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博 士 ( 医 学 ) 諌 山 治 彦

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 諌 山 治 彦

    学位論文題名

マ ウ ス 頭 頂 骨 内 側 面 に お け る 骨 吸 収 窩 の 加 齢 変 化

―走査電子顕微鏡と画像解析装置による定性的ならびに定量的研究

学 位 論 文 内容 の 要 旨

    【目的】

  頭蓋骨は脳の容量が増えるに応じて成長し,内側面で骨吸収,外側面で骨形成が活発に 行なわれ,改変されていく,このような成長期にある頭蓋の頭頂骨の内側面を観察すると

,破骨細胞の骨吸収による骨吸収窩が多数みられる.骨吸収窩の形や数は,破骨細胞の機 能を反映すると考えられるので,破骨細胞の機能活性の高い幼若期,それより機能活性の 低い成熟期,さらに低いことが予想される老齢期では,異なるはずである.目的は,マウ スを用いて頭頂骨内側面の骨吸収窩の加齢変化を定性的に観察するとともに,定量的に解 析し,破骨細胞の機能活性の違いを評価することにある.骨吸収窩の立体像は走査電子顕 微鏡により明瞭に観察できる,しかし,走査電子顕微鏡は対象を立体的にみせるとはいえ

,写真上では二次元画像として解析せざるを得ない,そこで,走査電子顕微鏡ステレオデ ジタル画像を解析することで骨吸収窩の深さを計測した.深さは断面像にあらわれるので

,マウス頭頂骨の断面における骨吸収窩の深さを二次元的に計測して画像解析法の妥当性 も検討した.

    【材料と方法】

  実験動物には,生後1週,14週,100週の雌性dclマウスを用いた.頭頂骨を摘出して内側 面の骨膜を剥離後,軟部組織を溶解・除去して骨の表面を露出した.脱水,自然乾燥後,

金属コーティングし,走査電子顕微鏡を用いて頭頂骨内側表面にみられる骨吸収窩を観察 した.さらに,骨吸収窩の形・大きを長径・短径・面積の要素にわけて自動計測した.骨 吸収窩の深さの解析には走査電子顕微鏡によるステレオペア像を用いた,解析で得られた 三次元情報画像の骨吸収窩像に長軸方向で最深部を通る線を引いて断面図をっくり,深さ を計測した.一部の標本は二次元的に骨吸収窩の深さを計測するため,頭頂骨を切断した 小骨片を側面から観察する方法を用いた,

    【結果】

  定性的観察結果:1週では個々の骨吸収窩は,円形あるいは楕円形を呈していた.骨吸収 窩の底には膠原線維が認められ,多くはその走行は不規則であった.一方,一部の骨吸収 窩には膠原線維の走行が不明瞭で陥凹部全体が滑らかで暗くみえるものもあった.吸収窩 のあるものは辺緑の一部あるいは全周が二重の線を示す骨吸収窩もみられた. 14週では骨 吸収窩の辺緑陵は低く,1週にくらべると不明瞭で,それが途切れてみえるものも観察でき た.骨吸収窩の凹部の膠原線維は一般に並行に配列していた.骨吸収面の境界は1週でみら れた平坦な面で囲まれていたが,低い隆起で囲まれる部分もみられた.100週では骨吸収窩 は紡錘状にみえる骨吸収窩が多かった.1週,14週にくらべさらに不明瞭なものが多かった

(2)

.陥凹部の膠原線維は14週と同じく並行に配列したが,一本一本の線維は細かった,骨吸 収面の境界は土手状に盛り上がり,この部の斜面にそって所々に石灰顆粒が敷きっめられ ていた,

  定量的計測結果:長径は1週では幅広い分布を示した.とくに20 ym以上が半数をこえて いた. 14週ではピークは15 ymであり,小さいものが主体となっていた.100週では幅の 狭い分布を示した.短径は1週では幅広い分布を示し,ピークは約13 ymであった.14週 と100週とではほぽ同様の分布を示し,ピークは約10 /imであり,15 /im以上のものはま れであった.長径と短径との比は値が1に近いほど円形を呈することを示す.1週では1 から2の範囲で分布し,円形,類円形の骨吸収窩が多いことを示した. 14週では広く分布 し,この比が2以上のものが多かった.100週も分布が14週と類似し,細長い骨吸収窩が 多いことを示した.面積は1週では分布範囲は広く,小さいものから大きいものまでほぼ均 等にあることを示した.とくに150から300 ljIT12の骨吸収窩が半数以上であった,14週で は150 j.im 以下の小さな骨吸収窩が多かった,100週の分布は14週と類似したが,さらに 小さいものが多かった,

  以上のように骨吸収窩の計測結果は,生後1週では骨吸収面は円形,ないし類円形の大小 の骨吸収窩が集合していることを示す.とくに生後14週や100週にくらべて大きな骨吸収 窩が多い,一方,14週では骨吸収窩は全体として小さく,細長いことが示されている.ま た,100週ではさらに小さくなっている.

  三次元画像解析による骨吸収窩の深さは,1週では1 /imよりも浅いものが約半数と多か った が,それよ り深いもの が多く,深 さ1か ら5pmに約40%が均一に分布し,5から9p mほどのも のも約10%みられた.14週では3分の2は深さ1pm以下であった.100週ではl 4週にくらべさらに浅い骨吸収窩が多く,大部分は1pmより浅いもので占められていた.

二次元的計測では深さが1 pm以下の骨吸収窩は,骨吸収窩の陥凹としては識別が困難であ った,計測できた骨吸収窩の深さの分布は,各週齢で比較すると,三次元画像解析による 深さの結果と同様の傾向を示した.

    【考察】

  機能活性の異なる破骨細胞のっくる骨吸収窩の形態の特徴を定性ならびに定量的に明ら かにし,さらに加齢による破骨細胞の骨吸収機能が異なっていくことを証明した.破骨細 胞機能の加齢変化では,数値は,骨吸収窩が,生後1週マウスでは大きく,円あるいは類円 形で,深いことを示し,生後14週と100週では小さく,細長く,浅いことを示した.とく に,今回は,骨吸収窩の深さが加齢によって大きく異なることを示した.深さは,深いも ので比較すると,幼若マウスでは,老齢マウスのものより2から5倍深い,これは骨吸収活 性の程度の差異を示唆する.

  成熟期と老齢期の骨吸収窩の形と深さの違いは,その上にある破骨細胞の形態と機能の 差を反映するであろう.この時期では,各骨吸収窩の境界は不鮮明で,破骨細胞は突起を 伸しながらゆっくりと骨吸収しているとみなされる,そのため骨吸収窩は浅く,境界不明 瞭で細長いのであろう.幼若マウスにみられるような,破骨細胞の2種の機能相を示唆する 所見もない.骨吸収面の境界の所見は破骨細胞の機能と骨芽細胞の機能とのカップリング が加齢により異なっていることを示している,

  計量形態による破骨細胞の機能活性の評価法,およびこれを用いて明かとなった加齢に ともなう破骨細胞の骨吸収能の違いは,骨の超微細構造の研究に広く応用できると考える

(3)

    【結諭】

1)活性の高い破骨細胞は類円形で大きく,深い骨吸収窩をっくるが,活性が低い破骨細胞   は 細 長 で 小 さ く , 深 さ は 浅 い 骨 吸 収 窩 を っ く る こ と を 明 ら か に し た . 2)破骨細胞の脱灰によるアパタイト吸収と膠原線維の溶解のニつの機能相を形態でとらえ   ,この機能相差が加齢とともに不明瞭になることを示した.

3)骨吸収と骨形成とのカップリングが形態にあらわれる骨吸収面の境界では,幼若期は平   坦であるが,加齢とともに陵状に隆起して,とくに老齢期はこの表面に石灰顆粒が沈着     し,カップリングの不均衡を示した.

4)走査電子顕微鏡ステレオ画像解析による骨吸収窩の深さの定量法の妥当性を検証して,

  こ れ を 本 研 究 で は じ め て 実 用 化 し , 破 骨 細 胞 の 機 能 活 性 を 具 現 化 し た ,

(4)

学位論文審査の要旨

    学位論文題名

マ ウ ス 頭 頂 骨 内 側 面 に お け る 骨 吸 収 窩 の 加 齢 変 化

―走査電子顕微鏡と画像解析装置による定性的ならびに定量的研究

  破 骨 細 胞 の 機 能 活 性 は 骨 表 面の 骨 吸 収 窩 の 形 態 に あ ら われ る と 考 え ら れ る . 頭 蓋 骨 は , 成 長 期 に は 脳 が 発 育 す る に し た が い , 内 側 面 で は 骨 吸 収 , 外 側 面 で は 骨 形 成 が 活 発 に お こ な わ れ , 大 き く な っ て い く . 一 方 , 成 熟 期 , 老 齢 期 には 骨 形 成 ・ 骨 吸 収 活 性 は 幼 若期 に 比 べ て 低 下 し , 骨 の 大き さ は 変 化 し な い . そ こ で 本 研 究 は , 加 齢 に と も な う 破 骨 細 胞 の 機 能 活 性 の 違 い を 明 ら か に す る た め に , 幼 若 期 , 成 熟 期 , 老 齢 期 で の 頭 頂 骨 内 側 面 の 骨 吸 収 窩 の 形 態 を 走 査 電子 顕 微 鏡 を 用 い て 定 性 的 な らび に 定 量 的 に 検 討 し た .

  実 験 動 物 に は 生 後1週 ,14週 ,100週 の 雌 性ddマ ウ ス を 用Vゝ た . 頭 頂 骨 を 摘 出 し て 硬 膜 を 剥 離 ,5% の 次 亜 塩 素 酸 ナ ト リ ウ ムで 軟 部 組 織 を 溶 解 ・ 除 去 し て 骨 表 面 を 露 出 し , ア セ ト ン 脱 水 , 自 然 乾 燥 後 , 金 属 コ ー テ ィ ン グ し て 頭 頂 骨内 側 表 面 に み ら れ る 骨 吸 収 窩を 走 査 電 子 顕 微 鏡 を 用 い て観 察 し た , さ ら に , 画 像 解 析 装 置 を 用 い て , 骨 吸 収 窩 の 形 と 長 径 , 短 径 , 面 積 を 計 測 し た , 骨 吸 収 窩 の 深 さ は , 走 査 電 子 顕 微 鏡 に よ る ス テ レ オ ペ ア 像 を 用 い た 三 次 元 画 像 解 析 に よ り 計 測 し た . こ れ ら の 画 像 解 析 に はIBASソ フ ト ( コ ン ト ロ ン ー ツ ア イ ス社 製 ) を 用 い た .

  走 査 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 し た 頭 頂 骨 内 側 面 の 骨 吸 収 窩 の 形 態 は 加 齢 に と も な っ て 変 化 し て い た . 骨 吸 収 窩 は , 生 後1週 で は 長 径/短 径 が1に 近 い も の が 多 く , 主 と し て 円 形 の も の で あ り , 生 後14週 ,100週で は 長 径/短 径 が ほ ぼ3で , 細 長 い も の が 多 か っ た , 長 径 は1週 で は 幅 広 い 分 布 を 示 し た . と く に20ym以 上 が 半 数 を こ え て い た .14週 で は ピ ー ク は15pmで あ り , 小 さ い も の が 主 体 と な っ て い た .100週 で は ピ ー ク は15ymで , 幅 の 狭 い 分 布 を 示 し た . 短 径 は1週 で は 幅 広 い 分 布 を 示 し , ピ ー ク は 約 13umで あ っ た .14週 と100週 と で は ほ ば 同 様 の 分 布 を 示 し , ピ ー ク は 約10ymで あ り ,15ym以 上 の も の は まれ で あ っ た . 長 径 と 短 径 と の比 は 値 が1に 近 いほ ど円形 を呈 する こと を示す .

436 ‑

志 厚

清 和

田 部

金 阿

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

骨吸収窩は 1 週では大多数が円形,14 週と100 週では,細長い骨吸収窩が多 いことを示した.面積は1 週では分布範囲は広く,小さしゝものから大きいもの までほば均等にあることを示した.とくに 150 から 300ymz の骨吸収窩が半 数以上であった. 14 週では 150pm2 以下の小さな骨吸収窩が多かった.100 週の分布は14 週と類似したが,さらに小さいものが多かった.この研究で大 きな成果は,頭頂骨のステレオペア像を画像解析装置に取り込んで,骨吸収 窩の深さを計測できたことにある,骨吸収窩の深さは,三次元情報画像で各 骨吸収窩の断面像を描き,各辺縁を結ぶ線から底までの長さを深さとして測 定 し た ,そ の 結 果 , 1 週で は 10pm ま で, 14 週 で は 4pm ま で, 100 週 では 2pm までのものがみられた.また,いずれの週齢でも深さ1pm ほどのものも 多くみられた.

   以上をまとめると,

( 1 )骨吸収窩の深さは,幼若期は成熟期,老齢期に比ベ,より深い骨吸収 窩が多くみられた.

( 2 )幼若期では成熟期,老齢期に比ベ円形に近い,より大きな骨吸収窩が 多 く み ら れ , 成 熟 期 , 老 齢 期 で は 細 長 い も の が 多 か っ た ,

(3 )結果は,破骨細胞は幼若期で成熟期,老齢期に比ベ,より活性の高しゝ ものが多いことを示唆する.

   以上の発表に対して,生体医工学講座安田和則教授から,骨吸収窩の深さ の測定方法,深さと破骨細胞の移動との関係について,生体機能構造学講座 阿部和厚教授から画像解析の具体的方法,および骨吸収と骨粗鬆症との関連 について,主査の金田清志教授から破骨細胞の活性と骨吸収窩の深さの加齢 変化について,他の出席者から椎骨や四肢骨の骨吸収窩はどうかについて質 問がなされ,申請者は自らの研究結果や過去の研究結果を引用してほぽ妥当 に解答した.

   本研究は,破骨細胞の機能活性の指標となりうる骨吸収窩の深さをはじめ て計測でき,加齢にともなう破骨細胞の機能活性とくに加齢変化,および老 齢に多い骨粗鬆症を考えるうえで重要な所見であり,博士(医学)の学位を 授与するに値する.

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参照

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