学 位 論 文 審 査 結 果 の 報 告 書
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(2) 論 文. 内 容. の 要. 旨. 病院薬剤師は、調剤や病棟活動以外に、緩和ケアチーム、栄養サポートチーム、感染制 御チームなどのチーム医療への参画、治験、薬学部学生の実務実習指導など多様な業務に 関わっており、各分野に対応した薬剤師としての高度な知識・能力を発揮することで活動 範囲を広げている。その背景には、病院薬剤師が、自らの日常業務の中から生み出される エビデンスを積み重ねて臨床医療の発展に貢献してきたこれまでの努力がある。例えば、 最近よく話題となっているポリファーマシー対策は、日本において薬剤師が主導して行 った臨床研究により、医薬品の多剤併用と有害事象との関連が証明された結果、薬剤師の 診療報酬として認められた経緯がよく知られている。また、緩和医療においては薬物療法 を中心とした患者ケアが行われるため、緩和ケアチームにおける薬剤師の役割は極めて 大きい。一方、多岐にわたる薬剤師業務に対応できる有能な薬剤師を育成するために不可 欠な薬学部学生の実務実習を充実させるためには、現行の実習プログラムの教育効果を 解析してエビデンスを蓄積し、問題点を明確にして解決策を見出していく必要がある。 そこで本研究では、病院薬剤師の主要業務に含まれる緩和医療と実務実習に焦点を 当てた解析を行った。第 1 章では、近畿大学病院で死亡した患者のカルテを後ろ向きに 調査し、末期がん患者の 2 週間以内の余命予測に有用な血液検査値あるいは予後予測指 標を探索した。第 2 章では、薬学部学生の医薬品の理解度に実務実習がどのような影響 を及ぼすかを明らかにするため、近畿大学病院で実務実習を行った学生を対象として小 テストとアンケート調査を実施し、現状を分析し考察した。 第 1 章では、終末期医療における余命予測因子に関する解析を行った。末期がん患 者の終末期において最期の 2 週間は本人や家族にとって極めて重要な時間であり、大量 の輸液治療を控え、安からな時間を確保することが推奨されている。そこで、末期がん患 者の通常の血液検査値から余命 2 週間を予測する方策を探索した。その結果、血液検査 値から算出された CRP/Alb、PNI、FIB-4、ALBI の 4 つの予後マーカーが余命 2 週間の 予測に有用であり、それらを組み合わせることでより信頼度が高くなることを示唆する 統計学的解析結果が得られた。これらの知見は、末期がん患者のケアを行う薬剤師が、患 者やその家族の QOL を考慮して輸液治療の中止などを含めた処方変更を提案する上で 極めて有用であり、患者の側に立った緩和医療の実現に寄与するものと考えられる。 第 2 章では、薬学部学生の実務実習の前後に実施した小テストおよびアンケート調査 の結果を解析した。薬学部生において、医薬品の商品名での薬理作用の理解度は、実務実 習の経過に従って段階的に向上した。一方、予想に反して、一般名での薬理作用の理解度 も低下せずに維持されていた。また、実務実習の実施に伴う商品名での医薬品理解度の向 上は、実習前の一般名での医薬品理解度や大学入試受験時の選択科目と関連することが 判明した。以上より、実務実習前に一般名での医薬品理解度の低い学生に対する補講を実 施することや、実務実習期間中に医薬品の商品名、一般名、薬理作用を結びつけるような 確認試験を実施することなどにより、調剤や疑義照会などの薬剤師業務についての学修 を促進し、実習後の学力向上に繋げていくことができるのではないかと考えられた。 以上、本研究により、緩和医療に携わる薬剤師が末期がん患者の終末期医療において、 患者の QOL 向上に寄与する処方変更の提案などを行う場合に有用な余命予測ツールを 見出し、さらに、薬学部学生の医薬品理解度に及ぼす実務実習の影響と各種因子との関係 を明らかにすることができた。このように病院薬剤師が、業務内容の諸問題を科学的に検 証・抽出し、エビデンスに基づいて解決策を見出していく過程は極めて重要であり、今後 の薬剤師業務の発展にも寄与するものと考えられる。.
(3) 論 文. 審 査. 結 果. の. 要 旨. 本学位論文は、病院薬剤師の主要業務に含まれる緩和医療と実務実習に焦点を当てた 後ろ向きおよび前向き臨床研究の成果をまとめたものである。研究前半では、近畿大学病 院で死亡した患者のカルテを後ろ向きに調査することで、末期がん患者の 2 週間以内の 余命予測に有用な血液検査値あるいは予後予測指標を探索した結果を、また、研究後半で は、薬学部学生の医薬品の理解度に実務実習がどのような影響を及ぼすかを、小テストと アンケート調査を実施することで前向きに検討した結果が述べられている。 第 1 章では、終末期医療における余命予測因子に関する解析を行っている。末期がん 患者の終末期において最期の 2 週間は本人や家族にとって極めて重要な時間であり、大 量の輸液治療を控え、安からな時間を確保することが推奨されている。そこで、末期がん 患者の通常の血液検査値から余命 2 週間を予測する方策を探索し、血液検査値から算出 された CRP/Alb、PNI、FIB-4、ALBI の 4 つの予後マーカーが余命 2 週間の予測に有用 であり、それらを組み合わせることでより信頼度が高くなることを示している。これらの 知見は、末期がん患者のケアを行う薬剤師が、患者やその家族の QOL を考慮して輸液治 療の中止などを含めた処方変更を提案する上で極めて有用である。 第 2 章では、薬学部学生の実務実習の前後に小テストおよびアンケート調査を実施し、 結果を統計学的に解析した結果が述べられている。当然ながら、医薬品の商品名での薬理 作用の理解度は、実務実習の経過に従って段階的に向上した。一方、一般名での薬理作用 の理解度は、実務実習によって低下はしなかったが向上もせず、変化は認められなかっ た。このことより、実務実習前に一般名での医薬品理解度の低い学生に対する補講を実施 することや、実務実習期間中に医薬品の商品名、一般名と薬理作用を結びつけるような確 認試験を実施することで、一般名での薬理作用の理解度を向上させ、実習後の学力向上に 繋げていく必要があることが指摘されている。 本学位申請者は、上記研究によって、緩和医療に携わる薬剤師が末期がん患者の QOL 向上に寄与する処方変更の提案などを行う場合に有用な余命予測ツールを見出すことに 成功し、さらに、薬学部学生の実務実習期間中の学力低下に関する問題を検証し改善策を 提起している。 以上、本論文は、実臨床と薬学教育の発展に寄与する内容を含んでおり、博士の学位 を授与する価値のあるものと評価する。.
(4) (課程・論文). 博士学位論文最終試験結果の報告書 令和4年 2月 7日. 審. 査. 委. 員. 学位申請者氏名 論. 文. 題. 目. 主 査. 岩 城 正 宏. 副主査. 川 畑 篤 史. 副主査. 細 見 光 一. 家 田 正 子 がん終末期患者の余命予測マーカーの探索と薬 学部生における一般名と商品名による医薬品理 解度に及ぼす実務実習の影響に関する研究. 公聴会の後に実施した最終試験において、研究内 容を明確に説明し、主査・副主査からの質問に対 して適切な応答を行ったと評価し、博士の学位を 授与するに値するものであると判断した。.
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