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博士(農学)韓 尚勲 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)韓   尚勲 学位論文題名

韓国産小形哺乳動物の形態分類学的および分子系統学的検討

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 研究 の主 な目的 は、 韓国 産小 形哺 乳類のうち食虫類については形態分類学的分析 と 分 子 系統 学 的 解析(m tDNAのチト クロ ームb遺 伝子 )、 ネズミ 類に つい ては 分子 系 統学 的解 析(m tD NAのチ トク ロー ムb遺伝 子)を 行い 、あ わせ て周 辺地域の近縁種群 と比較して、それらの系統分類学的位置付けを行うことである。.また、その結果を用 いて 日本 の現 生哺乳 類相 との 比較 を行 うことである。得られた結果は次のとおりであ る。

1)韓 国産 モグ ラで は、 多く の形 態形 質に おいて 齢お よび 雌雄 差に よる変異が存在し てい た。 また 、生息 環境 の違 いに よる 顕著な地理的変異が存在しており、標高が高い 山岳 地域 や河 川流域 上流 部で 小形 化し 、下流の広い沖積地の個体群は大型であった。

2)ア ジア モグ ラ属 の種 間の 形態 学的 解析 におい て、 韓国 産モ グラ は上顎切歯列の特 徴 な ど 頭骨 の 形 態 的 特 徴 が コ ウ ベ モ グ ラMogera woguraに 一 致 し た 。 ま た 、mtDNA の チ ト クロ ー ムb遺 伝子 の塩 基配列 の解 析に おい ては 、調 べた402塩 基対 のう ち、 口 シ ア 産 オオ モ グ ラと の間 では わず かに1〜2個の 塩基 置換 が見ら れ、 両者 問で は体 サ イズ に大 きな 差があ るに もか かわ らず 、著しい遺伝的類似性が認められた。さらに、

日本 のコ ウベ モグラ との 間で は4.4〜5.9%の塩基置換が認められたが、アズマモグラ とは10 ‑‑10.3%、サドモグラとは10.9 ‑‑11.2%の塩基置換率であった。また、日本の コウ ベモ グラ の種内 変異 は0.5〜4.6% であった。これらの結果を総合して、韓国産モ グ ラ は コ ウ ベ モ グ ラ の 一 亜 種M. wogura coreanaと 位 置 づ け ら れ た 。 3)韓国産ジネズミ相はチョウセンジネズCrocidura lasiura、コジネズミC,suaveolens およ びニ ホン ジネズ ミC. dsinezumiの1亜 種サ イシ ュウ ジネ ズミ の3種により構成さ れて いる 。こ れら3種は 、一 般的 には 今回 新たに 発見 され たジ ネズ ミ類の有カな鑑別 形質 であ る第4前臼 歯の 形態 等に よっ て区 別でき るが 、サ イシ ュウ ジネズミだけはそ れら の形 質に おいて もコ ジネ ズミ と日 本産ニホンジネズミの中間的形態を示し、形態 学 的 に は所 属 を 決 め ら れ な か っ た 。 し か し 、mtDNAにお いては サイ シュ ウジ ネズ ミ と 日 本 産ニ ホ ン ジネ ズミ 、特 に福 岡産 の個 体は 全く 同じ ハプロ タイ プを 共有 して お り、 日本 の他 地域産 のも のと の間 では0.4〜2.9%の塩基置換がみられた。これはコジ ネズ ミと の間 に見ら れる 置換 率11.4〜13.3%より著しく小さい値であった。したがっ て 、 分 子系 統 学 的 に サ イ シ ュ ウ ジ ネ ズ ミ は ニホ ンジ ネズ ミの 一亜 種C. dsinezumi quelpartisと同定された。

4)韓国産セスジネズミApodemus agrari sは地域個体群間で塩基置換率が高く(0.5〜 2.5%)、このなかまのネズミとしては非常に高い遺伝的多様性を持った個体群である こと が明 らか になっ た。 調べ たユ ーラ シア大陸の他の地域個体群での遺伝的変異がほ

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(2)

と ん ど す べ て 韓 国 内 の 集団 問で 見ら れる こと から 、セ スジ ネズ ミ種 のmtDNAの 祖先 系統は韓半島またはその周辺で起源した可能性が示唆された。

5) ハン トウ アカ ネズミApodemus peninsulaeは地域亜種間の塩基置換率が非常に低く

(0.3〜O.5%)、他のネズミ類で見られるような種内の遺伝的多様性は見られなかった。

6) 東ア ジア 地域 のヤ チネ ズミ 類の 分子 系統学 的分析結果は、タイリクヤチネズミ属 内4種 、ヨ ー ロ ッ パ ヤ チ ネ ズミClethrionomys glareolus、 夕イ リク ヤチ ネズミC. rufocanus、 ヒメ ヤチネズミC.rutilus、ムクゲネズミC.rex間の塩基置換率は4.1〜 11.6% の変 異を示 し、 ビロ ード ネズ ミ属 内3種 、コ ウラ イヤ チネ ズミEoth en om ys r egulus、スミスネズミE.smithii、ビロードネズミE.melanogaster間の塩基置換率は 8.2〜9.0%であった。また、両属間の塩基置換率は3.8 ‑‑13.9%で各属内変異と属間変 異 に大 きな 差はな く、特に別属とされてきたコウライヤチネズミとタイリクヤチネズ ミ問ではわずか3.8〜5.4%の置換率にすぎなかった。

  以上 の結 果から 、こ れら 両属 を区 別す るこ とに は疑 問が あり 、再 検討が 必要であ る。また、少なくとも・コウライヤチネズミはタイリクヤチネズミ属に含め、その一種 Clethrionomys regulusとすべきであると結論された。`

7) 上 記 の 結 果 か ら 韓 国 産 小 形 喃 乳 類 相 の 特 徴 をま と め る と 以 下 の 通 り で あ る 。   @韓 国産 小形哺 乳類には固有種が少なく、東アジア内陸のものと類縁関係が強い。

  ◎韓 国産 現生小 形哺乳類相の形成は比較的新しく、化石や分子時計(4%7Myと仮定

】 およ び今 回の結 果か ら総 合す ると 、ほ とん どの種が第4紀更新世前期から中期(お よそ200〜80万年前後)にかけて形成されたと推察されるる

  ◎韓 国産 現生小 形哺乳類は、コウライヤチネズミにみられるような独自の遺伝的特 徴を持って分化したもの含んでいる。

  @ジ ネズ ミ類や セスジネズミのように、韓国の島々の小形哺乳類相の形成は一様で な く 、 数 回 に わ た っ て 遺 伝 学 的 起 源が 異 な る 系 統 に よ り形 成さ れた と思 われ る。

  ◎サ イシ ュウジ ネズ ミ、Kago島産 コジ ネズ ミお よび 済州 島産 セス ジネズ ミなどの よ うに 遺伝 的分化 度は低いが、形態的変化の進んだ個体群が島々、に存在している。

  ◎内 陸で も、チ ョウセンモグラとオオモグラのように形態学的には著しい差がみら れ る に も か か わ ら ず 、mtDNAの 遺伝 子上 では 大変類 似し た系 統群 が存 在し てお り、

日 本産 近縁 系統群 (コウベモグラ)でみられるような地域個体群間の高い遺伝的変異 はみられない。

  @セ スジ ネズミ のように、韓半島またはその周辺において、進化史的にみて比較的 近年に遺伝的多様性を獲得したものを含んでいる。

  以 上 の 結 果 を 踏 ま え 、 日 韓 哺 乳 類 相 の 比 較 等 に つ い て も 論 議 し た 。  .

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授    阿 部    永 副 査    教 授    諏 訪 正 明 副 査    教 授    斎 藤    裕 副 査    助 教 授    鈴 木    仁

学 位 論 文 題 名

韓国産小形哺乳動物の形態分類学的および分子系統学的検討

  本 論 文 は 総 頁 数 165頁 、 図 19、 表 35を 含 み 和 文 で 書 か れ て い る 。   本研 究の主な 目的5ま、韓 国およぴ 周辺地域 の小形哺乳類のうち食虫類については形 態 分 類学 的 分析 と 分 子系 統 学的 解 析(mtDNAの チト ク ロ ームb遺 伝 子) 、 ネ ズミ 類 に つ い ては 分 子系 統 学 的解 析(mtDNAの チ トク ロ ームb遺 伝 子 )を 行 い、 そ れ らの 系 統 分 類 学 的 位 置 付 け を 行 う こ と で あ る 。 得 ら れ た 結 果 は 次 の と お り で あ る 。 1) 韓 国産 モ グ ラの 頭 骨 の形態的特 徴等を解 析した結 果、それ らの変異 傾向はコ ウベ モ グ ラM 齶raw〇gu´ .aのそ れに一致し た。また 、mtDNAのチト クロームb遺伝子の 402塩 基対 を 調ぺ た 結 果、 ロ シア 産 オ オモ グ ラと の 間 では わ ず かにl〜2個 の 塩基 置 換が みられる だけで、両 者間の大 きな形態 差にもか かわらず 、著しい 遺伝的類似性が 認め られた。 さらに、日 本のコウ ベモグラ との間で は4.4〜5.9%、他の2種との間で は、それぞれ10〜10.3%、lO,9〜ll.2%の塩基置換がみられた。また、日本産コウベ モグ ラの種内 変異は0,5〜4.6%であったことから、韓国産モグラはコウベモグラの一 亜種M.w昭urac。reaロaと位置づけられた。

2) 韓 国産 ジ ネ ズミ 類3種 は一 般 的 には 形 態 学的 に 区別 できるが 、サイシ ュウジネ ズ ミは 有カな鑑 別形質でもコジネズミCr〇cjdurasuaye〇J印sと日本産ニホンジネズミC. ds而eZumfの 中 間 的形 態 を示し 、所属を決 められな かった。 しかし、 上述の遺 伝子に おい てはサイ シュウジネ ズミと福 岡産のニ ホンジネ ズミが全 く同じハ プロタイプをも つこ とから、 前者はニホ ンジネズ ミの一亜 種C.ds而ez mjq 伽arぬと 同定された。

サ イ シュ ウ ジネ ズ ミ とコ ジ ネズ ミ と の間 で はll.4〜13.3%の変異 が認めら れた。

3)韓 国産セス ジネズミAp。de珊Usa 〆arjusの 地域個体群問の塩基置換率は、このな かまのネズミとしては非常に高く(0.5〜2.5%)、ユーラシア大陸の他の地域個体群でみ られ る遺伝的 変異がほと んどすぺ て韓国内 の集団間 で見られ ることか ら、セスジネズ ミ 種 のmtDNAの 祖 先 系 統 は 韓 半 島 ま た は そ の 周 辺 で 起 源 し た も の と推 察 さ れた 。 4)ハントウアカネズミAp〇dem spen血s ´aeは地域亜種間の塩基置換率が非常に低く

(O.3〜0.5%)、他のネズミ類で見られるような種内の遺伝的多様性は見られなかった。

5) 東 アジ ア 地 域の ヤ チ ネズミ類の 分子系統 学的分析 結果は、 夕イリク ヤチネズ ミ属 内4種間で411〜ll.6%の塩基置換率を示し、コウライヤチネズミEo曲en〇m卩re.馴J s を含 むビロー ドネズミ属 内3種問の 塩基置換 率は8.2〜9.0%であった。また、両属間

(4)

の塩基置換率は 3.8 ‑‑13.9 %で各属内変異と属間変異に大きな差はなく、特に別属と されてきたコウライヤチネズミとタイ1J クヤチネズミClethrionomys rufocanus 間では わずか 3.8 〜5.4 %の置換率にすぎなかった。その結果、これら両属を区別することに は疑問があり、また、少なくともコウライヤチネズミはタイリクヤチネズミ属に含 め 、 そ の 一 種 Clethrionom ys  regulus と す べ き で あ る と 結 論 さ れ た 。 6 ) 以上 の結果 から韓国産小形哺乳類相の特徴をまとめると以下の通りである。

   〇韓国産小形哺乳類には固有種が少なく、東アジア内陸のものと類縁関係が強い。

   @韓国産現生小形哺乳類相の形成は比較的新しく、化石や分子時計(4 %/My と仮定

)および今回の結果から総合すると、ほとんどの種が第4 紀更新世前期から中期(お よそ200 〜80 万年前後)にかけて形成されたと推察される。

   ◎韓国産現生小形哺乳類には、この地域で独自の遺伝的特徴を持って分化したも の、あるいは進化史的にみた場合、韓半島またはその周辺において比較的近年に遺伝 的多様性を獲得したものを含んでいる。

   @韓国の島々の小形哺乳類相の形成は一様でなく、数回にわたって遺伝的起源が異 なる系統により形成されたと思われ、それらの種には遺伝的分化度は低いが、形態的 分化の進んだ個体群がある。

   ◎一部の食虫類では形態学的に著しい差がみられるにもかかわらず、mtDNA の遺 伝子上では大変類似した系統群が存在しており、日本産近縁系統群でみられるような 地域個体群間の高い変異はみられない。

   以上のように、本研究はこれまで詳しい研究がほとんビなかった韓国周辺の小形哺

乳類の系統分類学的検討を行い、この地域の動物相研究に大きく寄与したばかりでな

く、わが国動物相の起源の研究に多くの示唆を与えたものである。よって審査員一同

は、最終試験の結果とあわせて、本論文の提出者韓尚勲は博士(農学)の学位を受

けるのに十分な資格があるものと認定した。

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