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博士(農学)呉 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)呉 学位論文題名

広葉樹細胞壁におけるりグニン分布の不均一性

学位論文内容の要旨

E

  本 研究 は ,中 国雲 南 省産 の広 葉 樹49科,91属,101樹種(熱 帯材48,亜熱帯材18,温帯材24, 寒温 帯材11樹種 )の 道 管・ 木繊 維細胞二次壁 におけるりグニン 分布の不均一性を組 織化学手法の ーっである顕微 分光法により調べた ものである。

  木 材細 胞 壁の りグ ニ ン分 布は , 針葉 樹で は 主に グァ イアシルリグニン (G)であ り,広葉樹で は シ リ ン ギ ル リ グ ニ ン (S) が 出 現 し ,GとSの 混 合 で あ るGS― リ グ ニ ン に 変 化 す る 。 こ の GSリ グ ニ ン に お け るGとSの構 成比 率 は, 樹種 及 び細 胞に よ り変 動し て いる こと が わか って い るが,明確な結 果が得られていない 。

  本 研究 は ,101樹種 を無 孔 材, 環孔 材 ,半 環孔 材 ,放射孔材 と散孔材に整理して ,それらの道 管,木繊維二次 壁におけるりグニン 分布の変化を調べた。また,道管形態の変化(大きさと壁厚),

生育 地の 変 動と それ ら のGSリグ ニ ンの 比率 の 変動 の関 係 を調 べ, 広 葉樹 進化の道 すじ,形態の 進化 ,樹 木 生育 の活 動 との 対応 を把握しよう とした。それらの りグニン性質の細胞 二次壁レベル での 研究 は ,GSリグ ニ ンの 分布 と 樹木 の生 育 との 関連 の 解明 にと っ て極 めて有益 なことと思っ てい る。 上 述の 細胞 壁 レベ ルに おけるりグニ ン分布の研究は, 世界的にもあまり進 んでいない。

その 理由 は 顕微 鏡下 で のり グニ ンの定性もし くは定量分析化学 の手法的な限界にあ る。本研究で は, 目的 が 多数 の樹 種 を調 査す ることが必要 条件になるので, 簡便な呈色反応を応 用することに し て , そ の 精 度 を 高 め る た め の 手 法 の 開 発 と , そ の 正 確 度 を 証 明 し よ う と し た 。   第1章 ,第2章 は緒言と研究史を述 べた。

  第3章と 第4章 では , 供試 材( 生 立木 から の 試料 と材 鑑 )の 収集 , 実験 方法(UV.VISスペクト ル法,化学分析 法)の使用,その妥 当性及び実験値の取扱いを検討した。モイレ反応の可視吸光曲線 で のAmax/Aminま た はA520nm/A420nmの 比 値 を 利 用 し , ス ペ ク ト ル の 結 果 を 数 値 化 し た 。 すな わち , この 比値 が1よ り 大きい と,吸収極大のピー クが現れS核がりッチとして 認識した。こ の比 値が1より小さく,針葉 樹におけるものと 類似していれば,G核がりッ チと認識し,1に近づく ほどGSリ グ ニン のS核 が, 少 しずつ 増加していくものと 認識した。測定さ れたすべての樹種 のVIS

(2)

スペ クトル の数値を早・晩 材道 管,早 ・晩材木繊維に 分けて,類型化すると,A, B,C,D,Eの5っ の グ ルー プに分 類することがで きる 。本研 究では,この分

      Am ax/A min       or A520nm/A420nm

group     E. Vessel'    L. Vessel E. Fiber      L. Fiber

く 1 く 1 く 1 く 1

>1

    く1     く1     く1     >1     >1

E. Vessel: Vessel in early wood; L. Vessel: Vessel in late wood     E. Fiber: Fiber in early wood; L. Fiber: Fiber in late wood.

類に 従っ て,考 察を進 めた。

  第5章 で は 道 管 の配 列 とGSリ グ ニ ン の 変 動を 検 討 し た 。@ 無孔材 の水青 樹は針 葉樹と 似て お り , 早 ・晩 材 仮 道 管 二次 壁 に は 主 にG―リグ ニンが 含まれ る(Aグル ープ )。◎ 環孔材 の孔圏 大 道 管 は 主にG― リ グ ニン で あ る が ,晩 材 部 の 小 道 管はS― リグ ニンが りッチ である 。し かし,S の比 率は 木繊維 よりか ナょり 小さか った 。実験 された9樹 種の環 孔材は 全部Dグル ープ に分けられ た 。 ◎ 放射 孔 材 は 道 管と 木 繊 維 二 次 壁に お け るGSリ グ ニ ンの 分布で ともにS核 がりッ チで, 早 材 よ り 晩材 , 道管 より木 繊維でS一 リグニ ンが増 えた 。4樹 種の 放射孔 材はEグル ープで あった 。

@ 散 孔 材 のGSリ グ ニ ン 分 布 は5っ の グ ル ー プ にわ た っ て い るが ,A,C及びEグ ル ー プの 出 現 率 は そ れ ぞ れ27% ,39% ,25% と な り ,B,Dの も の (5% ,3% )は 僅 か で あ った 。Cグ ル ー プの もの は30樹種 で,最 も多 かった 。◎10樹 種の 半環孔 材のう ち,形 態上は 環孔 材と似ているも の (3種 ) がDグ ル ― プに 分 け ら れ ,散 孔 材 と 似 てい る も の がAグ ル ー プ (2種 ) ,Bグ ルー プ

(2種) ,Cグルー プ(3種 )に分 けられ た。

  第6章 で は , 樹 木の 生 育 地 と りグ ニン 分布の 変動 を検討 した。 雲南省 は大ま かに4っの フ口 ラ 地域 に分 けられ る。す なわち ,西北 の高 山寒温 帯地域 ,中部 高原 の温帯 地域, 東南部 の低山丘陵 の熱 帯と 亜熱帯 地域で ある。 本研究 で用 いた試料は,これらのフ口ラ地域で採集したものである。

樹木 の生 活環境 は構造 に影響 を与え ると 同様に ,リグ ニン分 布に も影響 を与え ている 。最も特徴 があ るの は熱帯 材のり グニン 分布で ある 。実験された熱帯材48樹種の約50%は道管だけではなく,

木 繊 維 の二 次 壁もG核 がりッ チであ った。 この特 徴は ,紫外 線顕微 分光法 ,ウ イスナ 呈色反 応,

二 ト ロ ベン ゼ ン 酸 化 によ るS/V比の い ず れ で も認 め ら れ 確認 された 。熱帯 材は上 述の ようにA グ ル ー プの も の が 最 も多 か っ た 。 亜 熱帯 材 はBグ ル― プ の も の が多 か っ た 。 温帯 材はC・D.E の 方 が 多 か っ た が , 寒 温帯 材 はC‑Eの も の が 多 く, そ の う ち ,Cよ りEの ほう が 多 か っ た。 即 ち , 熱 帯か ら 寒 温 帯 に向 か っ て , 広葉樹 のGSリ グニン は,晩 材木繊 維→ 早材木 繊維→ 晩材道 管

→ 早 材 道 管 の 順 序 でS―リ グ ニ ン の 比率 が 徐 々 に 増 えて い く こ と が認 め ら れ る よう で あ る 。   第7章 で は ,道 管と木 繊維の 直径と 壁厚 を調ベ ,それ らの大 きさに よっ て分類 して, その分 類

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           AB CD E

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された組の平均値を計算し,細胞の形態に対応させて二次壁のりグニン分布を検討した。その結 果,@管孔の接線径によって,<100pm,100―150pm,150ー200pm,〉200pmの4組に分けられた 道管は,その接線径の増大にしたがって,二次壁におけるGSリグニンの分布比率でG核が増え る傾向がはっきりと現れた。@木繊維の直径によって,101樹種の木繊維を直径階級I(20一10 pm),n(20ー15pIu),m(25―10pm),IV (25―15pm),V(30一15pm),VI(冫30,um)に分けた。

大きさの増加に伴い,GSリグニン比率においてS核の滅少,あるいはG核の増加の関係が明ら かに認められた。◎厚壁の道管(≧5 ltm)の二次壁のりグニン分布を調べた結果,全部で22樹種 あったが,7樹種の熱帯材を除いて,15樹種の道管は比較的にSリグニンがりッチであった。厚 壁木繊維でも同様な傾向が認められ,厚い二次壁をもつ木繊維は一般にSリグニンが多く含んで いることが示唆された。@しかし,道管二次壁におけるりグニンの分布は道管の微細形態とはあ まり関係がナょかった。

  第8章は総合考察である。広葉樹リグニンのそのような不均一性は樹木の生長や細胞壁の形成 速度とりグニンの生合成経路から解釈されることを論じた。また,その不均一性は,道管・木繊 維の機能分担と適合しており,生育地の変化に伴うなど,樹木の進化と関連していると結論され る。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授 深 澤 和 三 副 査    教 授 笹 谷 宜 志 副 査    教 授 寺 澤    實 副査    助教 授大谷    諄

  本研究は,中国雲南省産の広葉樹49科,91属,101樹種(熱帯材48,亜熱帯材18,温帯材24, 寒温帯材11樹種)の道管・木繊維細胞二次壁におけるりグニン分布の不均一性を組織化学手法の ーっである顕微分光法により調べたものであり,表40,図83,引用文献117を含む総頁数201頁の 和文論文で,参考論文9編が添えられている。

  木材細胞壁のりグニンは,針葉樹では主にグァイアシルリグニン(G)であり,広葉樹では,

シ リ ン ギ ル リ グ ニ ン(S)が 出 現 し ,GとSの 混合 であ るG‑Sリ グ ニン に変 化す る。 こ の

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G‑Sリ グ ニ ン にお け るGとSの 構 成 比 率 は, 樹 種 及 び 細胞 に よ り 変 動す る こ と が わ かっ て い る が, いま だ明確 な結果 は得ら れてい ナょ い。

  本 研究 で は ,GとSと で 呈 色反応 が異な るモ イレ反 応を利 用して りグ ニン分 布の不 均一性 を検 討し てい る。顕 微可視 分光ス ペクト ル曲線をとり,特定波長による吸光度比から各要素にっいて,

リ グ ニ ンのG‑Sの 構成 の 量 比 の 推定 を 行 い , その 結 果を 管孔の 配列, 樹木の 生育 地及び 細胞の 形態 に結 びっけ て整理 してい る。

1)早 ・ 晩 材 の 道管 ・ 木 繊 維 にっ い て , 全 て がGか ら な る もの をA, 晩 材木 繊 維 の み がSリ ッ チ の も の をB, 道 管 がGリ ッ チ , 木 繊維 がSリ ッ チの も の をC,早 材 道 管 の みGリッ チのも のをD, 全 て がSリ ッ チ の も のをEの ,5っの グ ル ー プ に分 類 でき るが, その全 てのグ ルー プが出 現する こと を明 らかに してい る。

2) 針 葉樹 に 見 ら れ るGリ グ ニ ン が原 始 的 な も の,Sリグ ニンが 進化し たもの とす ると, 無孔材 で はAグル ー プ で 原 始的 で あ り , 逆に 環 孔 材 はD, 放 射孔材 倣Eグルー プにま とま り,樹 木の進 化 と よ く対 応 す る こ とを 示 し た 。77樹 種 の 散 孔材 で は中間 のCグルー プが最 も多 く(39%),A (27% ) ,B(5% ) ,D(3% ) ,E(25% ) と 幅 広 く 現 れ , 進 化 の 幅 と共 に , 生 育 地・ 細 胞 の 大き さな ど他の 因子の 介在す ること を示 した。 半環孔 材は環 孔材 的なも のと, 散孔材的なものと に分 かれ ること を指摘 してい る。

3) 樹 木の生 育地と りグニ ン分 布の変 動にっ いて, 最も特 徴が あるの は熱帯 材であ るこ とを示 し た 。48樹種 の約50%は道 管ばか りで はなく ,木繊 維の二 次壁 もG核 がり ッチで あった 。この 特徴 を , 紫 外線 顕 微 分 光 法, ウ イ スナ呈 色反応 ,ニト 口ベン ゼン 酸化に よるS/V比の いずれ からも 確 認 し てい る 。 ま た ,101樹 種 のGSリ グ ニ ン分 布 は ,熱帯 から寒 温帯 に向か って, 晩材木 繊維

→ 早 材 木繊 維 → 晩 材 道管 → 早 材 道 管 の順 序 でSリ グニン が徐 々に増 えてい くこと を指 摘して い る。

4) 道 管と木 繊維の 直径と 壁厚 を調ベ ,それ らの大 きさに よっ て分類 して, その分 類さ れた組 の 平均 値を 計算し ,細胞 の形態 に対応 させ て二次 壁のり グニン 分布 を検討 した。 その結果,@管孔 の接 線径 によっ て,100pm以下 ,100ー150,um,150―200pm,200pm以上の4組に分けられた道管は,

そ の 接線 径の増 大に したが って,G核 が増え る傾向 がはっ きり と現れ ること を示し た。 ◎木繊 維 の 直 径 によ っ て , 直 径階 級I (20ー10pm), 皿 (20―15pm), 皿(25―10pm),IV (25―15pm),V (30―15pm),VI (30pm以上 ) に 分 け た。 大 き さ の 増加 に 伴 い ,S核 の 減 少, あるい はG核の増 加と の直 線関係 が明ら かに認 められ るこ とを示 した。 ◎厚壁 の道 管(5 pm以 上)の二次壁のりグ ニ ン 分 布を 調 べ た 結 果,22樹 種 のう ち ,7樹 種の 熱 帯 材 を 除く ,15樹 種の 道管 ではSリグ ニン

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が比較的リッチであった。厚壁木繊維でも同様な傾向が認められ,厚い二次壁をもつ木繊維では 一般にSリグニンが多く含まれていることを示唆している。@しかし,道管二次壁におけるりグ ニンの 分布は修士課程で調べた道管の微細形態とはあまり関係がないことも指摘している。

  総合考察として広葉樹リグニン分布の上記のような不均一性になる原因を樹木の生長・細胞壁 の形成速度とりグニンの生合成経路から解釈して論じている。また,その不均一性は,道管・木 繊維の機能分担と適合しており,生育地の変化によるものなど,樹木の進化と関連しているであ ろうと結論している。

  本論文は生育地を異にする多くの広葉樹にっいて,G‑Sリグニンの不均一性を組織化学的見 地から述べたものであり,学術上多くの新知見を加えた。木材組織学のみならず樹木系統形態学 その他に寄与するところ大である。よって審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本論文の 提 出 者 呉 晋 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け るの に十 分な 資格 が ある もの と認 定 した 。

参照

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