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博 士( 地 球環 境科 学 )増 田良 帆

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Academic year: 2021

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博 士( 地 球環 境科 学 )増 田良 帆

     学位論 文題名

Mass balance of the subpolar gyre: intergyre exchange and deep water inflow uslng GCA/I tracer experiments ・      (亜寒 帯循環の流出入バ ランス:GCM トレ ーサー実験による     gyre 間水塊交換 と深層水の流入)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  北太平洋,亜熱帯循環と亜寒帯循環の間においては,他の海域とは異なる独特の方法で海水が 移動しており,この交換を理解することは全球的な海洋循環場,物質循環また南北熱輸送の理解 において欠かせない事である.  Ueno and ̄Yasuda(2000)は,このような交換流が実際に生じてい ることを,Levitusデータの解析によって示した.

  これまで先行研究によって循環境界の間における水塊交換を可能にする各種メカニズムが提案 さ れてき た.まず,第1にあげられるのはEkman輸送とその補償流という考え方である.循環境 界 は偏西 風が卓越 する領域 であり ,それに応じて亜寒帯から亜熱帯へと向かうEkman輸送が生 じる.質量保存の観点からは,この輸送と同量の水塊が何処かで亜熱帯から亜寒帯へ移動してい な ければ ならない.ただし,もし内部領域で補償流が生じるならばSverdrup balance(Ekman層 以深で積分したもの1の制約に抵触するので,このような補償流は西岸で循環境界を横切っている と考えられている.一方,別の観点として傾圧流ならSverdrup balanceの制約にはかからずに循 環境界を移動することが十分に可能である.   ventilated thermocline modelにおいて,このような 流れが可能な領域がPedlosky (1984)らによって調べられた.更に近年,、ventilatedthermocline modelの問題点を解決する為に導入した混合層の東岸近傍の領域から,cross−gyreaowが生じて いる事がSumataandKubol…a(2001)によって明らかになった.

  ここまでは主に風成循環,表層の密度成層に関連した交換流のメカニズムをみてきたが,もし 循環境界を海底まで延びるxIz断面と考えるならば,深層循環もこの断面を横切っており,亜寒 帯の質量保存を考察する場合には欠かせない要素である.

  本研究ではどの領域でどの程度の流量が交換されるか調ベ,循環境界を横切る各メカニズムに ついて定量的な見積もりを与える事をを目的とする.また,亜寒帯ヘ移動した水塊のその後の挙 動についても,特に深層水の上昇に注目して,その移動経路について調べた.この様な水塊移動 を 理解す る為には ラグラン ジアン 的な研究が不可欠であり,GCMを理想的な条件で駆動して得 た 定常場 に於て粒 子追跡を 行うと いうアプローチでこの問題に臨んだ.GCMの条件設定は単純 化 さ れ て い る が , 上 述 の 各 交 換 メ カ ニ ズ ム を 再 現 す る こ と が 十 分 可 能 で あ る .   粒子の速度をモデルのgridデータから補間する際には,従来の線形補間とは異なる,質量保存 を満足する様な補間を行った.これによって,粒子の移動を質量の移動に換算することが可能と なった.

  初期に緯度41Nのx・z断面に存在する粒子の軌跡を追跡した結果,以下に示される経路で亜熱 帯 循 環 か ら 亜 寒 帯 循 環 ヘ 移 動 す る 粒 子 が 存 在 し た . 換 算 流 量 も 同 時 に 示 す .

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  (A)亜 熱帯 のEkman層 を経 由し た後 に亜 寒帯 へと 移動 する粒子.2.36 Sv(106771,3s−1)   (B)熱帯,深層経由で亜寒帯へ移動する粒子.

    (B−1)その内,亜寒帯の1000m以浅に上昇する粒子2.37 Sv     (B−2)1000m以深で亜熱帯へと戻る粒子(この量は示さない)

  亜 寒 帯 か ら 亜 熱 帯 へ1000m以 浅 で 移 動 す る 粒 子 に つ い て は 以 下 の 通 り で あ る .   (C)表層のEkman輸送によって亜熱帯へと移動する粒子3.86 Sv

  (D)東岸近傍の200m―800mで亜熱帯へ移動する粒子0.66 Sv

  (B−2)は深層水のreturn flowである.各粒子の移動メカニズムに関しては,(D)については粒 子 の 軌 跡 の 考 察 な ど か らcross―gyre ventilationで あ る こ と が 示 唆 さ れ る .   Ekman輸送の補償流によって交換される量については,比較実験を行うことでこれを確かめた.

比 較実 験で は, 循環 境 界でEkman輸送をほぽoにするが,Ekman pumpingはこれまでの実験と 同じになる ような風応カを与えた.比較実験において得られた場で粒子追跡を行った結果,(A) の交換流は存在しなくなったが,(B‑l)の交換流については大きな変化が見られなかった.これに よ り(A)はEkman流の 補 償流 である事が示 された.標準実験に於て,この(A)の流量は必ずし も(C)と対応しておらず,亜寒帯循環に於ては深層水まで考慮して流量パランスを考えなくては ならない.

  更に,粒子が亜寒帯に移動してから辿る経路に関しても,興味深い知見が得られた,表層で亜熱 帯から亜寒帯ヘ移動した粒子は亜寒帯に滞在する時間が短く,外縁部を数周する間に上昇し,表 層のEkman層に達した後に亜熱帯へと輸 送される,一方,深層で亜寒帯に移動した粒子は滞在 時間が長く,回転しつつ上昇する間に亜寒帯の中心部へと徐々に移動する.結果として,深層の 水塊が上昇する場所は亜寒帯の中心部に集中する傾向があることが示された.亜寒帯内に於ける 水 塊 の 平 均 滞 在 時 間 は (A)の 水 塊 で 18.6年 ,(B−1) の 水 塊 で130年 で あ っ た .

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 教授

池田 久保川 山中 安田

元美      康裕

一郎 (東京大学大学院理学系研究科)

     学位論文題名

IVIass balance of the subpolar gyre:1ntergyre exchange and deep water‑ inflow using GCR/I tracer experiments .      (亜寒帯循環の流出入バランス:GCM トレーサー実験による     gyre 間水塊交換と深層水の流入)

  北 太 平 洋 亜 熱 帯 循 環 と 亜 寒 帯 循 環 の 問 に お い ては 、 他 の海 域 と は 異な る 独 特の 方 法 で 海 水 が 移 動 し て お り 、 こ の 交 換 を 理 解 する こ と は全 球 的 な海 洋 循 環 場、 物 質 循環 、 ま た 南 北 熱 輸 送 の 理 解 に お い て 欠 か せ な い事 で あ る。 こ の よう な 交 換 流が 実 際 に生 じ て い る こ と は 、 既 存 デ ー タ の 解 析 に よ っ て堤 示 さ れて い た 。先 行 研 究 によ っ て 提案 さ れ た 循 環 境 界 の 間 に お け る 水 塊 交 換 を 可 能 に す る 各 種 メ カ ニ ズ ム は 、 ま ず 第 一 に は Ekman輸 送 と そ の 補 償 流 と い う 考 え 方 で あ る 。 循 環 境 界 は 偏 西 風 が 卓 越 す る領 域 で あ り 、 そ れ に 応 じ て 亜 寒 帯 か ら 亜 熱 帯 へ と 向 か うEkman輸 送 が 生 じ る 。 質 量 保存 の 観 点 か ら は 、 こ の 輸 送 と 同 量 の 水 塊 が 何 処 か で亜 熱 帯 から 亜 寒 帯へ 移 動 し てい な け れぱ な ら な い 。 別 の 観 点 と し て 東 西 密 度 勾 配 に 伴う 南 北 傾圧 流 が あげ ら れ 、 また 海 面 混合 層 が 東 岸 近 傍 で 作 る 東 向 流 が よ り 下 方 で 南 下流 と な るこ と も 示さ れ て き た。 さ ら に海 底 ま で 延 び る 南 北 循 環 を 含 む と 、 全 海 洋 深 層循 環 の 一端 と し て存 在 す る 深層 北 上 流が 湧 昇 し 、 表 層 近 く で 南 下 す る 循 環 も 欠 か せ な い 要 素 で あ る 。

  本 論 文 で は ど の 領 域 で ど の 程 度 の 流 量 が 交 換 され る か 調ベ 、 循 環 境界 を 横 切る 各 メ カ ニ ズ ム に つ い て 定 量 的 な 見 積 も り を 与 える 事 を 目的 と し た。 ま た 、 亜寒 帯 へ 移動 し た 水 塊 の そ の 後 の 挙 動 に つ い て も 、 特 に 深層 水 の 上昇 に 注 目し て 、 そ の移 動 経 路を 調 べ た 。 こ の 様 な 水塊 移 動 を理 解 す る為 に は ラグ ラ ン ジア ン 的 視点 が 不 可 欠で あ り 、GCM を 理 想 的 な 条 件 で 駆 動 し て 得 た 定 常 場 に 於 て 粒 子 追 跡 を 行 う と い う ア プ 口 ー チ を 用 い た 。GCMの 条 件 設 定 は 単 純 化 さ れ て い る が 、 上 述 の 各 交 換 メ カ ニ ズ ム を 再 現す る こ と が 十 分 可 能 で あ っ た 。 粒 子 の 速 度 を モ デル のgridデ ータ か ら 補 間す る 際 には 、 従 来 の 線 形 補 間 と は 異 な る 、 質 量 保 存 を 満 足 する 様 な 補間 を 行 った 。 こ れ によ っ て 、粒 子 の 移 動 を 質 量 の 移 動 に 換 算 す る こ と が 可 能 と な っ た 。

初 期 に 北 緯41度 の 東 西 断 面 に 存 在 す る 粒 子 の 軌 跡 を 追 跡 し 、 亜 熱 帯 循 環 か ら 亜 寒

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帯循環への主要な経路は

(A) 亜熱帯の表層を経由した後に亜寒帯へ流入

(B) 熱 帯 深 層 経 由 で 亜 寒 帯 へ 移 動 し 、 亜 寒 帯 の 1000m 以 浅 へ 上 昇 いっぽう亜寒帯から亜熱帯への主要な経路は。

(C) 1000m 以浅で表層Ekman 輸送によって亜熱帯ヘ流入 これ以外の亜熱帯亜寒帯交換は

(D) 熱 帯 深 層 か ら 亜 寒 帯 へ 流 入 す る が 1000m 以 深 で 亜 熱 帯 へ 戻 る 深 層 循 環 であった。

  Ekman 輸 送(C) の補償流として北上する量については、比較実験を行うことによって 確か めた 。そこでは循環境界でEkman 輸送をゼロにするが、Ekman pumping は基本実験 と同じになる風応カを与えた。比較実験において得られた場で粒子追跡を行った結果、

(A) の 交換 流はほぼ存在しなくなり、(B) の交換流がわずかに減少した。これにより、

Ekman 流 の 補 償 流 は 主 に (A) 、 一 部 は (B) が 担 っ て い る 事 が 示 さ れ た 。    更に粒子が亜寒帯に移動してから辿る経路に関しても、、興味深い知見を得た。表層 で亜 熱帯 から亜寒帯へ移動した粒子は亜寒帯に滞在する時間が短く、亜寒帯循環の外 縁部 を数 周す る間 に上昇 し、 表層 のEkman 層に達した後に亜熱帯へと輸送される。い っぽ う深 層で亜寒帯に移動した粒子は滞在時間が長く、回転しつつ上昇する間に亜寒 帯の 中心 部へと徐々に移動する。結果として、深層の水塊が上昇する場所は亜寒帯の 中心 部に 集中する傾向があることが示された。亜寒帯内に於ける水塊の平均滞在時間 は(A) の水塊で18 .6 年、(B −1 )の水塊で130 年であった。

   こ の研 究で用いた数値モデルは既存のものであるが、申請者は粒子を流して、それ を追 跡す る手法を非常に精密にした。そのことによって、気候変動に重要な影響をも つ海 洋南 北循環における主要なメカニズムを示唆したことが高く評価された。この研 究結 果に よって示された南北循環量は、地球温暖化の鍵となる海洋炭素循環やその他 の 環 境 破 壊 物 質 の 挙 動 と 、 地 球 環 境 の 将 来 予 測 に 貴 重 な 情 報 で あ る 。    審 査委 員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として熱心かつ真摯であ り、 大学 院課程における研鑚や取得単位なども併せ、申請者が博士(地球環境科学)

の学位を受けるに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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