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脂肪組織由来細胞を用いた血管新生細胞治療

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Academic year: 2021

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「肥満研究」Vol. 11 No. 2 2005 <トピックス> 中神啓徳,ほか

トピックス

背 景

近年の細胞治療あるいは遺伝子治療 のトランスレーショナル・リサーチに より,様々な分野で難治性疾患の克服 の可能性が膨らみつつある. 細胞再生医療においては骨髄細胞や 胚性幹細胞を用いた基礎研究およびそ の応用が試みられているが,安全面や 倫理面の問題からその臨床応用は非常 に限られた分野であるのが現状であ る. 近年脂肪組織に骨髄由来の間葉系幹 細胞と同様の細胞群が存在することが 報告され,より簡便な細胞用治療の供 給源として期待されている.骨髄細胞 は多くの幹細胞を含んでいるものの多 量の採取を必要とし,例えば自己骨髄 細胞を用いた血管新生治療には患者か ら数100mlの骨髄細胞を全麻酔下で採 取する必要がある.近年末梢血からの 幹細胞の採取も試みられているが,さ らに大量の血液が必要とされている. そこで我々は安全かつ簡単に採取で きる脂肪細胞に着目し,血管新生治療 への応用の可能性について検討した.

方法および結果

1.脂肪組織由来幹細胞の培養系の 確立とその特徴 ヒト脂肪組織をコラゲナーゼ処理し た後に遠心分離して脂肪組織に潜在す る前脂肪細胞を得た.この細胞は通常 の分化誘導刺激により脂肪細胞へと高 率に分化(adipogenesis)する一方で, 5mMメルカプトエタノール刺激によ り 神 経 細 胞 に も 分 化 可 能 で あ っ た (neurogenesis).これを我々はAdipose tissue derived stromal cells(ADSC) と定義した.マウス白色脂肪組織から 同様の方法でADSCを培養した後に, 表面抗原をFACSで検討した. その結果,幹細胞のマーカーとして 知られているSca1が90%以上の細胞 で陽性を示した.さらに詳細な解析で は 造 血 系 幹 細 胞 の マ ー カ ー で あ る CD45などが陰性であったのに対して, 間葉系幹細胞のマーカーであるCD44 が70%以上の細胞で陽性を示し,骨髄 由来の間葉系幹細胞に非常に似通った パターンを呈した. 興味深いことには,この細胞は培養 することで非常に均一な細胞集団とな り,数回継代培養した後もまだ未分化 の細胞マーカーを呈していた. これまでの検討で,脂肪組織からは 分泌蛋白質(アディポサイトカイン)1) や,様々な生理機能を有する脂質2) が 放出され,遠隔臓器に影響を及ぼして いることが報告されている. そこでADSCにおいても,これら因 子の定量を試みたところ,血管系から 分泌されるよりも多くの増殖因子が分

脂肪組織由来細胞を用いた血管新生細胞治療

―アディポサイトカインを利用した再生医療

大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学

中神 啓徳

同内分泌・代謝内科

前田 和久

内皮細胞の 管腔形成能 マウス下肢 虚血モデル 虚血肢での 内皮細胞数 白色脂肪組織     コラゲナーゼ処理     遠心    培養皿への接着 対照群 脂肪由来未分化 細胞注入群 図 脂肪由来未分化細胞による血管新生治療の試み

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泌されており,中でも近年大阪大学で 血管新生治療の遺伝子治療が試みられ て い る 肝 細 胞 増 殖 因 子( Hepatocyte Growth Factor)が非常に多く分泌さ れていることが分かった. ま た 最 近 こ の HGFの 血 中 濃 度 と Body Mass Indexが相関することも報 告されており3) ,血管新生作用を有す る ア デ ィ ポ サ イ ト カ イ ン と し て の HGFの意義は極めて興味深いと考え られた. 2.血管新生治療への応用 成人での血管新生には,内皮細胞の 増殖能,遊走能,管腔形成能が必須で あるが,ADSCから分泌される血管新 生作用を有するサイトカインがこれに どのような作用を与えるかに関して検 討を行った. ヒト大動脈由来の血管内皮細胞と ADSCの共培養系などでの検討を行っ た結果,ADSCと血管内皮細胞を共培 養させた場合のほうが血管内皮細胞同 士を共培養させた場合よりも,細胞増 殖能が有意に亢進した.さらに,細胞 の遊走能,管腔形成能についても検討 したところ,ADSCと血管内皮細胞を 共培養した場合のほうが内皮細胞同士 を共培養させた場合よりも有意に遊走 能,管腔形成能が亢進していた. これらの血管内皮細胞の増殖能,遊 走能は,VEGF(vascular endothelial growth factor)あるいはHGFの中和抗 体の投与により有意に抑制された.つ まり,ADSCからは血管内皮細胞の増 殖能,遊走能,管腔形成能を亢進させ 血管新生を誘導させる内皮細胞活性因 子が分泌されており,ADSCによって 血管新生が促進されると考えられた. さらに,マウス下肢虚血モデルを用 いてADSCが血管新生を誘導できるか どうかを検討した.マウス白色脂肪組 織より調整したADSCs培養し,マウ ス下肢虚血モデルの虚血部位に1

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106 個注入し,レーザードップラーイ メージング法を用いて皮下の血流を測 定,2週,4週間後の左右血流比を比 較した. その結果,ADSCs注入群では生理 食塩水を注入したコントロール群と比 較して左右血流比が有意に改善してい た.このことから,動物モデルでも ADSCs注入により虚血部位の血流を 改善することが明らかになった.さら に虚血部位の切片における内皮細胞特 異的マーカーであるCD31陽性細胞を 観察したところ,ADSC注入群のほう がコントロール群よりも有意に増加し ていた.これによりADSCは虚血部位 の血管内皮細胞を増殖させることが示 された(図)

考察および将来への展望

本研究で,骨髄細胞と同様に脂肪由 来未分化細胞を用いての血管新生治療 の可能性が示唆された.今後,臨床応 用を視野に入れ,Clinical Gradeの細 胞培養系でGMP基準に準拠した方法 での培養系の確立が必要と考えられ る. 文 献

1)Maeda K, Okubo K, Shimomura I, et al.: Analysis of an expression profile of genes in the human adi-pose tissue. Gene 1997, 190(2): 227―235.

2)Maeda K, Cao H, Kono K, et al.: Hotamisligil Adipocyte/macrophage fatty acid binding proteins control integrated metabolic responses in obesity and diabetes. Cell Metabo-lism 2005, 11:107―119.

3)Rehman J, Considine RV, Bovenkerk JE, et al.:Obesity is associated with increased levels of circulating hepa-tocyte growth factor. J Am Coll Cardiol 2003, 41:1408―1413.

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参照

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