博 士 ( 医 学 ) 岸 本 理 和
学 位 論 文 題 名
Pre― Saturation法 を 利 用 し た IVIRIに よ る 血 流 測 定
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
【目的】
血流の 正確な評価は血行動態の検討に重要な情報を与えるが、現 在 広 く 行 わ れ て い る 超 音 波 ド プ ラ 法 で は 速 度 分 布 (velocity profile)の 評価 は なされていない 。MRIによる流速測 定法の中で time‐of―flight効果を用いる方法は、傾斜磁場の急激な切り換えが 引き起こす渦電流、化学シフト、磁場の不.均一さの影響を受けにく いという利点がある。加えてpreーsaturation法を用いた方法は普及 型 の 器 械 で 比 較 的 簡 単 に 施 行で き 、か っ直 接 管腔 内 のvelocity prof ileが観察でき、臨床にも応用しやすい方法である。しかしフ イルムやcathodeーray tube(CRT)上で手動的に評価を行なうと誤差 が大き く正確な測定ができない。このような誤差を排除するため、
画像管 理システム(PACS)の ネットワーク を介して直接デジタルデ 一夕を 転送し、パーソナルコンピュ―夕一上で客観的に評価するた めのフ ァントム実験を行い、さらに本法を門脈血流を対象に臨床応 用を試みた。
【方法】
(1)原 理:pre−saturation法は元来、流体のアーチファクト軽減 の為に 考案された方法でスピンエコ一法では血流信号を落とすため に使われている。このpre−saturationの幅を極く狭くして印加する ことで 画像に標識(pre―saturation band、以下PSB)がっけられ、
一定時 間をおいて撮像を行うと動体の部分ではこの標識の移動が観 察できる。(2)装置:使用機種はSIEJdENS社製ldAGNETOM H15(1.5 T) で パル ス シー ケンス は2D FLASH(fast lo' angleShot)に4mr のPSBを用いた。TR 100mSec TE 12msec FA 30°、スライス厚10mai、 撮影時間はpre−scan時間を含め15.6秒である。(3)ファントム実験
:circular polarization型頭部用コイルを使用した。定常流体モデ ルは内径1ゼmのガラス管に人工血液を流し、メスシリンダーで流量を 実 測し た 。流 量 はO. 33ml/minか ら1.86:1/minまで12段階に変
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化 させ 、PSBを印加 して から画 像信号を得るまでの時間は20msecと した。今回使用したパルスシーケンスではPSBを印加する基本画像を 3次元的 に傾 けるこ とが できな いので、ガラス管とスライス方向の 傾 きに 対する 補正 の検討 も行 なった。( 4)臨床応用:対象は男性 健常者11名で平均年齢29.8土6.4才、平均体重62.4土6.lkgであった。
全 身用コイルを使用し、測定は安静空腹時に行なった。ファントム 実験の結果と門脈の血流速度を考慮し、PSB印加から信号を得るまで の 時間は50msecに設定した。門脈の冠状断像を撮影し門脈に垂直な 方 向のPSBを印加した。撮影は息止め下で行ない、ひとりに3回ずつ 行なった。またPSBと同じ断面、および門脈に沿った断面の撮影も行 な い門 脈の断 面積 および スラ イス方向に対する角度を求めた。(5) 超音波ドプラ法による測定:超音波ドプラ法にてMRIと同様の位置で 門脈の最高流速の測定を行なった。使用機種は東芝SSAー10 0Aで3.5 MHzセ クタ プロー べを 用い各 症例3回ず っ測定 した 。(6) 流量 計算 方 法:画像データはPACSのネットワークを介して取得し、パーソナ ルコンピュー夕一( PC98:NEC)上で独自に開発したソフトにより処 理 を行 なった 。流 れの方 向に 沿った各直線上の信号輝度(s;ignal intensity) の最小 点を 求める ことで管腔内のvelocity profileが 得 られる。この移動距離を所要時間で割ることで流速が得られ、積 分 し円錐体または楕円錐体近似することにより流量を計算した。ま たこのprofileの中で最も移動距離の大きい点の流速を最高流速とし た。
【結果】
(1)ファントム実験:実測値(y)とpre‐saturation法によって求め た値(x)との間には相関係数r2=0. 984、P<O. 001の良好な一次相関が 得られた(y O. 11+0. 90x)。またガラス管のスライス方向に対する 傾 き (p) が増す と、 流量は 減少 する傾 向に あり8が20゜ を越 える と減少が明かとなり37°で最大14.SXの誤差を示した。傾きに対する 補 正をcos8で 除す ること で誤 差は7.1Xに減少した。(2)臨床応用
: 門脈血流は全例で測定可能であった。ファントム実験で得られた 相 関式 はy切 片がOに近く 、傾 きが1に近いので臨床例の評価におい て も修正を行なう必要はないと考え、計算により得られた値をその まま流量とした。また門脈のスライスに対する角度(タ)は12.5土 7.4°でファントム実験の結果から門脈の傾きに対する補正が必要と 考 えcospで除 する ことで 補正 した。preーsaturation法によって求 められた最高流速は20.1土4.Scm/sec、流量は16.2土5.O:l/m in/kg body weightであり、各症例の3回の測定における標準偏差の平均は 2. 65土1.81cm/secであった。同時に行なった超音波検査で適当な値
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が得られた9例から求めた最高流速の平 均は17.8土4.4で各症例の 3回の測定における標準偏差の平均は1. 59土O.83cm/secであった。
pre−saturation法により求めた値との相関はr2:0. 529、p<0. 05の 有意な相関を示した。
【考察】
血管 など 管腔内 の流 体を評 価す る場合 、そ のvelocity profile を考慮した評価が必要であるが、現在広く行なわれている超音波ド プラ法による測定ではこれが全くなされていない。このため適当な 角度が得られた場合でも最高流速の評価は行なえても平均流速や血 流量の評価には適さナよい。PSBを用いた流速測定でも中心部の最高 流速のみを検討した報告が多くprofileを検討した報告はみあたらナょ い。これは臨床的には鮮明ナよprofileが得にくくフイルムやCRT上で 手動的にその評価を行なうのは困難なためと考えられる。今回、PA CSのネットワークを介することで画像のデジタルデータの取得が容 易となり、また直接コンピュー夕一上で解析することによって処理 が 自 動 化 さ れ 手 動 に よ る 人 的 な 誤 差 の 排 除 が 可 能 と な っ た 。 ファントム実験における相関は非常に良好であり、臨床例におい てもこれまでの報告とも非常に近い値を示した。傾きに対する補正 に対してはファントム実験でも20°前後から誤差が大きくなり精度 を落とす原因となっており、補正を行ナょう方が正確であろう。門脈 血流はピークReynolds数が約300とされ通常は層流と考えられている が今回正常例でも必ずしも層流を示す放物線になっていない例も多 くみられた。肝硬変やうっ血肝では門脈の速度分布に変化が起る可 能性があり血流の評価には速度分布を用いた評価が不可欠である。
また速度分布は血行動態における重要な情報でありその定性的な評 価も有用で今後の応用が期待される。
今回の方法では管腔内の一断面のみを利用して楕円錐体近似で流 速を求めており、これが誤差の原因となっている可能性がある。撮 影の高速化がはかられ管腔全体の3次元的ナよデー夕採集ができれぱ より正確な評価が可能となるであろう。またPACSを介してデジタル データを容易に取得、処理できる点は大きな利点であり今後、各方 面での画像データの定量的、定性的評価における利用が期待される。
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学 位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Pre − Saturation 法を利用 した IVIRI に よる血 流測定
【目的】
MR血管 撮 影 にpre−saturation法を併用 して血流 測定を試 み、門脈 を対象に 臨 床応用の可能性を検討する。
【方法】
(1)原理 :timeーof―flight法に よるMR画像 にpre―saturationの幅を極く狭くし て印加 することで 画像に標 識( pre−saturation band、以下PSB)がっけられ一定 時 間を お いて 撮 像 を行 う と動 体 の 部分 で はこ の 標 識の 移 動 が観察でき る。(2) 装置 :使用機種 はSI.EMENS社製MAGNETOM H15(1.5T)で パルスシ ーケンス は2D FLASHに4mmのPSBを 用 い た 。 撮 影 時 間 はpre−scan時 間 を含 め15.6秒で あ る 。
(3) ファントム 実験:定 常流体モ デルは内 径lcmのガラ ス管に人 工血液を流 し、
メス シリンダー で流量を 実測した 。またガ ラス管と スライス 方向の傾き に対する 補正の 検討も行な った。(4)臨床応 用:対象 は男性健常者11名で、測定は安静空 腹 時に 行 なっ た 。 撮影 は 息止 め 下で行な い、ひと りに3回ず っ行なった 。また超 音 波 ド プ ラ 法 にてMRIと同 様 の 位置 で 門脈 の 最 高流 速 の測 定 を 行な っ た 。(5) 流量 計算方法: 画像のデ ータはPACSの ネットワ ークを介 して取得 し、パーソ ナル コン ピューター 上で独自 に開発し たソフト ウエアに より処理 を行なった 。流れの 方 向 に 沿 っ た 各 直 線 上 の 信 号 強 度 の 最 小 点 を 求 める こ とで 管 腔 内のvelocity profileが 得 ら れる 。 こ れを 所 要時間で 割ること で流速が 得られ、 積分し円錐 体 または楕円錐体近似することにより流量を計算した。
【結果】
(1)ファントム実験:実測値(y)とpre−saturation法によって求めた値(x)との 間には相関係数r2:0.9 84、P<O. 001の良好な一次相関が得られた。またガラス管 の スラ イ ス方 向 に 対す る 傾き (8)が増す と、流量 は減少す る傾向にあ り、傾き に 対 す る 補 正 をcos8で 除 す る こ と で 誤 差 は 減少 し た 。(2)臨 床 応 用: 門 脈血 流は全 例で測定可 能であった。 pre−saturation法によって求められた最高流速は 20.1土4.5cm/s ec、 流量は16.2土5.Oml/min/kg body weightであった。最高流速 におい て同時に行 なった超 音波検査 との相関 はr2:0.529、p<0. 05の有意な相関 を示した。
【考察】
管腔 内の流体を 評価する 場合、そ のvelocity profileを考慮 した評価 が必要で あるが 、PSBを用いた 流速測定 でもprof ileを検 討した報告はみあたらない。これ
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男郎 和 和芳 義 坂上 上 宮井 川 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
は臨 床的 には 鮮明 なprofileが得 にく くフ ィル ムやcathode−ray tube上でその評 価を 行な うの は困 難なた めと 考え られ る。 今回 、PACSの ネッ トワ ークを介するこ とで 画像 のデ ジタ ルデー タの 取得 が容 易と なり 、ま た直 接コ ンピ ュータ一上で解 析 す る こ と に よ っ て 処 理 が 自 動 化 さ れ 人 的 な 誤 差 の 排 除 が 可 能 で あ っ た 。 ファ ント ム実 験に おける 相関 は非 常に 良好 であ り、 臨床 例で もこ れまでの報告と も 非 常 に 近い 値 を 示 した 。門 脈血流 はピ ークReynolds数が 約300とさ れ通 常は 層 流と 考え られ てい るが今 回、 正常 例で も必 ずし も層 流を 示す 放物 線になっていな い例 もみ られ た。 肝硬変 やう っ血 肝で は門 脈の 速度 分布 に変 化が 起る可能性があ り血 流の 評価 には 速度分 布を 用い た評 価が 不可 欠で ある 。ま た速 度分布は血行動 態に おけ る重要な情報でありその定性的な評価も有用で今後の応用が期待される。
口 頭発 表時 およ び個 別審 査に おい て井上教授から臨床応用する際に門脈を選択 した 理由 、動 脈や 細い 静脈 、例 えば 硬膜静脈等に応用可能かという質問がでた。
これ に対 し現 段階 では 撮影 に15.6秒 要するため拍動性の血流は測定できず定常流 であ る門 脈を 選択 した こと 、現 在の 時間 ・空 間分解 能か らはlcm程度の太さが望 まし いが 、今 後の 技術 開発 によ り拍 動性の血流やより細い血管にも原理的には応 用可 能で ある と解 答し た。 さら に川 上教授から呼吸の影響の有無、安静呼吸下で の測 定は 可能 性、 超音 波検 査と の比 較で血流が速い部より中等度の速度の部での 誤差 が大 きい 理由 を問 われ た。 これ に対し撮影は息止め下で行なっており呼吸の 影響はないこと、撮影時間が長いため安静呼吸下では鮮明ナょ画像が得られナょいこ と、 超音 波検 査の 値に も誤 差が 大き くまた症例が少ないため両者の比較が困難で ある こと を解 答し た。 副査 の井 上、 川上両教授にはそれぞれ個別に面談し、試問 の結果両教授の判定は合格であった。
以 上、pre−saturation法を利用して血流測定を試みた本研究は独創性に富み、
博士(医学)の学位に値するものと判断した。
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