博 士 ( 農 学 ) ピ ヤ ヌ ッ チ ニ ア ム サ ッ プ
学位論文題名
Studies on Thermotolerant Lactic Acid Bacteria
(耐熱性乳酸菌に関する研究)
学位論文内容の要旨
乳 酸 苗 は 内 生 胞 子 非 形 成 グ ラ ム 陽 性 細 菌 の 多 様 な グ ル ― プ か ら 成 り 、 発 酵 食品 生 産に 広く 関 与 し 、 最 近 で は プ ロ パ イ オ テ イ ク ス と し て 大 き く 注 目 さ れ て い る 。 乳 酸 菌 の 分 野で は これ まで に 多 く の 研 究 ガ 行 わ れ て い る ガ 、 耐 熱 性 と い う 視 点 か ら の 研 究 は ほ と ん ど 見 当 た らな い 。こ こで 耐 熱 性 乳 酸 苗 (TLAB) と は 、 中 温 菌 に 属 す る ガ 、 よ り 高 い 温 度 で も 生 育 す る こ と ガ 可 能 な も の と 定 義した。いく つかの酪農スタータ ―乳酸菌、即ちLactobacillus delbrueckii、Lactobacillus helveticus、 Streptococcus thermophilusは 、 その 生 育温 度の 範 囲か ら耐 熱 性を 持つ 種 であ ると 考 える こと ガ で きるガ、自然 界から実際にどのよ うなTLABガ分離さ れるのかは不明で ある。
こ の よ う な 背 景 か ら 、 本 研 究 は 耐 熱 性 に 着 目 し て 、 日 本 、 タ イ 両 国 の 様 々 なサ ン プル から 多 く のTLABを 分 離 し 、 そ れ ら を 生 理 学 的 及 ぴ 分 子 生 物 学 的 手 法 に よ り 同 定 し 、 乳 酸 菌 の 多 様 性 解 析 を 目 的 と し て 行 わ れ た も の で あ る 。 そ の 結 果 、 収 集 し たTLABの 中 に 新 種 を 発 見 し 、 Lactobacillus thermotoleransと 命名 し て登 録し た 。諸 性質 を 検討 した 結 果、 本菌 種 はこ れま で 知 ら れ て い るLactobロcillus属 乳 酸 菌の 中 で最 も高 い 生育 適温 を 示し 、調 ぺ た範 囲で は 鶏の 腸管 に 特 異的に分布す ることガ明らかにな った。
1.TLABの分I及び 同 定
日 本 、 タ イ 両 国 の 樣 々 な 自 然 界 の サ ン プ ル か ら 比 較 的 高 温 、 即 ち40丶‑50℃ 、 の 培 養 条 件 を 用 い て162株 のTLABを 分 離 し た 。 こ れ ら に つ い て 、 ま ず グ ラ ム 染 色 性 、 形 態 、 カ タ ラ ― ゼ 活 性 、 乳 酸 生 成 能 を 調 ぺ た 。 さ ら に 大 腸 菌 のVlとV3領 域 に 相 当 す る 保 存 性 の 低 い16S rRNA遺 伝 子 の 約500塩 基 をPCRで 増 幅 し 、 そ の 配 列 を 決 定 す る こ と に よ り 同 定 を 行 っ た 。 得 ら れ た 塩 基 配 列 をGenBankの 登 録 配 列 と 比 較 し た 結 果 、 分 離 株 は エ ロcfD6ロc朋H5、Pピ めDcDcCW、DzfPmcDccw、
& ′ 印fDcDccw、Bロc朋 郷 属 に 分 類 さ れ 、 大 部 分 の 株 ガGenBankに 登 録 さ れ た 既 知の 菌株 と99% 以 上 の 相 同 性 を 示 し た 。 し か し 、 タ イ 国 の 鶏 童 か ら 分 離 さ れ た6株 は 例 外 で あ り 、 様 々 な エ ロcfD6ロc所 瓣Spp.と 最高 で も92.O% の相 同 性で あっ た 。こ れら の 分離 株に っ いて は、さらに16S rI水A遺 伝 子 の 全 長 の 相 同 性 を 調 べ た 結 果 、5株 (G12、G22、G24、G35、G43、G44) に お い て 95% と 低 い 値 を 示 し た 。 し た ガ つ て 、 こ れ ら は 新 種 で あ る こ と ガ 期 待 さ れ た 。
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2.新規TLABの特嶺
タ イ国 の 鶏童 から 得ら れた5株 の完 全 長16S rRNA遺伝子 の配列と、データペースか ら得られ たこれらの相同配列を もとに新穏と思われる株の系 統分類を行った。得られた系統樹は、これら 5株ガLactobロcillus属 のLactobacillus caseUPPめDcDcc鮒グループに眉することを示した。G35株 にもっとも近縁の種はエロcfD6ロcf肌岱朋MC甜ロPDSM13345TとエロCfD6ロCf〃瓣斥朋P門m所ATCC14931T で 、 そ れ ぞれ 相同 性は95.1% と95.O%で あ った 。分 離5株の クラ スタ ― とム ヵm開m朋ATCC 14931Tと の 分岐 パタ ―ン は高 い ブ― ツス 卜ラ ップ 値で支 持された。これら5株は、G十C含量、
脂肪 酸組 成 とDNA−DNA相 同性 試 験な どの 生理 的お よ び分 子生 物学 的 特徴 の比較にお いても、
近縁種ム所甜c甜ロPや 工,カ´・m開mmとは明確に区別された。G十C含量は50mol%であり、直鎖不 飽和脂肪酸C18ニ1を主成分として含んでいた。ムケ所P門m所と工.朋Mc舛ロPとのDNA−I)NA相同性 は25%以下であり、こ れらガェロcfD6ロc所恥属に おける新しいグループを代表するものであるこ とガ 明ら か とな った 。こ れら5株 はへ テ ロ乳 酸発 酵を行い 、至適生育温度は42℃、許 容最大生 育温度は48−50℃であり、工ロcfD6口c〃た岱属としては最も高い生育温度特性を示した。従つてこれ らの分離株に対し工.めP′mDfD比′ロ 餌の命名を提案し、G35を基準株として全株を我ガ国およびド イツの公的菌株保存機関に寄託した(JCM11425T:DSM14792Tト
3, 分 子 学 的 手 法 を 用 い た 童 便 サ ン プ ル 中 の 工 . thermotoleransの 検 出 と 定 量 鶏童中の工. thermotoleransを検出するため、本菌および鶏童中に菌数ガ多い五,nterococcus属乳 酸菌 に特 異的 な16S rRNAを標 的 としたオリゴヌクレオ チトプローブをデザインし た。これらの プロ―ブの特異性を、ド ツトブロツ卜ハイブリダイゼーシヨン(dot blot hybridization)やFISH (fluorescent in situ hybridization)により確認した。真性細菌の16S rRNA領域に相補的なEUB338 ユニパーサルプローブを 、サンプル中に存在するす べての細菌を検出するポジテ イブコントロー ルと して 使用 し た。 プロ ーブEUB338による定量では、 鶏童中の全細菌細胞数はサ ンプルによつ て2x1010から9x1010 cells/g dry weightの聞で変化した。すべてのサンプルにおいて優占するグル ープはenterococciグループで、全細菌数の7.1%に相当した。lactobacilliグル―プとbi6dobacteda グル―プに対するプロ― ブで検出された細胞は、全細胞数に対し、それぞれ平均1.7%と2.2%で あった。E.脇―DfD′洲 恥特異的プロ―ブに対して は、タイ国の鶏童だけでなく 北大農場(北方 生物圏フイールド科学セ ンターゆ鶏童からも、全細 菌数の平均0.1%の割合で検 出された。DGGE
(denanmnggradientgelelectrophoresis)を用いて鶏以外の動物における本新種の分布を検討した結 果、本種は馬、ロバ、ブ タ、ヒ卜の童便には存在し ないことガ示された。したガ つて、本種は鶏 の腸管に特異的に存在する乳酸菌であることガ強く示唆ざれた。
以 上 の 様 に 、 本 研 究 はTLABの 多 様 性 解 析 を 行 う 中 で 新 規TLABを 発 見 し 、 こ れ を 新 種ム thermotoleransとして確立 、登録したものであり、学 術的価値ガ高いだけでなく、家禽の腸管微 生物の分類学および生態学 に基礎的知見を加えるもの である。さらに将来、本菌種ガ家禽のプ口 パ イ オ テ イ ク ス と し て 利 用 さ れ る な ど の 可 能 性 も 期 待 さ れ る と こ ろ で あ る 。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Studies on Thermotolerant Lactic Acid Bacteria
(耐熱性乳酸菌に関する研究)
本 論 分 は 、5章 か ら な り 、 図12、 表16、 文 献81を 含む 総 頁 数108の 英 文 論 文で あ り 、 他 に参 考 論 文1編 が 添 え ら れ て い る 。
孚L酸薗 は内生 胞子 非形成 グラム 陽性細 菌の多 様なグンレープから成り、発酵食品生産に広く関与して いる 。最近 ではプ ロバ イオテ ィクス として 大き く注目 され、 これま でに多くの研究が行わ加ているが、
耐 熱 陸 と い う視 点 か ら の 研 究が ほ と ん ど 見当 た ら な い 。こ こ で 耐 熱 性乳 酸 菌(TLAB)と は、 中 温 菌 に 属 する が 、よ り高い 温度で も生 育する ことが 可能な ものと 定義 した。 いくっ かの酪 農ス タータ ー乳 酸 菌 は、 そ の生 育温度 の範囲 から 耐熱陸 を持つ 種であ ると考 える ことが できる が、自 然界 から実 際に どの ようなTLABが分 離され るの かは不 明であ る。
そこ で本 研究は 、耐熱ltttこ着 目して 、日本 、タ イ両国 の様々 なサン プ′レ から 多くのn.ABを分離 後 、 それ ら を生 理学的 及び分 子生 物学的 手法に より同 定し、 乳酸 菌の多 様性解 听を目 的と して行 われ た。 その結果、収集した'1IABの中に夢種を発見し、Lactobacillus thermotoleransと命名して登録した。
諸性 質を検 討した 結果 、本菌 種はこ れまで 知ら れてい るLactobacぬ ゞ属乳酸菌の中で最も高い生育適 温 を 示 し 、 調 べ た 範 囲 で は 鶏 の 腸 管 に 特 異 的 に 分 布 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。
1.11.ABの 分離 及び同 定
日本 、タイ 両国 の様々な自然界のサンフ゜/L′カゝら、40丶一丶50℃の培養条件を用いて162株のTLABを 分離 した。 これら につ しヽて 、まず グラム染住性、形態、カタラーゼ活性、羽麗吐成能を謂きぺた。さら に 大 腸 菌 のVlとV3領 域 に 相 当 す る16S rRNA遺 伝 子 の 約500塩 基 をPCRで 増 幅し 、 そ の 配 歹IJを 決 定し たo得られ た塩基 配列をGenBankの登録配列と比較した結果、分離昧はLnctobacz7lus丶Pediococcus丶 Enterococcus、Streptococcus、Bacillus属 に分類 され 、その 多くカ 織の菌 株と99%以ヒ の相同 性を示 し た。し かし、 タイ国 の鶏糞 から 分離さ れ,た6株 は儚il外 であ り、さ らに16S rRNA遺伝 子の全 長の相 同 陸 を調 べ た 結 果 、5株 にお いて様 々な励 伽6田ぬ恥pp.と の相同 陸が,95%と 低いこ とから 、これ ら −1268―
篤 男
和 蔵
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田
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松 浅
授 授
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教 助
査 査
査 査
主 副
副 副
は新種 であることが期待され庇。
2.新 規11.ABの 特 徴
タ イ 国 の 鶏 糞 か ら 得 ら れ た5株 の 完 全 臣16S rRNA遺 医 子の 配列 と 、デ ータ ベ ース から 得 られ たこ れ ら の 相 同 配 列 を も と に 新 種 と 思 わ れ る 株 の 系 統 分 類 を 行 つ 也 得 ら れ た 系 統 附 は 、 こ れ ら5株 が む 臓 漑 捌 觝 属 の め 伽 ぬe絋c鰓 浄 鹹 沈 卿 班 ク れ ← プ に 属 す る こ と を 示 し た 。 も っ と も 近 喙 の 種 は ム 嫐 轟d脇 朋 峨 恥PDSM13345Tと [a吻 缸 ぬ8廟 粥 聞 ぬ 朋AKニC14931Tで あ る が 、 分 離5株 の ク ラ ス タ ー と ム 細1翻 ぬ 朋ArCC14931Tと の分 岐 パタ ーン は 高い ブー ツ スト ラッ プf直 で 支持 され た 。こ れら 5株は、G十C含量50rn()lo/ぺ直鎖 不飽f朋翻 方酸C18二1を主成 分として含んでお り、生理的および分 子 生 物 学 的 特 徴 の 比 較 に お い て も 、 近 縁 種 己 職 嬲 蝋 や ム 向 刪 伽 と は 明 確 に 区 別 さ れ た 。 厶 0打 開 ぬ 朋 と ム 朋 縦 繊Bと のD1W江 削A相 同 性 は25% 以 下 で あ り 、 こ れ ら が ム 嫐 轟d觚 属 に お け る 新し いグ ン レー プを 代表するもの であることが明ら かとなった。これら5株はヘ テロ乳酸発酵を行い 、 至 適 生 育 温 度 は42℃ 、 許 容 最 大 生 育温 度は4&5a℃ であ り、 ム 嫐轟 捌Z舩 属と し ては 最も 高 い生 育温 度 特 陸 を 示 し た 。 従 っ て こ れ ら の 分離 昧に 対 しム ぬMDf(励 切 留の 命名 を 提案 し、G35を 基 準昧 とし て 全 昧 を 我 が 国 お よ ぴ ド イ ツ の 公 的 菌 株 保 存 鬮 鞨 に 寄 託 し た (JCM11425T;DSM14792T) 。
3.分子学的手法を用いた糞便サンプル中のムthermototer rmsの検出と定量
鶏 糞 中 の エthermotolenmsを 検 出 す る た め 、 本 菌 お よU賊 中 に 菌 う ミ 多 いEnterococcus属拏 蹴 に 特 異 的 な16S rRNAを 標 的と した オ リゴ ヌク レ オチ ドプ ロ ーブ をデ ザ イン した 。 これ らの プ ロー ブ の特異陸を、ドットブロットハイブリダイゼーション(d.o blot hybridization)やFISH (fluorescent in situ hybridization)に より 確 認し た。 真 勝田 菌の16S rRNA領 域 に相 補的 なEUB338ユ ニ バー サル プ ロー ブ を、サンフ シレ中に存荏するす べての細菌を検出 するポジティブコントIローッレとして使用した。すべて の サ ン フ シ レ にお いて 優 占す るグ ル ープ はenterococciグ ルー プ で、 全細 菌 数の7.1% に相 当 した 。 lactobacilliグンレープとbifdobacteriaグンレープに対するプローブで検出された糸田胞は、全細脆激に対し、
それぞ 加,平均1.7%と22%であっ た。五thermotolerans特異的プローブ に対しては、タイ 国の鶏糞だけ で なく 北大 農 場qヒ 方生 物圏 フ イー ルド 科 学セ ンタ ー )の 鶏糞 か らも 、全 細 菌数 の平 均0.1%の割合 で 検出 され 也DGGE (denaturing gjadientgeleledroph)Bめを用いて鶏 以外の動物におけ る本新種の分 布 を検 討し た 結果 、本 圄 媽、 ロバ 、 ブタ 、ヒ ト の糞 便に は 存荏 しない ことが示された。 したがって、
本睡は鶏の腸管に特異的に存在する乳酸菌であることが強く示唆され也
以 上 の 様 に 、 本 研 究 はTLABの 多 様 陸 解 析 を 行 う 中 で 新 規TLABを 発 見 し 、 こ れ を 新 種 己 thermotoleransと して 確 立、 登録 し たも ので あ り、 学術 的 価値が高いだけ でなく、家禽の腸管 微生物 の 分類 学お よ 乙陛 態学 に 基礎 的知 見 を加 える も ので ある 。 さらに将来、本 菌種が家禽のプロバ イオテ イ クス とし て 利用 され る など の可 育 旨陸 も期 待 され ると こ ろで ある 。
よっ て審 査 員一 同は 、 ピア ヌッ チ ニヤ ンサ ッ プカ 瀾[ ± (農学)の学位 を受けるのに十分な 資格を 有 する もの と 認め た。
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