線治療は再発 MT MCT に対して有用であると考えられた. (880∼883 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2323

(6)

Solitary fibrous tumor arising slowly in the vulva over 10 years : Case report and review

外陰皮下で緩徐な発育が見られた solitary fibrous tumor の一例

1)京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学 2)同 病理部

真奈

1)

馬場

1)

万代 昌紀

1)

鈴木 彩子

1)

三上 芳喜

2)

松村 謙臣

1)

小西 郁生

1)

Solitary fibrous tumor(SFT)は 1931 年に Klemperer と Rabin によって胸膜腫瘍として初めて報告され,線維芽 細胞様の紡錘形細胞の増殖により構成される非常にまれな腫瘍である.核異型に乏しく緩徐に増大するものの,周 囲臓器に影響を与え,ときに転移も見られることから,低悪性度の腫瘍と位置づけられる.主に胸膜に発生する一 方で近年,胸膜外に発生する症例も報告され,発生部位は髄膜,腹膜,肝,上気道,眼窩,甲状腺,唾液腺の他に も子宮や卵管,子宮傍結合織など産婦人科領域にも及ぶ.今回我々は外陰に発生した症例を経験したため報告する. 症例は 56 歳,3 経妊 2 経産婦.10 年前から外陰の腫脹を認め鶏卵大に達したため当科受診.画像にて強い造影効 果を伴う分葉状発育所見を,針生検にて小血管周囲に異型の乏しい短紡錘形細胞の増殖を認めた.坐骨骨膜を含め て被膜破綻なく 9cm 大の腫瘍を摘出し,術後病理組織にて hemangiopericytomatous pattern を伴う核分裂像に乏 しい紡錘形腫瘍細胞の不規則な増殖と giant cell を認め SFT と診断した.現在までに再発所見なく,歩行障害もみ られていない.診断や治療法について未確立な産婦人科領域 SFT についても考察する. (884∼888 頁) 2324 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(7)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 6 号和文概要

Altered arterial stiffness in male to female transsexuals

undergoing hormonal treatment

性同一性障害(male to female)症例におけるホルモン療法による

血管硬化度の変化

1)岡山大学病院産婦人科 2)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 3)岡山大学大学院保健学研究科 4)国立成育医療研究センター周産期センター

如拉

1)2)

シェキル シェビブ

1)

江見 弥生

3)

新井富士美

1)

菊池由加子

1)

佐々木愛子

4)

松田 美和

1)2)

清水 恵子

1)2)

田淵 和宏

1)2)

鎌田 泰彦

1)

平松 祐司

1)2)

中塚 幹也

1)3)

性同一性障害(Gender Identity Disorder)とは生物学的性(身体の性)と性の自己意識(心の性)が一致しない状態 である.このため,身体の性に持続的な違和感を持ち,心の性に近づけるホルモン療法が行われる.心は女性,身 体は男性である MTF(male to female)症例では,エストロゲンのみ,または,エストロゲンとプロゲスチンなどの 製剤が種々の経路で投与される.本研究の目的は,ホルモン療法を受けている症例の血管障害を評価することであ る. 156 名の MTF 症例(ホルモン治療群 129 名,未治療群 27 名)を対象とし,容積脈波計を用いて血管硬化度を評価 した. ヘマトクリット,尿酸,APTT は,ホルモン治療群がホルモン未治療群より有意に低値であった.HDL―コレス テロールは,経口エストロゲン群が未治療群,非経口エストロゲンのみ群,および,エストロゲンとプロゲスチン 併用群に比較して有意に高値であった. 収縮期血圧は, エストロゲンのみ群が未治療群より有意に低値であった. 血管障害の各種指標を見ると,baPWV 値は,エストロゲンのみ群が未治療群,エストロゲンとプロゲスチン併用群 に比較して有意に低値であった.エストロゲン治療は,脂質代謝,血管機能に有益な効果があるが,プロゲスチン 併用によりエストロゲンの血管保護作用を抑制する可能性が示唆された. (932∼940 頁) 2012年12月 2325

(8)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 7 号和文概要

Shakuyaku-kanzo-to inhibits smooth muscle contractions

of human pregnant uterine tissue in vitro

芍薬甘草湯は試験管内のヒト妊娠子宮平滑筋収縮を抑制する

関西医科大学産科学婦人科学教室

祥子

安田 勝彦

角 玄一郎

寿勇

都築 朋子

岡田 英孝

神崎 秀陽

【目的】芍薬と甘草の 2 種類の生薬からなる芍薬甘草湯は,その鎮痛・鎮痙効果により平滑筋収縮によって起こる 「腹痛」や「月経痛」あるいは骨格筋の痙攣によって起こる「こむら返り」などの治療薬として繁用される漢方薬で ある.しかしながら,ヒト妊娠子宮への作用については明確ではない.今回我々は芍薬甘草湯・芍薬・甘草のヒト 妊娠子宮への影響について検討した. 【方法】インフォームドコンセント下に採取したヒト妊娠子宮筋を試験管内でオキシトシン・PGF2α・高濃度 KCl により収縮を誘導した.これらの収縮に対し芍薬甘草湯・芍薬・甘草の抑制効果を検討した. 【成績】オキシトシンで誘導したヒト妊娠子宮平滑筋収縮に対する芍薬甘草湯の抑制効果は 100μ g!mL より出現 し 1,000μ g!mL で最大となり,440μ g!mL で 50% の収縮抑制を認めた.1,000μ g!mL の濃度の芍薬甘草湯はオキシ トシン・PGF2αによる収縮を完全に抑制したが,高濃度 KCl による収縮は完全には抑制されなかった.芍薬あるい は甘草単独の添加では甘草にその抑制効果を認めた. 【結論】芍薬甘草湯のヒト妊娠子宮平滑筋収縮に対する抑制効果は甘草によるものであることが示唆された.高濃 度 KCl 誘導子宮収縮に対する芍薬甘草湯の抑制効果は,オキシトシンあるいは PGF2α誘導収縮に対する抑制効果 より弱いことから,芍薬甘草湯の収縮抑制は電位依存性 Ca2+チャンネルを介する経路だけでなく,cAMP や cGMP など他の経路を介することも示唆された. (1004∼1010 頁) 2326 日産婦誌64巻12号

(9)

Is there any association between retroperitoneal lymphadenectomy

and survival benefit in advanced stage epithelial ovarian carcinoma patients?

進行性卵巣癌における系統的後腹膜リンパ節郭清の施行が

予後改善につながるか?

1)大同病院産婦人科 2)名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学 3)豊橋市民病院産婦人科 4)名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻

境 康太郎

1)

梶山 広明

2)

梅津 朋和

2)

柴田 清住

2)

水野 美香

2)

鈴木 史朗

2)

河井 通泰

3)

長坂 徹郎

4)

吉川 史隆

1)

【目的】進行性卵巣癌(advanced epithelial ovarian cancer:AEOC)では optimal surgery の達成が予後に深く関 与するとされている.しかしながら,系統的後腹膜リンパ節郭清(systematic lymphadenectomy:SLA)の長期生存 に与える効果についてはいまだ不明な点が多い.今回,我々は AEOC に対して SLA 施行の有無が予後に及ぼす影 響を検討した.【方法】1986 年より 2009 年まで自施設および関連協力病院にて初回治療を行った pT3∼4 期の AEOC で,かつ手術により残存腫瘍を 1cm 未満にし得た 180 例を対象とした.それらに対し,SLA 施行の有無に よって層別化し,全生存率(OS),無進行生存率(PFS)について解析を行った.【成績】1)全症例の年齢中央値は 55 歳(23∼84 歳).2)全症例で SLA 施行群(n=87)の 5 年 OS および 5 年 PFS は各々 59.0%,41.9% であり,一方,SLA 非施行群(n=93)の 5 年 OS および 5 年 PFS は各々 62.9%,46.7% でありともに有意差を認めなかった(OS,p= 0.853;PFS,p=0.658).3)全体を漿液性と非漿液性で層別化したそれぞれのサブグループにおいても,SLA 施行の

有無によって OS!PFS の差を認めなかった.【結論】Optimal surgery を達成し得た AEOC に対して,SLA の施行が

必ずしも長期予後を改善するとはいえなかった.

(1018∼1023 頁)

(10)

Evisceration occurred 1 year after vaginal vault repair for relapsed pelvic organ prolapse

再発した腟断端脱に対する修復手術の 1 年後に内臓脱出を来した一例

東京女子医科大学東医療センター産婦人科

村岡 光恵

長野 浩明

髙木耕一郎

我が国では子宮摘出後の経腟的小腸脱出の報告は稀である.われわれは骨盤性器脱に対して腟式子宮摘出術・前 後腟壁縫合術施行後,3 年目に小腸瘤が再発し,他医にて修復術を受け,その 1 年後に突然,腟断端から小腸の脱 出を認めた 81 歳の症例を経験した.全身麻酔下に開腹し,経腹的に小腸を還納後,Moschowitz 法によりヘルニア 門を閉鎖し,その後,経腟的に腟断端を閉鎖した.小腸脱出の場合,緊急手術が必要であるが,重要となるのは脱 出した内臓の迅速な評価と腟欠損部の修復である.腹式と腟式の組み合わせによる手術的アプローチは,再建を容 易にし,さらなる病的状態を避けるのに有効である.また,高齢化に伴い腟式手術の増加が,あるいは腹腔鏡下や ロボット手術による子宮摘出術の増加も予測されるが,これらによる子宮摘出後の腟断端の離開による内臓脱出の リスクの増加が懸念される.初回手術時に,小腸瘤の十分な評価と予防的ダグラス窩形成術を施行することが,本 症例の発症予防につながると考えられる. (1028∼1031 頁) 2328 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(11)

Amount of hemorrhage during vaginal delivery correlates with the length

from placental edge to external os in cases with low-lying placenta

whose length between placental edge and internal os was 1-2 cm

内子宮口から胎盤辺縁までの距離が 1∼2cm の低置胎盤における

経腟分娩時出血量と外子宮口から胎盤下縁までの距離との相関

昭和大学産婦人科学教室

仲村 将光

長谷川潤一

松岡

三村 貴志

市塚 清健

関沢 明彦

岡井

低置胎盤症例において分娩直前の子宮頸管長,内子宮口から胎盤下縁までの距離,およびその和が経腟分娩時出 血量と相関があるのかどうか調査する目的で本研究を行った.妊娠 35∼36 週に低置胎盤と診断された症例につい て後方視的研究を行った.当教室では内子宮口から胎盤下縁までの距離が 1∼2cm であった低置症例は経腟分娩を 基本方針としており,実際に経腟分娩を試みた症例を対象とした.対象の診療録を基に分娩時総出血量と内子宮口 から胎盤下縁までの距離,子宮頸管長,およびそれらの和(外子宮口から胎盤下縁までの距離)の関係について検討 した.低置胎盤 23 症例で経腟分娩が試みられ,そのうち 20 例(87.0%)で経腟分娩が完遂されていた.3 例が緊急帝 王切開分娩となったが, 分娩前の出血コントロール不能がその理由であった. 内子宮口から胎盤下縁までの距離, および子宮頸管長は組織学的内子宮口の開大の程度で数値が変化するため,それぞれ単独では経腟分娩時出血量と の相関はなかったが,それらの和である外子宮口から胎盤下縁までの距離は経腟分娩時出血量と有意な負の相関関 係を認めた(r=−0.598,p=0.004).以上,内子宮口から胎盤下縁までの距離が 1cm 以上離れている症例では経腟分 娩の完遂率は高いが,外子宮口から胎盤下縁までの距離が短い症例ほど経腟分娩時出血量が増加することから,そ のような症例における経腟分娩試行に際しての厳重管理の必要性が示された. (1041∼1045 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2329

(12)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 8 号和文概要

Early-onset group B streptococcal disease following culture-based screening

in Japan : A single center study

本邦における B 群溶血性レンサ球菌(GBS)スクリーニング導入後の

早発型新生児 GBS 感染症発生について―単一施設の検討―

国立成育医療研究センター周産期センター

宮田あかね

高橋 宏典

久保 隆彦

渡邉 典芳

塚本 桂子

伊藤 裕司

左合 治彦

【緒言】早発型新生児 GBS 感染症(Early-onset group B streptococcal disease:EOD)予防に全妊婦に対する GBS スクリーニングの有用性が提唱され,当センターでも CDC ガイドラインに基づいた全妊婦 GBS スクリーニングを 開始した.本邦においてスクリーニング導入後の EOD 発生動向に関する報告はみられない. 【対象と方法】2002∼2009 年に当センターで分娩した 9,506 妊婦,10,715 新生児の EOD 発生について後方視的に 検討した. 【結果】早産例や選択的帝王切開例を除いた 7,332 新生児のうち 4 例に EOD が生じた(4!7,332:0.55!1,000 出生). 4 例中,スクリーニング陽性群から 1 例(1!1,107:0.90!1,000 出生),陰性群から 3 例(3!6,225:0.48!1,000 出生)EOD が発生した.EOD4 例のうち,スクリーニング陽性例 1 例と感染徴候を認めたスクリーニング陰性例 1 例は予防的 抗生剤が投与されたが,残りの 2 例はともにスクリーニング陰性例かつ分娩経過にも異常はみられず,抗生剤は投 与されなかった. 【結論】EOD は GBS スクリーニング陽性母体から 1,000 出生あたり 0.9 例,陰性母体から 1,000 出生あたり 0.48 例にみられた.スクリーニング陰性かつ分娩経過正常例からも EOD 発生がみられることに留意すべきである. (1052∼1056 頁) 2330 日産婦誌64巻12号

(13)

Retrospective evaluation of tumor markers in ovarian mature cystic teratoma

and ovarian endometrioma

卵巣成熟囊胞性奇形腫および卵巣子宮内膜症性囊胞における

血清腫瘍マーカー値の後方視的検討

近畿大学医学部産科婦人科学教室

片岡多恵子

渡部

星合

435 名の成熟囊胞性奇形腫患者における術前 CA125,CA19-9,STN および SCC 値および 321 名の卵巣子宮内膜 症性囊胞における術前 CA125,CA19-9,STN 値と臨床病理学的所見について後方視的に検討を行った.この結果, 成熟囊胞性奇形腫における CA125,CA19-9,STN および SCC の異常上昇は 12.9%,50.6%,4.6% であり,子宮内膜 症性囊胞においては 53.3%,38.9%,13.5% であった.また悪性転化の認められない成熟囊胞性奇形腫においても 33.7% に SCC の異常上昇が確認された.さらに,CA125,CA19-9 値は最大腫瘍径と有意な関連性を認めたが,STN および SCC 値は腫瘍の臨床病理学的所見との有意な関連性を認めなかった.なお CA125,CA19-9,STN,SCC の最 高値は,各々子宮内膜症性囊胞における 9,513U!mL,成熟囊胞性奇形腫における 25,590U!mL,子宮内膜症性囊胞 における 345U!mL,成熟囊胞性奇形腫における 7.5ng!mL であった. 卵巣成熟囊胞性奇形腫および卵巣子宮内膜症性囊胞は良性腫瘍でありながら,高率に血清腫瘍マーカー値の上昇 が認められることから,総合的な良悪性判断が必要である. (1071∼1076 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2331

(14)

May-Thurner syndrome resulting in acute iliofemoral deep vein thrombosis

during the second trimester of pregnancy

妊娠中期に腸骨大腿静脈の深部静脈血栓症を来した

May-Thurner 症候群の 1 例

東京女子医科大学八千代医療センター母体胎児科・婦人科

中島 義之

正岡 直樹

都築陽欧子

諸岡 雅子

坂井 昌人

分娩前に深部静脈血栓症を来した May-Thurner 症候群の報告はほとんどない.今回我々は,陣痛発来前に広範囲 の深部静脈血栓症を発症した May-Thurner 症候群の 1 例を経験したので報告する. 症例は 27 歳初産婦.妊娠 23 週より歩行時の左大腿痛を認め,超音波検査にて左総腸骨静脈から大腿静脈まで連 続する血栓を認め,紹介入院となった.入院時身長 152cm,体重 58kg で,妊娠前の喫煙,避妊薬服用,静脈瘤な どの既往はなかった.入院時,肺塞栓症を疑う所見はなかったが,MRI angiography では,左総腸骨静脈から大腿 静脈まで血栓の充満が確認できた.分娩前に一時的下大静脈フィルターを挿入し,管理分娩を行う方針とし,抗凝 固療法を開始した.妊娠 36 週に一時的下大静脈フィルターを挿入した後,妊娠 37 週に分娩誘発し,2,990g の男児 Apgar score 1 分後 8 点(5 分後 9 点)を経腟分娩した.産褥経過は順調であり,分娩後造影 CT にて肺塞栓症および 下肢深部静脈血栓症を認めなかったため,産褥 7 日目に下大静脈フィルターを抜去した.分娩 2 カ月後の造影 CT では,左総腸骨静脈が総腸骨動脈と腰椎に挟まれ,左総腸骨静脈から外腸骨静脈は瘢痕状で描出されず,仙骨前面 から内腸骨静脈系への側副血行路が発達していた. 産褥期の造影 CT の結果から,左総腸骨静脈から外腸骨静脈にかけての先天的な静脈の狭窄が判明し,May-Thurner 症候群による深部静脈血栓症と診断された. (1106∼1110 頁) 2332 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(15)

Pregnancy complicated by uterine sacculation due to a huge myoma

uterine sacculation を来した巨大子宮筋腫合併妊娠

新潟大学医歯学総合病院産科婦人科

英里

芹川 武大

五日市美奈

生野 寿史

大木

高桑 好一

田中 憲一

Uterine sacculation とは,妊娠子宮の一部が何らかの原因により進展されて囊状に膨隆する非常にまれな産科異 常である.経腟分娩は困難であり,膀胱の挙上や子宮頸部の伸展,そしてあたかも子宮の上下が逆になったような 状態を示すことなどから,帝王切開手術の際には術前に十分な位置関係の把握をしなければ膀胱損傷や子宮頸部損 傷などを起こしうる.また超音波断層法にて診断することは極めて難しく,本疾患には MRI による評価が診断に有 用である.本症例は 37 歳の初産婦.13cm 大の巨大子宮筋腫を認めていた.内診にて子宮口を視認できず,妊娠 16 週 MRI を施行したところ子宮頸部は前方に偏移するとともに伸展,また子宮底部がダグラス窩に嵌入し,子宮体部 前壁が囊状に膨隆していたことから,uterine sacculation と診断され当院へ紹介となった.妊娠 36 週に再度 MRI にて子宮頸部や筋腫,膀胱位置,また胎盤付着部位や胎児位置など十分に検討した.経腟分娩は不可能,また子宮 下節横切開は子宮筋腫や膀胱位置などから困難と判断した.妊娠 37 週,ダグラス窩に嵌入していた子宮を腹腔外に 脱転させ子宮体部縦切開を施行,3,147g の男児を出産した.手術後も子宮前壁にある巨大筋腫により子宮は整復せ ず後屈のままであった.本症例は巨大筋腫により,妊娠子宮が増大する際に子宮の可動性が制限され,uterine sac-culation を来したものと思われる. (1111∼1114 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2333

(16)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 9 号和文概要

Gestational Bodyweight Gain among Underweight Japanese

Women Related to Small-for-Gestational-Age Birth

やせ型日本人女性における,妊娠中体重増加量と SGA の関係

1)大阪市立大学大学院医学研究科都市医学大講座産業医学分野 2)石田病院

論文投稿時所属先:3)神戸市立医療センター中央市民病院 4)天の川レディースクリニック

針田 伸子

1)

刈谷 方俊

2)

朝茂

1)

佐藤 恭子

1)

青木 卓哉

2)3)

中村 公彦

2)4)

圓藤 吟史

1)

成本 勝彦

1)2) 日本では,Small-for-gestational-age(SGA)のリスク因子であるやせ型妊婦が増加している.今回我々は,日本人 における非妊時 body mass index(BMI)および妊娠中体重増加量と SGA の関係について検討した.研究は,正期産 単胎分娩症例 1,391 名を対象とした前方視的研究である.SGA は,同時期に分娩した単胎分娩 1,417 例における,各 分娩週数での性別・分娩歴ごとの児の出生体重の 10% タイル未満と定義した.同様に 5% タイル未満も算出した. 非妊時 BMI に従って,やせ型・ふつう・肥満に 3 分した.

SGA はやせ型妊婦で最も多く認められ,やせ型は SGA のリスクを増大させた.やせ型の SGA 発症に対する補正 後オッズ比は,ふつう体型の妊婦と比較して 1.96(95% 信頼区間 1.23∼3.11)であった.十分な妊娠中体重増加量は SGA 発症のリスクを下げ,1kg あたりの補正後オッズ比は 0.86(0.81∼0.92)であった.5% タイル未満で定義した SGA についても,同様の傾向が認められた.やせ型およびふつう体型の妊婦で体重増加量が 9kg 以下では,ふつう 体型で体重が 9∼11kg 増加した妊婦に比較して SGA 発症リスクが有意に高かった. 以上の結果から,やせ型であること及び妊娠中体重増加量が十分でないことは SGA 発症のリスクを増加させる が,仮に十分な体重増加が得られれば,やせ型妊婦であっても SGA 発症リスクは有意に上昇しないことが分かっ た. (1137∼1144 頁) 2334 日産婦誌64巻12号

(17)

Mortality rates for extremely low-birthweight infants :

A regional, population-based study in Japan during 2005―2009

超低出生体重児の生命予後:2005∼2009 年の宮崎県における

臨床統計を基にした検討

宮崎大学医学部生殖発達医学講座産婦人科学分野

金子 政時

鮫島

甲斐 克秀

卜部 浩俊

児玉 由紀

池ノ上 克

2005∼2009 年に宮崎県で管理したすべての超低出生体重児(ELBWI)の生後 1 年以内の生存率とその死因に関係 する因子を明らかにするために後方視的に検討した.同期間に宮崎県では 50,632 件の分娩があり,197 人の ELBWI の管理が行われた.カバー率は,104.8% であり,県外からの母体・新生児搬送例が含まれるためと考えられた.197 人中 2 人は,trisomy 18 であり,検討から除外した.195 人の ELBWI の生後 28 日以内の死亡は 18 人(9.2%),生 後 1 年以内の死亡 29 人(14.9%)であった.週数別死亡率は,22 週;28.6%,23 週;21.7%,24 週;34.2%,25 週; 6.7%,26 週;6.3%,27 週;13%,28 週以降;4.8%,体重別死亡率は,<400g;50%,400∼499g;9%,500∼599 g;31%,600∼699g;16.7%,700∼799g;19.4%,800∼899g;7.5%,900∼999g;2.9% であった.Log-rank テス トでは,週数別累積生存率に有意な差を認めた.24 週で出生した児の生存率を 3 次とそれ以外の施設で管理された 児とで比較した所,3 次施設で管理された児は,有意に生存率が高かった.ELBWI の 1 年以内死亡に係る因子に関 して,多因子解析を行ったところ,22∼24 週の出生(Odds 比 6.6,95%CI 2.8∼15.9),3 次施設以外の管理(Odds 比 4.0,95%CI 1.5∼10.8),多胎(Odds 比 6.6,95%CI 1.8∼23.8)が重要な因子であることが判った.多胎妊娠において は,8 人の死亡があり,その内 7 人が一絨毛膜二羊膜性(MD)双胎であった.24 週未満出生の児は,3 次施設での管 理が望まれると考えられた.多胎妊娠に関しては,MD 双胎の管理に課題が残ると考えられた.

(1145∼1151 頁)

(18)

Histological Assessment of Impact of Ovarian Endometrioma

and Laparoscopic Cystectomy on Ovarian Reserve

子宮内膜症性卵巣囊腫,腹腔鏡囊腫摘出術の卵巣機能に対する

影響の組織学的評価

1)順天堂大学人体病理病態学教室 2)順天堂大学産婦人科学教室

3)Leuven Institute of Fertility and Embryology, Leuven, Belgium 4)Clinical Sciences Research Institute, University of Warwick, Coventry, UK

黒田 雅子

黒田 恵司

荒川

福村 由紀

北出 真理

菊地

熊切

松岡 正造

Ivo A. Brosens

Jan J. Brosens

竹田

八尾 隆史

【目的】卵巣内の卵母細胞数は年齢と共に減少し,32∼38 歳よりその減少率が加速する.また卵巣機能は,卵巣 の疾患や手術などの医療行為によっても影響を受ける.我々は,子宮内膜症性卵巣囊腫(Endometriotic cyst:EC), 腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術および年齢が卵巣機能に及ぼす影響を組織学的に評価した.

【方法】EC 患者 61 人と子宮内膜症以外の卵巣囊腫(Non-EC)患者 42 人の正常卵巣の一部を手術時に生検し,卵胞 密度を計測した.また手術で摘出した卵巣囊腫壁に付着した正常卵巣を組織学的に評価した.

【結果】EC 群と Non-EC 群は共に,卵巣の卵胞密度は年齢と相関し,35 歳未満では EC 群が Non-EC 群と比較し

卵胞密度が有意に低く,その相対比率(EC!Non-EC)は 20,30,35 歳でそれぞれ 35.4,46.8,62.7% であった.卵胞の形 態学的評価でも EC 群が有意な卵巣機能の低下を認めた.しかし 35 歳以上では両群に有意差を認めなかった.また 手術で摘出した囊腫壁への卵巣組織付着率は,EC 群で有意に高く,EC 群の正常卵巣付着例は,非付着例と比較し 囊腫径が有意に小さく,その卵胞密度は高かった. 【結論】我々のデータから,EC は若年患者ほど卵巣機能へのダメージが大きく,さらには EC に対する腹腔鏡下 囊腫摘出術は,年齢に伴う卵母細胞減少率を加速させる可能性が示唆された. (1187∼1193 頁) 2336 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(19)

Total laparoscopic hysterectomy in 1253 patients using

an early ureteral identification technique

早期尿管同定を行った全腹腔鏡下子宮全摘 1,253 例の後方視的検討

倉敷成人病センター

小林 栄仁

長瀬 瞳子

藤原 和子

羽田 智則

太田 啓明

高木 偉博

金尾 祐之

安藤 正明

【目的】特定の除外基準を設けず行った 1,253 例の全腹腔鏡下子宮全摘術について,定型化された早期尿管同定を 用いた本術式を提示するとともに,本手術を行った 1,253 例において周術期の合併症及び合併症に寄与するリスク 因子を検討することとした. 【方法】倉敷成人病センターで 2005 年 1 月から 2009 年 3 月までに行われた全腹腔鏡下子宮全摘 1,253 例を後方視 的に検討した.Major complication は膀胱,尿管,腸管損傷および再手術を要した合併症と定義した. 【結果】24 人(1.91%)が major complication を経験した.内訳は 10 人が尿管損傷,5 人が術後水腎症,5 人が腟断 端離開,腸管損傷,腸閉塞,術後出血,尿管腟漏を各々 1 人認めている.術中の臓器損傷を来した 11 人はすべて術 中に認識され,術中に腹腔鏡下で修復が行われた.リスクファクターの検討では major complication に唯一寄与し ていたのは既往開腹術でそのオッズ比は 2.48(95%CI 1.23∼6.49)であった. 【結語】手術を行う上で合併症を完全に回避することは困難であるが,十分な腹腔鏡下の縫合技術及び骨盤内解剖 の熟知により殆どの開腹移行は回避可能である.さらに今回提示した早期尿管同定後の全腹腔鏡下子宮全摘術式は 尿管損傷を減少せしめた. (1194∼1200 頁) 2012年12月 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 2337

(20)

Pilot study of CD147 protein expression in epithelial ovarian cancer using

monoclonal antibody 12C3

上皮性卵巣癌における CD147 発現に関する検討

1)東京慈恵会医科大学産婦人科 2)東京慈恵会医科大学病院病理部 3)東京慈恵会医科大学生化学 4)千葉大学大学院医学研究院病態病理学

上田

1)

山田 恭輔

1)

清川 貴子

4)

飯田 泰志

1)

永田 知映

1)

濱田 智美

2)

斎藤 美里

1)

青木 勝彦

3)

矢内原 臨

1)

高倉

1)

岡本 愛光

1)

落合 和徳

1)

大川

3)

田中 忠夫

1)

【Aim】膜糖蛋白 CD147 は細胞外マトリックスを基質とする MMP(matrix metalloproteinase)発現を誘導し,癌 の浸潤や転移に関与することが報告されている.上皮性卵巣癌における CD147 の発現および組織分化度を含む臨 床病理学的因子との関連を検討する.

【Material and Methods】上皮性卵巣癌 FIGOⅢc 期 25 例(漿液性腺癌 22 例,類内膜腺癌 3 例)を対象とし,ホルマ リン固定組織切片上で抗 CD147 抗体による免疫組織染色を行い,CD147 発現と組織分化度を含む臨床病理学的因 子や予後との関連について統計学的解析を行った.組織分化度は WHO 分類,Shimizu-Silverberg 分類,M.D. An-derson 分類を用いて診断した. 【Results】CD147 は 25 例中 21 例(84%)に発現しており,いずれも腫瘍細胞に高発現していた.CD147 は組織分 化度や他の臨床病理学因子との関連性は認めなかったが,全生存期間との逆相関を認めた(p=0.0402).残存腫瘍や 組織分化度(WHO 分類,Shimizu-Silverberg 分類)も予後との相関を認めた(p=0.0059,p=0.0378,p=0.0494). 【Conclusions】CD147 は臨床病理学的因子との相関を認めないものの,予後との相関を認めることより,上皮性卵 巣癌における新たな予後因子としての可能性が示唆された.今後さらに明細胞腺癌を含むすべての組織型や全進行 期における検討が望まれる. (1211∼1219 頁) 2338 英文論文掲載誌(JOGR)の和文概要 日産婦誌64巻12号

(21)

日本産科婦人科学会英文論文掲載誌(JOGR)38 巻 10 号和文概要

Case of peptide-YY-producing strumal carcinoid of theovary : A case report and review

PeptideYY 染色陽性を呈した卵巣甲状腺腫性カルチノイドの 1 例

岩手医科大学医学部産婦人科

髙取恵里子

庄子 忠宏

三浦 自雄

海道 善隆

竹内

杉山

卵巣カルチノイドは全卵巣悪性腫瘍の約 0.1% を占める非常に稀な疾患である.甲状腺腫性カルチノイドは組織 学的に,濾胞を有する甲状腺組織とカルチノイドが相接して存在するものであり,世界で約 60 例の報告に留まって いる.我々は,症状として重度の便秘を有し,世界で 4 例目となる PeptideYY 染色陽性の卵巣甲状腺腫性カルチノ イドの 1 例を経験したので報告する. 症例は 48 歳女性,2 経妊 2 経産.既往歴は 17 歳で鼠径ヘルニア,34 歳で虫垂炎の手術既往があり,家族歴に特 記事項なし.検診目的で近医を受診し,超音波検査で骨盤内腫瘤を指摘され,当科に紹介となった.MRI 検査で 6× 5cm 大の充実性の右卵巣腫瘍を認めた.卵巣悪性腫瘍を疑い開腹手術を施行した.手拳大の表面平滑で多房性の右 卵巣腫瘤が認められた.腫瘍割面は黄灰白色充実性腫瘍であった.腹水は微量で左付属器と子宮および腹腔内に異 常所見は認められなかったため,右子宮付属器摘出術のみ施行した.術後病理診断は卵巣甲状腺腫性カルチノイド Ia 期(pTlA,NX,M0),腹水細胞診は陰性であった.消化管内視鏡検査,CT 検査で他病巣は認めず,卵巣原発甲 状腺腫性カルチノイドと診断した.免疫組織化学的検索では,PeptideYY 染色が陽性であった.術後便秘は速やか に軽快し,術後 18 カ月が経過しているが,現在は再発兆候もなく経過は良好である. 本症例の便秘は臨床経過より卵巣甲状腺腫性カルチノイドが原因と考えられ,PeptideYY の関与が示唆された. (1266∼1270 頁) 2012年12月 2339

参照

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