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博 士 ( 理 学 ) 山 岸 幸 正

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 山 岸 幸 正

     学位論文題名

    A systematic stucly of Hypnea and

    related genera (Rhodophyta) in Japan

(日本産紅藻イバラノリ属および近縁属の系統分類学的研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  紅 藻 イ バ ラ ノ リ 科Hypneaceaeイ バ ラ ノ リ 属Hypneaの 海 藻 は 現 在 約50種 が 知 ら れ て お り 、 世 界 中 の 熱 帯 か ら 温 帯 に か け て 広 く 分 布 し て い る 。 日 本 で は 沖 縄 か ら 本 州 沿 岸 に ふ っ う に 見 ら れ 、12種 が 報 告 さ れ て い る 。 イ バ ラ ノ リ 属 で は 、 形 態 形 質 の 種 内 変 異 の 幅 が 大 き い こ と か ら 種 の 区 別 が 難 し く 、 さ ら に 、 研 究 者 による異なった種の定義が分類学的混乱をまねいている。

  本 研 究 で は 、 日 本 産 イ パ ラ ノ リ 属 の 種 の 特 徴 と 類 縁 関 係 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し 、 天 然 産 の 藻 体 お よ び 培 養 藻 体 の 詳 細 な 形 態 観 察 に 基 づ い て 、 有 効 な 分 類 学 的 形 質 の 検 討 を 行 っ た 。 ま た 、 核 に コ ー ド さ れ て い る18S rDNA(18S リ ポ ゾ ー マ ルRNA遺 伝 子 ) 、ITS1(18Sと5.8S rDNAの 間 の ス ベ ー サ ー 領 域 ) 、 お よ び 葉 緑 体 に コ ー ド され てい るrbcL( リブ 口ー ス−1,5一 二リ ン酸 カル ポキ シラ ー ゼ / オ キ シ ゲ ナ ー ゼ 大 サ ブ ュ ニ ッ ト 遺 伝 子 ) の 塩 基 配 列 を 用 い て 分 子 系 統 学的 解 析を行い、系統関係を推定した。

  こ れ ま で 知 ら れ て い る イ バ ラ ノ リ 属 に 共 通 す る 形 態 的 特 徴 と し て は 、 藻 体 は 単 軸 構 造 で 、 生 殖 器 官 は 小 枝 に 形 成 さ れ 、 果 胞 子 嚢 は 単 生 で あ る こ と が あ げ ら れ る 。 今 回 新 た に 確 認 さ れ た イ バ ラ ノ リ 属5種 の 嚢 果 は 、 い ず れ も 単 生 の 果 胞 子 嚢 を 持 ち 、 そ れ ら は 嚢 果 内 に 網 目 状 に 発 達 し た 造 胞 糸 の い た る 所 か ら 形 成 さ れ て い た 。 し か し 、 サ イ ダ イ バ ラ と タ チ イ パ ラ の 果 胞 子 嚢 は 数 個 連 鎖 し て おり 、 そ れ ら は 嚢 果 下 部 で 放 射 状 に 発 達 し た 造 胞 糸 集 団 の 末 端 に 形 成 さ れ て い た 。 こ の よ う な 嚢 果 の 特 徴 の 違 い か ら 、 こ れ ま で イ パ ラ ノ リ 属 に 含 め ら れ て い た サ イ ダイ バラ とタ チイ バラ は、 アミ ハダ 科Cystocloniaceaeであ るこ と が明 らか となり、

藻 体 が 扁 平 で 生 殖 器 官 が 小 枝 に 形 成 さ れ る な ど の 形 質 を も と に 、 こ の2種 を ア ミ ハ ダ 科 のCalliblepharis属 へ移 行し た。 この 移行 は、 分 子系 統学 的解 析に よっ て も 強 く 支 持 さ れ た 。18S rDNAお よ びrbcLを 用 い て 推 定 し た い ず れ の 系 統 樹 に お い て も 、 イ バ ラ ノ リ 属 か ら な る ク レ ー ド と 、 サ イ ダ イ バ ラ と タ チ イ バ ラ を 含 む Cロlliblepharis属 から なる ク レー ドの2っ があ らわ れた 。 これ らの クレ ード は、 紅 藻 の 属 や 科 以 上 の 分 類 群 の 系 統 解 析 に 用 し ゝ ら れ て い る 進 化 速 度 の 遅 い18S rDNA で は97ー100ワ0の 高 い ブ ー ト ス ト ラ ッ プ 値 で 支 持さ れた 。さ らに 、18SrDNAでは 、 イバラノリ属とcロ〃めfP朋ロrむ属の間の塩基配列の違い(38−56bp,2.2―33ワ。)が、

イバラノリ属内の種間の違い(3ー22bp,0.2―l13ワ。)やCロ〃めf印んロrむ属内の種間の違

(2)

い (12 bp,0.7u/o)よ り も 大 き く 、 こ れ ら2属 間 の 違 い が 明 瞭 に 示 さ れ た 。   本 研 究 で は 、 イ バ ラ ノ リ 属 の 種 の 区 別 に 有 効 な 以 下 の 分 類 学 的 形 質 を 明 ら か に し た 。 (1) 藻 体 の 外 部 形 態 ( 多 く の 枝 が傾 伏し てマ ット 状集 団と なる か直 立 し て 下 部 の み 錯 綜 す る か ) 、(2)主 軸 の 長 さ と直 径、(3)主 軸が 明瞭 か不 明瞭 か、(4) 主 軸 の 分 枝 頻 度 、(5)主 軸 の 分 枝 角 度 、(6)枝 に お け る 屈 曲 の 有 無 、(7)カ ギ 状 枝 の 有 無 、(8)不 定 枝 ( 頻 度 、 長 さ と 直 径 、 屈 曲 の 有 無 、 基 部 の く び れ の 有 無 、 星 状 枝 と な る か 否 か ) 、(9)中 軸 細 胞 ・ 周 軸細 胞お よび 内皮 層細 胞の 関係 (後 二 者 が 太い か、 三者 がほ ぽ等 しい 直径 か) 、 (10)細胞壁のレンズ状肥厚の頻度、(11)生 時 の 藻 体 の 螢 光 の 有 無 、 (12)小 枝 に お け る 四 分 胞 子 嚢 群 の 形 成 位 置 ( 小 枝 の 基 部 、 中 部 ま た は 上 部 か 、 全 体 に 広 が る か 、 片 側 か 全 面 に で き る か ) 。   イ バ ラ ノ リ 科 の ア ネ ヤ カ タ ノ リ 属Hypneocolaxも 含 め て 、 日 本 か ら 以 下 の14 種 を 記 載 し た 。 ( 1) イ バ ラ ノ リ 科 イ バ ラ ノ リ 属11種 ( イ バ ラ ノ リHypnea cliaroides、ヒ モイ バラH. chordacea、 ホシガタイバラH. cornuta、 スジイバラノリ H. flagelliformis、カズノイパラH. flexicaulis、新種フサゲイバラH. hirsuta sp. nov.、 カ ギイ バラ ノリH. japonicロ、コケイパラH. pannosa、ヒヌイバラノリH. spinella、 新 種オ オコ ケイ パラH. tanakロぞsp. nov.およびべこイバラノリH. yamadae)。(2) イ バ ラ ノ リ 科 ア ネ ヤ カ タ ノ リ 属1種 ( ア ネ ヤ カ タ ノ りHypneocolax stellaris)。

(3) アミ ハ ダ科Calliblepharis属2種 ( サイ ダイ バラC.saidana comb. nov.および タ チイ バラC. variabilis comb. nov.)。これらの種の独立性は、18S rDNA、rbcLお よ びITS1の 解 析 に お い て も 支 持 さ れ た 。 紅 藻 の 種 間 の 解 析 に 一 般 的 に 用 い ら れ て い る ′ 施Lの 解 析 で は 、 イ バ ラ ノ リ 属 内 の 種 間 の 塩 基 配 列 の 違 い は14‑93 bp

(1.1−7.00/o)、Calliblepharis属内の種間の違いは76―88 bp (5.7‑6.60/0)と明瞭であった が 、 ス ジ イ バ ラ ノ リ 、 カ ズ ノ イ バ ラ 、 フ サ ゲ イ バ ラ の そ れ ぞ れ2個 体 群 間 の 塩 基配列は同一であった。

  新 種 フ サ ゲ イ バ ラ は 、 主 軸 は ま ば ら に 分 枝 し 、 不 定 枝 は 主 軸 お よ び 枝 上 に 垂 直 方 向 に 極 め て 密 に 形 成 さ れ 、 周 軸 細 胞 が し ば し ば 細 く な る と い う 特徴 を持 つ 。 形 態 的 に 似 た 台 湾 のHypneaめergeseniiと は 、 不 定 枝 が 細 長 く 、 枝 が 不 規 則 に 屈 曲 し 、 レ ン ズ 状 肥 厚 が ま れ で あ る こ と で 区 別 で き る 。 オ オ コ ケ イ パ ラ の 藻 体 は 小 型 で 、 傾 伏 し て 錯 綜 し マ ッ ト 状 の 集 団 を 形 成 し 、 屈 曲 し な い 不 定 枝 を 持 ち 、 レンズ状肥厚が多いことで他種と区別できる。

  18S rDNAお よ びr施L系 統 樹 で は 、 イ バ ラ ノ リ 属 内 に3つ の ク レ ー ド が 認 め ら れ た が 、 周 軸 細 胞 と 内 皮 層 細 胞 が 細 く な る3種 や 、 カ ギ 状 枝 を 持 つ2種 は 単 系 統 と は な ら ず 別 々 の ク レ ー ド に 位 置 し た 。 こ れ ら の 形 質 は そ れ ぞ れ の ク レ ー ド 内 で 独 立 し て 分 化 し た も の と 考 え ら れ る 。 進 化 速 度 が 早 い こ と で 知 ら れ るITS1 で は 、 種 間 の 塩 基 配 列 の 違 い が 非 常 に 大 き か っ た こ と に 対 し て 、 個 体 群 間 (5種 16個体群)の違いは わずかOー2bp(0.0‐1.3ワ。)であり、種内では塩基配列がよく保 存されていた。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

増 田 道 夫 片 倉 晴 雄 市 村 輝 宜 堀 ロ 健 雄 小 亀 一 弘

    学 位 論 文 題 名

    A systematic study of HypTzea and

    related genera (Rhodophyta) in Japan

( 日 本 産 紅 藻 イ バ ラ ノ リ 属 お よ び 近 縁 属 の 系 統 分 類 学 的 研 究 )

  本 研 究 は 形 態 学 的 形 質 の 変 異 の 把 握 が 困 難 で 、 世 界 的 に も 分 類 学 的 に 難 し い グ ル ー プ と さ れ て い る 紅 藻 イ バ ラ ノ リ 属 お よ び 近 縁 属 の 日 本 産 種 の 野 外 藻 体 及 び 培 養 藻 体 を も と に 、 形 態 学 的 な ら び に 分 子 系 統 学 的 手 法 を 用 い て 系 統 分 類 学 的 研 究 を 行 っ た も の で あ り 、 多 く の 新 知 見 を 得 た 。

  本 研 究 で 、 特 筆 す べ き 知 見 と し て 、 先 ず 、 世 界 の 他 の 海 域 の 種 に つ い て も 有 効 な 多 く の イ バ ラ ノ リ 属 ( イ バ ラ ノ リ 科 ) の 種 の 区 別 に 有 効 な 分 類 学 的 形 質 を 明 ら か に し た こ と が 挙 げ ら れ る 。 こ の 知 見 に 基 づ き 、 日 本 産 種 と し て イ パ ラ ノ1」 属 に フ サゲ イバ ラ

(Hypnea hirsuta sp.nov. ) と オ オ コ ケ イ バ ラ ( 日 .tanakae sp.nov. ) の2新 種 を 含 む11種 を 認 め た 。

  紅 藻 に 特 有 な 世 代 で あ る 果 胞 子 体 ( 形 態 学 的 に は 嚢 果 と 称 し て い る ) の 特 徴 を イ バ ラ ノ リ 属 の 多 く の 種 に つ い て 初 め て 明 ら か に し た 。 そ の 結 果 、 嚢 果 が そ の 下 部 に お い て 放 射 状 に 発 達 し た 造 胞 糸 集 団 を 生 じ 、 そ の 末 端 に 数 個 連 鎖 し た 果 胞 子 嚢 を 形 成 す る サ イ ダ イ パ ラ と タ チ イ バ ラ を 、 嚢 果 が 網 目 状 に 発 達 し た 造 胞 糸 を 生 じ 、 そ れ ら の い た る 所 か ら 果 胞 子 嚢 を 末 端 に 単 生 す る イ バ ラ ノ リ 属 か ら 分 離 し 、 別 科 の ア ミ ハ ダ 科 に 移 行 し 、 そ れ ぞ れCaヱ ヱibヱepharis saidana comb.nov. とC.variabiヱis comb. nov. と し て 新 組 合 わ せ を 行 っ た 。

  形 態 学 的 デ ー タ に 基 づ い た こ れ ら の 結 論 は2つ の オ ル ガ ネ ラ に そ れ ぞ れ コ ード され 、 か つ 進 化 速 度 に 違 い の あ る 遺 伝 子 、 す な わ ち 、18S rDNA(18Sリ ポ ゾ ー マ ルRNA遺 伝 子 ) とr从 凡 ( リ ブ 口ー ス−1,5― 二リ ン酸 カル ポキ シラ ーゼ /オ キシ ゲナ ーゼ 大サ ブ ユ ニ ッ ト 遺 伝 子 ) の 塩 基 配 列 を 用 い て 行 っ た 分 子 系統 学的 解析 によ って 裏付 けら れた 。 両 者 の 解 析 に お い て 、 イ バ ラ ノ リ 属 か ら な る ク レ ー ド と 、 サ イ ダ イ バ ラ と タ チ イ バ ラ を 含 むCaヱ ヱibヱe.pカarヱs属 か ら な る ク レ ー ドの2っが 認め られ 、18SてDNA( 進化 速 度 が 遅 い の で 、 紅 藻 の 属 や 科 以 上 の 分 類 群 の 系 統 解 析 に 用 い ら れ て い る ) で は97− 100* の 高 い プ ー ト ス ト ラ ッ プ 値 で 支 持 さ れ た 。 さ ら に 、18SてDNAで は 、 両 属 間 の 塩 基 配 列 の 違 い が 、 そ れ ぞ れ の 属 内 の 種 間 の 違 い よ り も 大 き く 、 こ れ ら2属 間 の 違 い が 明 瞭 に 示 さ れ た 。 紅 藻 の 種 間 の 解 析 に 一 般 的 に 用 い ら れ て い るrDcLの 解 析 で は 、 イ

(4)

バラノ1 」属内の種間の塩基配列の違いは1 .1 ―7 .0% 、Ca ヱヱib ヱepharis 属内の種間の 違いは5 .7 −6 .6 をと明瞭であった。また、同一種で複数の個体群においてrDc 凡解析 を行 った スジ イバ ラノリ、カズノイバラおよびフサゲイバラでは、個体群間の塩基配 列は 同一 であ った 。進 化速 度が 早いこ とで 知ら れる 工TS1 ´ 18S と 5 .8S 工DNA の間の スペ ーサ ー領 域) では、種間の塩基配列の違いが非常に大きかったことに対して、個 体群間(5 種16 個体群)の違いはわずかO ー2 塩基対(O .O 一1 .3 を)であり、種内では塩 基配列がよく保存されていた。

   こ れを 要す るに 、著者は形態学的的形質の比較に、分子系統学的解析を加えて、イ

バラ ノリ 属お よび 近縁属の種と属の特徴と類縁関係を明らかにしたことによって、系

統 分 類 学 を 推 進 し た も の で あ り 、 生 物 学 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。

   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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