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学位論文題名 Studies on symbiont virus of endoparasitoid wasp

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)田中康次郎

     学位論文題名

Studies on symbiont virus of endoparasitoid wasp

( 寄 生/ヾ チ 共 生 ウ イ ル ス ( ポ リ ド ナ ウ イ ル ス ) に 関 す る 研 究 )     

学 位論文内容の要旨

  寄 生 パ チ の 一 種 で あ る カ リ ヤ コ マユ パ チ(Cot:esia kariyai)は ア ワヨ ト ウ

(Pseudaヱeとia separata)の幼虫を宿主とする。雌バチによルポリドナウイルス・毒 液と共にアワヨトウ幼虫体内に産下された卵は、翌日には孵化し宿主体内で幼虫発育を完 了し11日後に体外に脱出する。さらに、6日間の蛹期を経て成虫となり再び宿主アワヨ トウ幼虫を求めて活動する。この一連の生活史の中で、共生ウイルスであるポリドナウイ ルスはカリヤコマユパチが寄生を成功させるために必要不可欠な働きを担っている。ポリ ドナウイルスはカリヤコマユバチの卵・幼虫が宿主アワヨトウ幼虫の生体内で生存し続け るために、その生体防御反応の回避や生理状態のコントロール等様々な現象に関与してい るが明らかにされている。

  本研究ではこのポリドナウイルスのエンベロープタンバク質の一種である免疫回避夕ン パク質(エEP; immunoevasive protein)が、宿主アワヨトウ幼虫の血球細胞による包 囲化作用を回避するタンバク質であることを証明した。さらに、免疫回避夕ンバク質の一 次構造の決定、遺伝子の所在や発現様式等について詳細に調べた。また、このエンベロー プタンパク質とポリドナウイルスのキャプシドタンバク質との発現様式の違いについても 明らかにした。そして、カルヤコマユバチの卵巣内におけるポリドナウイルスの存在とそ のゲノムDNA合成の時間経過を明確に解析した。これら一連の研究により、カリヤコマ ユバチとその共生ウイルス・ポリドナウイルスの関係を理解する上で重要な知見が得られ た。具体的には、雌パチ卵巣部のcDNAライブラリーからェEP cDNAクローン(エEP−1) とェEPのホモログ(エEP一2)を単離するのに成功した。これらのクローンのシークエンス の結果 、工EP−1と工EP−2はそれぞれ全長1088、1050 base pairsで、coding region の長さ は278、272アミノ酸残基であった。推定される一次構造上ではどちらもシステ イン残基が全体の10%にも及ぶシステインルッチなタンパク質であった。また、それぞ れ5つ のEGF様 モ チ ー フ の 繰 り 返 し と3つ のN−glycosilation siteが見 い ださ れ た 。Western blotとNorthern blot解 析の 結 果 、産 生 され た ェEP夕ン バ ク質 は 雌 バチ卵巣部において見られ、そのmRNAの発現は卵巣部の側輸卵管細胞に限定されている ことを ユn siとuhybridizationを行うことによって明らかにした。Genomic Southern blot解析の結果では、工EP遺伝子は寄生バチの染色体上にのみコードされていることを 示した。エEPとポリドナウイルスキャプシドタンパク質のそれぞれに対する抗体を用い て免疫組織染色を行いそれらの発現様式を比較したところ、キャプシドタンパク質はポリ ドナウイルスが産生されるカリックス細胞を含む側輸卵管中に、工EPはカリックス細胞

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以外の側輸卵管中にシグナルが検出された。また、蛹時期での雌バチ卵巣カリックス細胞 におけるポリドナウイルスゲノムDNAの合成をチミジンの取り込みにより、キャプシド タンパク質の発現、エEPの発現をWestern blot解析により比較したところ、これらの 問には時間的な隔たりが見られた。すなわち、蛹化1日後にポリドナウイルスのゲノムDNA 合成が開始され、2日後にキャプシドタンパク質の合成が、さらに、3日後にェEPの合 成 が 開 始 さ れ る こ と に よっ て ウ イ ル ス 粒 子 が 形 成 され る こ と を 明 らか にし た。

  以上の実験結果から、エEP遺伝子は元々寄生バチ・カリヤコマユバチのゲノムにコー ドされる遺伝子であり、ポリドナウイルスはこの遺伝子産物エEPをエンベ口ープタンバ ク質として表面にまとうことによって宿主アワヨトウ幼虫の血球細胞による免疫反応を回 避しているものと結論付けられた。これは、共生関係を長期間維持する過程で元々宿主で ある寄生バチの遺伝子産物をポリドナウイルスが自らの構造夕ンパク質として利用し始め た可能性を示すものであり、寄生パチとポルドナウイルスの共生進化を考える上で重要な 知見と考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    芦田 正明 副査    教 授    東    正剛 副査    助教授   早川洋一

    学位論文題 名

Studies on symbiont virus of endoparasitoid wasp     (寄生バチ 共生ウイルス(ポリドナウイルス)に関する研究)

  寄 生 バ チ の 一 種 で あ る カ リ ヤ コ マ ユ バ チ (Cotesia kariyai) は アワ ヨ ト ウ

(Pseudaヱetia separata)の幼虫を宿主とする。寄生の際、雌バチは卵と共にポリド ナウイルス・毒液を宿主アワヨトウ幼虫体内に注入する。宿主体内に入った卵は2日後に は孵化し宿主体内で幼虫発育を完了し11日後に体外に脱出する。さらに、6日問の蛹期 を経て成虫となり再び宿主アワヨトウ幼虫を求めて活動する。この一連の生活史の中で、

共生ウイルスであるポリドナウイルスはカリヤコマユパチが寄生を成功させるために必要 不可欠な働きを担っている。ポリドナウイルスは、カリヤコマユパチの卵・幼虫が宿主ア ワヨトウ幼虫の生体内で生存し続けるために、宿主の生体防御反応の撹乱や宿主幼虫発育 の制御など様々な現象に関与しているが報告されている。本研究はこのカリヤコマユバチ のポリドナウイルスについて生化学的・分子生物学的解析を通してその役割や進化的背景 を明らかにすることを目的としたものであり、申請論文は全部で3章より構成されている。

  第1章では、ポリドナウイルスのエンベロープタンパク質の一種である免疫回避夕ンバ ク質 (IEP, immunoevasive protein)が、宿主アワヨトウ幼虫の血球細胞による包囲 化作用を回避する活性を有するタンバク質である確証を提示した。さらに、エEPのcDNA の単離を通して一次構造の決定、遺伝子の所在や発現様式等について詳細に調べた。また、

このェEPとポリドナウイルスのキャプシドタンパク質との発現部位の違いについても明 らかにした。具体的には、キャプシドタンバク質はポリドナウイルスが産生されるカリッ クス細胞を含む側輪卵管中に、エEPはカルックス細胞以外の側輸卵管中に存在し異なる 部位での合成が示唆された。続く第2章では、カリヤコマユパチの卵巣内カリックス細胞 におけるポリドナウイルスの存在を証明し、さらに、ゲノムDNA、キャプシドタンバク 質、IEPの合成の時間経過を正確に解析した。ウイルスゲノムDNAの合成をチミジンの 取り 込みにより 、キャプシ ドタンパク 質の発現、IEPの発現をWestern blot解析によ り比較したところ、これらの間には時間的な隔たりが見られた。すなわち、蛹化1日後に ポリ ドナウイルスのゲノムDNA合成が開始され、2日後にキャプシドタンバク質の合成 が、 さらに、3日後にIEPの合成が開始されることによってウイルス粒子が形成される ことを明らかにした。これら一連の実験結果でもIEPと他のウイルス構成成分との違い を明らかにし、カリヤコマユパチとその共生ウイルス・ポリドナウイルスの関係を理解す

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る上で重要な知見を得た。第3章では、ポリドナウイルスの培養細胞とアワヨトウ幼虫血 球細胞への感染について解析し、この結果からIEPがウイルス感染時に直接関与する可 能性の無いことを証明した。また、培養細胞で発現する3種類のウイルス遺伝子を同定、

構造決定し、これらの遺伝子が寄生されたアワヨトウ幼虫血球細胞でも発現していること を明らかにした。

  以上の実験結果から、エEP遺伝子は元々寄生バチ・カリヤコマユバチのゲノムにコー ドされる遺伝子であり、ポリドナウイルスはこの遺伝子産物エEPをェンベロープタンバ ク質として表面にまとうことによって宿主アワヨトウ幼虫の血球細胞による免疫反応を回 避している可能性が強く示唆された。これは、共生関係を長期間維持する過程で元々宿主 である寄生バチの遺伝子産物をポリドナウイルスが自らの構造夕ンバク質として利用し始 めた可能性を示すものであり、寄生バチとポリドナウイルスの共生進化を考える上で重要 な知見と考えられる。

  審査員一同は、これらの研究成果を高く評価し、大学院課程における取得単位なども併 せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるに十分な資質を有するものと判定した。

参照

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