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学 位 論 文 審 査 結 果 の 報 告 書

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Academic year: 2022

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(1)学位論文審査結果の報告書 氏. 名. 森井 悠介. 生 年 月 日. 昭和 63 年 3 月 22 日. 本 籍(国籍). 大阪(日本). 学位の種類. 博. 士 (. 学位記番号. 第. 学位授与の条件. 薬. 学. ). 174 号. 学位規程第5条該当. (博士の学位). 論 文 題 目 大腸がんにおける抗がん剤感受性低下の機序解明と がん化学療法における副作用発現に関する臨床的研究. 学位論文受理日. 令和 4 年 1 月 11 日. 学位論文審査終了日. 令和 4 年 2 月 14 日. 審 査 委 員 (主 査) 小竹 武 (副主査) 大鳥 徹 (副主査). 指 導 教 員. 升三. 升三.

(2) 論 文 森井. 内 容. の 要. 旨. 悠介君の博士論文「大腸がんにおける抗がん剤感受性低下の機序解明とがん化. 学療法における副作用発現に関する臨床的研究」は大腸がんにおける化学療法抵抗性の 機序解明による治療法の開発及びがん治療中における副作用発現因子の解析を通じて、 大腸がん治療への貢献を目指し、纏めたものである。 大腸がんは世界的にも罹患者数の多いがんであり、日本におけるがんの死亡者数では 第 2 位となっている。大腸がんの病期は、深達度、リンパ節転移、遠隔転移の有無により 0、I、II、III、IV 期に分類される。Stage 0 III であれば根治を目的として手術を行うが、 Stage II あるいは Stage III でも悪性度の高いがんにおいては術後化学療法が行われる。 Stage IV の症例に対しては分子標的薬を含む化学療法が行われるが、切除可能な肝転移 症例では手術も推奨される。 5-fluorouracil (5-FU)、capecitabine、または oxaliplatin (L-OHP)を併用する FOLFOX 療法や XELOX 療法などの化学療法は大腸がんのファーストラインで使用される治療法 である。しかし、化学療法に対するがん細胞の初期耐性や獲得耐性により難治性となり、 予後不良となることが多い。大腸がんの病変は、KRAS、BRAF、phosphatidylinositol-4,5bisphosphate 3-kinase catalytic subunit alpha (PIK3CA)などのドライバー遺伝子の体細胞 変異が関与することが明らかになっている。中でも、PIK3CA 変異を有する大腸がんに対 する有効な治療法はなく、PIK3CA 変異による化学療法抵抗性の機序解明と治療法の確 立により、難治性大腸がん患者の予後改善が期待できる。 Panitumumab は KRAS 遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発大腸がんを適応と し、腫瘍細胞に存在するヒト上皮細胞増殖因子受容体 (epidermal growth factor receptor: EGFR)に結合することで、リガンドの EGFR への結合を競合的に阻害し、腫瘍細胞の増 殖を抑制するモノクローナル抗体である。現在では、panitumumab 単剤療法や、FOLFIRI 療法、mFOLFOX6 療法 irinotecan (CPT-11) 療法との併用療法において有効性が示さ れている。しかし、Panitumumab を含む抗 EGFR 阻害剤の副作用として低マグネシウム (magnesium; Mg)血症の発現が知られており、軽度であれば無症状であるが、重度の低 Mg 血症では悪心、嘔吐、衰弱、テタニー、不整脈など重篤な症状となることがある 。 一方で、プロトンポンプ阻害薬 (proton pump inhibitors:PPIs)の 期投与が低 Mg 血症 を引き起こすことが示されている。PPIs は強力な酸分泌抑制作用を有し、肝代謝のため 腎機能低下例にも投与しやすく、さまざまな上部消化管疾患の治療に用いられ、がん及び がん化学療法における消化器症状に対しても広く使. されている。しかし. 期投与例が. 増加するにつれ、合併症についても指摘されるようになった。その 1 つとして低 Mg 血 症があり、2011 年に FDA (Food and Drug Administration) が PPIs の 1 年以上の 期内 服により低 Mg 血症を誘発する危険性があると警告している 。Panitumumab 投与患者 の低マグネシウム血症発症に PPIs が与える影響が解明できれば、Panitumumab 治療患.

(3) 者の投与期間の延 や治療成績の向上が期待できる。 第 1 章では、PIK3CA 変異を有する大腸がん細胞を用いて、5-FU 及び L-OHP に対す る化学療法抵抗性機序を検討し、PIK3CA 変異による Akt 活性化が化学療法抵抗に関与 することを明らかにしている。さらに、Akt 阻害剤が PIK3CA 変異を有する大腸癌細胞 の L-OHP 及び 5-FU の感受性を回復させることも認めている。以上のことから、Akt 阻 害剤が PIK3CA 変異大腸がんにおいて 5-FU 及び L-OHP の併用薬として有用性が高い ことを示唆している。 また第 2 章では、panitumumab を含む化学療法を受けた患者についてレトロスペクテ ィブに調査し、施行後に生じる Grade 2 以上の低 Mg 血症発現に PPIs 内服が与える影響 について検討し、PPIs 内服中の患者では、panitumumab による低 Mg 血症発現リスクが 高いことを明らかにしている。以上のことから、Panitumumab 投与前に PPIs の処方を 見直し、不適切と考えられる場合には他剤変更や中止などを考慮する必要があることを 示唆している。 本論文では、PIK3CA 変異大腸がん細胞において抗がん剤の耐性機序とその治療法に ついて Akt 阻害剤の併用が有効であることを明らかにしたことで、大腸がん治療の臨床 応用につながることを示した。また、Panitumumab 投薬患者について低 Mg 発現に PPIs が与える影響を明らかにしたことで、panitumumab の治療成績の向上が期待できること を示した。.

(4) 論 文. 審 査. 結 果. の. 要 旨. PI3K/Akt/mTOR シグナル伝達は、インシュリン受容体をはじめ様々な増殖因子受容 体の下流シグナルの核となり、遺伝子変異によって、双極性障害や統合失調症さらにが んの活性化に関与するとされている。本論文の第 1 章の研究では、大腸がんにおいて、 5-FU 及び L-OHP 単独または併用投与による細胞死誘導効果に PIK3CA 変異の影響に ついて、解明を試みている。PIK3CA 変異を有する大腸がん細胞は、野生型大腸がん細 胞に比べて 5-FU 及び L-OHP に対する感受性が低く、その要因として、Akt の活性低 下及び JNK 活性化が誘導されることを示した。PIK3CA 変異大腸癌細胞では、Akt 阻害 剤 perifosine が大腸癌において 5-FU 及び L-OHP の細胞死誘導効果を増強させてお り、その機序は Akt 抑制を介したアポトーシス抑制因子の Bcl-2、Bcl-xL、Survivin の 発現低下、アポトーシス促進因子の Puma、リン酸化 p53、p53、切断型 caspase-3、切 断型 PARP-1 の発現増加によることを示した。PIK3CA 変異大腸癌において、5-FU 及 び L-OHP だけでは効果は弱いが、併用することによって、細胞死誘導効果が高まる Akt 阻害剤 perifosine の有用性が高いことを示唆している。 がん化学療法において、EGFR 阻害剤の腎尿細管の再吸収阻害による低 Mg 血症の重 症化の要因を解明することは、がん薬物療法の継続治療に重要な指標となりうる。本論 文の第 2 章の研究では、panitumumab を含む化学療法を受けた患者について発現した 低 Mg 血症についての患者背景をレトロスペクティブに調査し、重症化リスク回避の指 標の抽出を試みている。panitumumab を含む化学療法施行後に生じる Grade 2 以上の低 Mg 血症発現に低 Mg 血症を単独でもきたすプロトンポンプ阻害薬(PPIs)内服患者と 非内服患者を比較し、Grade2 以上の低 Mg 血症発現において有意差を示された (P = 0.0419)。PPIs 継続服用により、さらに Grade2 以上の低 Mg 血症発現頻度は高まり、 腎機能の低下も発現リスクとして抽出された。この結果により、panitumumab による化 学療法施行時には PPIs 内服、腎機能低下患者では、低 Mg 血症発現リスクが高いこと が示されており、panitumumab 投与前に患者の腎機能を十分に考慮し、PPIs 投与の是 非を検討する必要性について、示唆している。 以上の本研究結果から、PIK3CA 変異大腸がん細胞において抗がん剤の耐性機序とそ の治療薬について Akt 阻害剤 perifosine が有効であることを明らかにしたことで、大腸 がん治療の臨床応用のみならず、PIK3CA 変異の他種がんの治療にも期待を示された。 がん治療における臨床上での検証として、panitumumab 投薬患者について低 Mg 発現に PPIs が与える影響を明らかにしたことで、panitumumab の治療継続の必要とされる因 子を予め考慮することができるため、治療成績の向上が期待できる。 本論文の研究は、PIK3CA 変異がん患者の新規治療法の開発および EGFR 阻害剤の副 作用の予防におけるがん治療成績の向上につながる医学的新規性があり、社会的貢献の 高い結果を示唆しており、本論文は博士学位論文として十分に評価できる。.

(5) (課程・論文). 博士学位論文最終試験結果の報告書 令和 4 年 2 月 5日. 審. 査. 委. 員. 主 査. 小竹 武. 副主査. 大鳥 徹. 副主査 学位申請者氏名 論. 文. 題. 目. 升三. 森井 悠介 大腸がんにおける抗がん剤感受性低下の機序解明と がん化学療法における副作用発現に関する臨床的研究. PIK3CA 変異大腸がん細胞における5FU、オキサリプラチンの Akt 阻害効果が減弱 している耐性機序および Akt 阻害剤 perifosine の臨床的有用性、Panitumuma、PPIs、 腎機能低下との低 Mg 血症発現の機序等について、令和2年2月 5 日(土)に実施した 公聴会および最終試験において、適切に質疑対応され、合格判定とする。.

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