博 士 ( 医 学 ) 庄 野 泰 弘
学位論文題名
EXPERIMENTAL STUDY OF THORACOLUIVIBAR BURST FRACTURES
‑A Radiographic and Biomechanical Analysis of Anterior and Posterior Instrumentation Systems‑
(胸腰椎破裂骨折の実験的研究
一前方・後方脊椎インストルメンテーションのX 線学的,生体力学的検討一)
学位論文内容の要旨
【 は じ め に 】 近年 , 脊 柱 の 様々 な 病 態 に 対し て 内固 定金 属(脊 椎イン ストル メン テーシ ョン) が使用 さ れ て い る . 脊 椎イ ン ス ト ル メン テ ー シ ョ ンは , 脊柱 変形 の矯正 と固定 ,損傷 脊柱 の整復 と固定 ,脊柱 機 能 障 害 や 神 経 機能 障 害 の 病 変除 去 後 の 脊 柱機 能 再建 など に応用 される .現今 ,多 種多様 なイン ストル メ ン テ ー シ ョ ン シス テ ム が 使 用さ れ て い る が, 脊 柱の 前方 よルア プロー チするanterior instrumentation sy stem(前方法)と脊柱の後方よルアプローチするpos terior ins tr umentation sy st em(後方法)とに大別 さ れ る . 後 方 法は , 前 方 法に 比較し て手技 が簡 単なこ と,椎 弓根screw (pedicle screw)が 開発さ れ後方 か ら 強 固 な 固 定が 得 ら れ る よう に な り , 脊柱 前 方に 不安 定陸を 有する 病態に も広 く用い られる ように な っ た . 脊 椎 外 傷で は , 脊 柱 の前 方 に 不 安 定性 を 有し ,脊 柱管内 陥入骨 片によ る神 経損傷 をとも なうこ と の 多い 破裂骨 折に,posterior instrumentationを使用 した 間接的 脊柱管 内骨片 整復・ 固定術が行われてい る . ,本 研究の 目的は ,破 裂骨折 を人工 的に作 製した ヒト 胸腰椎 モデル を使用 し, 臨床に 応用さ れてい る 2種 類 のposterior instrumentationによる 後方整 復の 効果をX線 学的に 検討し ,固定 後のカ 学的 安定性 を anterior instrumentationと比較検討することにある.
【 対 象 と 方 法 】 新 鮮 ヒ ト 屍 体 胸 腰 椎(Tl0ーL4)を24個 使 用 し た . 第1腰 椎 (L1) 椎 体 と 上 下 椎 間 板 の み に , 高 速度 で 軸 圧 縮 荷重 が 作 用 す るよ う に 設 計 した 治 具 を 使 用 して ,Ll破裂 骨 折 を 作製 した . 破 裂 骨 折 作 製 後 の 検 体 に ,posterior instrumentation; (1) 椎 弓hookとrodを 使 用 したHarrington distraction rod (Harrington法 ,固定 範囲;Tll−L3,nー12) もしく は, (2)pedicle sc rewを使用 し たAO internal fixator (AO法 ,固 定 範 囲 ;T12―L2,n=ニ12) によ る後方 整復・ 固定を 実施し た, 単純 X―pお よ びCT撮 影 を 破 裂骨 折 作 製 前 ,作 製 後 ,posterior instrumentationに よる 整 復 後 に 行っ た ,
‑ 297ー
X−pで はL1椎 体 高 と 矢 状 面 で のTi2,L2椎 体 間 の 角 度 を ,CTで は デ ジ タ イ ザ ー を 使 用 し て 脊 柱 管面積 を測定 した.Posterior instrumentationを試験 後, 前方除 圧を実 施し, 前方 骨欠損 部をグ ラフトで 再建後 (腸骨n‑ 12;Ceramic prosthesis′n =12),anterior instrumentation systemであるKaneda device に よ る 前 方 固 定 を行 っ た ( 固 定範 囲 ;T12−L2) . 力学 試 験 は , 軸圧 縮 , 回 旋 ,前 ・ 後 屈 の 合計3種 類 の 荷 重 負 加 試 験 を , 破 裂 骨 折 作 製 前 , 作 製 後 , 後 方 固 定 後 , 前 方 固 定 後 の 各 検 体 で 実 施 し た . 【 結 果 】 作 製 し た 骨 折 は , 臨 床 で 見 ら れ る 損 傷 形 態 に 類 似 し て お り ,Denis分 類 でtypeA;6例 , B;15例 ,C;3例 で あ っ た 。Posterior instr umentationに よ る整 復 で , 平 均14'の 後 弯が1゜ の 前 弯 に ,Ll椎 体 後 方 の 高 さ は ,76.6%が96.3%ヘ 改 善 し た ( 骨 折 作 製 前を100%とす る ) . 脊 柱管 内 骨 片 占 拠 率 は , 骨 折 作 製 後57.7% が 後 方 整 復 後42.3% とな り , 骨 片 整復 率 は ,Harrington法 ;12.3% , AO法 ;18.5% で 有 意にAO法 が 優れ て い た (pく0.05) . 力 学 試 験で は ,Kanedadeviceが後 方法 に比べ す べ て の 負 荷 試 験 で 安 定 し て い た が , 特 に , 軸 圧 縮 , 回 旋 負 荷 で 有 意 差 を 認 め た (pく0.002) , 【 考 察 】脊 椎 破 裂 骨 折 の病 態 は ,CTの 登 場によ り詳細 に把握 される よう になっ た.Denisら は,脊 柱を threecolun1トnに分割 し,椎 体・椎 間板 の前方 部分に よって 構成 されるanteriorcolumnと,椎体・椎間板の 後 方 部 分 に よ っ て構 成 さ れ るmiddlecolumnの 軸 圧 縮 荷重 に よ る 損 傷を 破 裂 骨 折 と 定義 し た , 破 裂骨 折 は , 脊 柱 のthreecolumnの う ち2つ のcolumnが 損 傷 す る ためmechanicalな 不 安 定 性が 存 在 し ,middle columnの 損 傷 に と もな う 脊 柱 管 前壁 の 破 壊 が 脊柱 管 内 へ 突 出し た陥 入骨 片を生 じ,神 経障沓 を懲: 起す る . し た が っ て , 胸 腰 椎 破 裂 骨 折の 手 術 治 療 では , (1) 損傷 し た 脊 柱 を正 常 な ア ラ イメ ン ト に 再 建 し, 充 分 な カ 学的 安 定 性 を 付加 す る こ と ,(2) 脊 柱 管前 方 に 存 在 す る神 経 組 織 圧 迫因 子(脊 柱管 内陥 入骨片 )を除 圧する ことが 求め られる .Posteriorinstrumentaモionに よる間 接的後 方除圧 の原 理は, 後方 より 牽 引 カ を 損傷 椎 に 加 え 脊柱 ア ラ イ メ ント を 改 善 す る こと で 椎 体 後 方の 後 縦 靭 帯 を含 むligamentous complexに 伸 張 カを 発 生 さ せ , 突出 し た 陥入 骨片 を前方 へと移 動させ るこ とにあ る(ligamentotaxis) . 本研 究 でposteriorinstrumentationは すぐれ た脊柱 アライ メン トの整 復カを 示し, 損傷 した脊 柱のア ライ メン ト は , ほ ぼ骨 折 作 製 前 の状 態 ま で 矯 正さ れ た . し か し, 矢 状面 を中心 にした 脊柱ア ライメ ント の矯 正が , 充 分 な 脊柱 管 内骨片 整復に は結ぴ 付か ず,postぱiorinstrumentationを介 しての 間接的 除圧 には一 定 の 限 界 が 存 在 した ( 平 均 脊 柱管 内 骨 片 整 復 率1514%) .CT所 見か ら 脊 柱 管 内骨 片 は 種 々 の程 度 の 陥 入 , 転 位 を 示 し てお り , 特 に 回旋 転 位 を 伴 う 骨片 は 後 方 法 では 整 復 困 難 であ っ た . ま た, 前 方 除 圧 の 際,ligamentouscomplexと 骨片の 連続陸 が断た れてい る検 体が多 く観察 され,posteriorinstrumentation によ る 間 接 的 脊柱 管 内 骨 片 整復 に は , 陥 入骨 片 の 転 位 の 程度 , 骨片 とligamentouscomplexの連 続性等 , 術前 に 確 定 不 能な 要 素 が 存 在し , 常 に 充 分な 脊 柱 管 内 骨 片整 復 を得 ること は困難 である と思わ れた .さ らに カ 学 試 験 の結 果 は , 後 方法 単 独 で は ,前 方 に 存 在 す る不 安 定陸 を制御 し強固 な支持 性を付 加す るこ とが 不 可 能 で ある こ と を 示 した , 後 方 法 単独 に よ り 再 建 され た 脊 柱 は ,anteriorとmiddlecolumnsに 広 範な 骨 欠 損 を 有し , 椎 体 を 中心 と し た 荷 重支 持 機 構 は 構 造的 に 再建 されず ,諸家 の報告 に見ら れる 術後
ー298―
後弯変形の増大やimplant failureの発生を惹起する危険性がある.前方法では,直視下に完全な脊柱管 内除 圧 が可 能で あり ,脊 柱 アラ イメ ント矯 正後の骨欠損を腸骨等により 構造的に再建しanterior instrumentationを設置するため,強固な固定陸を獲得可能である.
【結語】前方脊柱管内骨片による神経組織の圧迫を有し,anterior.middle spinal colu mnに不安定性を 有する破裂骨折の治療において,anterior instrumentationを応用した前方再建法は,固定力・除圧効果 両面においてすぐれた方法であると考える.
‑ 299―