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(1)学位論文審査結果の報告書 氏

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Academic year: 2022

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(1)学位論文審査結果の報告書 氏. 名. 森川 泰裕. 生 年 月 日. 昭 和 6 2 年8月31日. 本 籍(国籍). 京都府. 学位の種類. 博. 士 (薬 学). 学位記番号. 第. 学位授与の条件. 学位規程第5条該当. (博士の学位). 論 文 題 目. 181 号. 法 科 学 分 野 に お け る シ ア ン 化 物 イ オ ン の. 新 規 分 析 法 の 開 発 に 関 す る 研 究. 学位論文受理日. 令和3年12月 5日. 学位論文審査終了日. 令和4年 2月10日. 審 査 委 員. 指 導 教 員. (主 査). 鈴木 茂生. (副主査). 田邉 元三. (副主査). 川﨑 直人. 鈴木 茂生.

(2) 論 文. 内 容. の 要. 旨. 法科学分野における薬毒物の分析対象として、また火災事故における死因の究明にお いてシアン化物イオン (CN ) の分析は極めて重要である。しかしながら、現行の予試験 法は検出感度が低く、かつコスト高であり、新たな試験法の開発が求められている。ま た、最終的な血中 CN の確定検査では、ガスクロマトグラフィー質量分析 (GC–MS) 法や 吸光度法などの機器分析法が用いられる。しかし、良く用いられるペンタフルオロベンジ ル (PFB) 誘導体化 GC–MS 法は、試薬に催涙性があることや、残留した試薬及び反応後 の抽出に用いられる相間移動触媒が分析カラムを劣化させることが指摘されている。そ こで、本論文では上記の欠点を改善し、CN をより高感度、安価かつ簡便に分析するため の新たな CN の比色試薬、蛍光試薬及び機器分析法の開発を試みた。 第 1 章では、市販の金属指示薬である 2-(5-bromo-2-pyridylazo)-5-[N-n-propyl-N-(3sulfopropyl)amino]phenol disodium salt と塩化パラジウムとの錯体 (PAPS-Pd) を CN の比 色試薬及び呈色試験紙に応用した。PAPS-Pd は CN の存在によって青色から黄色に瞬時 に変化した。この色の変化を 1H NMR 及び ESI-MS のデータに基づいて解析した結果、 PAPS-Pd 錯体からパラジウムイオンが遊離することによるものと考えられた。種々の濃 度の CN を添加して 450 nm における吸光度を測定した結果、検量線は 0~40 M の範囲 で直線性を示し、検出限界 (LOD) は 0.6 M であった。PAPS-Pd は CN に対する高い定 量性及び感度が得られたことから、実用化への検討として、血液試料に CN を添加し、実 試料における CN 測定に応用した。血中の CN を微量拡散抽出法によりアルカリ溶液に 回収し、PAPS-Pd を用いて吸光光度分析を行った。得られた結果を標準法である König 反 応と比較したところ、測定値はよく一致した。また、本反応を予試験法として応用するた めに、PAPS-Pd をろ紙に染み込ませた試験紙を作成し、ヘッドスペース法による血中 CN の分析に使用した結果、LOD は 15 M であった。この値は中毒症状発現濃度の下限値で ある 19 M 以下であり、血中 CN の分析法として十分に利用が可能である。本法は、高 感度、安価かつ簡便であることから、シアン化物の服用や火災事故の煙の吸入による中毒 が疑われる事件・事故現場において、これを迅速に特定する予試験法として有用である。 第 2 章では、CN の indolium 誘導体への求核付加反応を利用した蛍光検出試薬の開発 を行った。Phenothiazine を donor、indolium を acceptor とした phenothiazine/indolium 化合 物 (PI) を合成した。この PI は、大きなストークスシフトと高い蛍光量子収率を示した。 PI 溶液は、CN の添加料に応じて溶液の色が紫色から無色に変化し、270 nm の光を照射 すると蛍光が発生した。0~1 当量の CN を加えると、蛍光強度が直線的に増加し、LOD は 0.02 μM であった。PI は 15 種類の陰イオンのうち CN とのみ反応し蛍光を示した。発 蛍光のメカニズムを 1H NMR、ESI-MS スペクトルの測定及び計算機化学を用いて解析し た。その結果、CN が indolium の C=N+の炭素に求核付加することで、分子内の電荷移動 が制限され、色調が無色に変化し、同時に青色の蛍光を発するものと推定された。また、.

(3) PI は市販のブラックライト照射下でも発蛍光することから、肉眼での高感度検出にも有 用である。以上の結果から、PI は CN の微量検出試薬として高い感度及び選択性を有す る化合物である。 第 3 章では、第 2 章で見出した indolium と CN-の高い反応性に着目し、1,2,3,3-tetramethyl3H-indolium iodide (TMI) を誘導体化試薬として用いる CN の GC–MS 定量法の開発を行 った。誘導体化及び分析方法の最適化を行なったところ、誘導体化は 1.5 mL のチューブ 内で 10 分以内に完了した。また、反応は単一の生成物を与え、計 75 回の繰り返し測定 を行ったところ、ピーク幅は一定で、保持時間の変化も 0.1 分以下であることから、従来 法で指摘されているような分析カラムの劣化は認められなかった。検量線は 1~50 M(R2 = 0.9997)及び 50~1000 M(R2 = 0.9985)の範囲で高い直線性を示し、LOD は 0.4 M で あった。回収率は 91.0~105%、日内と日間の誤差は 15%未満と満足できる値が得られ た。本法を標準法である König 反応と比較して妥当性を検討したところ、定量値は両方 法でよく一致し、測定値も添加量と一致した。TMI 誘導体化法は、PFB 誘導体化 GC–MS 法と比べて高感度であり、また試薬の催涙性はなく分析カラムを劣化させないことから、 法科学分野における確定試験としての同定及び定量分析法に極めて有用であると判断さ れた。 以上をまとめると、本研究で得られた CN の比色試薬、蛍光試薬及び誘導体化法は、 いずれも感度及び選択性の点から極めて有用であり、実務に直接役立つ技術として、今 後、大きな役割を果たすと考えられる。本研究の主な成果は、①これまでの予試験では 困難とされていた、血液から中毒レベルの CN の検査を誰でも、簡便に目視で判定する 方法を構築したこと、②市販の UV ライトを用いて目視で検出可能であり、極めて高感 度かつ選択性の高い CN の蛍光検出試薬を開発したこと、及び③CN の確実な同定・定 量法として装置を汚染せずに、高感度かつ再現性の高い方法を構築したことである。こ れらの方法は、法科学分野だけでなく、火災での煙の吸入による救急搬送時の病院での 迅速な検査や、環境分野における検査など、幅広い分野における CN の分析への応用が 期待できる。.

(4) 論 文. 審 査. 結 果. の. 要 旨. 本論文は、法科学分野の中で取扱件数の多い薬毒物分析の中で、重要な分析対象の 1つであるシアン化物イオンの高感度かつ高効率的新規分析法の開発に焦点をあて、 シアン化物イオンの高感度、安価かつ簡便分析に用いることのできる比色試薬、蛍光 試薬および機器分析法について検討されている。 第 1 章 で は 、 市 販 の 金 属 試 薬 、 2-(5-bromo-2-pyridylazo)-5-[N-n-propyl-N-(3sulfopropyl)amino]phenol disodium salt と塩化パラジウムとの錯体 (PAPS-Pd) から、シ アン化物イオンの添加によりパラジウムが定量的に脱離し、その際に溶液の色が瞬時 に変化することを見出し、PAPS-Pd のシアン化物イオン比色試薬としての有効性に ついて検討している。その結果、微量拡散抽出と組合せた吸光度分析では、感度、直 線性ともに良好で、König 反応と高い相関を示すことを明らかにしている。さらに、 自作した PAPS-Pd 含有ろ紙を用いた予試験法では、この試験紙が血液の中毒濃度下 限値以下で極めて鋭敏に色調変化をすることを見出し、本法がシアン化物中毒の迅速 な判定法として有用であることを明らかにしている。 第2章では、電子供与性置換基である phenothiazine と電子受容性置換基である indolium イオンを炭素-炭素二重結合 (C=C) でリンクした donor- -acceptor 型化合 物 (PI) を合成し、シアン化物イオンの蛍光検出試薬としての有用性について検討し ている。その結果、本化合物 (PI) がシアン化物イオンと特異的に反応し、極めて強 い蛍光強度を示すことを見出している。そのため、本法によるシアン化物イオンの検 出限界が 0.02 M と極めて低く、これは、ヒト血液中のシアン化物イオン中毒発現 濃度 (19 M) や WHO が示す飲料水中のシアン化物イオン最大濃度 (1.9 M) を検 出するよりも十分高感度であることを明らかにしている。また、PI の蛍光は UV ラ イトを用いた目視による判定にも有効であることも併せて明らかにしている。 第3章では、GC–MS を用いたシアン化物イオンの誘導化同定法開発のために、第 2章で得た知見である indolium とシアン化物イオンの反応性を利用して、indolium (TMI) へのシアン化物イオン付加体 (TMI-CN) を別途合成し、合成品についてその 性能を検討している。その結果、本誘導化は直線性、検出限界 (0.4 M) とも良好で、 公定法である König 反応と比較しても、15% 未満の誤差であることを見出し、本法 が従来の PFB 誘導化法および König 反応の代替法として、法科学分野や環境分野に おいて同定・定量分析法として有用であることを明らかにしている。 以上、本研究の手法及び実験の展開方法ともに論理的かつ合理的で、得られた結果は 今後、法科学分野におけるシアン化物イオンの同定・定量分析法への展開に資するとこ ろ大である。よって、本論文の内容は博士論文としてふさわしいものと認める。.

(5) (課程・論文). 博士学位論文最終試験結果の報告書 令和4年2月 14 日 主 査 鈴木 茂生 審. 査. 委. 員. 副主査 田邉 元三 副主査 川﨑 直人. 学位申請者氏名 論. 文. 題. 目. 森川 泰裕 法科学分野におけるシアン化物イオンの新規分析法の 開発に関する研究. 本学位申請者の博士学位論文に関する最終試験は口頭発表の形式で、 令和 4 年 2 月 10 日に行われた。同発表会に於いて、本学位申請者は、明瞭 に研究成果の口頭発表を行い、質疑においても適切に対応し、論文内容、 およびその周辺領域に関する十分な知識を有することを証明した。 よって、申請者は学位論文最終試験に合格したと判断する。.

(6)

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