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博士(地球環境科学)多田政子

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)多田政子

学 位 論 文 題 名

 Dynamic changes of DNA methylation in three murlne endogenous imprinted genes during early embryogenesis and gametogenesis : Studiesln undifferentiated ES,        EG and EC cells as model systems

     ( マ ウス 初 期胚 発 生 およ び配偶子 形成過程に おけるイ ンプリン ト遺伝子 の DNA の メチ ル 化の 変 化 :未 分 化 ES , EG お よ び EC 細 胞を 用 いたモ デル系の 研究)

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  遺伝学 の基礎 である メンデ ルの法 則の例 外的遺伝 子の発 現様式 として 、ゲノ ムイン プリ ンティ ングが 注目さ れてい る。父方 と母方 由来の 遺伝子 が等価 に機能 するこ とがメ ンデル の法則 の前提 である が、イ ンプリン ト遺伝 子は組 織特異 的に父 方また は母方 由来の 遺伝子 の発現 が抑制 されて いる。 哺乳類で は単為 発生に より個 体を生 じた例 は知ら れてい なぃ。

この原 因を明 らかに するた めに実験 的に作 成した 、雄核 発生胚 や雌核 発生胚 はそれ ぞれ特 有の異 常を示 して、 着床後 間もなく 失われ る。こ れに反 し、父 母両ゲ ノムを 持つ胚 は正常 に発生 しうる ので、 父ゲノ ムと母ゲ ノムの 間には 機能上 差があ り、両 者が共 存して はじめ て正常 胚発生 が可能 になる と結論さ れた。 両者の 差は限 られた 数の遺 伝子が 受ける インプ リンテ ィング の違い の総和 であると 信じら れてい る。喃 乳類に 特有の 発現制 御機構 として 注目 さ れ て いる イ ン プ リン テ ィ ン グに は 、DNAのメチ ル化、 クロマ チン構 造、DNA複 製夕 イミン グが関 与する と考え られてい るが、 未だに その詳 細は不 明であ る。こ の機構 を明ら かにす るため には、 生殖細 胞形成や 初期胚 発生で の性に 依存し たイン プリン トの消 去と樹 立 の 過 程 お よ び 樹 立 後 の 遺 伝 子 の 発 現 制 御 の 両 面 か ら の 解 析 が 重 要 と考 え ら れ る。

  マ ウ スES細 胞 は 胚盤 胞(3.5日齢胚 )の内 部細胞 塊(ICM)細胞 に由来 し、無 限増殖 能と多 分化能 を兼ね 備えた 正2倍性 の細胞 である。 雄核発 生ES細胞 や単為発生ES細胞と正常胚との キメラ 胚は雄 核発生ICM細胞や 単為発 生ICM細胞 と正常 胚との キメラ 胚と似 た形態異 常を示 すこと から、ES細胞は 起源細 胞のイ ンプリ ンティン グの少 なくと も一部 を保持 してい ると 考 え ら れ て い る。 こ の 結 果を ふ ま え 、本 論 文 で は未 分 化 胚(ES; Embryonic Stem,EG;

Embryonic Germ,EC; Embryonic Carcinoma)細胞を材料に用`ゝ、現在まで同定されている約20 個の イ ン プ リン ト 遺 伝 子の中 で最も 解析が 進んで いるH19珸 趨Igf2rのDNAのメチ ル化を指 標に、 マウス の生殖 細胞お よび初期 胚にお けるイ ンプリ ントの 消去と 樹立過 程の解 明およ び イ ン プ リ ン ト とDNA複 製 タ イ ミ ン グ と の 関 連 の 解 析 を 目 的 に3つの 実 験 を 行っ た 。   第一章 では、 生殖細 胞形成 過程に おける インプリ ントの 消去と 樹立を 探る目 的で、 マウ ス12.5日齢 胚 の 生 殖隆 起 中の始原 生殖細 胞から 樹立し た雌雄EG細胞で のDNAメチ ル化の 状 態をサ ザンハ イブリダ:イゼーションを用いてES細胞と比較するとともに、面vitroにおける 分化 能 とX染 色 体 の不 活 性 化 を観 察 し た 。H19Igf2Igf2r遺伝子 のDNAメ チル化の 状態はEG 細胞とES細胞で 異なっ ていた 。また 、雌雄EG細胞間 でも差 が認めら れた。 そこで 、培養条 件下 でESやEG細 胞 の分 化 を 誘 導し て み た とこ ろ 、雌EG細 胞は雌ES細胞や 雄EG細 胞と比較 し分 化 し に くい 傾 向 が 見ら れ た 。 同時 に 、 分 化誘 導開始 後7日目 に雌EG,ES細胞でX染色

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体 の 不 活 性 化 を 複 製 夕 イ ミ ン グ を 指 標 に観 察 した とこ ろ、EG細 胞 では 後期 複製X染 色体

(不 活性 化X染色 体) を 持つ 細胞 の頻 度がES細胞 と比 較し 有意 に 少な かっ た。また、単 為 発生ES細 胞や 雌EG細 胞で は胚 様体 と して の分 化が 雌ES細胞 のそれと比較し遅れていた。 こ れら の観 察か ら 、イ ンプ リン テイ ン グの 状態 がEG細胞とES細胞では異なっていると推定 し た。 減数 分裂 以 前に 入る 前か ら既 に 、生 殖隆 起中 の始原生 殖細胞ではインプリントの消 去 と書き換えが始まってい るのであろう。

  DNAの メ チ ル 化の イン プリ ン ティ ング への 関 与が 示唆 され てい る が、 性に 依存 したDNA のメ チル 化を 新 たに ゲノ ムに 授け る ため には 、親 か ら受 け継 いだDNAメチ ル化を消去す る 必要 があ る。 事 実、 脱メ チル 化現 象 が生 殖細 胞や 初期胚で 知られており、インプリンテ イ ング の樹 立に 重 要な 役割 を果 たし て いる と考 えら れている 。しかし、研究を進める上で 、 生 殖 細 胞 や 初期 胚 を十 分量 確保 する の は困 難で ある 。X染色 体の 不 活性 化の 維持 にはDNA のメ チル 化が 重 要で ある が、EC細 胞 とり ンパ 球の 融 合細 胞で はり ンパ 球 由来の不活性X染 色体 が活 性化 す るこ とが 知ら れて い る。 この 事実 は、細胞 融合によルインプリント遺伝 子 のDNAの メチ ル化 にも 変 化が 起き る可 能性 を 示唆 して いる 。そ こ で、 第二 章では、脱メ チ ル化 の性 質を 探 る目 的で 、EC細胞 と りン パ球 の細 胞融合を モデル系に用い、第一章同様 、 H,!9 珸趨珸鰯・の3個 のインプリント遺伝子のDNAのメチル化の変化を調べた。本実験で用 いたマウスEC細胞株(PSAl、OHゆー63、LT−1、P19、B242g)とマウスリンノヾ球との融合細胞 は 全 てEC細 胞様 の 表現 型を 示し 、両 細 胞に 由来 する ほと ん ど全 ての 染色 体 を保 持し てい た。DNAのメ チル 化の 状 態を 親細 胞と 融合 細 胞間 で比 較し たと こ ろ、PSA1とOTF9‐63細 胞 との 融合 細胞 で はり ンパ 球由 来の イ ンプ リン ト遺 伝 子の メチ ル化DNAが脱 メチル化して い た。 また 、LT‐1細胞 と の融合細 胞では、両親細胞のインプ リント遺伝子のアレルで脱メ チ ル化 が観 察さ れ た。 一方 、P19やB242g細 胞と の融 合 細胞 では イン プリ ン ト遺伝子のDNAの メチ ル化 に変 化 は見 られ ず、 これ ら の融 合細 胞で は 不活 性X染 色 体の 再活 性化能の欠如 と 脱メ チル 化能 の 欠如 との 間に相 関が見られた。ここで調べた 珸趁や珸趁遺伝子のDNAのメ チ ル化 部位 は初 期 発生 胚で の脱 メチ ル 化に 抵抗 性が あり、初 期インプリントではないかと 考 えら れて いる 。 しか し、 融合 細胞 で は他 の部 位同 様、これ らの部位も脱メチル化されて い た。 初期 イン プ リン トと 考え られ て いるDNAメチ ル化 部位 は生 体 では 脱メ チル化から保 護 され てい るの で あろ う。 発生 段階 特 異的 、塩 基配 列 特異 的メ チル 化DNA結 合蛋白質の存 在 が予想される。

  近 年、 父方 由 来の イン プリ ント 遺 伝子 を含 む領 域 のDNA複製 夕 イミ ング が母方由来の そ れに 先行 する こ とが 螢光 加釘mハ イプ リダ イ ゼー ション(FISH)法により示され、DNA複 製 時期 がイ ンプ リ ンテ イン グに 関連 あ りと され てい る。第三 章では、この報告の確認を目 的 に、FISH法を 用 い響 噸域 のDNA複 製夕 イミ ン グの 解析 を試 みた 。 とこ ろが 、従来の観察 に 反 し 、 正 常ES細 胞 、 雄 核 発 生ES細 胞 、 雌 核 発 生ES細 胞 、 領 域 がと もに 母 方由 来の 胚繊 維芽 細胞 の間 期 核で 、こ の領 域のDNA複製 タ イミ ング に差 が見 い ださ れな かった。従来 の 結果 の再検討が必要であると思わ れる。ところが、細胞分裂 中期の染色体上に3・4個のFISH シグ ナル が高 頻 度で 観察 され た。 こ の結 果は 、イ ンプリン ト領域のクロマチン構造を反 映 して いる と考 え られ る。 イン プリ ン ト領 域は 非イ ンプリン ト領域に比べてより緩いクロ マ チン構造をとっているの かも知れなぃ。

  こ の研 究に よ り、 生殖 細胞 での イ ンプ リン トの 消去と樹 立および初期胚における広範 な 脱メ チル 化の 機 構の 一面 が明 らか に なっ た。 同時 に、FIsHパターンからインプリント領 域 のク ロマ チン 構 造の 特異 性が 推察 さ れた 。こ れら の結果は 、生殖細胞や初期胚の発生過 程 で徐 々に 樹立 さ れる イン プリ ント の 機構 とし て、 遺 伝子 単位 でのDNAのメ チル化に加え 、 クロ マチ ン領 域 とし ての 大き な単 位 でも 修飾 が働 いている 可能性を示唆している。今後 、 二次 的なDNAメチ ル化 の 消去 が見 いだ され た12.5日齢の始 原生殖細胞由来のEG細胞を生 体 の発 生プ ログ ラ ムに 従っ て分 化さ せ るこ とに より 、初期イ ンプリントの解明の更なる進 展 が期待される。.

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学 位 論 文 審査 の 要 旨 主査   教授   高木信夫 副査   教授   木村正人 副査   教授   吉田廸弘

副査   教授   高橋孝行(大学院理学研究科)

学 位 論 文 題 名

 Dynamic changes of DNA methylation in three murlne endogenous imprinted genes during early embryogenesis    and gametogenesis : Studiesln undifferentiated ES,       EG and EC cells as model systems

     (マウス 初期胚発生 および配 偶子形成 過程にお けるイン プリント 遺伝子の DNA の メ チル 化 の 変化 :未 分化ES , EG およ び EC 細胞を 用いたモ デル系の 研究)

   哺乳類 では単為 発生によ り生じた 個体は知 られていな い。雄核 発生胚や 雌核発生胚はそ れぞれ 特有の異 常を示し て、着床 後間もな く失われる 。従って 、父ゲノ ムと母ゲノムの間 には機 能上差が あり、両 者が共存 してはじ めて正常胚 発生が可 能になる 。両者の差は限ら れた数 の遺伝子 が受ける インプリ ンテイン グの違いに あると信 じられて いる。インプリン テイン グにより 対立遺伝 子の一方 の発現が 組織特異的 に抑制さ れる。イ ンプリンテイング に は、 DNA の メチ 形 化、 ク ロ マチ ン 構造 、 DNA 複製夕イ ミングが 関与する と考えられ てい るが、 詳細は不 明である 。その仕 組み明ら かにするた めには、 生殖細胞 形成や初期胚発生 での性 に依存し たインプ リントの 消去と樹 立の過程お よび樹立 後の遺伝 子の発現制御の両 面からの解析が重要である。

   マウス ES 細胞は 3.5 日 齢胚の内 部細胞塊 (ICM) 細胞由来 で、無限増 殖能と多 分化能を備え

て いる 。 雄 核発 生ES 細 胞や単為 発生 ES 細胞 と正常胚 とのキメ ラ胚は雄 核発生 ICM 細胞 や単

為 発生 ICM 細 胞と 正常胚 とのキメ ラ胚と似 た形態異 常を示す ことから 、 ES 細胞は起 源細胞

のイン プリンテ イングの 少なくと も一部を 保持してい ると考え られてい る。本論文では未

分化胚 細胞を材 料に、解析が進んでいる H19 , Igf2 , Igf 2r のDNA のメチル化を指標に、マウ

スの生 殖細胞お よび初期 胚におけ るメチル 化インプリ ントの消 去と樹立 過程およびインプ

リ ン ト と DNA 複 製 夕 イ ミ ン グ と の 関 連 を 検 討 し た 結 果 を 扱 っ て い る 。

   第 一 章 では 、 12.5 日齢 マ ウ ス胚 の 始原 生 殖 細胞 か ら 樹立 し た雌 雄 EG 細 胞 での DNA メチ

ル化、in vitro での分化能と X 染色体の不活性化を観察した。H19 ,Igf ,Igf 2r 遺伝子のメチ

ル 化の 状 態 は EG 細胞 と ES 細 胞 で 異な っ てい る ばかり でなく、 雌雄 EG 細胞 間でも違い が認

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められた。培養下では、雌EG 細胞は雌ES 細胞や雄 EG 細胞よりも分化しにくい傾向があっ た。同時 に、 EG 細胞で は X 染色 体が不活性 化する細胞 の頻度がES 細胞と比較して少な く、単為発生 ES 細胞や雌EG 細胞では胚様体としての分化が雌ES 細胞に比ベ遅れる。従つ て、インプリンテイングの状態が EG 細胞とES 細胞では異なっており、生殖隆起中の始原 生 殖 細 胞 で i ま イ ン プ リ ン ト の 消 去 と 書 き 換 え が 始 ま っ て い る と 考 え ら れ た 。    新たなメチル化パターンが生じるには、古いものを消去する必要がある。事実、生殖細 胞や初期胚では大規模な脱メチル化が起きるが、材料不足のため直接検討するのは難し い。EC 細胞とりンバ球の融合細胞ではり.ンバ球由来ゲノムの脱メチル化が起きる可能が示 されている。そこで、第二章では、EC 細胞とりンパ球の細胞融合をモデルに、第一章同 様、H19 , Igf ,Igf 2r の3 個のインプリント遺伝子のメチル化の変化を調べた。用いたマウ ス EC 細胞株 (PSA1 、 OTF9‑63 、LT‑1 、 P19 、 B242g) とマウスリンバ球との融合細胞では染 色体の脱落はない。PSA1 とOTF9‑6 ヨ、 LT‑1 細胞との融合細胞ではりンパ球由来のインプ リント遺伝子のメチル化領域が脱メチル化していた。一方、P19 や B242g 細胞との融合細 胞でi まインプリント遺伝子のメチル化に変化は見られなかった。ここで調ぺたIgf やIgf 2r 遺伝子のメチル化部位は初期胚での脱メチル化に抵抗性があので、これらの部位は生体で は脱メチル化から保護されている可能性がある。発生段階特異的、塩基配列特異的メチル 化DNA 結合蛋白質の存在が予想される。

   近年、父方由来のインプリント遺伝子を含む領域のDNA 複製夕イミングが母方由来のそ れに先行することがFISH 法により示された。第三章では、この報告の確認を目的に、FISH 法を用い培趁領域のDNA 複製夕イミングの解析を試みた。ところが、従来の観察に反し、

正常ES 細胞、雄核発生ES 細胞、雌核発生 ES 細胞、Igf 2 領域がともに母方由来の胚繊維芽細 胞の間期核で、この領域のDNA 複製夕イミングに差が見いだされなかった。従来の結果の 再検討が必要である。一方、゛細胞分裂中期の染色体上に3‑4 個のFISH シグナルが高頻度で 観察された。インプリント領域は非インプリント領域に比べてより緩いクロマチン構造を とっていると推定された。

   以上のように本論文は、生殖細胞でのインプリントの消去と樹立および初期胚における 広範な脱メチル化の機構の一面を明らかにした。同時に、FISH パターンからインプリント 領域のクロマチン構造の特異性も指摘した。これらの結果は、生殖細胞や初期胚の発生過 程で徐々に樹立されるインプリントの機構として、遺伝子単位でのDNA のメチル化に加 え、クロマチン領域としての大きな単位でも修飾が働いている可能性を示唆しており、こ れを基に初期インプリントとそれに続く遺伝子発現の抑制機構の解明が進むものと期待さ れる。

   審査員一同は、申請者が二人の子供を育てながらこの成果を得たことを高く評価し、ま

た研究者として誠実かつ熱心であり、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ、申

請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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