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ークショップ第 ₂₇ 回日本呼吸ケア リハビリテーション学会学術集会ワークショップⅣ 今知っておきたい抗酸菌症診療の現状と課題ワ結核の診断と治療 日本呼吸ケア リハビリテーション学会誌 2020 年第 29 巻第 2 号 医療法人根本医院 ₁) ₂), 国立病院機構茨城東病院内科診療

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日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2020年 第29巻 第 2 号 228- 233

結核の診断と治療

医療法人根本医院₁),国立病院機構茨城東病院内科診療部呼吸器内科₂)

根本 健司

1,2)

要 旨 結核の中蔓延国である本邦が低蔓延国を目指すためには,結核の早期診断と確実な治療の実践が必要となる.

  結核発病診断の基本は細菌学的検査であり,耐性菌による治療失敗のリスクを回避するためにも薬剤感受性試験の実施 が必須である.一方,潜在性結核感染症診断の基本はインターフェロンγ遊離試験(IGRA)であるが,偽陽性と偽陰性 という IGRA の問題点を臨床的に正しく判断する総合力が必要となる.現在の結核標準治療は,結核病学会治療委員会の

『「結核医療の基準」の改訂―2018年』に準じて実施される.この指針ではピラジナミド(PZA)を含めた 4 剤併用療 法が唯一の標準治療法と示され,従来使用された PZA を含まない 3 剤併用療法を安易に選択することは控えなければな らない.

  本稿では,呼吸ケア,呼吸リハビリテーションに関わるすべてのメディカルスタッフを対象に,結核の診断と治療に関 する基本的事項を中心に概説する.

Key words:結核,潜在性結核感染症,インターフェロンγ遊離試験,抗結核薬,結核標準治療

第₂₇回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 ワークショップⅣ 今知っておきたい抗酸菌症診療の現状と課題

ワークショップ

結核の診断 1 .結核の発病診断とは?

 結核発病診断の手順を図 ₁ に示す.医療機関受診理由 としては,自覚症状,健康診断における異常所見,結核 発病者との接触歴などが挙げられ,その中でも自覚症状 が発見動機としては最も多い₁).しかしながら,結核の 全身症状は,発熱,盗汗,全身倦怠感,体重減少など,

決して結核に特異的な所見ではない.肺結核は咳嗽,喀 痰,血痰・喀血,呼吸困難感など,他の呼吸器疾患と鑑 別が困難であり,また肺外結核も侵される臓器により 様々な症状を呈する.そのため,結核の中蔓延国である 本邦では,どのような症状の患者であっても,常に結核

を疑うことが結核発病診断の第一歩となる.

 結核,特に肺結核を疑った場合,次に行うのが胸部X

線やCTなどの画像検査である.肺結核の好発部位は,肺

尖部(S,S,S₁+₂)と肺下葉上区(S)で,気道に沿っ た小粒状影,結節影,浸潤影,空洞影などがみられる.

典型例(図₂A, B)であれば画像検査のみで十分推測でき るが,非典型例(図₂C, D)も少なからず存在する.その ため,高齢者や免疫抑制宿主など結核発病リスクが高い 肺炎患者の場合には,肺結核を常に鑑別に挙げる必要が ある.

 結核発病診断において最も重要となるのが,細菌学的 検査である.喀痰,誘発痰,胃液などを用いて抗酸菌塗 抹法,培養法,結核菌核酸増幅検査法を実施する.菌を

図 1  結核発病診断の手順 画像所見(胸部X線,胸部CT 症状で受診,健康診断,接触者健診

喀痰・誘発痰・胃液検査(抗酸菌塗抹法,培養法,結核菌核酸増幅検査) 抗酸菌培養陽性 抗酸菌陰性

結核 (診断確定) 非結核性抗酸菌症

気管支鏡検査など

結核否定

(2)

検出することで薬剤感受性検査が可能となるため,喀痰 が得られない場合には気管支鏡検査の実施も考慮し,適 切な検体を得る努力が必要となる.適切な検体が得られ たら,まずは抗酸菌塗抹検査を実施する.排菌の程度を 推定できる塗抹検査法は,患者管理上重要な検査である.

ただし,塗抹結果のみでは,結核を否定することや,非 結核性抗酸菌症との区別ができないことから,必ず培養 検査も同時に実施する必要がある.結核菌核酸増幅検査 法は,特異度が高いことから菌種同定法にも使用される 重要な検査である.しかしながら,死菌でも陽性になる ため治療効果判定に用いてはならないこと,培養法と比 較すると検出感度が低く,核酸増幅検査法で陰性であっ ても結核発病を否定できない点に注意する必要がある.

培養検査法で陽性が得られ結核菌が初めて同定された場 合には,適切な結核治療を完遂するために薬剤感受性検 査の実施が必須となる.また,多剤耐性結核の割合が高い 国からの外国人結核患者や結核既治療患者など,治療開 始時に多剤耐性結核が疑われた場合には,リファンピシ ン耐性遺伝子(rpoB)を短時間で検出するXpert®MTB/ RIFが使用できるが,その結果の解釈と治療方針の決定 は専門医への相談が必要である₂)

2 .結核の感染診断とは?

 結核の感染診断法には,ツベルクリン反応検査 (Tuberculin Skin Test: TST)とインターフェロン-γ遊離試験(Inter- feron Gamma Release Assay: IGRA)の ₂ 種類が存在する.

ただし,TSTに用いられる精製ツベルクリン(Purified Protein Derivative: PPD)は,BCGや非結核性抗酸菌症 に対して交差反応を引き起こすため,結核の感染診断法 としては特異度の低さが問題であった.一方,IGRAは PPDや非結核性抗酸菌症の主要な原因菌種であるMyco- bacterium (M.) aviumやM. intracellulareの影響を受け ないため,BCG接種者が殆どを占め,また非結核性抗酸 菌症の有病率が増加している本邦においては,IGRAが 潜在性結核感染症(Latent tuberculosis infection: LTBI)

を含む結核感染診断の基本となる₃).日本結核病学会は,

結核発病の相対危険度が ₄ 以上となる患者(HIV/AIDS,

臓器移植後の免疫抑制剤使用,珪肺,血液透析,最近 ₂ 年以内の結核感染,未治療の陳旧性結核病変,生物学的 製剤使用)に対してはIGRAを積極的に適用し,LTBIと 診断し治療するように推奨している₃)

 現在本邦において使用可能なIGRAは, Tスポット. TB®

(T-SPOT)と近年承認されたクォンティフェロン®TB 図 2  A,B:79歳男性.全身倦怠感で来院.塗抹陽性肺結核.C,D:92歳女性.肺炎として治療して

いたが,入院時の喀痰抗酸菌検査で肺結核と診断.

C D

(3)

結核の診断と治療

ゴールドプラス(QFT-Plus)が挙げられる.T-SPOT₄-₆)

とQFT-Plus₇,₈)は,どちらも優れた感度と特異度を持ち,

特にQFT-Plusは末梢血CD₄陽性T細胞のみならずCD₈ 陽性T細胞の免疫応答シグナルも利用しているため,免 疫能が低下した患者に対しての有用性も期待されている.

しかしながら,これらの臨床研究で示されたIGRAの優 れた診断特性は₄-₈),結核発病患者で得られた感度であ り,感染リスクが低い集団から得られた特異度である.

そのため,診断基準のないLTBIに対する真の感度と特 異度は不確定であり,IGRAを実地臨床で用いる際には,

偽陽性と偽陰性という問題点が存在する.

3 .IGRA 偽陽性とは?

 IGRAの陽性的中率(陽性と判定された場合に,実際 に結核に感染している確率)と陰性的中率(陰性と判定 された場合に,実際に結核に感染していない確率)は,

検査前確率,つまり結核既感染率に影響を受ける.例え ばIGRAの感度を₉₀%,特異度を₉₈%と仮定すると,結 核既感染率が ₁ %(本邦での推計で₂₀歳に相当)と低い 集団の場合は,陽性的中率₃₁.₃%,陰性的中率₉₉.₉%と なる(図 ₃ ).この結果は,結核既感染率が低い比較的若 年層にIGRAを適用した場合,陰性であれば結核感染を ほぼ間違いなく否定できるが,陽性の結果が出ても高い 確率で偽陽性であることを意味する.これに関連して,

結核低蔓延国(₁₀万人対 ₄ ~ ₉ )である米国の医療従事 者を対象としたIGRA使用に関する大規模研究が報告さ れている₉).その中で,TST,QFT,T-SPOTの間には高 い確率で結果の不一致が存在し,不一致症例の多くが偽 陽性であると指摘している₉).つまり,結核罹患率が低 い地域において,LTBI診断におけるIGRAは正確性に欠 く可能性があり,感染危険のない陽性は再検すべきと結 論付けている₉).そのため,近年結核罹患率が低下して いる本邦においても,最近の感染が疑われない状況下で 定期検査としてIGRAを網羅的に実施すること,そして 陽性者を安易にLTBIと診断し治療することは控えなけ

ればならない.ただし,結核感染リスクの高い医療従事 者において,ベースラインを知るために,入職時のIGRA 実施は有用と考える.なぜならば,IGRA陽性の結果の みでは過去と最近の感染を区別できないが,例えば院内 感染時にIGRAを実施し,ベースライン陰性の対象者が 陽転化していれば,それは最近の感染である可能性が高 く,LTBI治療を積極的に考慮することができる.

4 .IGRA 偽陰性とは?

 結核既感染率が₅₀%(本邦での推計で₇₀歳に相当)と 高い集団の場合は,陽性的中率₉₇.₈%,陰性的中率₉₀.₇%

となる(図 ₃ ).この結果は,結核既感染率が高い比較的 高齢層にIGRAを適用する場合,陽性はほぼ間違いなく 過去または最近の結核感染であるが,陰性の結果が出て も少なからず偽陰性の可能性があることを意味する.

我々は実地臨床における活動性結核₅₆例に対するT-SPOT の有用性を報告した₁₀).その結果,感度は₇₁.₄%と低く,

活動性結核に対するT-SPOTは既知の報告よりも偽陰性 が多く存在する可能性を示した₁₀).この報告の中では偽陰 性に影響を及ぼした因子を指摘できなかったが₁₀),T-SPOT の優れた診断特性を証明した過去の報告と比較すると本 報告の対象者は明らかに高齢者が多く(図 ₄ )₄-₆,₁₀),そ のことが本報告で偽陰性が多く存在した一因かもしれな い.その他,IGRAはLTBI治療が必要となる免疫抑制状 態の患者ほど偽陰性となりうる.そのため,IGRAの結 果のみでLTBIと診断するのではなく,結核発病患者と の接触状況および結核既往歴,家族歴などの詳細な問診,

結核発病リスク₃),以上を総合的に判断してLTBIを診断 する必要がある.

図 3  結核既感染率(検査前確率)と IGRA の関係

20歳:検査前確率1%の場合

感染あり 感染なし 合計

IGRA陽性 0.9 1.98 2.88

IGRA陰性 0.1 97.02 97.12

合計 1 99 100

※n= 100人,IGRA:感度90%,特異度98%,と仮定した場合.

陽性適中率=0.9/2.88=31.3%

陰性的中率=97.02/97.12=99.9%

陽性適中率=45/46=97.8%

陰性的中率=49/54=90.7%

感染あり 感染なし 合計

IGRA陽性 45 1 46

IGRA陰性 5 49 54

合計 50 50 100

80歳:検査前確率50%の場合

Study 症例数 感度 年齢

Pan L, et al. 4) 774 89.9% 45 (11-91) Liao CH, et al. 5) 232 85.8% 54.4±20.7 Kang YA, et al.6) 144 92.0% 55 (16-81) Our study 10) 72 71.4% 72 (50-83)

図 4  年齢と T-SPOT の関係

(4)

1 .結核標準治療の原則とは?

 結核治療の目標は,結核菌を撲滅すること,耐性結核 の発育を阻止すること,そして治療終了後の再発を防止 することである.その目標達成のために,①治療開始時 は薬剤感受性が確認されるまで原則 ₄ 剤以上,最低 ₃ 剤 以上を併用する(LTBI治療の場合は ₁ 剤),②治療中は 患者が確実に服用することを確認する,③副作用を早期 に発見し適切な処置を行う,以上の ₃ つが原則となる₁₁). その上で,結核病学会治療委員会の『「結核医療の基準」

の改訂―₂₀₁₈年』に準拠した結核標準治療法を実践する 必要がある₁₁)

2 .使用可能な抗結核薬とは?

 本邦で現在使用可能な抗結核薬を表 ₁ に示す₁₁).First line drugs(a)の ₄ 剤は,最も強力な抗菌作用を有し,

結核標準治療の中心的役割を担う.ただし,リファブチ ン(RBT)はリファンピシン(RFP)が副作用や薬物相 互作用で使用できないときに選択され,RBTとRFPの併 用はできない.First line drugs(b)には,ストレプトマ イシン(SM)とエタンブトール(EB)の ₂ 種類があり,

First line drugs(a)との併用で効果が期待される薬剤で ある.抗菌力ではSMが勝るが₁₁),SMはEBよりも薬剤 耐性率が高く₁₁),注射剤であることから,結核標準治療 ではEBが優先されることが多い.Second line drugsの

₆ 剤は,薬剤耐性や薬剤の副作用のために標準治療が行 えない場合に重要となる.特にレボフロキサシン(LVFX)

は,多剤耐性肺結核のみに使用されるデラマニド(DLM)

やベダキリン(BDQ)とともに,本邦の多剤耐性結核治 療の中心薬に位置付けられている₂).そのため,LVFXの

てLVFXを使用する際には結核を必ず否定することが重 要である.

3 .結核標準治療とは?

 『「結核医療の基準」の改訂―₂₀₁₈』で示された標準治 療法を表 ₂ に示す₁₁).つまり,イソニアジド(INH),

RFP,ピラジナミド(PZA)に,EBまたはSMの ₄ 剤で 初期強化期 ₂ か月間,その後,RFPとINHを維持期とし て ₄ か月間継続し,全治療期間 ₆ ヵ月(₁₈₀日)とする.

ただし,以下に示す場合には維持期を ₃ か月間延長し,

全治療期間 ₉ カ月(₂₇₀日)とする.①治療開始 ₂ ヶ月を 超えて ₃ ヶ月目以降も培養陽性,②治療開始時重症の結 核である(粟粒結核,中枢神経系の結核,広範空洞型や 厚壁空洞がある場合),③再治療例,④免疫低下が疑われ る時(HIV感染,糖尿病,塵肺,関節リウマチなどの自 己免疫疾患,副腎皮質ステロイド薬やその他の免疫抑制 作用がある薬剤の使用時など).以上示した項目が複数 あっても延長期間は原則 ₃ か月でよいとしている₁₁)

4 .以前の結核標準治療との違いは?

 以前の結核標準治療法は,『「結核医療の基準」の見直

表 1  抗結核薬のグループ化と使用の原則

特性 薬剤名 略号

First line drugs (a) 最も強力な抗菌作用を示し,

菌の撲滅に必須の薬剤

リファンピシン リファブチン イソニアジド ピラジナミド

RFPRBT PZAINH First line drugs (b) First line drugs (a)との併

用で効果が期待される薬剤

ストレプトマイシン エタンブトール SM Second line drugs First line drugsに比して抗 EB

菌力は劣るが,多剤併用で 効果が期待される薬剤

レボフロキサシン カナマイシン エチオナミド エンビオマイシン パラアミノサリチル酸

サイクロセリン

LVFX KM TH EVM PAS Multi drug resistant CS

tuberculosis drugs

使用対象は多剤耐性肺結 核のみ

デラマニド

ベダキリン DLM BDQ

優先順位

順位付けなし 高

日本結核病学会治療委員会:「結核医療の基準」の改訂―₂₀₁₈年.結核,₉₃:₆₁-₆₈,₂₀₁₈.より引用改変

2ヶ月 6ヶ月(180日)

RFP

(患者の病態により+3ヶ月) INH

PZA EBSM

日本結核病学会治療委員会:「結核医療の基準」の改訂―₂₀₁₈年.

結核,₉₃:₆₁-₆₈,₂₀₁₈.より引用改変

表 2  初回標準治療例の標準的治療法

(5)

結核の診断と治療

し―₂₀₁₄年』に示されたINH,RFP,PZAに,EBまた はSMの ₄ 剤を使用した標準治療(A)法とPZAを除い た ₃ 剤の標準治療(B)法の ₂ 通りであった₁₂).その中 では,PZAの使用について慎重に検討すべき状況として,

肝障害や妊娠中などの特殊な条件の患者に加え,₈₀歳以 上の高齢者と記載されていた₁₂).また,「₈₀歳以上であっ ても臓器障害がない場合には,短期治療の観点からPZA を使用することもよい選択肢である」と追記され₁₂),₈₀ 歳以上の高齢者では基本的にPZAを使用しない(B)法 が優先されるとも読める内容であった.しかしながら,

WHOを含む国際的な結核標準治療は,年齢制限なくPZA を含めた ₄ 剤併用療法のみであり₁₃-₁₅),米国ガイドライ ンにおいても,「₇₅歳以上の場合にはPZAを含まない治 療も選択肢である」との記載はあるが,標準治療として ではなく,あくまでも専門家意見としての容認である₁₆). 高齢者においてPZAの使用が躊躇される理由は肝障害で あるが,高齢と肝障害の出現頻度の関係には,今のとこ ろ一定の見解は得られていない₁₇,₁₈).一方で,PZAを含 めた(A)法がPZAを含めない(B)法よりも治癒・治 療完了割合が高いとする報告がある₁₉).また,本邦では INHの初回耐性が少なからず存在するため₂₀), ₃ 剤併用 療法では最も重要なRFPの耐性化を招く可能性がある.

そのため.今回発表された『「結核医療の基準」の改訂―

₂₀₁₈』では,PZAを含まない(B)法は標準治療法から は削除され,PZAを用いない治療法は「₈₀歳以上では肝 障害の危険から,PZAを使用せず,INH,RFP,SMも しくはEBを含んだ ₉ ヶ月治療を勧める意見もある.」と 消極的な内容へ変更された₁₁).つまり,本邦においては,

PZAを含めた ₄ 剤併用療法(表 ₂ )が唯一の標準治療法 であり,高齢であるという理由だけでPZAを用いない消 極的な治療を実施することは避けなければならない.

終 わ り に

 本稿に記載した内容を以下にまとめる.「結核の診断」

に関しては,①結核発病診断の基本は細菌学的検査,② 薬剤感受性検査は確実に実施,③治療開始時にRFP耐性 が予想される際にはXpert®MTB/RIFを実施,④結核感 染診断の基本はIGRA,⑤IGRAは偽陽性と偽陰性を総合 的に判断して使用.「結核の治療」に関しては,①『「結 核医療の基準」の改訂―₂₀₁₈年』に準じた治療の実践,

②唯一の標準治療法はPZAを含めた ₄ 剤併用療法,③ PZAを含めない ₃ 剤併用療法を安易に選択しない.以上 が,本稿のまとめとなる.

 呼吸ケア,呼吸リハビリテーションに関わるすべての メディカルスタッフは,結核患者に身近な存在となりう るため,今後結核医療に介入・支援する機会はさらに増 えていくと予想される.そのため,結核医療に関する基 本的知識を得る必要があり,本稿がその一助になれば幸 いである.

 本稿の内容に関してご指導頂きました国立病院機構茨城東病 院院長の齋藤武文先生,国立病院機構茨城東病院呼吸器内科部 長の大石修司先生,そして第₂₇回学術集会ワークショップ ₄ で 発表の機会を頂きました同学術集会会長で東京医科大学八王子 医療センター呼吸器内科教授の一和多俊男先生に深謝致します.

 著者の COI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容に関 して特に申告すべきものはない.

Diangnosis and treatments of tuberculosis Kenji Nemoto₁,₂)

₁)Nemoto Clinic, ₂)Department of respiratory medicine, National Hospital Organization, Ibarakihigashi National Hospital

文   献

₁)結核予防会結核研究所疫学情報センター:結核年俸₂₀₁₈.

http://www.jata.or.jp/rit/ekigaku/toukei/nenpou/. Accessed:

₂₁ April ₂₀₂₀.

₂)日本結核非結核性抗酸菌症学会治療委員会:本邦での多剤 耐性結核治療に対する考え方.結核 ₉₅: ₇₉-₈₄, ₂₀₂₀.

₃)日本結核病学会予防委員会・治療委員会:潜在性結核感染 症治療指針.結核 ₈₈: ₄₉₇-₅₁₂, ₂₀₁₃.

₄) Pan L, Jia H, Liu F, et al.: Risk factors for false-negative T-SPOT. TB assay results in patients with pulmonary and extra-pulmonary TB. J Infect ₇₀: ₃₆₇-₃₈₀, ₂₀₁₅.

₅) Liao CH, Lai CC, Tan CK, et al.: False-negative results by enzyme-linked immunospot assay for interferon-gamma among patients with culture-confirmed tuberculosis. J Infect

₅₉: ₄₂₁-₄₂₃, ₂₀₀₉.

₆) Kang YA, Lee HW, Hwang SS, et al.: Usefulness of whole- blood interferon-gamma assay and interferon-gamma enzyme-linked immunospot assay in the diagnosis of active pulmonary tuberculosis. Chest ₁₃₂: ₉₅₉-₉₆₅, ₂₀₀₇.

₇) Barcellini L, Borroni E, Brown J, et al.: First independent evaluation of QuantiFERON-TB Plus performance. Eur Respir J ₄₇: ₁₅₈₇-₁₅₉₀, ₂₀₁₆.

₈) Yi L, Sasaki Y, Nagai H, et al.: Evaluation of QuantiFERON- TB Gold Plus for Detection of Mycobacterium tuberculosis infection in Japan. Nature Sci Rep. ₆: ₃₀₆₁₇, ₂₀₁₆, doi:₁₀.₁₀₃₈/ srep₃₀₆₁₇

₉) Dorman SE, Belknap R, Graviss EA, et al.: Interferon-γ release assays and tuberculin skin testing for diagnosis of latent tuberculosis infection in healthcare workers in the united states. Am J Respir Crit Care Med ₁₈₉: ₇₇-₈₇, ₂₀₁₄.

₁₀)根本健司,大石修司,田口真人,他:活動性結核に対する

(6)

ける有用性.結核 ₉₁: ₄₄₅-₄₄₉, ₂₀₁₆.

₁₁)日本結核病学会治療委員会:「結核医療の基準」の改訂―

₂₀₁₈年.結核 ₉₃: ₆₁-₆₈, ₂₀₁₈.

₁₂)日本結核病学会治療委員会:「結核医療の基準」の見直し―

₂₀₁₄年.結核 ₈₉: ₆₈₃-₆₉₀, ₂₀₁₄.

₁₃) WHO treatment guidelines for drug-resistant tuberculosis

₂₀₁₆ update: WHO/HTM/TB/₂₀₁₆. ₀₄ISBN₉₇₈₉₂₄₁₅₄₉₆₃₉, WHO, Geneva.

₁₄) Nahid P, Dorman SE, Alipanah N, et al.: Official american thoracic society/center for disease control and prevention/

infectious disease society of America clinical practice guide- lines: treatment of drug-susceptible tuberculosis. Clin Infect Dis ₆₃: e₁₄₇-e₁₉₅, ₂₀₁₆.

₁₅) NICE guidance TUBERCULOSIS ₂₀₁₆. https://www.nice.

₁₆) Nahid P, Dorman SE, Alipanah N, et al.: Official american thoracic society/center for disease control and prevention/

infectious disease society of America clinical practice guide- lines: treatment of drug-susceptible tuberculosis. Clin Infect Dis. ₆₃: e₁₄₇-e₁₉₅, ₂₀₁₆.

₁₇)和田雅子:標準治療における肝障害.結核 ₈₀: ₆₀₇-₆₁₁,

₂₀₀₅.

₁₈)宮沢直幹,堀田信之,都丸公二,他:₈₀歳以上の高齢者肺 結核におけるPZA併用治療の検討.結核 ₈₈: ₂₉₇-₃₀₀, ₂₀₁₃.

₁₉)結核療法研究協議会内科会:₈₀歳以上の結核標準治療の検 討.結核 ₉₂: ₄₈₅-₄₉₁, ₂₀₁₇.

₂₀) Tuberculosis Research Committee(RYOKEN), Tokyo, Japan: Nationwide survey of anti-tuberculosis drug resistance in Japan. Int J Tuberc Lung Dis ₁₉: ₁₅₇-₁₆₂, ₂₀₁₅.

参照

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