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学位論文題名Taxonomic Studies on IVIonostilifera(Nemertea: Enopla: Hoplonemertea)

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 柁 原    宏

     学位論文題名

Taxonomic Studies on IVIonostilifera (Nemertea: Enopla: Hoplonemertea)

(単針類紐形動物の分類学的研究)

学 位論文 内容の要旨

  からだが細長いヒモ状で体節構造を持たず、表面は織毛上皮に覆われているためヌルヌルして いて、吻と呼ぱれる摂食器官を使って獲物をおそう肉食性の無脊椎動物は、一般にヒモムシと呼 ぱれ、紐形動物門に分類される。紐形動物門の上目のーつである単針類は、吻に一本の針を持つ ことで特徴づけられ、汽水域や淡水域にすむ少数種と、わずかな陸生種をのぞいて、ほとんどが 海に生息している。世界から約500種、我が国からはこれまで43種が報告されており、現在 96属8科に分類されている。しかし、ほとんどの種の記載が不十分であるため、属や科レベル の分 類は再 検討が必 要である 。本学 位論文はその単針類の分類学的研究の成果である。

  学位論文は6章からなり、2〜5章で4つの内容、すなわち、命名法に関する考察、ある属の 科への所属に関する議論、属レベルでの系統解析、日本産全種のモノグラフ、を扱っている。

  第1章の序章に続き、第2章では山岡貞一氏によって記載された日本産単針類4種の学名に関 する命名法上の問題を検討した。山岡氏は日本で2人目の紐形動物分類学者であり、1939年 に北海道帝国大学を卒業した後に静岡県須崎の三井海洋生物学研究所に籍を置き3編の論文を 発表した。その後満州の新京第一中学校に赴任するまでの間にさらに1編の論文の草稿を準備し たが、この論文は結局発表されずに当時指導教官であった内田亨教授、および奥田四郎博士の元 に保管された。奥田博士は山岡氏の残した未発表原稿中の未記載種を当時編纂中であった『改訂 増補日本動物圖鑑』に収録した。それらはEmplectonema mitsuii Yamaoka,Paranemer tes katoi Yamaoka,ん」phiporus ogumai Yamaoka,PrDSf―roSPDC印カaJ脚Ya舳Okaの4種であり、2〜 3の図と外部形態の簡潔な記載を伴っている。また個々の記載の最後には奥田博士の名前が括弧 付きで記されている。

  これら4種の学名は適格性、有効性、公表者、出版年が不明瞭である。なぜなら(1)出版し たのが山岡氏本人ではなく、(2)学術雑誌ではなく図鑑に掲載され、(3)奥田博士の名が記 載に付随しており、(4)出版年が記されておらず、(5)新種であることが明瞭に記されてい ないためである。しかしこれら4種の学名は国際命名規約第四版(以下「規約」)第8条、lO

〜20条 、およ び23条の要求を満たしているため適格かつ有効であり、第50条1項から公表 者は奥田博士ではなく山岡氏であると判断される。また規約第21条からこれらの学名の公表の 日付 は日本 動物図鑑の初版年、っまり1947年と決定される。また規約の勧告51Eに従い、

これら4種の学名の引用の形式はYamaoka,Teiichi,1947,assubmittedbyShirookuda,in SeinosukeUchida,PtaJ. ,HJUst朋 と甜励り凵叩PめaDr舶e向伽aDrカp朋缶江cJU釘地0r 伽sPcfり 一 胎 ガseJ& 灯ff叩 口 舛 ガ ,HokuryukanCo.Ltd. ,T0kyo. と な る 。   第3章では単針類の一属伽D釦餾け£館の科への所属に関して検討した。本属はBnrger(1895)

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に よ るAmphiporus marmoratusの 記 載 に 基 づ き 、Friedrich(1955)に よ っ て創 設 さ れ た 。そ の 際 FriedrichはDuosnemer tes属 の 特 徴 と し て 消 化 管 と 吻 口 が 別 々 に 開 口 す る と いう 特 徴 の み を 重 視 し て 他 の 形 質 に は 言 及 せ ず 、 また 、 本 属 が ど の科 に 属 す る かに つ い て も 言及 し な か っ た。 後 に Gibson( 1972, 1982)は Duosnemer tes属 を Amphiporidae科 に 分 類 し て い る 。   Btlrger(1895)に よ るAmphiporus marmoratusの 図 版 に はFriedrich (1955)が 参 考 に した 消 化 管 と 吻 口 が 別 々 に 開 口 す る 縦 断 面図 の 他 に 、 縦 走筋 と 環 状 筋 によ る 網 篭 状 の吻 鞘 壁 、 一 つの 血 管 突 起 、 脳 の 後 方 ま で 延 び る 頭 感 器が 明 瞭 に 描 か れた 横 断 面 図 が収 録 さ れ て いる 。 こ れ ら の形 質 の 組 み 合 わ せ はCratenemertidae科 に 特 徴 的 で あ る た め 、Duosnemer tes属 をAmphiporidae科 から Cratenemrtidae科に移 行し た。

  第4章 で は 、 形 態 形 質 に 基 づ き 、 単 針 類 の 属 間 の 系 統 解析 を 行 い 、 現 行の 科 レ ベ ル の分 類 の 妥 当 性 を 検 討 し た 。Gibson(1989)やCrandall (1993)は 吻 鞘 壁 の 筋 層 の 組 成 を 元 に Cratenemertidae科 とPlectonemertidae科 を ま と め た 高 次 分 類 群 を 提 唱 し て い る が 、 彼 ら の 新 分 類 体 系 は 広 く 受 け 入 れ ら れ て い な い 。 今 回 、 そ の 評 価 も 合 わ せ て 行 っ た 。   上 述 の よ う に 単 針 類 で は96属 が8科 に 分 類 さ れ て い る が 、 こ の う ち20% 強 の21属 は 科 へ の 所 属 が 不 明 と な っ て い る 。 ま た多 く の 種 の 記 載、 特 に 科 の 模式 属 の 種 の 記載 が 不 十 分 であ る た め に 属 や 科 の 定 義 が 極 め て 暖 味 で あ り 、 科 レ ベ ル の 分 類 は 再 検討 を 必 要 と して い る 。 そ こ で、9 6属 全 て の 模 式 種 の 記 載 か ら51の 形 質 を 抽 出 し た デ ー タ マ ト リ ク ス を も と にPAUP 3.1.1 (Swofford,1993)を 用い て 最 節 約 法 によ る 系 統 解 析を 行 っ た 。59属 の 模 式 種は 記 載 が 不 十 分 で あ っ た た め 解 析 か ら は 除 外 し た 。 ま た 外 群 は 多 針 類 のUrichonemertes pilorhynchusを 用 いた 。

  合 計37属 を 用 い た 解 析 の 結 果 、 樹 長210の 最 節 約 樹 が90本 得 ら れ た 。 こ れ ら の 厳 密 合 意 樹 はPlectonemertidae科 の 単 系 統 性 を 支 持 し た が 、Amphiporidae科 、Emplectonematidae科 、 Prosorhochmidae科 、Tetrastemmatidae科 は 多 系 統 で あ る こ と を 示 唆 し た 。 ま た 、 Carcinonemertidae科 、Ototyphlonemertidae科 は そ れ ぞ れ2属 あ る う ち1属 し か 解 析 に 用 い る こ と が 出 来 な か っ た た め に 科 内 の 系 統 は 評 価 で き ぬ か っ た 。 またCratenemertidae科 は 側 系 統的 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 さ ら に 厳 密 合 意 樹 上 で はPlectonemertidae科 が 最 も 派 生 的 、 Cratenemertidae科 が 最 も 原 始 的 な 位 置 を 占 め た 。 以 上 の 結 果 は 、Gibson(1989)とCrandall

(1993)の 新 分類 体 系 が 決 して 適 切 で は な く、 む し ろ 、 伝統 的 分 類 体 系の 方 が 妥 当 であ る こ と を 示 した 。

  第5章 は 日 本 産 単 針 類 の モ ノ グ ラ フ に あ て ら れ て い る 。 我 が 国 か ら は こ れ ま でStimpson, Yamaoka,Iwataな ど に よ っ て43種 が 報 告 さ れ て い る が 申 請 者 の 研 究 に よ り 新 た に19種 の 生 息 が 確認 さ れ た 。 この う ち Diopsonemer tes acan thocephalaは新属 新種と して、Correanemer tes akkeshiensis、Paramphiporus bilineatus、Pfulvescens. Poseidonemertes thykyuensis¥

Zygonemer tes dichoduc ti fera、Nipponnemer tes rubra、Nipponnemer tes sadoensis.  Nemer topsis se toensis、  Ototyphlonemertes dolichobasis、Prostoma limnicolum、  Sacconemer topsis shizunaiensis.殆trastemma crystalliumの12種 は 新 種 とし て 記 載 し た。 ま た 、Yamaoka (1940) に よ っ て北 海 道 か ら 報告 さ れ たNemer tell ina minuぬ は ド イツ で 原 記 載 され た 個 体 と は異 な る 上 にNemer tell ina属 の 他 の ど の 種 と も異 な る た め 、 新種 ルyamaoわjと た。 さ ら に 、 み霤 叩 …rfes レj朋SC朗 &DfD妙 曲J弸 帥 釘feS船rf朋Dレ ゴ 、 ロnゴ わぬjj、 伽 苫tPめaDCUぬ £a丶 ロZP6.悶 の5 種 は 日 本 初 記 録 種 で あ る 。 ま た 、 既 知 種 の う ち 励 口Pct甜 ― 厨fsUjjは 新 属 跏 |ect弸8孵J|a丶 殆 むasfe―n鱈Hか 叩sとFsfj叩 如njは 新 属 腸 朋 ね む1asfe脚 噛 を 創 設 し て そ れ ぞ れ 収 容 し た 。 伽 帥 ゆ り 恥 仰ressuss帥sUIwata(1945) はStimpson(1857) の 記 載 し たA晦 ′ess恥 と は 明 瞭 に 異 な る た め 、 新 名 イ .pa朋 卿rPss恥 を 与 え た 。 本 研 究 に よ っ て 日 本 産 単 針 類 の 種 数 は62

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種 と な った 。

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学 位論文 審査の要旨

     学位論文題名

Taxonomic Studies on lVIonostilifera

(Nemertea :Enopla :HOplonemertea )      (単針類紐形動物の分類学的研究)

  21 世 紀 は 生 物多 様性 研究 の時 代で ある といわ れる 。地 球上 の予 測生 息種 数 は 控 え め に 見 積 も っ て も 約 2 億 種 と い わ れ てい るが 、そ のう ち既 知種 は約 17 5 万 に 過 ぎ ず 、全体 の1 %に 満た ない 。生 物多様 性に 関す る全 ての 学問 をり ー ド する のは 分類 学に 他な らず、 なかでも海産無脊椎動物の分類は熱帯雨林の昆 虫相と並んで研究の遅れが指摘されている分野である。

   紐形 動物 門は 、そ の系 統学的 位置に関していまだに納得のいく共通理解が得 ら れて いな い極 めて 興味 深い海 産無脊椎動物の一群である。しかしながら、採 集 や標 本作 製が 難し いな ど幾っ かの点で研究対象として非常に扱いにくく、解 明 の遅 れて いる 分類 群で ある。 単針類はその様な紐形動物門内のーつの上目を 構 成 し 、 8 科 96 属 約 500 種 が 知 ら れ て い る 。 単 針 類 に 関 す る こ れ ま で の研 究 はそ の殆 どが 断片 的な 種の記 載にとどまり、分類群全体の系統解析などは行 わ れて こな かっ た。 また 近年相 次いで科以上の高次分類体系が提唱されている が、未だに各研究者間で意見の一致を見ていない。

   申請 者は 単針 類を 研究 対象と し、日本産種の学名の命名規約上の問題や、或 る 属の 科へ の所 属と いっ た分類 学的諸問題について検討した。また、単針類全 96 属 の 分 岐 分 析を 行っ て現 行の 科レ ベル の分類 を評 価す ると 同時 に、 近年 提 唱 され た高 次分 類体 系の 妥当性 を検証した。さらに日本産単針類全種に関する 分類学的情報を網羅したりビジョンを行っている。

    Emplectonema mitsuii, Paranemertes katoi, Amphiporus  ogumaz, Prostoma roseocephalum の 4 種 は 1947 年 初 版 の 『 改 訂増 補 日 本 動 物 圖 鑑 』 が 初 出 で あ る が、 その 公表 形態 の特 異性に より、これまで海外の研究者に認知されていな か った 。申 請者 はこ れら 4 種の 学名 が国 際動 物命 名規 約上、 適格かつ有効であ る 事 を 指 摘 し たほ か、 学名 の著 者、 出版 年、お よび その 引用 形式 を示 した 。

雄 夫

駿 晴

倉 田

馬 片

授 授

教 教

査 査

主 副

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   更 に 申請 者は、単 針類の一属 Duosnemertes が、それ まで無視 されてい た形質 を 持つ こ とを明ら かにした上 で、科へ の所属に 関して検 討し、本 属をそれ まで のAmphiporidae 科からCratenemertidae 科に移行した。

   属 レ ベ ルの 系 統関 係 の 推定 に は、 全 属 の模 式 種 の文 献 情報 を も とに 50 の形 態 形質 、 お よび 1 つ の 生態 学 的 形質 を 抽出して 系統解析 のための 分類形質 とし て 採用 し た。多針 類の一種を 外群とし て解析を 行った結 果得られ た厳密合 意樹 は 、 Plectonemeridae 科 の 単 系 統 性 を 支 持 し た が 、 Amp hip oridae 科 、 Emplectonematidae 科、Prosorhochmidae 科、Tetrastemmatidae 科が多系統群である ことを示した。Carcinonemertidae 科、および Ototyphlonemertidae 科については科 内の系統を評価できなかったが、 Cratenemertidae 科は側系統群である事が示唆さ れた。また、Cratenemertidae 科が単針類の中で最も原始的、Plectonemertidae 科は 最 も派 生 的 なグ ル ープ で あ るこ と を明 らかに し、近年 提唱され たこの 2 科 をま と め る 分 類 体 系 よ り は 、 伝 統 的 分 類 体 系 の 方 が 妥 当 で ある こ と を示 し た 。    我 が 国 から は これ ま で 42 種 の 単針 類 が報 告 さ れて い たが 、 申 請者 の研究に よ り 新 た に 20 種 の 存 在 が 確 認 さ れ た 。 こ の 結 果 、 日 本 産 単 針 類 は 7 科 22 属 62 種 と な る 。 こ の う ち 3 属 は 新 属 、 14 種 は 新 種 、 3 種 は 新 組 み 合 わ せ と し て 記載 し 、 1 種につ いては新名 を与えた 。また、 このうち 3 属は日本 初記録属 、 5 種 に つい て は日 本 初 記録 種 で ある 。 これによ り日本産 単針類の 分類学的 知見 はかなり増大したと言える。

  3 種の新 組み合わ せのうち の一種Emplectonemella mitsuii は、外部形態の特徴 から容 易に既知 種Emplectonema mitsuii と同定されるが、神経系は副側神経をも ち 、体 壁 筋は螺旋 筋層をそな える上、 体壁縦走 筋層が前 方で二層 に分かれ 、分 裂 型の 前 頭隔壁を 持っなど形 質状態の 組み合わ せが特異 であり、 既存のど の属 に も 所 属 さ せ る こ と が 困 難 で あ る と 判 断 さ れ た た め 新 属 を 創 設 し た 。    以 上 のよ うに、本 研究は単針 類紐形動 物の分類 学に関す る知見を 大いに深 め た だけ で なく、系 統関係に関 する今後 の研究に 新しいき っかけを 与えるも のと し て評 価 される。 ある地域に おける特 定の動物 群を網羅 的に記載 した成果 は分 類 学と い う学問領 域の枠内に とどまら ず、生態 学や生物 地理学な どの周辺 領域 へ 大 き な 波 及 効 果 を も た ら す 。 こ の 観 点 か ら も 本 研 究 は高 く 評 価さ れ る 。    公 開 発表 において 、副側神経 が支配す る特定の 器官の存 在、およ び申請者 の 導 いた 系 統仮説が 今後いかに 検証され るかにつ いて質問 がなされ たが、申 請者 はおおむね妥当な回答を行った。

   よ っ て審 査員一同 は、申請者 が北海道 大学博士 (理学) の学位を 授与され る

資格のあるもと認めた。

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