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゛乳癌細胞のアポトーシス誘導に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 敷 島 裕 之

     学位論文題名

HTLV‑I pX トランスジェニックラット乳癌由来培養

゛乳癌細胞のアポトーシス誘導に関する研究 学位論文内容の要旨

    I.緒言

  ヒトT細胞白血病ウイルス(以下HTLV‑I)は、LTR  (long terminal repeat)をプ口モ ーター として4種類の構造 遺伝子すな わちgag、pol、env及びpX遺伝 子を持つ成人T 細胞自血病(adult Tcell leukemia,ATL)の原因レト口ウイルスである。そのうちpX遺 伝子が コードする 蛋白であるp40taxはHTLV‑I LTRの活性化のみならず、腫瘍化にお ける関 与が示唆さ れている。pX遺伝子の機 能を検索す る目的でH2‑pXトランスジ工 二ック ラット(以 下H2‑pXラッ ト)の作製 を行った結果、このH2‑pXラット雌に高率 に未分 化な乳癌(pX乳癌)が発生した。またこの乳癌においては炎症性サイトカイン を含むいくっかの宿主細胞性遺伝子が活性化していた。一方、乳癌の発癌や増殖には ホルモンが関与し、ホルモン感受性を有することが特徴のーつである。またアポトー シスは癌や自己免疫疾患など多くの疾病の発症に深く関わっている。今回、ヌードマ ウスに可移植性で原発腫瘍と同様の生物学的特徴を有するホルモンレセプター陽性の ク口ー ン化pX乳癌細 胞株を樹立 し、ホルモ ンが増殖におよぽす影響および血清除去 後のアポトーシス誘導の成否にっき検討を行った。

    IL材 料と方法

1) ク 口ー ン 化pX乳癌 細 胞株 の 樹立 :H2‑pXラ ッ ト(F344系 )に発生し た乳癌から 培 養 pX乳 癌 細 胞 を 樹 立 し 、 限 界 希 釈 法 に て ク 口 ー ニ ン グ を 行 っ た 。 2)RNA解析:各細 胞あるいは 組織から抽 出したtotal RNAに対し、それぞれの遺伝 子 に 対 す る DNA probeを 用 い て Northern blot解 析 を 行 っ た 。 3)ヌー ドマウスヘ の移植:ク 口ーン化pX乳 癌細胞細を ヌードマウ ス背部皮下に移 植 し た 。 移 植 腫 瘍 の 組 織 学 的 検 討 、 血 球 数 の 計 算 と 血 液 像 の 検 討 を 行っ た 。 4)増殖 曲線:pX乳癌 細胞を100/0 FCSを含む培地と含まない培地で24時間培養後、

25ng/mlのプ口ラ クチンを加 え、経時的に培養7日目まで生細胞数を算出した。コン ト 口 ー ル と し てc―SST‑2細 胞 ( ラ ッ ト 自 然 発 症 乳 癌 細 胞 株 ) を 用 い た 。 5)DNA断 片化 の 解析 :2X106のpX乳癌 細 胞を 無 血清 培 地で 培 養、 経 時的 にDNAを 抽 出 し 、2% agarose gelに て 電気 泳 動しDNA ladderの 有 無に つ いて 検 討し た 。 6)フローサイトヌトリー:無血清培地で培養したpX乳癌細胞をpropidium iodineで

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染色し、FACScanにて解析を行った。コントロールとしてc‑SST2細胞を用いた。

    III.結果

1)ヌ ード マウ スに移 植可 能な オリジ ナルpX乳癌と同様の性格を有するク口ーン化 培養pX乳癌細胞株を樹立することができた。

2)pX乳癌細胞を移植したヌードマウスには著明な脾腫と全身性の顆粒球増多症を認 めた。

3)pX乳癌細胞株はプ口ラクチンレセプターを発現しており、プ口ラクチン添加によ って増殖は促進された。

4)無 血清 培地 でpX乳 癌細 胞を 培養す ると急激な細胞増殖抑制、細胞死を認めた。

この現象はプロラクチンの添加によって全く影響を受けなかった。c‑SST‑2は無血清培 地でも6日目まではゆるやかな増殖を示した。

5)pX乳癌 細胞 は血清 除去 後2時間 でDNA ladderを 確認 でき るアポ トーシスをおこ していた。フ口ーサイ卜メトリーでは、pX乳癌細胞は無血清下でc‑SST‑2に比べてア ポ 卜 ー シ ス が 多 く 、 逆 に S期 、 GO/G1期 の 割 合 は 低 い 傾 向 に あ っ た 。 6)pX乳癌 細胞 はアポ トー シス 誘導時 においてもpX遺伝子は高発現性を持続してい た。

    IV.考察

  ラット乳癌ではプ口ラクチンやそのレセプターの存在が腫瘍の発生や増殖に重要で あ ることが示されている。今回の研究でもプ口ラクチンレセプターを有するpX乳癌 細胞ではプ口ラクチンはslow responseではあるものの細胞増殖因子として働いていた。

こ のこと はH2‑pXラッ トに おけ るpX乳癌の発生が雌に圧倒的に多く見られる事実を 裏付けるもので、HTIーV‑l[のpX遺伝子に誘導される腫瘍原性は宿主の遺伝的背景に関 連している可能性が示唆される。本研究でもc‑SST‑2で示されたように、一般に血清 除去などの低栄養状態にさらされた細胞が、ただちに細胞死するものではない。しか し 、pX乳癌細胞は血清を除去するとただちにアポトーシスによる細胞死をおこし、

GO/G1期ならびにS期の細胞減少とその後のほぽ完全な細胞増殖抑制が見られた。ま た 、この細胞増殖抑制はpX乳癌の増殖因子として働くプロラクチンの投与に全く反 応せず、アポトーシスを含む強カな細胞増殖抑制機構が働いていると考えられる。更 に アポトーシスをおこしている細胞でも、血清添加培地で増殖を続けるpX乳癌細胞 と 同様にpX遺伝子の恒常的な発現を認めた。このpX遺伝子に関連するアポトーシス に ついてはpX遺伝子の直接作用というより、p40tax依存性の状態における間接的作 用と考えられているものの、アポトーシス関連遺伝子や細胞周期関連遺伝子を介して pX乳癌細胞の増殖抑制やアポトーシスの誘導がおこっているものと考えられる。今後 は このpX乳癌細胞を用いて、p40tax発現が無血清培養下で実際にどのような分子機 構を介して細胞周期の抑制やアポトーシスを誘導しているかを解明していく必要があ る。

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    V.結語

  今回、pX乳癌細胞の培地から血清を除去すると速やかにアポトーシスが誘導される ことが示され、HTLV‑I pX遺伝子の発現は細胞増殖に働くのみならず、ある一定の条 件下ではpX遺伝子により腫瘍化した細胞が逆にアポトーシスに傾くことを明らかに した。

  pX乳 癌細 胞を用 いたpX遺 伝子 関連の アポ 卜ー シス誘導分子機構の解明は今後、

HTLV‑I感染細胞の制御さらにはHTLV‑I感染者の治療法の開発にっながるものと期待 される。

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学位論文審査の要旨

     学位 論文題名

HTLV‑I pX トラン スジェニックラット乳癌由来培養 乳癌細胞のアポトーシス誘導に関する研究

  ヒ トT細 胞自 血病 ウイ ルス (以 下HTLV‑I)は、LTR (long terminal repeat)をプ口 モ ー タ ー と し て4種 類 の 構 造 遺 伝 子 す なわ ちgag、pol、env及 びpX遺伝 子を 持つ 成 人T細胞白血病(adult Tcell leukemia。ATL)、の原因レト口ウイルスである。そのうち pX遺 伝 子 が コ ー ドす る 蛋 白 で あ るp40tax| まHTLVILTRの 活性 化の みな らず 、腫 瘍 化 に お け る 関 与 が示 唆 さ れ て い る 。pX遺伝 子の 機能 を検 索す る目 的でpXト ラン ス ジ ェ ニ ッ ク ラ ッ ト( 以 下pXラ ッ ト ) の 作製 を行 い、 このpXラ ット 雌に 高率 に未 分 化 な 乳 癌(pX乳 癌 ) が 発 生 し た 。 今 回 、 こ のpX乳 癌 か ら 原 発 腫 瘍 と 同 様の 生物 学 的特 徴を 有す るク 口ー ン化pX乳 癌細胞 株を 樹立 し、 ホル モン が増殖におよぼす影響 およ び血 清除 去後 のア ポ卜 ーシ ス誘導 の成 否に っき 検討 を行 うことを目的とした。

  pXラ ッ ト(F344系 ) に 発 生 し た 乳 癌 か ら 培 養pX乳 癌 細 胞 を 樹 立 し 、 限界 希釈 法 にて クローニングを行った。RNA解析は、各細胞あるいは組織から抽出したtotal RNA に対 し、それぞれの遺伝子に対するDNA probeを用いてNorthern blot解析を行った。

クロ ーン 化pX乳癌 細胞 細を ヌー ドマウ ス背 部皮 下に 移植 し、 移植腫瘍の組織学的検 討 、 血 球 数 の 計 算と 血 液 像 の 検 討 を 行 っ た 。pX乳 癌 細 胞 を10% FCSを 含む 培地 と 含 ま な い培 地で24時 間培 養後 、25ng/mlのプ 口ラ クチ ンを 加え 、経 時的 に生 細胞 数 を算 出し た。 コン ト口 ール とし てc‑SST‑2細胞(ラット自然発症乳癌細胞株)を用い た 。DNA断 片 化 に よ る ア ポ ト ー シ ス 解析 は 、2X106のpX乳 癌 細 胞 を無 血 清 培 地 で 培養 、経 時的 にDNAを抽 出し 、20/0 agarose gelにて電気泳動しDNA ladderの有無に つ い て 検 討 し た 。フ 口 ー サ イ ト ヌ 卜 リ ーは 、無 血清 培地 で培 養し たpX乳癌 細胞 を propidium iodineで染色し、FACScanにて解析を行った。コントロールとしてc‑SST‑2 細胞を用いた。

  結 果と して ヌー ドマ ウス に移 植可能 なオ リジ ナルpX乳 癌と 同様の性格を有するク 口 ー ン 化 培 養pX乳癌 細 胞 株 を 樹 立 す る こと がで きた 。PX乳癌 細胞 を移 植し たヌ ー ドマ ウス には 著明 な脾 腫と 全身 性の顆 粒球 増多 症を 認め た。 この現象はpX乳癌細胞

之敬 則 紘   和 藤木 江       野 加吉 小 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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が発現している炎症性サイトカインであるGro,MIP‑2によってもたらされたと考え られた。pX乳癌細胞株はプロラクチンレセプターを発現しており、プ口ラクチン添 加によって増殖は促進された。一方、無血清培地で培養すると急激な細胞増殖抑制、

細胞死を認め、この現象はプ口ラクチンの添加によって全く影響を受けなかった。

一方、c‑SST‑2は無血清培地でも6日目まではゆるやかな増殖を示した。pX乳癌細 胞は血清除去後2時間でDNA ladderを確認できるアポトーシスをおこしており、フ 口ーサイトヌトリーでは、pX乳癌細胞は血清除去後早期にc‑SST‑2に比べてアポト ーシスが多く、逆にS則、GO/G1期の割合は低い傾向にあった。pX乳癌細胞はアポ ト ー シ ス 誘 導 時 に お い て もpX遺 伝 子tま 高 発 現 性 を 持 続 し て い た 。   以上の結果からプロラクチンレセプターを有するpX乳癌細胞ではプ口ラクチンは slow responseではあるものの細胞増殖因子として働いていた。このことはpXラット におけるpX乳癌の発生が雌に圧倒的に多く見られる事実を裏付けるもので、HTLV‑

IのpX遺伝子に誘導される腫瘍原性は宿主の遺伝的背景に関連している可能性が示 唆された。pX乳癌細胞は血清を除去するとただちにアポトーシスによる細胞死をお こし、GO/G1期ならびにS期の細胞減少とその後のほば完全な細胞増殖抑制が見ら れ、この細胞増殖抑制はpX乳癌の増殖因子として働くプ口ラクチンの投与に全く反 応せず、アポトーシスを含む強カな細胞増殖抑制機構が働いていると考えられる。

更にアポトーシスをおこしている細胞でも、pX遺伝子の恒常的な発現を認め、pX 遺伝子に関連するアポトーシスについてはpX遺伝子の直接作用というより、アポト ーシス関連遺伝子や細胞周期関連遺伝子を介してpX乳癌細胞の増殖抑制やアポトー シスの誘導がおこっているものと考えられた。

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  口答発表において古木教授より無血清培地でpX乳癌細胞がアポトーシスに陥る経 路、クローン2の上皮マーカーについて、そしてアポトーシスをおこすpX乳癌細 胞のpXの発現は生細胞と死細胞は分離して行ったのかについての質問があった。つ いで小野江教授よルヌードマウスの脾腫は腫瘍性か反応性か、c‑SST‑2をコント口ー ルとした理由、そして実際の臨床への応用についての質問があった。また加藤教授 よルクローン2でも同じようにアポトーシスが誘導されるか、pX乳癌とヒト乳癌の 関連についての質問があった。最後に分子病理、田中先生からヒト乳癌で顆粒球増 多を呈する例についての質問があったが、申請者はおおむね妥当な回答をした。

  HTLV‑I pX遺伝子の発現は細胞増殖に働くのみならず、ある一定の条件下ではpX 遺伝子により腫瘍化した細胞が逆にアポトーシスに傾くことを明らかにし、pX遺伝 子関連のアポ卜ーシス誘導分子機構の解明につながる可能性を示唆した本研究の意 義は大きく、審査員一同協議の結果、本論文は博士(医学)の学位授与に値するも のと判定した。

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