原 著
〔書編揖39鐸護,劉1言〕
臨床病態からみた褐色細胞腫の超音波断層像による検討
東京女子医科大学 放射線医学教室(主任:重田帝子教授) (現 山梨医科大学 放射線医学教室) ノ ガタ野 方
容 子
ヨウ コ (受付平成5年7月19日) Sonographic Evaluation of Plleochromocytoma witll Cl三nico・Pathological CorrelationYoko NOGATA
Department of Radiology(Director:Prof. Akiko SHIGETA), Tokyo Women’s Medical College (Department of Radiology, Yamanashi Medical College) The clinical features of pheochromocytoma vary between individual patients and the tumors also show differences in size and internal architecture. The usefulness of classifying pheochromocytomas by the pattern of catecholamine secretion has been reported. To improve our understand圭ng of the pathophysiology of this disease, the sonographic features of 35 pheochromocytomas in 24 patients were reviewed and correlated with the macroscopic appearance, the pattern of catecholamine secretion, and the clinical manifestations. The tumors had a longest diameter of 1。2 cm to 18 cm. The sonographic features of the tumors accurately reflected their macroscopic appearance. Hypoechoic areas corresponded to viable tumor tissue, anechoic areas to extensive internal hemorrhage, and hyperechoic areas to necrosis. Noradrenaline−secreting pheochromocytomas were generally large and had an inhomogeneous internal echo pattern, and patients with such tumors had sustained hypertension. In contrast, the predominantly adrenaline−secreting tumors were smaller, but often featured extensive degeneration and cystic change. Patients with these tumors suffered from severe attacks of paroxysmal hypertension and the resultant complications. The sonographic features of pheochromocytoma are highly variable, and this variability reflects the pattern of catecholamine secretion and the clinical course. 緒 言 褐色細胞腫はカテコールアミン(CA)産生腫瘍 であり,臨床症状や血中・尿中のCAおよびその 代謝産物の測定により診断がなされる.根本的な 治療法は腫瘍の摘出であり,種々の画像診断は腫瘍の存在部位を把握するためにおこなわれ
るD2).一般におこなわれる画像診断には超音波検 査(us),コンピューター断層撮影(CT),磁気共 鳴画像(MRI), iodine−131 metaiodobenzyl− guanidine(1131−MIBG)による核医学検査,血管 造影および副腎静脈採血法などがあり,それぞれ の特性をいかした診断がおこなわれている3)∼5). このなかでUSは最も簡便で非侵襲的であり,か つ褐色細胞腫の腫瘤は副腎に発生する他のホルモ ン産生腫瘍,アルドステロン症やクッシング症候 群の腺腫に比べて大きいことが多いので通常は十 分に腫瘤を検出することが可能であり,その部位診断として第一選択となるべき検査法であ
る1)3)4).また褐色細胞腫は様々な変性を伴いやす く内部構造も多彩であり6),これらの内部変性の 程度を把握するのにもUSは適している7)8). 褐色細胞腫は過剰に分泌したCAにより高血圧 を主体とした臨床症状をひきおこすが,個々の症 例においての臨床病態は発作性高血圧をきたすも報告されている1)2>9)10).また腫瘤の変性に伴い一
過性のCA放出がおこることが知られてお
り1)2)9),臨床症状と腫瘤の大きさや内部変性の程 度との間には何らかの関連性があると考えられ る. そこで褐色細胞腫のUS所見をretrospective に解析し,CA分泌様式を含めた臨床病態との関 連性の検討を試みた. 対象および方法 対象は東京女子医科大学放射線科でUSを施行 した褐色細胞腫24症例,35腫瘤.年齢は20∼68歳 (平均39歳),男性15例,女性9例である. 使用装置は日立EUB 410, EUB 450で3.5MHz あるいは5MHzのコンベックス型当馬子を用い て走査をおこなった. 褐色細胞腫は散発性におこるものと家族性に発 生するものとがあるが,それぞれにおける腫瘤の 存在部位,数,大きさ,形状および内部構造につ いてretrospectiveにUS像を分析した.手術の 施行された22例31腫瘤については摘出標本の割面 肉眼像との対比をおこなった.また各症例につい て血中CA値によりアドレナリン(A)優位型かノ ルアドレナリン(NA)優位型かを調べ,臨床症状 や腫瘤の性状との関連性を検討した. 結 果 1.褐色細胞腫の存在部位と腫瘤の数(表1) 24症例において35個の腫瘤が検出された.この うち散発症例は17例で,副腎原発が14例に14腫瘤 (右副腎9腫瘤,左副腎5腫瘤),副腎外発生(機能性paraganglioma)が3例に4腫瘤認められ
副腎原発の腫瘤と診断していたが手術により副腎 外であることが判明した).家族性多内分泌腺腫瘍 症Ila(MEN IIa)型症例は7例で,17腫瘤(5例 は多発,2回目単発)が検出できた(右副腎6腫 瘤,左副腎11腫瘤). 2.腫瘤の大きさ,形状(表1) 腫瘤径はUS上1.2∼18cm,平均6cmであった. 散発症例のうち副腎原発腫瘤は3.5∼18cm(平均7 cm),副腎外発生腫瘤は2.5∼7.5cm(平均5cm) であった.MEN IIa型の腫瘤は1.2∼14cm(平均 5cm)で,同一症例に多発する場合でもそれぞれの 腫瘤の大きさは様々であった. 散発症例では全例USにて腫瘤を検出すること ができた.MEN IIa型症例では手術で確認された 腫瘤のうちUSにて検出できなかったものが6個 口つたが,その大きさはいずれも1cm以下であっ 図1 左副腎褐色細胞腫(MEN IIa型) 肝腎(K)上極内側に1.2cmの低エコー腫瘤(矢印)が 認められる.本研究においてUSで検出できた最小腫 瘤である. 表1 褐色細胞腫の存在部位,腫瘤数,および腫瘤径 症例数 腫瘤数 腫瘤径(平均)cm 部位と腫瘤数 散発性 副腎 @ 副腎外(機能性paraganglioma) ニ族性此内分泌腺腫瘍症Ila型(MEN IIa) 14 R7 14 S17 3.5−18(7) Q.5−7.5(5) P.2−14(5) 右副腎9,左副腎5 カ傍副腎部1 カ腎門2 yuckerkandle’s body 1 E副腎6,左副腎11 計 24 35 1.2−18(6)図2 充実性パターンを呈する腫瘤,Zuckerkandle’s bodyの機能性paraganglioma(5cm 持続 性高血圧+発作 NA型) a。超音波像;腫瘤(矢印)の内部エコーはほぼ均一である.A:大動脈, V:椎体. b,割面肉眼像;変性のほとんどみられない充実性腫瘤であった. b 図3 嚢胞性パターンを呈する腫瘤,右副腎褐色細胞腫(4.5cm a.超音波像;腫瘤(矢印)内部は無エコーで, b.割面肉眼像;厚い被膜を有した嚢胞性腫瘤で, る)であった,一部に充実性部分が認められた, b ‘轡蜘轡1ご1端ヅi携郡嫡b1聖嚇“1=iい凹蜘班1∵∵ ウ’、 ヴ 酋 噺 ’−・ハ 激しい発作性高血圧A十NA型) 底面にわずかに高エコー部(矢頭)を認める. 内容は暗褐色の液体(大量の出血と考えられ 縛 蜘 確、 畷郷至 .侮、 写 齢 ;箭鳴 “鞭喚私、 幕薯毒= 孤塁や レ ・・, 蜘騰 図4 混合性パターンを呈する腫瘤,右副腎褐色細胞腫(11cm 持続性高血圧+発作 NA型) a.超音波像;腫瘤(矢印)内に隔壁を伴う嚢胞性部分や高,低エコー領域が混在している.肝(L) に近い部は肝と同程度の比較的低エコーを呈している. b.割面肉眼像;壊死,出血,液状変性と充実性部分とが混在して認められた.
が29腫瘤,辺縁分葉状を呈したものが6腫瘤であ り,いずれも境界は明瞭であった. 3.US像における腫瘤の内部構造 内部エコーは個々の腫瘤により非常に多彩で 嚢胞状の無エコー域を有する嚢胞性パターン(図 3a)が6腫瘤.高エコーおよび低エコーの領域が 混在する混合性パターン(図4a)が18腫瘤であっ た. 表2 褐色細胞腫の腫瘤径,USパターンと臨床症状 腫瘤径 血中CA値 発見の動機 症例 年齢/性. 存在部位 (cm) USパターン
A
NA
高血圧の種類 a ・ 副腎散発症例 1.46男
右副腎 4 充実性 → ↑ 高血圧なし 人間ドック 2. 36 男 右 4.5 嚢胞性 ↑ ↑ 発作 高血圧発作,心筋梗塞 3. 68 男 右 4.5 嚢胞性 ↑ ↑ 持続+発作 頭痛 冷汗,心筋梗塞 4.43男
右 3.5 混合性 ↑ ↑ 発作 頭痛,悪心,動悸 5. 49 男 左 4.5 混合性 ↑ ↑ 持続+発作 高血圧,糖尿病 6. 53 男 右 5 混合性 ↑ ↑ 発作 意識消失発作 7。 36 女 左 5 混合性 ↑ ↑ 持続+発作 頭痛,口区気,シ・ッグ症状 8. 33 男 右 6 混合性 ↑ ↑ 発作 頭痛 冷汗 9. 39 女 左 8 混合性 ↑ ↑ 持続+発作 頭痛,動悸,糖尿病 10. 48 男 右 8.5 混合性 ↑ ↑ 持続+発作 高血圧 11. 22 男 右 10 混合性 → ↑ 持続 脳出血 12. 56 男 右 11 混合性 → ↑ 持続+発作 人間ドック 13. 38 女 右 11 混合性 → ↑ 持続 高血圧 14. 65 男 左 18 混合性 → ↑ 持続+発作 上部消化管造影 b.機能性paraganglioma 15. 39 男 左腎門 2.5 充実性 → ↑ 持続+発作 高血圧 Z−body 5 充実性 16. 22 男 左腎門 4 充実性 → ↑ 持続+発作 高血圧 17. 35 男 左副腎 ゚傍 7.5 充実性 → ↑ 高血圧なし 上部消化管造影 c.家族性多内分泌腺腫瘍症 (MEN) IIa型 18. 42 男 左副腎 1.5 充実性 ↑ ↑ 持続+発作 甲状腺髄様癌 副腎褐色細胞腫 19。 20 女 左 4 嚢胞性 ↑ ↑ 発作 MEN IIaの家族歴 20. 21 女 右 4 嚢胞性 無症状 MEN IIaの家族歴 左 2 充実性 21. 51 女 右 5. 混合性 ↑ ↑ 発作 甲状腺髄様癌 左 1.2 充実性 MEN IIaの家族歴 22. 59 女 右 3 混合性 ↑ ↑ 発作 甲状腺髄様癌 右 1.5 充実性 左 7 混合性 左 5 嚢胞性 左 3 充実性 23. 22 女 右 8 混合性 ↑ ↑ 発作 MEN IIaの家族歴 左 2 混合性 左 3 嚢胞性 24. 56 男 右 4 充実性 ↑ ↑ 発作 甲状腺髄様癌 右 3 混合性 左 14 混合性 US:超音波検査, CA:カテコールアミン, A:アドレナ.リン, NA:ノ.ルァドレナリン, Z−body:Zuckerkandle’s body.(症例20は血中CAのデーターなし). ↑:高値,→:正常値,4.US像と摘出標本割面肉眼像との対比 腫瘤に隣接する肝・脾臓と同等の均一なエコー (比較的低エコー)を呈する領域は,変性の少ない 充実性の腫瘍と考えられる部分に一致した(図4 ∼7).高エコー域は脆弱な壊死部分および少量の 新鮮な出血部に相当した(図4,6,7).無エコー 域は大量の出血や液状化した部分,および古い凝 血塊に対応した(図3,4,6,7).USにおけ る腫瘤全体像も割面肉眼所見とよく一致してい た, 5.CA分泌様式による分類
血中A,NAとも高値を呈した症例(A+NA
型)がユ5例,NAのみ高値を呈しAは正常範囲の 症例(NA型)が8例あった.いずれの症例も経過 中に血中CA値は変動していたが概ねこのように 分類することができた. }讐’}織翫・㌃ “漕 唱 象; b 諜嚇描臨触’.獅い、へ 曳 ’i〔船卸晒’』騨§口㌧ド轡}牌}噺・㌧・いF ・ 華 1 譜 3 . 2“鱒 三巴
〆弓』’二=1’Twl“‘腿}“= ちラ サ 3(き 図5 右副腎褐色細胞腫(4cm 無症状 NA型) a.超音波像;隣接する肝(L)よりやや低エコーだが腎皮質(K)とほぼ同等のエコーを呈する腫 瘤(充実性パターン).嚢胞性腫瘤とは異なり後方エコーの増強はみられない. b.割面肉眼像;ほぼ充実性の腫瘤でわずかに出血を伴っていた. 、ら∫ 二・霊 跡聾唖浬瞭輸 蜘 図6 左副腎褐色細胞腫(18cm 持続性高血圧+発作 NA型) a.超音波像;高エコーを呈する腫瘤(矢印)で内部に低あるいは無エコー部が散在している.表面 近くは比較的低エコーである(混合性パターン). b,割面肉眼像;凝血塊や壊死を伴う腫瘤で充実性部分も認められた.腫瘤上部の充実性部分はUS での低エコー域に,凝血塊は無エコー域に,その他の壊死部分は高エコー域に相当する.が岬 b ’ “κ
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≧7ご門一
図7 左副腎の多発性腫瘤(MEN IIa型)(発作性高血圧 甲状腺疾患の家族歴あり A+NA型) a.超音波像;7,5,3cmの3個の腫瘤が接して認められる.最も大きいもの(A)は高エコーで 内部に無エコー部が散在している(混合性パターン).次に大きいもの(B)は辺縁に厚い高エコー 域があり内部に嚢胞性部分を伴っている(嚢胞性パターン).最も小さいもの(C)は比較的均一 な低エコー(やや高エコーの部もある)を呈する(充実性パターン).b.c.割面肉眼像;最も大 きな腫瘤(A)は内部はほとんど脆弱な壊死性変化をきたしていた.次に大きいもの(B)は嚢胞 変性を伴っており内容は血性であった.最も小さいもの(C)は割面に出血を伴うがほぼ充実性の ものであった. 6.腫瘤径,内部エコー像,CA分泌様式と臨床 症状との対比(表2) 1)副腎発生散発症例充実性パターンを呈したのは1例で4cmの腫
瘤であり,無症状で健康診断にて偶然発見された NA型であった(図5). 嚢胞性パターンを呈したのは2例で,いずれも 5cm未満の腫瘤であった(図3).2例ともA+ NA型で,頭痛・動悸・冷汗などの激しい発作を有 し心筋梗塞も合併していた.しかしこれらの症状 から回復したあとは血中CA値・症状ともに正常 化した. 混合性パターンは11例に認められた.10cm未 満の腫瘤を有した7例はすべてA+NA型であっ た.7例とも発作性高血圧あるいは発作を伴う持 続性高血圧があり,ホルモン学的検査により褐色 細胞腫と診断され,腫瘍の局在診断としてUSが 施行されていた.腫瘤の辺縁は比較的低エコーで 中心部は高エコーを呈するものが多かった(図 8).このうちの2例はショック症状や意識消失発 作を伴う激症発作で発症しており,腫瘤内部には 比較的大きな無エコー域も認められた(図9).一方,10cm以上の腫瘤を有した4例はすべてNA
型であった.このうち発作を伴わない持続性高血 圧を呈するものが2例で,USでは低エコーの腫 瘤内部に不規則に高エコー域が認められた(図 10).持続性高血圧に発作を伴っていた2例では, 腫瘤内部に部分的に低エコー域が認められ高エ コー謔笆ウエコー域も不規則に混在していた(図 4,6).このうち1例は手術後に再発をきたし悪 性褐色細胞腫と診断されたが,その腫瘤は本研究 における最:大腫瘤(18cm)であった(図6). 血中CAの絶対値と腫瘤径との間には一定の傾 向は認められなかった. 2)機能性paraganglioma 4腫瘤の大きさは7.5cm以下であり,すべて充 実性パターンを呈した(図2,11).いずれもNA 型に分類され,2例は持続性高血圧に発作を伴い 1例は無症状であった.左腎門部に存在した2.5 cmの腫瘤は手術およびその後の病理学的検査に よりリンパ節転移を伴った悪性腫瘤と診断された が,腫瘤の辺縁は明瞭でありUSを含めて画像診図8 右副腎褐色細胞腫(6cm 発作性高血圧 A+ NA型) 腫瘤(矢印)は内部は高エコーで辺縁は低エコーで ある(混合性パターン).L;肝 図9 左副腎褐色細胞腫(6cm 激症発作で発症した 褐色細胞腫 A+NA型) 腫瘤(矢印)は混合性パターンであるが左側に比較 的大きな無エコー域を有する. 断上は転移巣を確認できず,悪性という術前診断 はできなかった. 3)MEN IIa型 充実性パターンを呈したものが6腫瘤で大きさ はいずれも4cm以下であった.嚢胞性パターンは 4腫瘤でいずれも5cm以下であった.7腫瘤は混 合性パターンを呈し,高エコー,低エコーおよび 無エコー域が不規則に混在しており,腫瘤径は2 cmから14cmまで様々であった. MEN IIaの家 族歴を有するものが4例,甲状腺髄様癌の既往歴 図10 右副腎褐色細胞腫(11cm 持続性高血圧 NA 型) 腫瘤(矢印)内に不規則な高エコー域と低エコー域 が認められる(混合性パターン). 図11左腎門部の機能性paraganglioma(4cm 持続 性高血圧 NA型) 腫瘤(矢印)はほぼ均一な低エコーを呈する(充実 性パターン).A:大動脈, L:椎体. を:有するものが4例あった.1例は対側副腎の褐 色細胞腫の手術既往があった.6例は発作性高血 圧を有し,1例は無症状であった. 考 察 USは正常副腎の描出が困難な場合が多く,副 腎病変に対しては一般的な検査法ではないと考え られている.しかしUSは健康診断や日常診療に
いは症状の乏しい褐色細胞腫の場合があるDID.ま た症状を呈する褐色細胞腫では腫瘤は通常2cm 以上と言われており1),内部変性を伴っているこ とも多いため,USは腫瘤の検出のみならず隣接 臓器との関連や内部構造を把握するのに非常に有 用である7)8). USはX線被曝や造影剤を用いることなしに腫 瘍の内部構造をよく描出することができる.ほぼ 均一の低エコー領域は充実性の腫瘍組織に相当し たが,これは均一な組織構築をもつ腫瘍組織から は超音波の反射源が少ないためと考えられる.高 エコー謔ヘ少量の新鮮な出血や壊死組織に対応し たが,これらは赤血球のフィブリン網への凝集や 複雑な組織構築によって超音波の反射源が多くな るためと考えられる.無エコー域は液状変性部分 や大量の出血,古い凝血塊に相当したが,液状化 や赤血球が溶血することにより超音波の反射源が
なくなり透過性が充進ずるためと考えられ
る8)12). 褐色細胞腫はsympatho−adrenal systemのchroma缶ne細胞由来のCA産生腫瘍でNA, A
あるいはその両方を分泌する.正常の副腎髄質が産生する総CAの80∼85%はAであるが褐色細
胞腫のほとんどはAよりもNAを多く分泌す
る6).褐色細胞腫の患者の臨床症状の多くは腫瘍 の産生するCAの過剰分泌によるもので,高血圧 を主体とするが個々の症例においての臨床像は多 彩である.この多彩な臨床病態を把握するために CA分泌様式による分類の有用性が報告されてい る1)2)6)9)10).褐色細胞腫はCA分泌様式により大きくA優位型とNA優位型とに分類されるが, A
はNAより変換されるためA優位型ではAの過
剰分泌とともにNAも過剰となるが, NA優位型はほとんどNAのみを分泌し,厳密にはA十NA
型とNA型に分類されるべきであると報告され
ているD2)9). 本研究における症例では,腫瘍は一般に大きな ものでは変性を伴って不均一な内部エコーを呈す aganglioma)では腫瘤が大きくても充実性である など,変性の程度は腫瘤の大きさだけでなく臨床 症状やCA分泌様式および存在部位との関連性が強いと考えられた.そこでUS像とCA分泌様式
を含めた臨床症状との関連性を検討すると以下の ようである. NA型では腫瘤は一般に大きい.つまり腫瘤が 小さく内部が均一なうちは臨床症状に乏しく発見 されにくい.したがって健康診断などのUSで均 一なエコー像を呈する小さな腫瘤が偶然発見され た場合には,無症候性のNA型褐色細胞腫の可能 性がある.しかし腫瘤が大きくなるにつれ内部に 血行障害をきたして変性をおこし13),持続性高血 圧を主体とした症状を呈するようになる.この場 合はUSでは大きく不均一な内部構造を呈する腫 瘤像として描出されると考えられる. 一方A+NA型は腫瘤が小さいうちから内部変 性を伴い,発作性高血圧を主体とした症状を皇す る場合が多い.また高血圧クリーゼや意識障害を 伴う発作性低血圧,心筋梗塞などの重篤な症状を 呈するものもA+NA型にみられ,大量の腫瘍内 出血な:どにより広範な嚢胞変性を伴う傾向にあ る,このような症例では,一過性に多量に放出さ れたCAが全身の血管のみならず腫瘍内血管にも 作用するためではないかと考えられる14).またほ とんど嚢胞化した腫瘤においては腫瘤内の腫瘍成 分が激減するために,最初の重篤な発作から回復 した後は血中CA値,症状ともに正常化する傾向 がある.したがってUSで残存する充実性成分を 同定することは,ある程度その後の患者管理に役 立っと考えられる. 機能性paragangliomaは異所性(副腎外)褐色 細胞腫であるが,NAからAへの転換酵素であるphenylethanolamine・N−methyltransferase
(PNMT)がコルチゾール濃度の低い副腎外では活性化されないためNAのみを分泌すると報告
されている6).本研究における機能性paragang− liomaもすべてNA型に分類された.腫瘍はすべて変性の少ない均一な腫瘤であり,変性が少ない にもかかわらず症状を呈するものが多く,機能性 paragangliomaの特徴的所見と思われた.しかし 今までには内部不均一な腫瘤像を呈した機能性 paraganglioma症例の興告も散見され15)16),本研 究における症例で変性が少なかったのは,NA型 としては比較的小さい腫瘤であったためと考えら れる.つまり機i能性paragangliomaも副腎原発の NA型腫瘤と同様に腫瘤が小さいうちは変性が少 ないが,増大するにつれ内部変性を伴うようにな るのではないかと考えられる.これについては今 後さらに症例を重ねて検討してゆく必要がある. MEN IIa型に伴う褐色細胞腫はA優位型と報 告されているが6)17),本研究で検討した症例もすべ てA+NA型であり,甲状腺髄様癌の既往歴や家 族歴を有する場合が多く,且つはとんどの症例で 発作性高血圧が認められた.腫瘤は両側副腎に多 発性に存在し,それぞれの腫瘤の大きさや内部エ コー怩ヘ同一症例においても非常に多彩であり, MEN IIa型にみられる褐色細胞腫の特徴と考え られた.またMEN IIa型症例では多発する腫瘤 のなかには1cm以下の小さなものも存在する. USによる副腎病変の描出には周囲の脂肪層での 超音波の反射や減衰,腸管ガスや肺の空気などに よる影響を大きくうけ,一般に2crn以下の腫瘤の 描出は困難とされているが4),機種の改良や適切 な断層面を選ぶことにより正常副腎の描出や1cm 以下の腫瘤を検出できたという報告もある18)19). 本研究では注意深い観察により1.2cm以上の腫 瘤の検出は可能であったが,1cm以下の腫瘤は検 出できておらず,通常のUS検査における副腎病 変の検出の限界は1.2∼1.5cmと考えられた. 悪性褐色細胞腫は一般に腫瘤が大きいと報告さ れており,また機能性paragangliomaも悪性が多 いと言われている6)12)16)20)21).本研究では2例の悪 性腫瘤があったが,1例は最も大きな副腎原発腫
瘤であり他の1例は機能性paragangliomaで
あった.これら2例の悪性症例はいずれもNA型 に分類された.しかし以前から報告されているようにUSを含め画像診断における良悪性の区別
は,転移巣が認められない場合は通常困難であ る19). 結 語 副腎の腫瘤性病変のなかで褐色細胞腫は比較的 腫瘤が大きいため超音波検査は画像診断の第一選 択となりうる.また腫瘤の検出に加えて内部構造 の把握にも適している.主に持続性高血圧を伴う ノルアドレナリン型症例では腫瘤は大きくなるに つれ変性をきたしやすく,一方面作性高血圧を伴 うアドレナリン型症例では腫瘤は小さくとも強い 変性がみられる傾向にある.つまり褐色細胞腫は 変性をきたしやすいことが知られているがその内 部変性の程度は腫瘤径のみならず,臨床症状やカ テコールアミン分泌様式との関連性が強い.超音 波像に描出される腫瘤像は多彩であるが,これら は腫瘍の肉眼所見とよく対応し,その多様性は臨 床経過をある程度反映したものであり,カテコー ルアミン分泌様式とあわせることにより,臨床病 態の把握に有用であると考えられた. 稿を終えるにあたり,ご指導,ご校閲を賜わりまし た重田階子教授に厚く感謝いたします.また摘出標本 の割面肉眼写真を提供していただいた東京女子医科 大学内分泌外科小原孝男教授に深謝いたします.直接 ご助言,ご指導いただいた河野 敦助教授,原澤有美 先生をはじめ,東京女子医科大学放射線引佐一部の皆 様にこころから御礼申し上げます. なお本研究の要旨の一部は第49回日本医学放射線 学会総会,第76回北米放射線学会に発表した. 文 献 1)藤本吉秀編:内分泌疾患.pp280−320, pp377 −388,中外医学社,東京(1989) 2)伊藤悠基夫,藤本吉秀:褐色細胞腫;臨床病型に よる診断と治療.外科治療 54:183−192,1986 3)引田宣江,森 正樹,伊藤祥子ほか:褐色細胞腫 の画像診断.臨放 31:281−286,1986 4)竹内和男,煎本正博:超音波断層法による副腎腫 瘍の局在診断.臨放 27:817−823,1982 5)Velcbik MG, Alavi A, Kressel HY et a1: Localization of pheochromocytoma;MIBG, CT, MRI correlation. J Nucl Med 30:328−336, 1989 6)Page DL, Delellis RA, Hough AJ:Tumors of the adrenal gland.1ηAtlas of Tumor Pathology, Ser 2, Fascicle 23. pp183−218, Armed Forces Institute of Pathology, Washin. P397一8)Yamakita N, Yasuda K, Gosbima E et a豆: Comparative assessment of ultrasonography and computed tomography in adrenal dis・ orders. Ultrasound Med Biol 12:23−29,1986 9)伊東千秋:褐色細胞腫の臨床病態とカテコールア ミソ分泌動態の相関7アドレナリン型とノ.ルアド レナリン型に分類することの臨床的意義一..東女 医大誌 59:397−408,1989 10)Crout JR, Sjoedsma A:Turnover and metab− olism of.catecholamine in patients with pheo・ chromocytoma。 J Clin Invest 43:94−102,1964 11)河野通一,児玉孝也,伊藤悠基夫ほか:副腎偶発 腫瘤(incidentaloma)一自験手術例の報告と一般 剖験例における副腎腫瘍の分析.日外会誌 90: 2031−2036, 1989 12)Wu CC:Sonography spectrum of neonatal adrenal hemoτrhage:Report of a case simulat− ing solid tumor. J CIin Uitrasound 17:45−49, 1989 13)Melicow MM:One hundred cases of pheo− chromQcytoma(107 tumors)at the Columbia Presbyterian Medical Center,1926−1976;a clinicopatho至ogical analy.sis. Cancer 40: 1987−2004, 1977 14)Lekman DJ, Rosai J:Massive hemorrhage eral ectoplc pheochro皿ocytomas;computed tomographic and sonographic correlation. Ulol Radiol 9:228−230,1988 16)Haayes WS, Davidson AJ, Grimley PM et al: Extraadrenal retroperltoneal paragangliOma; clinica1, pathologic and CT findings. AJR 155: 1247−1250, 1990 17)Delellis RA, Wolfe.耳」, Gagel RF et al: Adrenal medμ11ary hyperplasia. Am J Pathol 83:177−196, 1976 18)Krebs CA, Eisenberg RL, Ratdiff S et al: Cava−suprarenal line;new position for sono− graphic imaging of left adrenal gland. J CIin Ultrasound 14:535−539,1986 19)Gunther RW, Kelbel C, Lenner V:Rea1・time ultrasound of normal adrenal gland and small tumors. J C童in Ultrasound 12:211一.217,1984 20)Medeiros LJ, Wolf BC, Balogh K et a1: Adrenal pheochromocytoma;a clinicopath− ologic review of 60 cases. Hum Pathol 16: 580−589, 1985 21)Remine WH,. Chong GC, Van heerden JA et al: Current management of pheo− chromocytoma. ANN Surg 179.:740448,1974