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地域の歴史・民俗・記憶の人類学的研究

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研究成果

 本研究は、文化財・世界遺産・博物館などの制度 的装置を通じた意識的な歴史・民俗・記憶の継承と、

口頭伝承・宗教儀礼・物質文化などを媒体とする無 意識的な記憶の生成と伝達という両側面に注意を払 いつつ、現代の日本を含む東アジア諸地域の歴史・

民俗・記憶のあり方の諸相を個別具体的事例の調査 研究から多角的に明らかにするとともに、それが地 域社会の自画像(アイデンティティ)のあり方に与 える影響について考察することを目的として行われ た。以下、各自の研究成果について述べる。

 宮岡は、台湾の先住民を対象に、エスニシティお よび記憶という2つの側面から研究を遂行した。前 者のエスニシティについては、日本統治期の人類学 者や行政による民族分類法に対する今世紀初頭以来 の先住民諸集団による異議申し立てと分類見直しの 訴えについて、特に2014年にツォウからの分離独立 を果たしたサアロアとカナカナブの事例を取り上げ て調査研究を実施した。3者は過去に同盟関係にあ り、一部通婚もみとめられるなど集合的記憶を少な からず共有してきた。しかし、1980年代終盤に始ま るツォウ主導の民族名称表記法の改正要求運動とそ の成功に際してサアロア・カナカナブが抱いた違和 感、90年代以降の3者が直接交流する場の増加によ る互いの文化・言語の違いについての認識の深まり などが契機となり、両者がそれぞれ独自のエスニシ ティを興隆させるに至った。近接する民族による民 族意識の覚醒が、エスニシティの高まりの契機となっ たという点を指摘し、他の事例との比較をおこなっ た。

 後者の記憶については、「牡丹社事件」(日本でい う「台湾出兵」)をめぐるコメモレイション(記憶 の共有化)の通時的考察をおこなった。事件の一方

の当事者である台湾屏東県牡丹郷に居住する先住民 パイワンは、事件発生から近年までこの事件をめぐ る碑文や教科書の記述のなかで暴力的・侮蔑的に表 象され、歴史を語る場の埒外に置かれてきた。近年 牡丹郷パイワンの人々は「愛と平和」を象徴するモ ニュメントを建立し、自らの歴史認識を内外に知ら せる諸実践をおこなってきた。この事例の分析を通 じ、重層化する植民地経験を有する社会において、

記憶とコメモレイションをめぐって先住民が抱える 困難について明らかにした。

 白川は、北部九州の宗教民俗を、顕密寺社仮説を 基に解明していくという研究課題を実行してきた。

特に、ここ3年間の調査の中心は、英彦山及びその 周辺地域にあった。顕密寺社というのは歴史学者、

黒田俊雄の用語であるが、調査研究の過程を通じて、

民間(民俗)の視点では、「神仏習合」という我が 国独特の信仰や実践の在り方がかなり明らかとなっ た。神仏習合は、これまで宗教史上の過去の形態と して、神仏交渉史としてしか扱われてこなかったが、

我が国の宗教文化の基本構造として、全国的に分析 モデルとして適用することが可能である。と同時に、

評価の側面では、過去の遺産や遺物としてではなく、

今後の復元や展開の可能性を含めた文化資源として 再構築されつつあるという実態が明らかになった。

 

岡は、大学院時代より日本の「都市」の民俗学・

文化人類学的研究を行なってきたが、その成果の一 つとして、2014年3月に『地方都市の暮らしとしあ わせ‐高知市史・民俗編』(高知市、高知市史民俗 部会長・

岡弘幸)の執筆と編さんを行なった。本 書で取り上げたテーマは多岐にわたるが、特に近世 に発達した「城下町」の構造を比較検討するため大 分市を選び、2014年度中、大分県立図書館や大分市 歴史資料館などで関係資料を収集した。特に近世城

―  ― 3 4

研究チーム報告

【人文科学研究部】

地域の歴史・民俗・記憶の人類学的研究

研究チーム名:地域の歴史・民俗・記憶研究(課題番号:143006)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:宮岡真央子  研究員:白川琢磨、岡弘幸、田村和彦(平成27年4月1日から)

(2)

が好きなのか?」と「歴史学的現在と近現代の歴史、

そして記憶」の中で、成果の一部を用いた。

 また、2015年度、2016年度の2年間は、ただの漁 村にすぎなかった呉市が旧日本海軍の軍港都市とし て発展していくプロセスおよび、近世城下町と船上 生活者(いわゆる「家船」)の関係性について、広 島県立図書館や呉市海事科学歴史館、三原市中央図 書館などで資料を収集した。これらについては、ま だ成果を発表していないが、2017年度以降の領域別 研究の課題の一つとして、さらに調査を重ねていき たいと考えている。

 田村は、中国における葬儀を主題として研究をお こなった。現在の中国では、「火葬」、「追悼会」、「公 共墓地」を3つの柱とする、いわゆる「伝統中国」

とは大きく異なる遺体処理がおこなわれている。従 来の研究では、それが人類学的であれ、社会学的研 究であれ、多くの場合、この差異を、伝統/近代化、

あるいは伝統社会/社会主義化以降の社会といった 二項対立のなかで理解する傾向があった。本研究で は、これを緩やかにつながる一連のプロセスとして 理解し、そのなかでどのように死の社会的布置、換 言すれば「人」の有り様が変化してきたのか、を検 討するための基礎作業をおこなった。具体的には、

行政文書、電子化された論文を含む国内外における 文献資料の収集と分析を通じて、この現象の理解枠 組みの形成を目指した。

 その結果、清末時期に起った、新たな世界認識と、

社会をめぐる様々な言説の影響に基づく「科学的な」

認識変動を受け、新たな社会と人の関係が模索され るなかで、葬儀を通じた人物顕彰の手法としての葬 儀に変化が起き、五四運動時期に前後して、「封建 的」礼教からの離脱として追悼会形式の葬儀が一部 の知識人を中心として試みられ、中華民国の礼制形 成のなかで、喪服や服喪期間が官僚らに普及した。

ただし、この段階では、民間の葬送儀礼および関連 する死の習俗との間に乖離が発生するのみで、全国 民的な形式とはなっていないことを明らかにした。

1930年代には、一部のソヴィエト地域(辺区政府)

での、烈士顕彰が盛んとなり、これと、民国政府に よる、衛生運動を背景とした公共墓地政策が融合し つつ、中華人民共和国以降の火葬推進と、無神論的

で、この新たな形式が、中国を代表する葬儀形式と なった点を明らかにした。しかし、改革開放以降、

社会の流動化と、「単位」制度の動揺、そして、新 たな家族観の展開にともなって、1980年代までに確 立された葬儀システムのうち、とくに「追悼会」に ついて、名称は同一であるものの、そこで表明され る「人」のあり方には、大きな変化がみられ、これ を筆者は、旧来の葬儀での礼教とも、新中国におい て発展した「人」の儀礼表現とも異なる、「新たな 儒教的家族」表現として指摘した。

 以上の調査研究の成果のうち、未刊行のものにつ いては漸次論文等で発表していく予定である。

研究業績

宮岡真央子 八八水害、最後の恒久住宅地―来吉ト エウアナ(得恩亜納)コミュニティの誕生,台 湾原住民研究,20:180

184,2016年。

宮岡真央子 重層化する記憶の場―〈牡丹社事件〉

コメモレイションの通時的考察,文化人類学,

81(2):266

283,2016年。

宮岡真央子 命名・分類、社会環境、民族意識―サ アロアとカナカナブの正名にみる相互作用,台 湾原住民研究,19:22

46,2015年。

笠原政治・宮岡真央子 ツォウ・カナカナアブ・サ アロア―日本統治時代における民族学的見解,

民族學界,36:29

52,2015年。

宮岡真央子 歴史語りの複数性―台湾での調査経験 から,七隈史学,17:103

104,2015年。

宮岡真央子 サアロアとカナカナブの民族認定,台 湾原住民研究,18:131

133,2014年。

宮岡真央子 ツォウのタファゲに関する覚書,順益 台湾原住民博物館開館20周年記念論文集 台湾原 住民研究の射程―接合される過去と現在(日本 順益台湾原住民研究会編 野林厚志主編),順益 台湾原住民博物館(台北),pp.137-165,2014年。

白川琢磨 山家岩戸神楽,ちくしの散歩,116,筑 紫野市教育委員会(筑紫野),2017年。

白川琢磨 筒井神社例祭、高住神社紅葉祭(柴灯護 摩)、男魂祭、津野下井餅食い祭、英彦山の信 仰と民俗,英彦山総合調査報告書(本文編), 福岡県添田町教育委員会(添田町),

p.201, p.208,

―  ― 3 5

(3)

p.211, p.212, pp.359-373

,2016年。

白川琢磨 顕密のハビトゥス―修験道を再考する,

森羅万象のささやき―民俗宗教研究の諸相(鈴 木正崇編),風響社(東京),

pp. 417-437

,2015 年。

白川琢磨 弥谷寺の信仰と民俗,弥谷寺調査報告書:

四国八十八ヶ所霊場第七十一番札所(香川県

「四国八十八箇所霊場と遍路道」調査報告書6)

(香川県政策部文化振興課編),香川県(高松),

pp.321-332

,2015年。

白川琢磨 「鬼」と伝統文化,七隈の杜,11:18

28,

福岡大学(福岡),2015年。

白川琢磨 多配列クラスとしての「鬼」―修正鬼会 から神楽まで,記憶の場としての東アジア 国際 シンポジウム予稿集 上巻,華東師範大学(上海),

pp.278-290,2

014年。

岡弘幸 幽霊―近世都市が生み出した化物,吉川 弘文館(東京),244p.,2016年。

岡弘幸 あの世に行ってみたけれど―臨死体験の フォークロア,本郷,125:26

28,吉川弘文館

(東京),2016年

岡弘幸 幽霊の物語から霊感の話へ―現代日本の 世相の解読,怪異・妖怪文化の伝統と創造,国 際日本文化研究センター(京都),

pp.233-243

, 2015年。

岡弘幸 歴史学的現在と近現代の歴史、そして記 憶,ミニシンポジウム「拡大する民俗学:近現 代史をとりこむ試み」(代表),日本民俗学会第 67回年会(於・関西学院大学),2015年10月12

日。

岡弘幸 日本人は『街』が好きなのか?,『地方 都市の暮らしとしあわせ―高知市史・民俗編』

出版記念シンポジウム―地方都市から「地域」

の都市へ,高知市(於・高知市立自由民権記念 館),2014年7月12日。

田村和彦 葬礼と埋葬のいろいろ、現代中国におけ る人生の閉じ方、ほか計10項目,中国文化事典

(中国文化事典編集委員会編 竹田晃・大木康編 主編),丸善出版(東京),2017年。

田村和彦 中国の家族の変容,現代家族ペディア

(比較家族史学会編),弘文堂(東京),

pp.35-37

, 2015年。

田村和彦 メディアを取り込む日常生活分析のあり 方について―中国の民間活動とメディアの関係 から,日常と文化(日常と文化研究会編),3: 29

42,2017年。

田村和彦 近現代中国における「歴史記憶」の形成 過程に関する文化人類学的研究―陝西省中部地 域における烈士記念の事例から,アジア歴史研 究報告書2014年度,

pp.103-132

,2015年。

田村和彦 中国における火葬装置、技術の普及と労 働現場の人類学―新たな技術を受容し、環境を 再構成する人々に着目して,中国社会における 文化変容の諸相:グローカル化の視点から 国 立民族学博物館論集3(韓敏編),風響社(東京),

pp.51-71,2

015年。

―  ― 3 6

(4)

研究成果

 本研究チームは、アジアやアフリカにおける経済 開発や国際協力の研究に携わる研究員から構成され、

研究対象地域としては、インド、中国、フィリピン 及びウガンダで調査を行い、それらの知見を様々な 形態で公表してきた。特に、本チームの研究費は、

海外調査のための国内専門家へのヒヤリングや文献 資料収集や文献の購入に充てられた。また、本学に 専門家を招聘して、2回の研究会を行い、彼らとの 有意義な研究交流を行う事ができた。

 以上の活動によって、推進された研究の概要は、

以下の通りである。なお、その詳細に関しては、後 述の研究成果にて確認をお願いしたい。

 まず、石上はインドの経済・産業発展と日本との 関わりについて先行研究および基本的な文献資料な どにより援助を含む戦後の両国関係を俯瞰し、両国 経済関係緊密化に向けた課題を明らかにした。次に、

インド

ICT

サービス産業についてその人材が米国と のつながりと移動というグローバルな空間において 展開していることを諸資料により検討した。3番目 はインドのローカルレベルでの地場製造業の発展に ついて現地調査を含む研究を実施した。さらに、産 業発展の基盤をなす資源・エネルギー問題および企 業部門の発展などについても共同研究を実施した。

 次に、石井は、フィリピンおよびウガンダを主な フィールドとして、地方政府の分権改革とそれに付 随する課題について研究を行ってきた。具体的には、

フィリピンとタイの地方政府における人的資源管理 に関する改革に関する共同比較研究、フィリピンの 地方政府における行政リーダーシップの事例研究、

フィリピンとウガンダの地方行政サービスの提供に おける市民団体との協力がもたらす成果と問題点の 比較研究を実施した。さらに、これまで

ODA

の受

け入れ国であったタイが

ODA

の提供国となったこ とと日本の

ODA

との関連に関する研究も行ってい る。

 最後に、木幡は中国における中小企業の発展とそ のグローバル化に焦点を当てて研究を進めてきた。

中国における改革開放政策によって、市場経済化が 大きく進展したが、計画経済自体の遺物である国有 企業の改革はなかなか進まなかった。しかし、1990 年代末に国有企業に関する最終的とも言える改革が 実施され、国有企業のうち、基幹産業や大企業を残 し、それ以外の中小または地方の所有する国有企業 を民営化する方針が実施された。農村では、いわゆ る「郷鎮企業」が民営企業に転換していたが、これ ら二つの企業群が「中小企業」として政策の対象と なったのが2003年の「中小企業促進法」である。そ れ以来、中国でも中小企業研究が活発化すると同時 に、力を付けた中小企業は、国内にとどまらず海外 に市場や経営資源を求めて「走出去」に参加したの である。中国の中小企業の一部は急成長を遂げ、海 外進出可能な企業となり、グリーンフィールド投資 や買収などによって世界市場でのプレゼンスを高め ていったし、浙江省に代表される中小企業は、海外 に工業団地を作るなどして地元企業の海外進出をサ ポートする動きも出てきた。木幡は、浙江工業大学 中国中小企業研究院の研究者の協力をうけ、上海社 会科学院や中国人民大学の研究者のアドバイスを受 けながら、この研究を進めることができた。記して 感謝の意を表するものである。

研究業績

石上悦朗「インド

ICT

サービス産業の新展開―米 国とインドの関係を中心に 」佐藤隆広編『イン ドの産業発展と日系企業』神戸大学経済経営研

―  ― 3 7

【社会科学研究部】

アジアとアフリカの開発と援助に関する比較研究に関する報告

研究チーム名:アジア・アフリカ開発・援助(課題番号:144005)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:木幡伸二  研究員:石上悦朗、石井梨紗子

(5)

究所叢書77号、2017年3月、303

339ページ。

石上悦朗「日印経済関係の軌跡」堀本武功編『現代 日印関係入門』東京大学出版会、2017年2月、

35

57ページ。

石上悦朗(南埜猛と共著)「資源開発とエネルギー 問題」岡橋秀典・友澤和夫編『現代インド4  台頭する新経済空間』東京大学出版会、2015

,

131

150ページ。

Ishigami, E. “Structure of the Steel Industry and Firm Level Labour Management in Mandi Gobindgarh and Ludhiana,” in Industrial Clusters, Migrant Workers, and Labour Markets in India, Chapter 8, Edited by Shuji Uchikawa, Palgrave Macmillan, 2014, 209-229

石上悦朗(上池あつ子・佐藤隆広と共著)(2014)

「企業部門と経済発展」絵所秀紀・佐藤隆広編

『激動のインド第3巻 経済成長のダイナミズ ム』第6章、日本経済評論社、2014

,

273

350 石上悦朗「インドの経済・産業発展と人間開発―議

論の整理を中心に」日本南アジア学会九州支部 定例会、(学会発表)2016年6月18日、福岡大 学

Ishii, Risako et.al.

 

“HRM Reform in Decentralised Local Government: Empirical Perspectives on Recruitment and Selection in the Philippines and Thailand’, Asian Journal of Political Science 21

3

, pp.249-267, 2014.

Ishii, Risako “Leadership and Organisational Performances in Decentralised Local Governments

A Case Analysis from the Philippines”, Conference Paper for International Research Society for Public Manage- ment

IRSPM

XIX Conference, 2015.

石井梨紗子「タイの

ODA

ドナー化と日本の支援に 関する考察」『商学論叢』第60巻第3号、

pp.525- 546

、2016年。

Ishii, Risako “How Decentralisation Can Lead to the Improvement of Social Service Delivery

Oppor- tunities and Challenges of Local Government

Citizen Partnerships in the Philippines”, Conference Paper for International Research Society for Public Management

IRSPM

XX Conference, 2016.

Ishii, Risako “Community Participation in Local Gov- ernance

An Empirical Analysis of Urbanized Local Governments in the Philippines and Uganda”,

International Journal of Public Administration

forth- coming

.

近藤康史・松尾秀哉・溝口修平・柳原克行(編)『連 邦制の逆説?:効果的な統治制度か』第14章

「途上国での分権改革は難しいのか?―フィリ ピンの事例からの考察」

pp.255-269

、2016年。

木幡伸二「中国における中小企業のグローバル展開」、

『東アジアにおける中小企業のグローバル展開』

第5章担当、

pp..147-184、九州大学出版会、2

016 年3月。

木幡伸二「中国における中小企業に関する研究につ いて―その発展過程、現状及び海外進出を中心 に―」、『東アジア研究』第18号、

pp.71-89

、東 アジア学会、2015年9月。

―  ― 3 8

(6)

 現在、急速な情報化が進んでいる。これは、企業 や自治体への大規模なデータの蓄積をもたらしてお り、その活用による企業戦略や政策の考察や評価が 求められている。自治体におけるオープンデータの 取り組みや経済産業省と内閣府地方創生推進事業局 による地域経済分析システム(

RESAS

)等は、蓄積 されたデータをうまく活用するために試行錯誤を行っ ている典型的な例であるといってよい。このような 状況のもと、データから政策や戦略に有益な知見や 情報を引き出す方法の開発が求められている。

 本研究チームは、データや事実にもとづく地域政 策立案、及び企業戦略策定支援を行うための評価枠 組みの提案や理論・実証モデルを考察・検討するこ とを目的に設置した。

 以下に、研究組織の構成員から寄せられた活動報 告を掲載する。

栫井昌邦

 (1)2012年に福岡大学経済学部栫井研究室、大石 研究室、斎藤研究室、福岡大学都市空間情報行動研 究所が実施した「筑紫野市・二日市温泉に関する

Web

アンケート調査」により得られたデータを活用し、

イベントの集客効果の統計的評価を試みた。調査で は情報の提供が人々のイベント参加行動をいかに変 化させるかを検証するため、1)事前調査で被験者 を2012年に筑紫野市で開催された「二日市ものづく りアート市」というイベントを紹介するホームペー ジ(チラシ)を見せるグループ(処置群)と見せな いグループ(対照群)に分割し、2)事後調査で実 際にイベントに足を運んだかを尋ねるといった工夫 を行っている。ホームページ上には同時開催された

「スプリングフェスタ」や「大賀酒造酒蔵開き」と いうイベントも併せて紹介されている。このデータ

に対し、リスク差分析や

Rubin

の因果モデルとして 知られる

potential-outcome

モデルを適用し、 情報提 供がイベントの集客効果にもたらす影響に関する統 計的評価を行うとともに、ロジスティック回帰モデ ルにより、同時開催によるイベントの集客効果の測 定を行った。この研究成果は、2016年に日本地域学 会で報告している。また、(2)福岡市周辺の居住者 に対し、福岡都心部での消費者の回遊行動や出向頻 度、天神や博多の商業機能の評価等を訪ねる Web調 査を設計するとともに、2017年3月に実施した。実 際の回遊行動を

Web

調査で尋ねることは初めての試 みである。また、調査では、

KITTE

博多の開業前後 の街への出向頻度を尋ねる項目を用意することで、

回顧的パネルデータを得る工夫を行っている。

有岡律子

 将来人口の減少傾向が特に大きいとの推計がある 地方部において、政府はその創生に力を入れ、金融 機関にも大きな役割を求めている。この政府の方針 を鑑み、今後、地域金融機関はどうあるべきか、

また地域金融の枠組みの方向性等を考えるため、

(1)関連論文の幅広いサーベイ、ソーシャルファン ディングの事例収集に加え、(2)以下の分析を行っ た。まず、1)ここ10年ほどの人口減少の現状を把 握し、地域銀行の営業地盤に対するインパクトを考 察したうえで、2)地域銀行がこの間とった対応及 びその効果を① 収益源の差別化、特に貸出先の見直 し、② 合併や経営統合などの経営体制自体の変革、

③ 店舗網の配置転換を通じた経営効率化に分けて具 体的にみた。そして、3)計量分析により収益改善 への貢献度を捉え、これを踏まえて4)人口減少下 の地域銀行の将来像を検討し、地域金融の枠組みの 方向性を示した。

―  ― 3 9

【社会科学研究部】

根拠(エビデンス)にもとづく政策・戦略科学研究

研究チーム名:新しい政策・戦略科学(課題番号:144001)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:栫井昌邦  研究員:有岡律子、井手豊也、赤羽根靖雅

(7)

 この成果は、堀江康煕教授との共著論文である

「経営環境の変化と地域銀行の対応」に示されてい る。

井手豊也

 貿易政策の理論的評価を行う準備のため、福岡県 の日本における輸出・県内総生産・人口について調 べた。2016年6月のイギリスの欧州連合からの離脱

(Brexit)等により、日本の2016年の輸出額は、2015 年と比較すると約5

.

6兆円減の70兆円程となった。こ の輸出額を100%とすると、門司税関管内で取り扱 われる輸出額の割合および2015年からの減少の割合 は、10

.

5%、△6

.

4%となっている。その中で福岡県 に関しては6

.

4%、△4

.

8%となっていて輸出額では九 州圏内トップである。福岡県の輸出品別の構成比お よび増減は、自動車を含む輸送用機器(33

.

7%、4%)、 映像機器等を含む電気機器(19%、△3

.

7%)、原動 機等を含む一般機械(15

.

3%、0

.

6%)、鉄鋼等を含む 原料別製品(13

.

5%、△3

.

2%)となっている。また、

地域別輸出先を見ると、構成比および増減は、アジ ア(60

.

3%、△4

.

3%)、北米(15

.

8%、1

.

5%)、西欧

(9

.

3%、0

.

6%)、中東(5

.

4%、△0

.

9%)、中南米(5

.

2%、

△0

.

7%)となっている。福岡県の2014年の県内総生 産(名目)は、北海道に次ぎ9位で約18兆1

,

121億円 となっており、2016年の平均年収は437万1

,

400円で 前年度より約3万7千増加、都道府県ランキングは 山口県に次ぎ24位であり、2017年3月の人口は51

,

05

,

765 人で前年同月から約4千人増加、北海道に次ぎ9位 である。また、課税所得を加味した平均所得では、

福岡市は全国市区町村ランキング138位の344万9

,

122 円となっており2015年から約4万円の増加、人口は 1

,

557

,

102人で前年同月から1万3千人増加である。

福岡市の年齢別人口をみると、年少人口201

,

455人

(12

.

9%)、生産年齢人口997

,

784人(64

.

1%)、老年人 口327

,

851人(21

.

1%)となっている。

赤羽根靖雅

 (1)資本不足企業と労働不足企業の合併問題を考 え、どちらの企業が合併のインセンティブがより強 いかを比較し、合併が起こる要因分析や、合併の促 進に必要な政策や規制のあり方について検討した。

その成果は、九州大学のワークショップにて英語で

発表している。この研究では存続可能な企業が効率 化を目指し合併するモデルとなっているが、ワーク ショップでは、「現実の多くの合併は、一方の企業 が経営難に陥り、他方の企業が吸収する形で起こる ことが多いのではないか」という指摘を受けた。こ の指摘は、合併促進策や規制を包括的に論じる上で の弱点を示しているので、現在、経営難のケースも 含めたモデルへ拡張を試みている。加えて、(2)地 方都市内の中心地の移動に対し、旧中心地の維持、

発展に何が必要かを考えるにはモデル分析が必要で ある。旧地区は個人商店を中心とした小規模資本家 の集合体であることが多く、小規模資本による協調 的投資が行えるかが鍵となる。協調行動を行う仕組 み作りを考えるための分析を行うためのモデルを検 討した。

【研究業績】

栫井昌邦・岩見昌邦・山城興介・斎藤参郎 情報提 供によるイベント集客効果の統計的評価 日本 地域学会第53回(2016年)年次大会発表,2016 年10月

岩見昌邦・山城興介・栫井昌邦・斎藤参郎 

Choice-

based

多変数ポアソンベイジアンモデル-来街

地ベース重み付きポアソンモデルへのベイジア ンアプローチ-,公益社団法人日本不動産学会 2015年秋季全国大会(第31回学術講演会)論文

集,31,pp.79-84,2015年11月

山城興介・岩見昌邦・斎藤参郎・栫井昌邦 行先間 の競合を考慮したポアソン集客数モデルと

Random Regret Minimization

モデルによる行先選択モデ ルとの比較,日本地域学会第52回(2015年)年 次大会発表,2015年10月

堀江康煕・有岡律子 経営環境の変化と地域銀行の 対応,『経済学研究』,第82巻/第5・6合併号,

pp13-49

,2016年3月,九州大学経済学会 赤羽根靖雅 

“Incentive to Merge and Dismissal Costs”,

九州大学ワークショップ発表,2015年10月

―  ― 4 0

(8)

【研究概要】

 細胞膜に存在するレセプターは単独ではリガンド への結合力は微弱であるが、数多く寄り集まること で結合力が飛躍的に増大する“クラスター効果”が 知られている。例えば、2個のレセプターが寄り集 まると、リガンドに対する結合力は2倍ではなくそ れ以上に飛躍的に増大する。本研究では、生物学で のいわゆるクラスター効果の概念を化学に、とりわ け機能性分子化学に適用し、従来には無い全く新し い機能を有する分子クラスターの創成を目指すこと にした。具体的には、ゲスト(基質)を効果的に捕 捉できる結合部位を2つ集積したシクロファン2量 体を開発し、還元剤などの化学刺激に応じて捕捉し たゲストを放出させることを目的とした。さらに、

ゲストに対する捕捉力が飛躍的に向上するクラス ター効果の概念をホストの分子設計に取り入れて、

タンパク質表面での効果的な分子認識の発現を目指 してビオチン部位を有するシクロファンも開発した。

これらホスト分子クラスターの合成と特異的な機能 について報告する。

【研究成果】

シクロファン2量体による還元応答的ゲスト放出  動的共有結合として知られるジスルフィド結合で は、酸化還元による外部刺激によってその結合の解 離・付加を可逆的に制御することができる。そこで、

ジスルフィド結合で連結したシクロファン多量体を 開発することができれば、外部刺激に応じてシクロ ファン多量体をシクロファン単量体へ解裂させるこ とができる。つまり、クラスター効果の解消に伴っ た包接ゲストの放出も可能になるかもしれないと考 えた。さらに、シクロファン多量体の還元応答的な シクロファン単量体へ解裂を蛍光分光法で追跡する

ために蛍光基の導入も行った。本研究の遂行によっ て次のことを明らかにした。

新たに2つのローダ ミン基を導入した蛍光性シクロファン2量体(ホス ト)の合成に成功した。

このホストはローダミン 基による自己消光のためにホスト単独ではローダミ ン

B

と比べて弱い蛍光を示すことを見出した。

ホ ストの水溶液にジチオトレイトールを添加すると蛍 光強度が約3倍に増加したことから、ホストのジス ルフィド結合が開裂することでローダミン基を一つ だけ有するシクロファン単量体が生成し、自己消光 が解消したものと考察した。

さらに、これら還元 刺激によるシクロファン2量体からシクロファン単 量体の生成にともなって、捕捉したゲスト分子を徐 放できることも実証した。この結果から、還元剤に よる刺激によってシクロファン2量体がシクロファ ン単量体へ解裂し、クラスター効果の解消を伴った 包接ゲストの放出が実現できたものと考える。

ビオチン化シクロファンとアビジンの複合体形成  ビオチン(ビタミン H)はアビジン(タンパク質)

と特異的に強くほぼ不可逆的に結合する。この結合 を利用して様々な生体高分子の検出や精製などに利 用されている。ここでは、側鎖にビオチン基を導入 したシクロファンを開発し、アビジンと超分子複合 体を形成させることによって、ホストゲスト相互作 用の機能開発に取り組んだ。本研究の遂行によって 次のことを明らかにした。

カチオン性およびアニ オン性の水溶性ビオチン化シクロフアンの合成(ホ スト)の合成に成功した。

表面プラズモン共鳴法 による検討から、これらホストはともにアビジンと 特異的に強く結合し、ホスト・アビジン複合体を形 成することを見出した。

カチオン性ホスト・アビ ジン複合体は蛍光性ゲストに対する結合定数が増大

―  ― 4 1

【理工学研究部】

機能性分子によるクラスター効果の発現とその制御に関する研究

研究チーム名:機能性分子クラスター(課題番号:145005)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:林田 修  研究員:松原公紀、草野修平(平成27年12月1日から)

(9)

することを明らかにした。

さらに、正電荷を増し たカチオン性ホストはアビジンと

GroEL

などの酸性 タンパク質を接着できる分子糊として機能すること を原子間力顕微鏡による観察から明らかにした。

【研究業績】

学術論文(すべて査読有)

1.

Synthesis of water-soluble triazinophanes and evaluation of their molecular recognition properties, S. Kusano, S. Konishi, R. Ishikawa, N. Sato, S.

Kawata, F. Nagatsugi, O. Hayashida, Eur. J. Org.

Chem., in press.

2.

Synthesis of a cysteine-linked cyclophane dimer having two rhodamine moieties and its reduction- responsive degradation as studied by fluorescence spectroscopy, O. Hayashida, K. Nishino, S. Kusano, J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem., Vol. 87, No. 3- 4, 267-274(2017) .

3.

Dinuclear Systems in the Efficient Nickel-Catalyzed Kumada-Tamao-Corriu Cross Coupling of Aryl Halides, K. Matsubara, H. Yamamoto, S. Miyazaki, T. Inatomi, K. Nonaka, Y. Koga, Y. Yamada, L. F.

Veiros, K. Kirchner, Organometallics, Vol. 36, 255- 265

2017

.

4.Monomeric Three-coordinate N-Heterocyclic Car-

bene Nickel

(Ⅰ)

Complexes: Synthesis, Structures, and Catalytic Applications in Cross-Coupling Reactions, K. Matsubara, Y. Fukahori, T. Inatomi, S.

Tazaki, Y. Yamada, Y. Koga, S. Kanegawa, T.

Nakamura, Organometallics, Vol. 35 , 3281-3287

(2016)

.

5.Aluminum Complex Initiated Copolymerization of

Lactones and DL-Lactide to Form Crystalline Gradient Block Copolymers Containing Stereoblock Lactyl Chains, K. Matsubara, K. Eda, Y. Ikutake, M.

Dan, N. Tanizaki, Y. Koga, M. Yasuniwa, J. Polym.

Sci. A: Polym. Chem., Vol. 54, 2536-2544

2016

.

6.Development of Tetraphenylethylene-appended

tetraazacyclophanes: the evaluation of aggregation- induced emission property and the application for biomolecular sensing, S. Kusano and O. Hayashida, Chem. Lett., Vol. 45, No. 9, 1084-1086

2016

.

7.

Synthesis of a water-soluble macrocyclic anthra- cenophane and its size-selective molecular Recog- nition, K. Nakamura, S. Kusano, and O. Hayashida, J. Incl. Phenom. Macrocycl. Chem., Vol. 85, No. 1, 121-126(2016) .

8.

Synthesis of water-soluble cyclophane hexamers having a triphenylene core and their enhanced guest- binding behavior, O. Hayashida, T. Matsuo, K.

Nakamura, and S. Kusano, J. Org. Chem., Vol. 81, No. 10, 196-4201

2016

.

9.Synthesis and effect of linker length on guest-binding

affinity of water-soluble tetraazacyclophane dimers, O. Hayashida, K. Matsushita, and S. Kusano, J. Incl.

Phenom. Macrocycl. Chem., Vol. 84, No. 3, 237-243

2016

.

10.Bimetallic Cu(Ⅰ)complex with a pyridine-bridged

bis

1,2,3-triazole-5-ylidene

ligand, H. Iwasaki, Y.

Teshima, Y. Yamada, R. Ishikawa, Y. Koga, K.

Matsubara, Dalton Trans., Vol. 45 , 5713-5719

(2016)

.

11.

Isolation and Structures of 1,2,3-Triazole-Derived Mesoionic Biscarbenes with Bulky Aromatic Groups, H. Iwasaki, Y. Yamada, R. Ishikawa, Y. Koga, K.

Matsubara, Eur. J. Org. Chem., 1651-1654

2016

.

12.Biotinylated cyclophane: Synthesis, cyclophane-av-

idin conjugates, and their enhanced guest-binding affinity, O. Hayashida, M. Kojima, and S. Kusano, J. Org. Chem., Vol. 80, No. 19, 9722

2015

.

13.Synthesis of coumarin-appended cyclophanes and

evaluation of their complexation with myoglobin, O.

Hayashida, Y. Harada, and M. Kojima, J. Incl.

Phenom. Macrocycl. Chem., Vol. 83, No. 1-2, 111-117

2015

.

14.Entrapment and release of guest molecules by

reduction-responsive cyclophane dimers based on disulfide linkage, O. Hayashida and K. Kojima, Bull.

Chem. Soc. Jpn., Vol. 85, No. 5, 729-735

2015

.

15.Synthesis and guest-binding behavior of water-

soluble cyclophanes bearing PEG residues, O.

Hayashida, Y. Nakamura, and T. Sato, Adv. Chem.

Eng. Sci., Vol. 4, No. 4, 409-416

2014

.

16.

Synthesis of a rhodamine-appended cyclophane as

―  ― 4 2

(10)

Kaku, Adv. Chem. Eng. Sci., Vol. 4, No. 4, 401-408

(2014)

.

17.

Degradation properties and pH-responsive guest- release of cyclophanes having four ester side chains with terminal choline residues, O. Hayashida and D.

Sato, Chem. Lett., Vol. 43, No. 3, 322-324(2014) .

―  ― 4 3

(11)

研究成果

 現在、超高齢化社会である。冬季における住宅の 場合、住宅の暖房している室と非暖房室があり、後 者は水廻り室で、室温・床面温度は低い。そのため 居住者の血圧が高くなり、身体的に危険性が発生し 易い。素足文化である日本人が住宅と接するのは床 面温度であり、その温度を低下させないことが温熱 環境の基本である。そのため1階に着目する。その 防止策の一つに床下に外気を入れない基礎断熱工法 がある。そのため福岡市内に建つ木造住宅で基礎断 熱工法を冬季に測定した。当住宅は省エネルギーの 中で最も高いレベルの次世代省エネルギー基準の住 宅である。当住宅の断熱の概要は表1であり、図1 に1階の平面図を示す。

 また測定期間は2015年12月22日~2016年2月29日 で、1時間に1回測定している。一方、国土交通省 での室内の提案水準は、暖房時の居室で18~22℃、

非暖房室で13~20℃である。ただし「暖房停止時・

非暖房室は15℃確保したい」とコメントを発表して いる。ここの提案水

準は、床面温度につ いては触れていない。

ただし、室温と床面 温度を比較すると、

窓ガラスのコールド ドラフトによって床 面温度は低くなる。

 冬季に測定期間を 二つに分けた理由は 妻と子供が2人不在 で、夫が1人のため である。最初は2015 年12月22日~2016年

1月17日までを

A

期間とし、次は2016年1月31日~

2月28日までを

B

期間とする。A期間の測定室の温 度の最高、平均、最低を図2に示す。福岡市の気象 台での外気温度は2

.

5℃から15

.

8℃で、1階リビング は15

.

6~24

.

6℃である。15

.

6℃は無暖房時の夜間温度 である。1階の書斎は15

.

0~27

.

0℃で、1階の脱衣室 は15

.

1~29

.

0℃で、29

.

0℃は浴室からの湯気の影響で ある。

B

期間の測定点の温度状態を図3に示す。外 気温度は1

.

0~19

.

9℃、リビングは14

.

7~24

.

6℃、書斎 は13

.

7℃から24

.

4℃、脱衣室は14

.

3~35

.

3℃である。

国土交通省の暖房時については

A

期間では平均値で は最も低いのが19

.

8℃、

B

期間では18

.

0℃であるの で、クリアーしていると考えられる。非暖房室の 13℃以上についてもクリアーにしている。またコメ ントについて比較すると暖房の停止時及び非暖房室

―  ― 4 4

研究チーム報告

【理工学研究部】

水廻り空間の床面温度の上昇化

研究チーム名:水廻り空間の床面温度の上昇化(課題番号:145008)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:須貝 高  研究員:石田 卓

表1 住宅の断熱概要

図1 1階平面図及び温湿度測定位置

(12)

いては夜間に水準をクリアーしていなかった。外気 温度が1

.

0℃になった時には15℃を切っていた。それ を克服するためには窓部の断熱性が必要である。次 世代省エネ基準の窓については複層ガラス+金属 サッシ+カーテンであるが、当住宅は

Low-E

複層ガ ラス+金属・樹脂サッシであり、前者の熱貫流熱

w

/m2

k

)は3

.

47、後者は2

.

11で後者は1

.

64倍と高い が、Low-E 複層ガラス+サッシ(金属・樹脂)は断 熱性が高いので、断熱性の高い厚手のカーテンにす ることも必要である。

 次に床面温度については国土交通省では水準はな い。しかし、夜間には寝室からトイレに行く場合、

リビングなどを通ることもあるので分析する。A期 間の測定点の温度状態を図4に示す。リビングは15

.

~21

.

7℃、書斎は15~24℃、トイレは15

.

8~20

.

0℃、

B

期間の測定点の温度状態を図5に示す。リビング は14

.

7~19

.

1℃、書斎は11

.

1~21

.

3℃、トイレは14

.

~19

.

1℃である。

A

期間では室温の提案水準をクリアー しているが、

B

期間ではいずれの部屋についても15℃

析すると窓ガラス以外の床・壁・天井部の平均熱貫 流熱(0

.

49)を1とすると、窓(2

.

11)から逃げる熱 は4

.

3倍になるので、今後、窓の断熱性は極めて重要 であると考えている。

研究業績

1)石田卓,須貝高:戸建て木造住宅の温度に関す る実験的研究 福岡市の冬季の空気温度と床面温 度の分析,日本建築学会大会(九州)学術講演 梗概集,環境工学Ⅱ

D-2

,平成28年8月,

pp.199- 200

2)須貝高,石田卓,他:基礎断熱と外張り断熱及 び躯体内換気をもつ住宅の温湿度の分析

床下・

小屋裏温湿度及び含水率の評価(福岡市,2016 年5月中旬~2016年梅雨季前)

,日本建築学 会九州支部研究報告,第56号・2,平成29年3 月,

pp.325-328

―  ― 4 5

図2 外気・室内中央高の温度の最高・平均・最低値

(3人全員で生活中)(冬季:2015.12/22.12:002016.1/17.12:00)

図3 外気・室内中央高の温度の最高・平均・最低値

(3人全員で生活中)(冬季:26.1/31.02/28.1:00)

図5 外気・1階床面温度の最高・平均・最低値

(3人全員で生活中)(冬季:26.1/31.02/28.10)

図4 外気・1階床面温度の最高・平均・最低値

(3人全員で生活中)(冬季:2015.12/22.12:002016.1/17.12:00)

(13)

研究成果

【背景】

 成人

T

細胞白血病(

ATL

)は、ヒト

T

細胞白血病 ウイルス1型(HTLV-1)が主に CD4

T

細胞に感染 後、60年以上の潜伏期を経て発症する難治性のウイ ルス発がんである。HTLV-1感染者は九州・沖縄地 方に多く、全国に約108万人、世界では約3

,

000万人 いると推定されている。HTLV-1感染者のほとんど

HTLV-1

関連疾患を発症しないが、

HTLV-1

感染

者全体の約5%が ATLを発症するといわれている。

ATL

Shimoyama

らの報告に従って、臨床病態の特

徴から、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型 の4つの病型に分類されている。特に

aggressive

ATL

と呼ばれる急性型およびリンパ腫型の生存期間 中央値は1年未満と予後が悪く、ATLに対する効果 的な治療法を確立することが急務となっている。

 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、細 胞内のエネルギー恒常性を司る最上位の因子である。

触媒作用を持つ サブユニット(AMPK )と、調節 作用を持つ と サブユニットから構成され、 低グ ルコースや低酸素状態、虚血、あるいは熱ショック などによる

AMP/ATP

比の増加に伴い、AMPK の

Thr172

がリン酸化されることで活性化される。近年、

AMPK

はエネルギー代謝や糖尿病などの生活習慣病 のみならず、セリン・スレオニンキナーゼ

mammalian target of rapamycin や長寿遺伝子産物 SIRT1 を介して

細胞増殖や腫瘍化に関与することが明らかになって いる。

 

AMPK

阻害剤である

Dorsomorphin

AMPK

活性 化剤である

AICAR

やビグアナイド系薬物は特に 多くの研究において使用されている。

Dorsomorphin

Compound C

とも呼ばれており、

ATP

と競合的

AMPK

を阻害する。一方、

5-Aminoimidazole-4- carboxyamide ribonucleoside(AICAR)は細胞膜透過

性の

AMP

アナログである。

Metformin

はビグアナイ ド系薬物の1種であり、2型糖尿病の治療薬として 広く使用されている。

Metformin

AMP

/

ATP

比を 増大させて

AMPK

を活性化し、GULT4 の細胞膜表 面への移行を促進し、グルコースの細胞への取り込 みを増加させることが報告されている。

 この3つの薬剤について、

Dorsomorphin

は大腸が

ん細胞、

AICAR

は神経膠芽腫の増殖を抑制し、ビグ

アナイド系薬物の一つである

Metformin

を服用して いる糖尿病患者ではがんリスクが低下することが報 告されている。しかし、ATLをはじめとする白血病 における

AMPK

の役割、および

AMPK

を標的とす る薬剤がどのような影響を与えるのか十分に明らか になっていない。そこで、本研究では

AMPK

阻害剤

である

Dorsomorphin、ならびに AMPK

活性化剤で

ある

AICAR

および

Metformin

が、

ATL

をはじめと する抗白血病薬となりうるか検討を行った。

【結果・考察】

① Dorsomorphin

 

Dorsomorphin

HTLV-1

感染細胞株である

MT-2

細胞および

S1T 細胞にどのような影響を及ぼすか検

討を行った。

MT-2

細胞および

S1T

細胞を

Dorsomor- phin

で処理したところ、時間依存的かつ濃度依存的 な生存率の低下がみられた。また、

Western blot

法を 用いてタンパクの変化について確認したところ、

AMPK

AMPK

の基質である

Acetyl-CoA Carboxylase

ACC

) のリン酸化はともに減少していた。この結果から、

HTLV-1

感染細胞株において、

Dorsomorphin

AMPK

の活性を阻害していることが確認できた。

―  ― 4 6

研究チーム報告

【生命科学研究部】

AMPK 標的薬の抗白血病薬開発

研究チーム名:

AMPK

標的薬の抗白血病薬開発(課題番号:146006)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:相川晃慶(平成28年3月31日まで)、添田秦司(平成28年4月1日から)

研究員:添田秦司(平成28年3月31日まで)、坂田 晃

(14)

生存率低下がアポトーシスによるか確認するため、

Flow cytometry 法によってアポトーシス細胞を検出

した。

Dorsomorphin

で処理した

MT-2

細胞および

S1T

細胞では、ともに時間依存的かつ濃度依存的にアポ トーシス細胞が増加した。また、アポトーシスの指 標となる Caspase3 の開裂を

Western blot 法によって

確認したところ、

Dorsomorphin

処理によって時間依 存的に Caspase3 の開裂と、その基質である PARPの 分解がみられた。この変化は汎

Caspase

阻害剤

zVAD- fmk

処 理 に よって 抑 制 さ れ た。こ れ ら の 結 果 は

Dorsomorphin

HTLV-1 感染細胞株において Caspase3

介したアポトーシスを誘導することを示唆する。

② 

AICAR

 AICARで処理した

MT-2

細胞および

S1T 細胞は、

24時間では生存率に変化はみられなかったが、48時 間以降において濃度依存的な生存率の低下がみられ た。また、

AMPK

の活性化剤であるにもかかわらず、

AMPK

および ACCのリン酸化は減少していた。

 次に、

AICAR

による

HTLV-1

感染細胞株の生存率

低下がアポトーシスによるか確認するため、

Flow

cytometry

法によってアポトーシス細胞を検出した。

AICAR

で処理した

MT-2

細胞、

S1T

細胞ともに、48 時間以降においてアポトーシス細胞の増加がみられ た。また、

Caspase3

の開裂を

Western blot

法によっ て確認したところ、MT-2 細胞、S1T 細胞ともに、

AICAR

処理によって

Caspase3

の開裂と、

PARP

の分 解がみられた。この結果は

AICAR

HTLV-1

感染 細胞株において

Caspase3

を介したアポトーシスを誘 導することを示唆する。

③ 

Metformin

 MT-2細胞および

S1T

細胞を

Metformin

で処理し たところ、48時間以降において生存率の低下がみら れた。また、AICARと同様に、AMPK および ACC のリン酸化は減少していた。

 次に、Metforminによる細胞生存率の低下がオー トファジーによるものか確認するため、

Microtubule- associated proteins 1A/1B light chain 3B(LC3)の変

化について

Western blot

法を用いて観察した。

MT-2

細胞および

S1T

細胞を

Metformin

で処理したところ、

が増加した。また、

3-

メチルアデニン(

3-MA

)は細 胞透過性のクラスⅢ

PI 3-キナーゼを阻害することか

ら、オートファジー阻害剤として使用される。

S1T

細胞を

3-MA

で前処理したところ、Metformin によ る細胞生存率の低下は減弱された。この結果から、

Metformin

HTLV-1 感染細胞株においてオートファ

ジーを介して細胞死を誘導する可能性が示唆された。

④ 

A769662

 AICARと

Metformin

による細胞死が

AMPK

の活 性化によるものか確認するため、

AMPK

直接活性化 剤である

A-769662

を用いて検討した。

A-769662

MT-2 細胞および S1T

細胞を処理したところ、

AMPK

のリン酸化が増加した。また、

A-769662

は72時間ま で HTLV-1感染細胞株の生存率を低下させなかった。

この結果から、

AICAR

Metformin

による細胞死は

AMPK

活性化によるものではない可能性が示唆され た。

【まとめ】

 今回使用した

Dorsomorphin

AICAR

および

Met-

formin

は、アポトーシスまたはオートファジーを誘

導することによって

HTLV-1

感染細胞株の生存率を 低下させることが明らかとなった。また、AMPK直 接活性化剤である

A-769662

の結果から、

AICAR

お よび

Metformin

AMPK

の活性とは関係なく、HTLV-1 感染細胞株の細胞死を誘導する可能性が示唆された。

今後、さらに詳細な作用機序を明らかにすることで、

Dorsomorphin

AICAR

お よび

Metformin

は 新 規 の

ATL

治療や発症の予防の選択肢となり得ると考えら れる。

【謝辞】

 本研究を行うにあたり、貴重な検体の分与等、多 大なご協力とご指導を賜りました鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御学血液・免 疫疾患研究分野の有馬直道教授ならびに吉満誠准教 授に厚く御礼申し上げます。

研究業績

1)相川晃慶、小迫知弘、横松恵里佳、吉満 誠、

―  ― 4 7

(15)

有馬直道、坂田 晃、本田伸一郎、添田秦司、

HTLV-1

感染細胞株に対する

Compound C

AICAR

および

Metformin

による

HTLV-1 感染細胞株の

増殖抑制効果、第31回日本薬学会九州支部大会、

2014年12月6日、福岡

2)相川晃慶、小迫知弘、横松恵里佳、吉満 誠、

有馬直道、坂田 晃、本田伸一郎、添田秦司、

Compound C

AICAR

および

Metformin

HTLV-1

感染細胞株の細胞死を誘導する、日本薬学会第 135年会、2015年3月28日、神戸

3)山内省吾、相川晃慶、小迫知弘、吉満 誠、有 馬直道、刀根菜七子、本田伸一郎、添田秦司、

AICAR

および

Metformin

は成人

T

細胞白血病 細胞株の細胞死を誘導する、日本臨床腫瘍薬学 会学術大会2016、2016年3月12日、鹿児島 4)井上 大、相川晃慶、小迫知弘、吉満 誠、有

馬直道、坂田 晃、本田伸一郎、添田秦司、

HTLV-1

感 染 細 胞 株 に お ける

Compound C

AICAR

および

Metformin

の細胞死誘導、日本薬 学会第136回、2016年3月29日、横浜

5)福田 梓、相川晃慶、小迫知弘、吉満 誠、有 馬直道、本田伸一郎、添田秦司、

Compound C

を用いた HTLV-1感染細胞株のアポトーシス誘 導機序の検討、第3回日本

HTLV-1

学会学術集 会、2016年8月27日、鹿児島

6)相川晃慶、小迫知弘、福田 梓、吉満 誠、有 馬直道、本田伸一郎、添田秦司、Dorsomorphin

による

HTLV-1

感染細胞株のアポトーシス誘導、

第33回日本薬学会九州支部大会、2016年12月3 日、鹿児島

―  ― 4 8

(16)

【研究成果】

背景

 薬剤アレルギーは、治療目的で処方された薬剤が 患者に予期せぬ副作用を引き起こすものであり、薬 剤を用いる全ての診療科に関わる問題である。患者 にとって薬剤アレルギーの発現は、アレルギー症状 そのものの不利益に加えて原疾患の治療の中断とい う観点からも回避することが望ましいが、薬剤に対 する反応性は個人差が大きい上に併用薬による影響 など複合的な要因も考えられ、その事前予知は困難 なのが現状である。薬剤アレルギーは、処方された 薬剤やその代謝物が直接またはタンパク質などと結 合して生体に異物として認識され、免疫機構の過剰 な反応を惹起した結果として現れる。このとき、ア レルギー発現局所への集積など一連の反応に関わる 免疫細胞を制御する液性成分としてサイトカイン/

ケモカインが知られている。我々は、これら液性成 分を高感度に測定することでアレルギーの診断や原 因薬剤同定、事前検査に用いることのできる方法(

High- sensitive allergy test; HiSAT

)を開発した。

HiSAT

では、

被験者のリンパ球の他に、ヒト白血球を走化性細胞 として用いているが、本邦での広範な普及を考える と走化性細胞としては樹立細胞株を用いるのが望ま しい。本研究では、実際の臨床検体を用いて

HiSAT

の迅速検査方法としての有用性を検証するとともに、

事前検査方法として確立するために

HiSAT

の走化性 細胞に最適な細胞株の探索、また、既存の細胞株に 最適なものが存在しない場合に備えて、新規の細胞 株樹立に必要な遺伝子の解析を行った。

方法

 患者:2011年1月から2015年12月までに福岡大学 病院でアレルギー様症状を発現し検査を依頼された 患者20名。本臨床研究は福岡大学病院倫理委員会の 承認(IRB11-4-16)を受け、 患者登録にあたり文書 による同意を受けた。

 細胞:被験者リンパ球は、

Lymphoprep

を用いて末 梢血より分離した。走化性細胞としてヒト白血球を 用いる場合は、IRB11-4-16により検査部での廃棄血 から分離して用いた。ヒト樹立細胞株として、

CESS

(リンパ芽球)、

EoL-1

(好酸球性白血病)、

HL-60

(前 骨髄性白血病)、

Jurkat

(白血病

T

)細胞を用いた。

各細胞株を分化誘導する場合は

DMSO

による刺激を 用いた。

 

HiSAT

:走化性細胞の細胞動態は、患者血漿ある

いは被験者リンパ球を抗原(phytohemagglutinin; PHA)

で刺激した培養上清を、走化性因子を含む検体とし

EZ-TAXIScan®

にて4時間まで測定・解析した。

走化性細胞の移動距離など各種の細胞動態パラメー タは画像データを用いて

ImageJ

にて算出した。

 遺伝子発現解析:

HL-60

細胞の未分化および

DMSO

にて分化誘導させた状態で

mRNA

を抽出しマイクロ アレイ解析を行った。

統計解析:各数値データは

GraphPad Prizm™

を用い て解析し、

p

値が

p

<0.05のときに統計的に有意とみ なした。

結果・考察

 アレルギー様症状を発現した患者血漿を用いた

HiSAT

で、採血時における症状の有無で分類した場

合、陽性と判断されたのはそれぞれ89%(8/9)と

―  ― 4 9

【生命科学研究部】

微量検体による迅速アレルギー検査方法と アレルギー事前検査方法の確立

研究チーム名:アレルギー事前検査方法研究(課題番号:146003)

研究期間:平成26年4月1日~平成29年3月31日

研究代表者:芝口浩智  研究員:二神幸次郎、安勇気

(17)

9%(1/11)であり、これは

HiSAT

が薬剤アレルギー の判断に有用であることを示唆する。臨床現場で原 因不明の症状を呈した場合、それがアレルギーか否 かを迅速に判断できる方法はこれまでになく、1時 間程度の細胞動態を解析することで高精度に判断で きることは、必要な検体量が微量なことと合わせて

HiSAT の利点と考えられる。

 今回の実験条件下で、

Jurkat

細胞は

DMSO

による 誘導の有無にかかわらずアレルギー発現時の患者血 漿やリンパ球の

PHA

刺激上清に対して遊走能を持 つものの、その移動度はヒト白血球の1/20以下であ り、HiSAT においてヒト白血球の代替として使うの は難しいことが判明した。今回用いたヒト樹立細胞 株では、CESSと

HL-60

細胞は未分化の状態では

Jurkat

細胞と異なり全く走化性を示さず、また、

EoL-

1細胞は検体に対して反応性を有したが Jurkat

細胞

に比べてその移動度は小さかった(図1)。一方、

EoL-1

HL-60

細胞は、DMSOによる分化誘導の結

果、未分化細胞の場合と違い、検体に対して有意な 走化性向上が認められたが、Jurkat 細胞の場合と同 様にヒト白血球に比べてその反応性は小さかった。

今後も、血液系の細胞株を中心に

HiSAT

に最適な細 胞株の探索を続ける予定である。

 未分化な状態では全く反応性を示さなかった

HL- 60

細胞は、

DMSO

による分化誘導によって有意な走 化性向上を示した。このことは、分化誘導によって 発現が増加したタンパク質を強制発現させることで、

HiSAT に最適な細胞株を新たに樹立できる可能性を

示唆する。

HL-60

細胞を用いたマイクロアレイ解析 を行った結果、細胞株樹立のための候補遺伝子とし て

CXCR1

CXCR2, IL-10R

などの発現が増加して いた。これら候補遺伝子を過剰発現させた細胞株を 樹立し、HiSAT におけるそれら新規細胞株の有用性 の検証が今後の検討課題である。

【研究業績】

原著論文

1.安高勇気,藤岡伸助,寺澤真理子,芝口浩智,

二神幸次郎,他.リバスチグミン貼付剤の継続 投与に及ぼすメマンチンの影響

ロジスティッ ク回帰分析を用いた後方視的研究

,薬学雑誌,

137:121

125,2017.

2.安高勇気,藤岡紳助,芝口浩智,今給黎修,鷲 山厚司,坪井義夫,二神幸次郎.パーキンソン 病治療薬ロチゴチン貼付剤の継続使用に関する 検 討,BRAIN and NERVE,68(6):655

660,

2016.

3.今給黎修,阪田有理,大塚 誠,山本知佳,安 高勇気,鷲山厚司,権藤公樹,中村信之,二神 幸次郎.内分泌療法中に虚血性心疾患を発症し た去勢抵抗性前立腺癌の1症例,医療薬学,41

(10):695

700,2015.

4.安高勇気,芝口浩智,二神幸次郎.薬剤アレル ギー同定の効率化に関する基礎的検討

1次ス クリーニングとしての細胞動態解析

,医療薬 学,41(1):11

17,2015.

5.Yasutaka Y, et al. Tumor necrosis factor-α

reduces beta-amyloid accumulation primarily by lowering cellular prion protein levels in a brain endothelial cell line.

 

FEBS Lett, 589

263-268, 10.1016

/

j.febslet.

2014.12.00710.1016/j.febslet.2014.12.0072015.

6.安高勇気,中島章雄,芝口浩智,鷲山厚司,二 神幸次郎.病院実務実習におけるポートフォリ

―  ― 5 0

図1.HiSAT において各種ヒト血液系細胞株を用いた観察直後

と10分後の典型的細胞走化イメージ

(18)

, .

7.

Shirasu N, Yamada H, Shibaguchi H, et al.

 

Potent

and specific antitumor effect of CEA-targeted photo- immunotherapy.

 

Int J Cancer, 135

2697-2710 , 2014.

8.

Shibaguchi H, Reactive oxygen species in non- invasive cancer therapy.  In Suzuki M. and Yamamoto S. eds, Handbook on Reactive Oxygen Species

ROS) : Formation Mechanisms, Physio- logical Roles and Common Harmful Effects.

 

Nova Science Publishers, Inc.

(USA)

, 279-302, 2014.

特許

1.登録番号:特許第6108570号(日本),名称:迅 速アレルギー検査方法,権利者:福岡大学,発 明者:芝口浩智,安高勇気,二神幸次郎,登録 日:2017年3月17日

2.登録番号:特許第5908839号(日本),名称:超 音波感受性物質を含む腫瘍増殖抑制剤および腫 瘍増殖抑制剤と低出力超音波を用いた腫瘍増殖 抑制方法,権利者:芝口浩智,発明者:芝口浩 智,水流弘文,登録日:2016年4月1日 3.出願番号:14751837

.

7(欧州),名称:Rapid al-

lergy testing method

,権利者:芝口浩智,発明者:

芝口浩智,安高勇気,二神幸次郎,出願日:2016 年1月20日

4.出願番号:14/767355(米国),名称:Method for

rapid testing allergy

,権利者:芝口浩智,発明者:

芝口浩智,安高勇気,二神幸次郎,出願日:2015 年11月12日

―  ― 5 1

参照

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