昭和四十八年度 (中級)
これから聞き方の試験を始めます。最初に、私の読むのを聞いて下さい。聞きなが
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ら、メモをしてもいいです。その後で'それについて質問をします。質問を聞いたら'
すぐに答えを書いて下さい。その後、もう一度初めから‑りかえします.
そ れ
で は
、 始
め ま
す 。
お正月の気分もまだ抜けきらない、!月七日の夜のことでした。建築業の安田さんは、受
け取ったお金を、背広の内側のポケットに入れていました。そうして、久しぶりに会った友達
の田中さんと'新宿でお酒を飲みながら、話し込んでいました。まだお正月で'仕事は半分
休みでしたo それに、その日は'前に働いた仕事の分として、現金で百万円も手に入ったの
で、いい気分でした。時計を見ると'十時を少し過ぎていました。まだ、たいして遅‑ないか
らと、田中さんと店を出て'また別の店に行くことにしました。割合近‑にある'行きつけの
店に行こうとしましたが'少しお酒を飲んでいたので、歩‑のも面倒でした。ちょうどタクシ
ーが通りかかったので'それに乗って、次の店に行きました。
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ところが、その店に入ろうとして、ふと'ポケットに手をやると、手応えがありません。あ
わてて、ほかのポケットも探してみましたが、確かにさっきまで'茶色の封筒に入れて、内側
のポケットに入れておいたはずのお金が、どこにもありませんでした。田中さんも驚いて、一 緒になって探しましたが'どこにどう消えたのか'お金はどこにも見つかりませんでした。あ
わてて近くの交番に駆け込んで'事情を話しましたo
安田さんは、こんな事になるなら'田中さんと話などしないで、すぐうちに帰ればよかった
のにと恩いましたoまた、百万円という大金は'建築の材料費や自分の生活費にも使わなけ
ればならない、大切なお金だ、ということを考えると'このまま'お金が出てこなかったらど
うしようかと、顔色も真っ青でした。警察にさっきまでいた店のなまえを言って、調べてもら
うときも、がたがた震えていましたo タクシーの会社やナンバーは、二人とも全然覚えていま
せんでした。
お丁度そのころ'安田さんたちを下ろしたタクシーの運転手、小林さんは、次のお客を探して、
すきま
駅の方へ走っていました。ふと、信号の所で振り返ると、後ろの座席とドアの隙間に、茶色の
封筒が落ちているのに気がつきました。手を伸ばして敬って開けてみると、新しいi万円札が
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ぎっしり詰まっています。びっくりして'これは大変と、すぐ新宿の警察に届けました。
交番で立ったり座ったりして待っていた安田さんは'警察からの、見つかったtという知ら
せを受けて、ほっとしました。急に体の力が抜けるような思いでした。交番に届けてから
わずか二十分後に、お金は無事見っかりました。八日朝、安田さんは'警察にそのお金を取
りに行きました。その時'小林さんに、お礼として五万円送りました0
今読んだことについて'これから質問をします。質問を間いたら'すぐに答えを書いて‑だ
さい
。
質問1番 この事件が起こったのは、何時ごろだったでしょう.
二番 安田さんは、百万円を'どこに入れて持っていましたか。
三番 お金がないことに気がついて'安田さんは'どこへ行きましたか。
四番 百万円は、何に使うお金でしたか。
五番 小林さんは、お金を見っけてから'どうしましたか。
1 番 3 2 番
番 4 番