氏
生年月日 名
学位論文審査結果の報告書
賢二
示イ丁
本籍(国籍)
学位の種類
学どイ立言己番、号'
学位授与の条件
(博士の学位)
(1Ξ^・平成 62年8月
兪文題目
博 士(理
理第 83
学位規程第5条該当 大阪
29日
繰り込み可育昌性とユニタリー性について
審査委
高階微分を含む重力理論の
(主査) (副主査) (副主査) (副査)
太田信義 中原幹夫 石橋明浩
J .ー.'コー、
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三
学号
現代の物理学の大きな柱として、量子論と相対論がある。このうち、電磁気学な ど特殊相対論は、場の量子論として物理学、とくに素粒子理論の分野で大きな役割 を果たしてきた。これは、場の量子論において、量子論的な計算をすると発散(無 限大)が現れるが、繰り込みという手法にょり、無限大を取り除くことができ、意 眛のある予言をすることができることによる。一方で、重力を記述する一般相文寸論 は量子論的な取り扱いをすると繰り込み可能ではないということが知られており、
これを解決するこどは非常に重要な問題であると考えられている。そのため多くの 物理学者がこの問題に関して様々な研究を行ってきた。
様々な研究があるが、st.11.は重力理論に高階微分(今の場合だと4階微分)を含 めることにより、時空の次元が4次元であれぱ繰り込み可能になると主張した。本 論文では、このアプローチに関して、一般の次元における高階微分を含む重力理論 の繰り込み可ヨ謝生とユニタリー性について考察し、量子重力理論構築の可能性を追 求した。以下本論文の研究の目的と結果について述ベる。
一見、高階微分を含めると、相互作用項に微分を含む項が生じ、発散がひどくなる ように思える。しかし高階微分を重力理論に含めることにより、重力のプロパゲー
夕が運動量k"が十分大きい領域でVがのように振る舞い、逆に理論の発散が少な
くて済む事も分かっている。第2章ではまず、このような理論が本当に繰り込み可 能なのかどうかを、4次元だけでは無く一般の時空次元の場合に調ベた。その結果、
3次元および4次元の高階微分を含む重力理論は繰り込み可能であることと、5次元 以上では繰り込み可能では無いことを示した。そしてπループでの発散する有効作
用「舮)にっいて以下の結果を得た。
文内容
の要
^①
ここでα小 b怜はπループでの繰り込みの係数である。3次元での場合は、発散項を 見てわかるように曲率の2乗のような高階微分を含む項が量子補正を受けない事が 分かった。しかしSte11eは、高階微分を含めた4次元の理論は繰り込み可能であるが、一般 にユニタリー性を破ってしまうことも指摘している。このためこの理論は量子重力 理論としては不完全なものと見なされてきた。どころが最近、 B艇部hoea達が次の ような高階微分を含む3次元重力理論の特別な場合にはユニタリー性が保たれる事 を発見した。
「翻1= 1d、V二互⑩,十b,RI
ここで届は3次元の重力定数で、机は質量である。⑫)の作用を見てわかるように、
ユニタリーな理論であるが、高階微分を含んでいるので繰り込み出来る可盲劉生があ る。本当であれぱ、これは初めての完全な量子重力理論を与える。
SNUG=
τ1'、V.i[・.ーフ(彫・.,.")1 ②
診
第3章では、3次元で高階微分を含む重力理論において、繰り込み可能とユニタ リー性の保存の両方を満たす理論の構築が出来るかを検討した。その結果、一般的 な理論は繰り込み可能であるが、ユニタリー性を保つモデルは繰り込みに関して問 題があることが分かった。すなわちユニタリー性を保つモデルの場合、重力のプロ
パゲータは運動量の十分大きい領域ではVがのように振る舞うのではなく、 VPの ように振る舞う事が分かった。プロパゲータがVPのように振る舞うと、発散が相
互作用頂点の数が増えれぱ増えるほど大きくなり、そのような発散を打ち消すため の相殺項は、4階微分以上のさらに高次の微分を含んだ項が無限に必要であるとい う結果を得た。
第4章では、繰り込み可能とユニタリー性の問題を解決するために、リーマン理 論で重力理論を記述するという試みについて考察した。重力理論では時空を口ーレ
ンツ多様体であると考える。ローレンツ多様体では田寺間"方向の符号を負に取って いるため、内積が正になるどは限らない。その結果、高階微分を含む重力理論では 田寺間"の高階微分があることで負のノルムが現れ、ユニタリー性を破ってしまう問 題がある。時空をりーマン多様体であるとすると、時空の計量の符号はすべて正に
なるため、内積が必ず正になる。つまり負のノルムが現れず、ユニタリー性の問題
を回避できる。また向山とUZ釦はりーマン理論で'時間"がなし゛占題はdook場φ
を導入する事で、リーマン多様体Mのある領域M。で田寺間"が現れる事を示した。さらに向山は以下のようなCI0徽場と結合している高階微分を含む重力理論が私達 が住む世界M。に対応する低エネルギーで、ローレンツ計量で記述される重力理論 と一致する事を示した。
S=1d、V三互[1(R十αず十β嘩"十ツR1川)十ZO(マ四ソ十風R(マ四ソ
十4R少ワψワ沖十ZKgWマ四マ沖ソ十Z4口φソ十ZKワ"ワル門(3)
上記の作用は、先に調ベた重力理論と較ベ高階微分を含むClock場との結合が入って おり、理論は大変複雑になるので繰り込み可能であるかどうかは自明で無い。しか しこのアプローチが成功するためには、まずこの理論が繰り込み可能であることを 確かめることが大前提として必要である。この第4章では、このような問題背景を 説明しつつ、上記の作用をD次元に拡張した上で、繰り込み可能であるかどうかを 考察した。その結果、4次元以下では繰り込み可能である事が分かった。特に3次元 の場合は、以下のように高階微分を含む項は量子補正を受けない事を示した。
ここでaか b,とC,はπループでの繰り込みの係数である。
「器= 1d、yΣi[.,十b,R十0,(ワψ)勺
④極微の世界の素粒子の相互作用に関し、量子力学と相対論に基づいた理論が構築され、
成功をおさめている。素粒子の相互作用を記述するこの理論は標準模型と呼ばれている。
2年前のヒッグス米立子の発見により、その理論は揺るぎないものとなった。しかし、この 理論で唯一記述できない相互作用が有り、それが重力の量子論である。重力を通常の手法 で量子力学的に扱おうとするど、種々の発散(無F艮大)が、計算過程のあらゆるところで 生じ、それを除いて物理的に意眛のある予言をすることが出来ない。素粒子の標準理論 は、電磁相互作用とその一般化であるゲージ相互作用に基づいている。そこにも発散が出
るが、繰り込みという手法により、発散を除くことができ、その予言は実験的に高い精度 で検証されている。ところが、重力理論に限ってはこの手法力y吏えない。現代の理論物理 学において、この問題は最大の問題のーつと考えられている。
本論文は、高階微分を含む重力理論を考えることにより、この重要な課題に真っ向から 取り組み、解決の糸口を探ろうとするものである。すなわち、高階微分の項を加えること により、重力が繰り込み可能になる可能性を探る。そのとき間題になるのが、この様な理 論では負の確率を持つゴーストと呼ぱれる粒子が持ち込まれることになる点である。その
ような粒子があることにより、理論の発散の発生が抑制され、繰り込み可能になるのであ る。しかし、ゴーストが実際に存在すると、その理論は負の確率や確率の保存則を破るな ど非物理的な予言をしてしまい、理論が破綻することが知られている。これがユニタリー 性の破れの問題である。これらの問題を如何に克服するかが、本論文の主題である。
まず、第1章ではこのような問題を歴史的背景を含めて解説している。通常のアイン シュタインの一般相対論を量子論的に取り扱おうとすると、なぜ発散がたくさん出てき て、うまく繰り込むことが出来ないかを説明した後、高階微分を含めることにより、発散 が取り扱える範囲におさまるこどを簡単に議論する。しかし、時空が4次元の理論ではこ のとき持ち込まれるゴーストを物理的にどうしても押さえることが出来ないことを指摘 する。これに対し、最近3次元では、高階微分を入れるにもかかわらず、ゴーストが発生
しない可ヨ謝生力并旨摘されたことを述ベている。これにより、ゴーストが発生せず、繰り込 み可能な理論構築の可能性が生じるこどを指摘する。これが本当であれぱ、3次元とはい え初めての量子重力理論が出来たことになり、その意義は計り知れない。以下の章ではこ れを、より具体的かつ詳しく解析する。
第2章では、一般の時空次元において、一般座標変換不変性と矛盾しない高階微分項、
すなわちりーマンテンソルの2乗、りツチテンソルの2乗、スカラー曲率の2乗の項を付 け加えた理論において、発散の発生の仕方が繰り込み出来る範囲になるかどうかを検討し てぃる。そのために、一般座標変換不変性をうまくゲージ固定し、スピン2、1、0の状態 への射影演算子を導入して一般次元に対し伝播関数を計算している。さらに量子論的に有
交力なS1師nov、T町10r恒等式を導出して、量子力学的計算を行ったときに生じうる一般的な
項ヘの制限を求め、それによって発散としてどのようなものがあり得るかの伶邨艮を得てい る。その解析により、摂動論の全次数に渡って、発散は3次元及び4次元ではアインシュ タイン項および定数の宇宙項だけであるこどが示される。この結果、時空次元が3または 4では、この理論は繰り込み可能であることが示された。このような一般次元における繰言△
文 査
イ、 の ^り込み可能性の解析は今までに無く、本研究が初めて与えたものである。
引き続き第3章では、3次元の理論にゴーストが無いかどうかを検討する。力学変数で ある計量を、時間部分と空間部分に分ける3+1分解を行って、そのうち空間部分が真の 力学変数であることを見る。さらに、適切なゲージ固定を行うことにより、これらの力学 変数が、負のノルムを持つゴーストになっていないかどうかを調ベ、作用を決めているパ ラメーターに対する御那艮が得られることを示した。非常に驚くべきことに、こうして決 まったバラメーターが、まさに繰り込み可能性が満たされないところになっていることが わかった。すなわち、繰り込み可ヨ謝生とユニタリー性はちょうど相反する要求になってい ることが、この研究で初めて示された。4次元では、パラメーターをどうとってもゴース
トが存在する。
これをうけて、本論文ではさらに別の可能性を検討している。負の計量の発生は、時空 の計量がミンコフスキー、すなわち(‑1,+1,+1,+1)となっていることに起因している。
我々の住んでぃる時空はこのような計量の符号に決まっているが、高工才ソレギーではそう である必要は無く、とくに発散の起こる高工才ソレギー領域での計量が負の計量を含まない リーマン時空である可能性を検討している。第4章では、そのような理論を考えたとき、
ある種のスカラー場が存在すれぱ、低工才ソレギーでは負の計量の時間方向が現れ、現在 の実験、観測ど矛盾しないこどが示される。しかし、高工才ソレギーでは、負の計量カサ肖滅
し、ユニタリー性の問題が解決されると考えられる。
第4章では、ヌ寸称性から許される4階微分まで含むスカラー場と重力場の理論として最 も一般的な理論を考えたとき、それが繰り込み可能であることが議論されている。手法と しては基本的に第2章と同じであるが、スカラー場が余分に存在するため、議論は自明で はなくやや複雑になる。結論として、この理論もやはり繰り込み可能であるという結果が 得られている。
最後に第5章では、この学位論文のまとめと、将来の展望が述ベられている。とくに、
上言己のように高エネルギーでりーマン時空になり低工才ソレギーでミンコフスキー時空に なることは、繰り込み群という手法を用いてしっかり確かめるべき点で有り、今後の課題
となる。
申請者は、現在の理論物理学における重力の量子論という非常に難度の高い問題に対 し、真っ向から取り組み、その 1つの有望なアプローチのうまくいく点とまずい点を明ら かにするとともに、今後に向けた新たな可能性を開拓している。その結果は、権威ある国 外の査読付き学術雑誌に掲載され、また国内の学会発表も複数行っている。以上、提出さ れた論文の研突成果および外国語の能力に対し、審査委員は慎重に審査を行った結果、本 研究で得られた知見は学術的にきわめて有意義で有り、博士学位論文として十分に価値が あるものと認められ、申請者に博士(理学)の学位を授与することが相当と考えられる。