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博士(農学)赦日格勒 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)赦日格勒 学位論文題名

繊維植物「ケナフ」のバイオマス変換に関する基礎的研究 学位論文内容の要旨

    米 国農 務省 は4半 世紀 に亘 る探 索研 究を 行い 、約3,000種 類の 植物 の中か ら現 行 の農 作物 とは 競合 しな い経済 的に 魅カ のあ る新 たな 農作 物と して1960年代にケナフを 繊維 植物 とし て選 別し たが、 高い 光合 成能 力(1520ト ン/ha)を有するケナフは地球 環境 保全 修復 を担 う21世紀の エコ マテ ィリ アル 、植 物バ イオ マスとしても世界的に注 目さ れて いる 。ケ ナフ は古く から 中国 、東 南ア ジア 諸国 で栽 培され、35重量%を占め る靭 皮部は麻袋、衣料、紐などに加工され、残りの木質部は燃やすか捨てられている。

しか し、ケナフ繊維は良質の合成繊維に圧倒され、生産量が減少の一途を辿っている。

ケナ フを 、炭 酸ガ スの 放出を 長期 間に 亘り 抑制 し、 森林 資源 を保全する21世紀の循環 型有 機資源としてグ口ーバルな規模で植栽するには、ケナフの全茎を付加価値の高い用 途に 有効利用できる新たな技術を早急に確立する必要がある。ケナフは木材と似た化学 組成 を有する木質バイオマスのーつであるから、農業廃棄物、古紙、林地廃材などと共 にバイオマス変換による次世代有機資源として有効利用することができると考えられる。

その ためには、ケナフの各成分を分別分離し、セル口ースを森林資源の保全に有用な紙 バルプ原料に使用し、繊維特性の劣るセル口ース部分を生分解性プラスチックやグルコー スに 変換して化学工業原料に、非繊維成分(ヘミセル口←ス、リグこンと抽出成分)を 機能 性高分子やファインケミカルスなどの原料に高度利用する技術を新たに開発しなけ れば ならない。本研究ではバイオマス変換によルケナフを効率的に総合利用するための 基礎的研究を行った。

    1) 先 ず、 ケナフ の理 化学 的性 質を 検討 した 。そ の結 果、 ケナ フは 重量で34% の 靭皮 部と66% の木 質部 から構 成さ れ、 前者 は針 葉樹 繊維 のよ うな長繊維から、後者は 広葉 樹繊維より若干短い繊維から構成され、両者共に紙バルプ原料に利用できることが 明ら かに なっ た。 靭皮 部はり グニ ン(11% )が 木材 より 少な く、セル口ースとアルカ リ 抽 出 物が 多い のに 対し て、 木質 部は 広葉 樹材に 相当 する りグ ニン 量(26%) を有 し た。 靭皮 部の りグ ニン にはシ リン ギル骨格がグアイアシル骨格の約4倍存在し、木質部 リグニンの2倍とは著しい相違を示し、両者の化学構造が著しく異なることを示唆した。

    2) 現 行の 木材バ ルプ 製造 法は バル ブ以 外の 成分 が熱 アル カり によ り著し く変 質 し、 有機 資源 とし て利 用でき ない ため に、 ケナ フの バイ オマ ス変換には、21世紀の要 請に 応える省エネルギー、省資源、無公害の新たな簡易成分分離法を開発しなければな らな い。ケナフ成分を利用上不都合な変質をさせずに分別・分離するために、触媒量の 無機 酸を合む含水酢酸でケナフを短時間煮沸する常圧酢酸法を検討した。ケナフを靭皮 部と 木質部に分離し、常圧酢酸法により成分分離を行い、セル口ース、ヘミセル口ース と酢 酸リグニンをほぼ定量的に分別・分離する条件を確立した。バルブ化に用いた酢酸 は蒸 留で回収し、再使用できる。キシランに代表されるヘミセル□ースは脱リグニン反 応中 に単糖類に酸加水分解され、キシ口ースとして類のない高収率で回収された。キシ

(2)

口ースは種々のケミカルス、医薬品、食品添カL1物などに変換し、有効利用できる。酢酸 リグニンは熱溶融性を有するポリマーとして匣J収され、炭素繊維、繊維活性炭などの環 境浄化資材、キ幾能性フウノール樹脂などに変換できる。しかし、セル口ース繊維は脱リ グニン反応の際に触媒の無機酸により耐‖かく切断され、紙バルプ原料としての特性が劣 るが、セル口ース誘導体やケミカルス原料には利用できる。従って、常圧酢酸法で分別・

分離 されたケナフの各成分はバイオマス変換原料に利用することが有効と結論づけられ た。

    3) ケ ナフ 籾皮 部は 繊維 長の長 い良 質な 繊維 を合 むこ とか ら、 勧皮 パル プを 将来 的に 供給不足が危惧されている針葉樹バルプの代替バルブとして広範囲に利用すること もケ ナフの付加価値を上げる重要な利用法である。靭皮部はりグニン含量が少ないこと から 、現行の重厚長大型木材バルブ製造法よりも温和な条件でバルプを製造することが 可能 と考え、靭皮部のアルカリ酸素バルブ化を詳細に検討した。靭皮部として十分に成 長し たケ ナフ であ るが 、暗 褐色 表皮と緑色表皮を有する2種類の靭皮部を使用した。暗 褐色 の表皮は温和な処理では微細化した黒い斑点としてバルプに残存し、黒い斑点は煩 雑な スクリーン操作により、バルプから除去する操作が必要であった。それに対して、

緑色 表皮は温和な処理条件でも完全に脱色することから、煩雑な除去操作なしで良質の 翻 皮 バ ルプ が得 られ た。 その 強度 特性 は市 販の 針葉 樹バ ルプよ りも 良好 であ り、ECF シー クェンスで完全漂白が出来ることから、針葉樹バルプの代替バルプとして利川でき る。 以上の結果、ケナフを十分に成長した緑色表皮の段階で刈り取った後、剥離した靭 皮部から簡単なアルカリ酸素法により良質な長繊維パルブを製造する技術が確立された。

また 、アルカリ酸素バルブ廃液に含まれる成分は溶媒分別法により多糖類、リグニンー 炭水 化物複合体、リグニンなどのフラクションに分別され、有用な用途に変換できるこ とも 示唆された。しかし、靭皮部を除いた木質部はアルカリ酸素バルプ化の温和条件で はバ ルプ化できないことから、常圧酢酸法などの他の簡易成分分離法を併用し、ケナフ 全茎の有効利用を計る必要がある。

    4) ケ ナフ 全茎 を先 の理 念に基 づき 紙バ ルプ 原料 に優 先的 に利 用す るた めに 、ア セ 卜 工 夕 ノ リ シ ス(AE)成 分 分 離 法 を 検 討し た。 工夕 ノー ル水 溶液 に少 量の 酢酸 を添 加 し 、160〜180℃の 高温 高圧 の条 件で 処理 する こと によ り、リ グニ ンの 主要 なロ ーO ー4結合 の開裂 が促 進さ れ、 脱リ グニン速度が改善され、バルブの劣化やりグニンの変 質を 抑制できるとの結果が得られた。詳細なバルプ化条件を検討し、残存リグこンが少 なく 、市 販の 広葉 樹パ ルプ に匹 敵す る強度 特性 を有 する ケナ フ全茎のAEパルプ製造条 件を 設定 した 。こ の条 件に より 木質 部のAEバル プ化 も可 能で あった。AEバルプ廃液は 工夕 ノー ルを 留去 する こと によ り、 水不溶 性のAEリ グニ ンと 水可溶部に分離された。

AEリ グニンは酢酸リグニンと同様に熱溶融性を示し,環境浄化資材などに有効利用でき る。 水可溶部には極く少量のキシ口ース残基しか存在せず、水可溶部に含まれる固形物 の大 部分 は糖 変質 物で あっ た。 しか し、水 可溶 部は 全茎 に対 して10%の高収率のフル フラ ールを含んでいた。フルフラールは溶媒、ナイ口ン、フラン樹脂などの化学工業原 料に 多用 でき る有 用な ケミ カル スで あり、 その 存在 はAE/ル プ化反応によルキシラン がキ シ口ースに加水分解され、さらに脱水反応を経由してフルフラールに変換する‑ JY の反応が起こることを示唆する。

    以上 の結 果、 高い 光合 成能 カを 有する ケナ フを 化石 資源 に代わる環境に温和な循 環型 次世代バイオマス資源として有効利用できる複数の新規プ口セスを確立することが 山来 た。これらのプ口セスは何れも小規模な装置で稼働であることから、単年生の分散 型資 源であるケナフに有効なプ口セスであり、ケナフの利用目的によルプロセスの選択 が可能である。

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査

副査 副査 副査

教 授  佐 教 授  高 教 授  寺 助教授  浦

野 嘉 拓 井 光 男 沢

  

実 木 康 光

学 位 論 文 題 名

繊維植物「ケナフ」のノヾイオマス変換に関する基礎的研究

    

本論文は、表55 、図

54

を含む

6

編、総頁数207 頁からなる和文論文で あり、別に参考論文4 編が添えられている。

    

米国農務省は4 半世紀に亘る探索研究により、現行の農作物とは競合し ない経済的に魅カのある新たな農作物として、約3 ,000 種の植物の中から 繊維植物のケナフを選別している。更に、ケナフは高い光合成機能(15 ー20 トン乾物重量/

ha

)を持つことから地球環境保全修復を担うェコマ ティリアルとしても位置づけられ、グ口ーバルな規模で植栽することが推 奨されている。栽培したケナフは繊維(セル口ース)成分を紙バルプ原料 に利用するが、繊維特性の劣る微細繊維部分をグルコースを経由したバイ オマス変換により化学工業原料に、非繊維成分(ヘミセル口ース、リグこ ンと抽出成分)を機能性高分子、ケミカルスなどの原料に高度利用するこ とにより、付加価値の高いポス卜石油資源として総合利用することもでき る。しかし、ケナフの総合利用に関する研究は全く行われていない。本研 究は、ケナフ全成分の有効利用を可能にするバイオマス変換に関する基礎 的知見を取得するために行われた。

    1

)ケナフの理化学的性質を検討し、重量で34 %を占める靭皮部は良質 の長繊維から構成され、リグニン(11 %)が木材より少なく、セル口ース とアルカリ抽出物が多いのに対して、66 %を占める木質部は広葉樹繊維よ り若干短い繊維を含み、26 %の高いりグニン量を有することを明らかにし た。また、靭皮部のりグニンはシリンギル骨格がグアイアシル骨格の約4 倍存在し、木質部や広葉樹材のりグニンと異なる化学構造を有するとの知 見を得た。

    2

)ケナフ全成分を利用上不都合な変質をさせずに分別・分離するため

に、触媒量の無機酸を含む酢酸水でケナフを短時間煮沸する常圧酢酸法を

新たに開発した。ケナフの勧皮部と木質部は常圧酢酸法によルセル口ース

部、ヘミセル口ース部と酢酸リグニンの各フラクションにほぼ定量的に分

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別・分離された。ヘミセル口ース部はキシ口ースが主要成分であり、種々 のケミカルス、医薬品、食品添加物などに有効利用できる。酢酸リグニン は熱溶融性を有し、炭素繊維、繊維活性炭などの環境浄化資材、機能性フェ ノール樹脂などに変換できる。しかし、セル口ース部の繊維は触媒の無機 酸により細かく切断され、紙バルプ原料としての特性が劣るが、セル口ー ス誘導体やケミカルス原料には利用できる。従って、常圧酢酸法はケナフ の各成分をバイオマス変換原料に利用する簡易成分分析法として評価でき るとの知見が得られた。

    3

)靭皮部はりグニン含量が少ないことから、温和なアルカリ酸素法に よるバルプ化を検討した。緑色表皮を有する靭皮部は110 ℃、10 〜15 %の 活性アルカリ、5kg7 cm2 の酸素圧の条件で良質の靭皮バルプが得られた。

バルプの強度特性は市販の針葉樹バルプよりも良く、ECF シークエンスで 完全漂白が出来た。また、アルカリ酸素バルプ廃液に含まれる成分は溶媒 分別法により多糖類、リグニンー炭水化物複合体、リグニンなどのフラク ションに分別され、有用な用途に変換できる。しかし、靭皮部を除いた木 質部はアルカリ酸素バルプ化の温和条件ではバルプ化できないことから、

常圧酢酸法などの他の簡易成分分離法を併用し、ケナフ全茎の有効利用を 計る必要がある。

    4

)ケナフ全茎を紙パルプ原料に利用するために、アセト工夕ノリシス

AE

)成分分離法を検討した。工夕ノール水溶液に少量の酢酸を添加し、

160 ‑‑‑180

℃の高温高圧で処理すると、リグこンの主要な汐一〇ー4 結合 の開裂が促進され、脱リグニン速度が改善され、バルプの劣化やりグニン の変質を抑制することが可能であり、市販の広葉樹バルプに匹敵する強度 特 性を有するケナフ全茎と木質部の

AE

バルプが得られた。

AE

バルプ廃液 か ら水不溶性の

AE

リグニンと水可溶部を分離し、分析した。AE リグニン は熱溶融性を示し、環境浄化資材などに有効利用できる。水可溶部には極 く少量のキシ口ース残基しか存在しなかったが、水可溶部は全茎の10 %の 高収率でフルフラールを含んでいた。フルフラールは溶媒、ナイ口ン、フ ラン樹脂などの化学工業原料に多用できる有用なケミカルスであり、その 存在はAE バルプ化反応によルキシランがキシロースに加水分解され、さら に脱水反応を経由してフルフラールに変換する一連の反応が示唆された。

    

以上のように、本研究は単年生分散型資源であるケナフを小規模な装

置で付加価値の高い用途に有効利用する新規の複数の利用プ□セスの確立

であり、学術的に高く評価されるのみならず、発展途上国に新たなバイオ

マス産業を振興するために大きな貢献をなすものである。よって、審査員

一同は、赦日格勒が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格があるもの

と認めた。

参照

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