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博 士 ( 工 学 ) 根 岸 正 充

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 根 岸 正 充

学 位 論 文 題 名

寒冷地における岩盤斜面崩壊に関する研究

― 節 理 構 造 岩 盤 斜 面 に お け る き 裂 進 展 と 落 石 ・ 崩 壊 一

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  山国 の我 国 では 岩盤 斜面 崩壊 の危険箇所が数万箇所あるといわれており、そ の対策は 社 会資 本の 整 備と 開発 の進 行に 伴いますます緊急かつ重要な課題となっている 。従来、

岩 盤斜 面崩 壊 の防 止策 は地 質的 素因や気象的誘因に対処して講じられてきてお り、崩壊 の 発生 機構 を 考慮 した 防止 策は 立案されていなぃ。本論文は、この点に鑑み寒 冷地にお け る岩 盤斜 面 の不 安定 化機 構を 解明 する こと を第1の目 的とし、斜面崩壊防止 法およぴ 予 知法 の技 術 開発 指針 に対 して 理論 的根 拠を 与え るこ とも 第2、 第3の 目的 とし て進 め た 。

  本論 文は 、 以下 のよ うに8章 から 構成 し てい る。

  第1章では、我国にお ける岩盤斜面崩壊の概要.およぴすべり破壊、卜ップリ ング破壊 で 発生 した 代 表的 な斜 面災 害事 例を紹介した。また、地すぺり、崩壊・落石な どいわゆ る マス ム― ブ メン 卜(mass movement)に 関す る既 往の 研究 から 問題 点 を指 摘し 、岩 盤 斜 面の 不安 定 化機 構の 解明 を研 究目 的と して 設定 した 。

  第2章 では 、層 雲峡 の地 形、 地質 およ ぴ 崩壊 形態 の調 査結果を説明するとと もに、岩 盤 斜面 崩壊 形 態に すぺ り破 壊と 卜ップリング破壊があることを指摘し、それぞ れオ―バ ー ハン グ状 斜 面と 階段 状斜 面で 発生することを明らかにした。また、国道39号 の層雲峡 地 区で 発生 し た落 石、 崩壊 の発 生時期、規模、誘因などに関する統計分析結果 を示し、

大 規 模 斜 面 崩 壊 は5月 下 旬 か ら6月 上 旬 に 集 中 的 に 発 生 す る こ と を 指 摘 し た 。   第3章 では 、層 雲峡 の気 温、 岩盤 温度 、 凍結 深度 、積 雪などの観測結果を説 明すると と もに 、最 大 凍結 深度 、凍 結融 解回数、夏期およぴ冬期における節理構造岩盤 斜面の温 度 分布 など に つい て検 討し 、温 度勾 配は6月に 最大 十O, 108℃/cmま で達 し、3月に 最 小‑0‑ 075℃/cmま で低 下す るこ とを 明ら かに した 。ま た、 層雲 峡熔 結 凝灰 岩の 凍結 融 解 によ る強 度 低下 、熱 的性 質に 関する物性値などの計測結果を示し、長柱岩体 の崩壊素 因 を説 明し た 。

  第4章 で は 、2年 余 り に わ た っ て 層 雲 峡 熔 結 凝 灰 岩 の 柱 状節 理構 造斜 面で 行っ たAE 法 によ るす べ り破 壊や 卜ッ プリ ング破壊のモニタ結果について述ぺた。すなわ ち、すぺ り 破 壊 の 前 駆 現 象 で あ る 開 口 節理 の進 展に 起因 するAE活 動に は、 季 節変 化が あり 、A Eは5月 か ら10月 の 夏 期 に 断 続 的 に 発 生 し 、11月 か ら4月 の 冬 期 は ほ と ん ど 発 生 し なI、 。 特 に6月 初 旬 に 集 中 的 に多 発す る。 開口 節理 の進 展に 起因 す るAE活動 では 、6

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月期の活発なときでもAEの平均発生率は毎分1発程度で、き裂の進展挙動は非常に緩 慢 であ る。卜 ップ リン グ活 動に 起因 するAE活 動では、AEの平均発生率は毎分11発 程度で持続時間は7〜9時間である′。卜ップリング直前のAE活動の時系列的変化には、

2〜3ピークがあり、発生時からピークに至るまでには数時間が経過する。この時系列 的変化から卜ップリングの予知は可能である。

  第5章から第7章では、岩体の熱変形に起因するき裂進展により安定斜面が不安定斜 面になり、最終的に破壊に至る機構を理諭的に考察した。また、節理構造岩盤斜面にお けるAE活動の季節的変化や突発的発生時の時系列的頻度変化から、理諭的考察結果の 妥当性を検証した。

  第5章では、柱状節理構造斜面の崩壊現象の観察結果から新しく節理の開口模型を提 案し、すぺり破壊の発生機構を理論的に究明した。すなわち、節理の開口模型で長柱岩 体の熱変形と開口節理の応力拡大係数を解析するとともに、開口節理の進展長を計算し た。さらに、この結果から、当地域の岩盤斜面を不安定化させる誘因は夏期における岩 体内部の温度勾配と潜在節理における破壊靭性値の劣化であることを明らかにし、6月 は 岩 盤 斜 面 崩 壊 の 特 異 月 で 、 危 険 性 が 異 常 に 増 大 す る こ と を 指 摘 し た 。   第6章では、長柱岩体の卜ップリング破壊機構について究明した。新しく提案した卜 ップリング模型で長柱岩体の熱変形に起因する節理の開口量と開口節理に扶まった2つ の落石の降下位置を繰り返し計算し、倒壊に至る機構を理論的に解析した。この解析結 果から、長柱岩体の卜ップリングを促進する最大要因は岩体の熱変形と落石降下の交互 作用であることを明らかにした。さらに、長j主岩体脚部の割れ日の状態から最終破壊過 程を検討し、卜ップリング破壊時のAE発生の時系列的頻度変化から理論的検討結果の 妥当性を検証した。

  第5およぴ6章では、垂直近い長柱岩体のすぺり破壊、卜ップルング破壊の発生機構 を究明したが、第7章ではさらに一般的な任意の斜度を有した岩盤斜面の落石・崩壊機 構を解明した。まず、節理構造岩盤斜面に浮石岩板のカ学模型を設定するとともに、熱 変形諭と線形破壊諭から応力拡大係数を計算し、き裂の進展条件を検討した。これらの 検討結果から、以下の結諭が得られた。すなわち、き裂は、岩盤斜面の温度勾配、傾斜 角およぴ岩板の厚さが大であるほど進展し易くなる。また、き裂は、凍結融解によって 潜在節理の破壊靭性値が劣化するほど進展し易くなる。さらに、き裂は、開口節理に扶 った岩片が岩板の熱変形に応じて落下するほど進展し易くなる。従って、落石・崩壊は 寒暖の激しい寒冷地の急斜面の方が発生し易い。

  第8章は本論文の結諭で、本研究で得られた成果と知見を総括し、寒冷地における岩 盤斜面の崩壊機構を明らかにした。

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学位論文審査の要旨 主査   教

副査   教 副査   教 副査   教

授    中 島 授    石 島 授    佐 藤 授   三田地

学 位 論 文 題 名

    巌 洋二 寿一 利之

寒冷地における岩盤斜面崩壊 に関する研究

一節理構造岩盤斜面におけるき裂進展と落石・崩壊一

  山国 の我国で は、岩 盤斜面崩 壊の危 険個所が 数万箇 所あるといわれており、その 対策 は社会資 本の整 備と開発 の進行 に伴いま すます緊 急かつ 重要な課題となってい る。 従来、岩 盤斜面 崩壊の防 止策は 地質的素因や気象的誘因に対処してi薄じられて きており、崩壊の発生機構を考慮した防止策は未だ立案されていない。本言盒文では、

この ような問 題に鑑 み寒冷地 におけ る岩盤斜 面の不安 定化機 構を解明することを第 1の 目的 とし、斜 面崩壊 防止法お よび予 知法の技 術開発指 針に対 して理論 的根拠 を 与 え ること も第2、第3の目的 として研 究を進 め、研究 成果を8章で まとめて いる。

  第1章で は我国に おける 岩盤斜面 崩壊の 概要およ びすぺ り破壊、 トップリ ング破 壊で 発生した 代表的 な斜面災 害事例 を紹介し 、既往の 研究の 問題点から、岩盤斜面 の不安定化機構の解明を研究目的として設定している。

  第2章では 、屈雲 峡の地形 、地質 および崩壊形愆の調査結果を説明するとともに、

岩盤 斜面崩壊 形態に すべり破 壊とト ップリン グ破壊が あるこ とを示し、大規模斜面 崩 壊 は5月 下 旬 か ら6月 上 旬 に 集 中 的 に 発 生 す る こ と を 指 摘 し て い る 。   第3章で は、層雲 峽の気 温、岩擬 温度、 凍結深度 、積雪 などの観 測結果を 説明す ると ともに、 最大凍 結深度、 凍結融 解回数、 夏刪およ び冬期 における節理構造岩雛 斜面 の温度分布などについて検討し、温度勾配は6月に最大十0. 108℃/cmまで違し、

3月 に 最 小 ‑0. 075℃ /cmま で 低 下 す る こ と を 明 ら か に し て い る 。   第4章 で は、2年 余り に わ たっ て層 雲峡熔 結凝灰岩 の柱状 節理構造 斜面で 行った AE法に よ る すぺ り 破 壊や ト ッ プリ ング破 壊のモニ タ結果 について 述べてい る。す な わ ち、 す べ り破 壊 の 前駆 現 象 である 開口節理 の進展に 起因す るAE活動に は、季 節 変 化があ り、特に6月 初旬に集 中的に 多発する ことを確 認して いる。卜 ップリ ン グ 直 前 のAE活 動 の時 系 列 的変 化 に は、2〜3ピ ー ク があ り 、 発 生時 か ら ピー ク に 至る までには 数時間 を要する ことを 確認し、 トップリ ングの 予知は可能であること

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を指摘している。

  第5章で は、 柱状 節 理構 造斜面の崩壊現象の観察結 果から新しく節理の開ロ模型 を提案し、すぺり破壊の 発生機構を理言含的に究明している。すなわち、節理の開ロ 模 型で長柱岩体の熱変形と開口節理の応力拡大係数を 解析するとともに、開口節理 の 進展長を計算している。さらに、この結果から、当 地域の岩盤斜面を不安定化さ せ る誘因は夏期における岩体内部の温度勾配と潜在節 理における破壊靭性値の低下 で ある こと を明 らか にし 、6月は岩盤斜面崩壊の特異 月で、危険性が異常に増大す ることを指摘している。

  第6章で は、 長柱 岩 体の トップリング破壊機構につ いて究明している。新しく提 案 したトップリング模型で長柱岩体の熱変形に起因す る節理の開口畳と開ロ節理に 挟 まっ た大 小2っの 落 石降 下位置を繰り返し計算し、 倒壊に至る機構を理論的に解 析 している。この解析結果から、長柱岩体のトップリ ングを促進させる最大要因は 岩 体の熱変形と落石降下の交互作用であることを明ら かにしている。さらに、長柱 岩 体脚 部の 割れ 目の 状態 から 最終 破壊 過程 を検 討 し、 トップリング破壊時のAE発 生 頻 度 の 時 系 列 変 化 か ら 理 論 的 検 討 結 果 の 妥 当 性 を 検 証 し て い る 。   第7章で は、 さら に 一般 的な任意の斜度を有した岩 盤斜面の落石・崩壊機構を解 明 している。まず、節理構造岩盤斜面の浮石岩板のカ 学模型を設定するとともに、

熱 変形論と線形破壊論から応力拡大係数を計算し、き 裂の進展条件を検討している

。これらの検討結果から 、以下の結論を得ている。すなわち、き裂1ま、岩盤斜面の 温 度勾配、傾斜角および岩坂の厚さが大であるほど進 展し易くなる。また、き裂は 凍 結融解によって潜在節理の破壊靭性値が低下するほ ど、開口節理に挾まった岩片 が 岩板の熱変形に応じて落下するほど進展し易くなる 。これより落石・崩壊は寒暖 の 激 し い 寒 冷 地 の 急 斜 面 の 方 が 発 生 し や す い こ と を 指 摘 し て い る 。   第8章で は、 本研 究 で得 られた成果と知見を総括し 、今後の研究に指針を与えて いる。

  これを要するに、著者は、節理構造岩盤斜面の熱変 形による崩壊機構を解明し、

斜 面崩壊の防止工法と予知法の技術開発に対して理論 的指針を与えており、応用地 質掌の発展に寄与すると ころ大なるものがある。

  よって、著者は、北海道大学博士(工学)の学位を 授与される資格があるものと 認める。

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