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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 植 原 量 行

     学位論文題名

北海道南東沖における北太平洋亜寒帯循環の    西 岸 境 界 流 と し ての 親 潮 に関 す る 研究

学位論文内容の要旨

  日 本 近海 の重 要な 漁 場で ある 道東 沖〜 三 陸沖 の親 潮域 にっ い ての 研究 は, 黒 潮の 研究 に比べる と 数 少 な い . 本 研 究 で は 親 潮 の 流 速 計 に よ る 直 接 測 流 の 結 果 の 解 析 を 中 心 に 据 え て い る .   北 太 平洋 にお ける 低 気圧 性の 亜寒 帯循 環 は初 期の 風成 循環 モ デル の中 でも 示 され ,北 岸境界流 とし て アラ スカ ン・ ス トリ ーム ,西 岸境 界流としてカムチャツ カ海流,親潮が考えられて きた.し かし , これ らの 各海 流 間に は水 塊特 性の 不 連続 性が 存在 して い るこ とか ら, 亜 寒帯 循環 を理解す るた め には 各水 塊が そ の特 有の 性質 を持 っ に至 る過 程と ,そ の 水塊 を運 ぶも の とし ての 流れの特 性を 明 らか にす る必 要 があ る. これ まで の研究により,アラス カン・ストリームやカムチ ャツカ海 流は , その 水塊 形成 過 程や 流れ の特 性が 徐 々に 明ら かに され て きた が, 親潮 に 関し ては ,その水 塊形 成 過程 にっ いて の 研究 がほ とん どで , その 流れ の特 性や 変 動に つい ては ほ とん ど解 明されて こな か った .こ のこ と は, 黒潮 域と 異な り ,親 潮域 の密 度場 が 水温 より も塩 分 に支 配さ れている ため , 総観 的な 観測 ; こよ る水 温場 の変 動から流れとしての親 潮を議論することが困難で あったこ とに よ ると 思わ れる . この こと はさ らに , 親潮 という術語 の不鮮明さ,すなわち, 親潮 が

. 流れ¨を指す のか, 水塊 を指すのか いまだに判然としないことにそのまま繋がっているように 思わ れ る. そこ で, 本 研究 では 流れ とし ての親潮の特性を明ら かにするため,北海道襟裳 岬南東沖 における規潮域に2系の係留系を設置し,親潮の流れ(ER−0;41゜'30.N 143゜30.E,ER‐1;41゜30.N 143°50;E1とク リルーカムチャツカ海溝陸側斜面の流れ(ER−2:41゜30.N.lH゜30 E)を1985年9 か らL9953月 まで の 数年 間; こわ た って 測流 した .こ の 長期 測流 記録 と函 館 海洋 気象 台に よ る 41°30.N; こ 沿うCTD断面 観測 のデ ータ を用いて,親潮の流れ の時間平均的特性とその季 節変動,

及 び 海 溝 斜 面 上 の 十 数 日 周 期 の 流 速 変 動 に つ い て 調 べ , 以 下 の 主 な 結 論 を 得 た .

1.親潮の流れの時間平均的詩・睦

    a ER‑Oお ニ びER‑lで 得 ろ れ た19S59月 か ろ19943月 妄 で の 上 層 ( うOOm     以浅1に おけ るお よそ6半 間の 測 流記 録は ,その覗測期間 にお:する平均流の運動エ ネル     ぞーと渦運動ニネルぞーの比から既お2つのグループ[A】、[B]:二分:ナるニとうミできる,

‑ 1086

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グル ープ[A]の流れは観測期間である10ケ月〜1年間にわたって南西から南南西の流 れが 卓越し ,その平 均流の 大きさは水深500mで13〜lo cms―1であった.これらの 流れは高い平均流の運動エネルギー(コで雷〕,低い渦運動エネルギー(KE′)によって,

KE´/KEく1で特徴づけられる(ER1ー8609,ER1―U−91,ER1―U‑93).グループ[B】 の流 れは低 いIE,高いKE′によ ってKE´/ 瓦面>1で あり,平均流に対し流速変動 場が卓越していた(ER1−8509,ERO―8801,ER1−U−92),渦運動エネルギーの周波数解 析から,この流速変動場iま主に16〜120日周期の低周波領域の流速変動によるもので あることが示唆される.

  (b)観 測 期 間 に お け る 平 均 流 の 運 動 エ ネル ギ ー と渦 運 動 エネ ル ギ ーの 比 が KE′/KE冫1と な る 主要 因 は , 渦運 動 エ ネル ギ ー の周 波 数 特性 と100m深 水温 水 平分布図から,黒潮系暖水塊が係留点付近に(少なくとも暖水塊の中心から2゜以内に)

移流してくることによる低周波の変動によるものである.逆に黒潮系暖水塊による低 周波 変動の影響がなければ,襟裳岬南東沖における親潮域の流れは1ケ月〜1年の時 間スケールにおいてKE′/KEく1である,

    (c) ER‑1の係留位置が亜寒帯循環を特徴づける傾圧構造の中に当たること,親潮 水系と親潮中層水が鉛直的に重なっている部分に当たることを考慮すると,1ケ月より も長 い時間 スケール におけ るKE′/KEく1で ある南 西〜南南西の流れこそが親潮の 流れの典型的な特性であると言える.

    (d)クリルーカムチャツカ海溝陸側斜面上(ER‑2)の流れは比較的鉛直方向にコヒー レン トである.上層(1000m)の流速計の位置弦親潮の傾圧構造の東端にあたってい ることから,その流れは親潮の水平密度勾配の変化に影響されると考えられる.一方,

下 層(3000m)の流れ の約10ケ 月の観測 期間に おける平 均流は,90年,91年 ,93年 で等 深線に沿う南西方向に2.2〜2.9 cms―1であった.これはHallock and Terague

(1996)が提唱している北西太平洋海盆の深層循環像におニナる北海道南東沖の等深線に 沿う南下流を支持する結果となっている.

2.親潮の季節変動

    (a)暖水塊の接近:こよる流速変動がなニナれば,ER‑1で得られた親潮の流れの南西     かろ南南西方向の主軸速度成分や,月平均流の運動二ネルギーは冬季の2月が最も大     きく,夏かろ秋にかけて小さくなる.亜寒帯循蒙が北太平洋上の風の季節変動によっ     てスヒ ンアッブ,スどンダウンしていて,それが亜寒帯循粟の西岸境界流である親;甥     の流速変動に現れたと考えると,ニのような流nの季節変動は北太平洋上の風の季節     変動に対し約.)ケ月程遅れているニとが分かっ之.

    さらに,37.5゜N〜42.5゜Nの緯度帯における月平均のスベルドラップ輸送量の季節変     動とER‑1の主軸速度成分の月平均値の季節変動を比較した結果,南下する親潮に対     ‑ 1087−

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応するスベルドラップ輸送量の値が最大となる月は2月であり,ER‑1の南西向きの流 れの最大月と一致することが分かった,41°30 Nにおいて,東岸から発した非発散順 圧惑星ロスビー波が西岸まで達するのに要する時間を見積もると約20月弱となるこ とから,ER‑1で観測された南西流の2月の極大は風応カに対する亜寒帯循環全体の順 圧応答として説明できると考えられる.

  (b) 41゜30 Nに沿う断面における親潮の傾圧地衡流量も各季節毎の平均値(1988年

〜1996年)は冬季が最も大きく(南向きに約11 Sv)エ夏季が最も小さい(約6Sv).こ のような傾圧地衡流量の顕著な季節変化は,冬季において特に143°40 E‑144°E間の水 平密度勾配が大きくなるためである.この水平密度勾配の変化は143°40'Eの低塩分水 の堆積によるものである.

3. ク リ ル ‐ カ ム チ ャ ツ カ 海 溝 陸 側 斜 面 上 の 十 数 日 周 期 の 流 速 変 動     ER‑2の 等 深 線(220°T)に沿 う下 層(3000m)の流 速変 動の スペ クト ルに は ,全 て     の観測期間に共通して十数日周期にピークが認められ,その運動エネルギーはいずれ     も上層よりも大きい.このような下層においてより大きな振幅を持っ十数日周期の流     速変動は,海底勾配と浮カによって海底に捕捉された準地衡流傾圧地形陸ロスビー波     によってもたらされたと考えられる,

1088―

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

岸    道 郎 大 谷 清 隆 三 宅 秀 男 磯 田    豊

     学位論文 題名 た

北海 道南東沖 におけ る北太平洋亜寒帯循環の    西 岸 境 界 流 と し て の 親 潮 に 関 す る 研 究

  日 本 近 海 の 重 要 な 漁 場 で あ る 道 東 沖 〜 三 陸 沖 の 親 潮 域 に つ い て の 研 究 は 、 黒 潮 の 研 究 に 比 べ る と 数 少 な ぃ 。 そ の 上 、 従 来 の 研 究 は 水 温 、 塩 分 の 観 測 に 基 づ ぃ た 水 塊 と し て の 親 潮 の 研 究 に 偏 っ て 行 わ れ て き た 。 し か し 、 卵 稚 仔 の 輸 送 や 回 遊 に つ い て 考 察 す る に は 親 潮 の 流 れ そ の も の の 特 性 を 把 握 し て ぃ く 必 要 が あ る 。 こ う い っ た 背 景 に 立 っ て 本 研 究 で は 親 潮 の 流 速 計 に よ る 直 接 測 流 の 結 果 の 解 析 を 中 心 に 据 え て ぃ る 。 北 海 道 襟 裳 岬 南 東 沖 に お け る 親 潮 域 に2系 の 係 留 系 を 設 置 し 、 お よ そ6年 間 に わ た っ て 得 ら れ た デ ― タ の 解 析 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。

1.1985年9月 か ら1994年3月 ま で の500m以 浅 に お け る お よ そ6年 間 の 測 流 記   録 は 、 そ の 観 測 期 間 に お け る 平 均 流 の 運 動 工 ネ ル ギ ー と 渦 運 動 工 ネ ル ギ ― の 比   か ら 概 ね 以 下 の2つ の グ ル ー プ に 分 け る こ と が で き る 。1つ は 観 測 期 間 で あ る   10ケ 月 〜1年 間 に わ た っ て 南 西 か ら 南 南 西 の 流 れ が 卓 越 し , そ の 平 均 流 の 大 き   さ は 水 深500mで13〜15 cm s‑lの も の で 親 潮 そ の も の で あ り 、 も う1っ は 平   均 流 に 対 し 流 速 変 動 場 が 卓 越 し て ぃ る も の で 、 そ の 変 動 の 主 要 因 は , 渦 運 動 エ   ネ ル ギ ― の 周 波 数 特 性 と100m深 水 温 水 平 分 布 図 か ら 、 黒 潮 系 暖 水 塊 が 係 留 点   付 近 に 移 流 し て く る こ と に よ る 低 周 波 の 変 動 に よ る も の で あ る 。   2. 暖 水 塊 の 接 近 に よ る 流 速 変 動 が な け れ ば 、 親 潮 の 流 れ の 南 西 か ら 南 南 西 方   向 の 主 軸 速 度 成 分 . お よ び月 平均 流の 運動 エネ ルギ ―は 冬季 の2月 が最 も大 きく ・   夏 か ら 秋 に か け て 小 さ く な る 。 こ れ は 北 太 平 洋 上 の 風 の 季 節 変 動 が 亜 寒 帯 循 環   の 西 岸 境 界 流 で あ る 親 潮 の 流 速 変 動 に 現 れ た と 考 え る と 、 こ の よ う な 流 れ の 季   節 変 動 は 北 太 平 洋 上 の 風 の 季 節 変 動 に 対 し 約2ケ 月 程 遅 れ て お り 順 圧 ロ ス ビ 一 波   の 伝 搬 と し て 説 明 さ れ る こ と が 分 か っ た 。

  3. ク リ ル ― カ ム チ ャ ツ カ 海 溝 陸 側 斜 面 上 の 流 速 計 の デ ― タ に は 十 数 日 周 期 の 流

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速変動が認められ、その運動エネルギ―はぃずれも下層は上層よりも大きぃ。

このような下層におぃてより大きな振幅を持つ十数日周期の流速変動は、海底 勾配と浮カによって海底に捕捉された準地衡流傾圧地形性ロスビ―波によって もたらされたと考えることができる。

   以上の結果は、親潮の流れについて従来にはなぃ長時間にわたる流速計の係留

結果から得られたものであり、従来の水温や塩分の解析のみから得られてぃた知

見を大きく前進させるものとして高く評価できる。よって審査員一同は本論文が

博士(水産学)の学位を授与するのに十分な内容を有するものと判定した。

参照

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