• 検索結果がありません。

     学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "     学位論文題名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 工 学 ) 三 好 茂 樹

     学位論文題名

人工内耳における伝達情報量の増加を 目的とした刺激方式に関する研究

学位論文内容の要旨

  近年,電子工学など技術の進歩により生活や仕事をする上で著しい利便が得られてきて いる,しかし,その便利さの多くは心身ともに健常な人達を対象として追求されてきた.

電子工学などの先端技術を生体機能の損なわれた人達に活かすという発想は古くからあ ったが.それが具体化され始めたのは比較的最近である.ところで,現在,重度の感音性 難聴者の残存神経に対して電気刺激を行うことにより,失われた聴覚機能を再現しようと する人工内耳という装置が実用化されている.しかし,現在の人工内耳は決して完成され たものではなく,従来の研究から幾っかの問題点が指摘されている.この問題点とは,第 1点として,電極アレイが挿入される蝸牛内が導伝性を有するりンパ液で満たされている ため,同時に2っ以上の電極で電流を流そうとすると蝸牛内ではチヤンネル間にインター ラクションが生じることである.また蝸牛外においては蝸牛自身の螺旋構造のために非常 に複雑な電流パターンが作られ,多くの刺激チヤンネルを用いても蝸牛内の電流の広がり のためにあまり多くの情報を送ることはできない.第2点として,3万本ある聴神経に対 して,電極の数は多くても22個であり,そこでも伝達情報量に限界が生じていることで ある,そのため,現在の人工内耳で失聴以前の音声を再現するのは困難であり,聞き取り 能カを向上させる上で脳の可塑性に頼っているのが現状である.実際には,そのような脳 の可塑性のカを借りず,失われた機能を失われる以前の機能にできるだけ近づける努カを しなければならない.

  本研究では,人工内耳とくにマルチチャネル人工内耳の伝達情報量の増加を目的とした 刺激方式を提案している,提案方式の妥当性を数値解析により調べ,ヒトから摘出した 蝸牛に電極を挿入して実験を行い本方式の有用性を示すとともに,モルモットの蝸牛神経 への電気刺激に対する応答,及び聴神経モデルを用いた数値解析から本方式の有用性の裏 付けを行った.以下に,本論文の構成に従って本研究で得られた成果について述べる.本 論文は全6章で構成されている.

  第1章では,本研究の背景として聴覚代行の社会的必要性を述べ,本研究の目的を示し た.

  第2章では,現在までの人工内耳研究について概説し,その問題点を指摘している.ま た,蝸牛内での電流の広がりを抑えるための,他の研究者による諸方式について述べ,本 研究の位置づけを明確にしている.

  第3章では始めに,我々が提案した3電極型刺激方式の理論的動作について述べている.

我々の提案した3電極型刺激方式では,複数個ある電極の内,任意の3電極を選び刺激電 流を制御するという方法を採っている,具体的には,中央の電極を通して刺激電流を引き

(2)

込み,両 側の電極で,中央の電極から与えた電流値に一致する電 流を放出している.本方 式 は, 聴神 経線 維 から 一定の距離だけ離れた位置に置かれる電 極アレイ中の任意の3電極 から刺激 を行うことで,聴神経線維上の限られた領域に,電極ア レイ径方向電流密度(電 界強度) の負の最大値をもたせることができるようになる.また ,両側の電極に供給する 電流の割 合を動的に変化させて,電極アレイ径方向電流密度(電 界強度)の分布パ夕一ン すなわち 刺激部位を移動させることにより,見かけ上無数の仮想 電極があるようにした.

これら機 能が実際にヒト蝸牛内で成立し得るか否かを確認するた めに,ヒトの摘出蝸牛内 で調べ, 従来の方式とも比較した.

  その 結果 ,3電 極型 刺激方式では ,他の方式よりも分布を先鋭化することを明らかにし た .ま た,3電極 型刺 激方式では, 神経線維に対し,刺激として有効である電極アレイ径 方向電界 強度の負の最大値を持つ蝸牛内位置を移動し得るという ことを明らかにした.た だ し, 負の 最大 値 とな る位 置を 最大 限移 動さ せよ うとすると径方向双極型と刺激方法が 同 じに なる ため に ,3電極型は他の 方式よりも神経興奮の広がりを抑え得るという利点が なくなる という問題点を指摘した.しかし,電極の存在しない部 位に神経興奮を移動させ 得るとい うことは,電極数が限られている人工内耳では極めて有 用であり,この機能によ っ て 中 枢 へ 送 る こ と が で き る 情 報 量 の 増 加 に 貢 献 す る こ と が 想 像 さ れ る .   第4章 では ,前 章で 明ら かに した 事実 に基 づ き,さらに神経 レベルでの3電極型刺激方 式の動作 を確認するために,モルモットを用いた動物実験と聴神 経モデルを利用した数値 解析から ,以下に示す結果を導いた.

  まず ,従 来の 方 式で ある単極型,双極型および3電極型刺激方式の神経レベルでの比較 を 数値 解析 によ っ て比 較した.その結果,3電極型刺激方式で両側の電極に通電する電流 をバラン スさせた場合が,他の方式よりも,神経興奮の広がりを 抑えるということを明ら か にし た. また ,3電 極型刺激方式 では,負の径方向電界強度(電流密度)によって生じ る輸送膜 電位が最も高くなる部位の両側に,正の径方向電界強度 (電流密度)によって脱 分極する 部位side lobeが存在するこ とを示レた.本方式で,刺激部位を最大限移動させよ うとする 場合,実質的に双極型に近づく.その際,side lobeの影響が最も高くなる,この sidc lobeから,神経発火が生じない 範囲か3電極型刺激方式が有 効に働く範囲となること を示した .

  また ,モ ルモ ッ 卜を 用いた動物実験で,3電極型刺激方式によって誘発させられる複合 活動電位 を聴神経束から導出し,聴神経線維モデルを利用した数 値解析から算出した 閾 値 を超 える モデ ル 聴神 経線維の総数 と比較した.その結果,3電極型刺激方式が形成す る電極ア レイ径方向電流密度(電界強度)分布から見いだした 幅 と名付けたパラメー タが,複 合活動電位の大きさを決定する主要因であると推察でき た.この 幅 を一定に 保っよう にして,刺激部位の移動を行うことで,刺激される範囲 を一定に保ちながら,刺 激位置を 移動させ得ることを示唆した.これは,電極アレイ上に 固定されている限られた 数の電極 を用いて,蝸牛内にアレイ状に配置されている聴神経の 任意の位置を,興奮させ ることが できるということを表している.

  第5章 では ,第4章で 行っ た動 物実 験お よび 数値 解析の検証および妥当性にっいて述べ ている, より実際の聴神経に近いモデルを用い,数値解析を行い ,動物実験から得た結果 との比較 を再度行った.また,動物実験時に聴神経線維−電極アレイ間の距離がずれていた 場合につ いても論じた.その結果,数値解析と動物実験で多少の 差異はあるものの,その 傾向は変 わらないということが分かった.加えて,配置した聴神 経線維モデルの密度につ いても論 じた.その結果,数値解析で設定した聴神経線維モデル の密度が妥当な値である ことを示 した.

  第6章 で は , 本 研 究 の 成 果 を 統 括 し , ま た 将 来 の 展 望 に つ い て 触 れ た .

(3)

  今後は,本方式を組み込んだスピーチ・プロセッサを用いて,その機能をマルチチャネ ル人工内耳を装用している被験者で確認する必要があろう,しかし,本研究の結果から,

人工内耳における伝達情報量の更なる増加が期待でき,より高い周波数弁別能または高い 聞き取り能カを得ることが予想される.

(4)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授

伊 福 部 河 原 下 澤 山 本

    達 剛 一 楯 夫 克 之

     学位 論文題名

人 工内耳における伝達情報量の増加を    目 的 と し た 刺 激 方式 に 関 する 研 究

  近年,重度 の感音性難聴者の残存相| 経に対して電気刺激を行うことにより,失われた聴覚機能 を丙現しよう とする人工内耳が実用化さ れている.しかし,現在の人 工内耳は決して完成された も ので はな く, 従 来の研究から幾っかの問題 点が指摘されている,第1の 問題点は,電極アレイ が挿入される 蝸牛内が導伝性を有するり ンパ液で満たされているため ,多くの刺激チャネルを用 い ても 蝸牛 内の 電 流の 広が りの ため に 送り得 る情報量が少ないことであ る.第2点として,3万 本 ある 聴神 経に 対 して ,電 極の 数は 多 くても22個であり,そこでも伝達 情報量に限界が生じて し、ることで ある.

  本研究では ,マルチチャネル人工内耳 の伝達情報量の増加を目的と した刺激方式を提案してい る,提案方式 の妥当性を実験と数値解析 の両面から調べ,その有用性 の裏付けを行っている,主 な結采は以下 に要約される.

  第1章では ,本研究の背景として聴覚代 行の社会的必要性を述ベ,本研究の目的を示している.

  第2章 で は, 現在 までの人工内耳研究につい て概説し,その問題点を指 摘している.また,蝸 牛Iでの 電 流の 広が りを抑えるための,他の研 究者による諸方式について 述ベ,本研究の位避づ けを明確にし ている,

  第3章 で は始 めに ,著 者 が提 案し た3電極型 刺激方式の理論的動作につ いて述べている.著者 の 提案 した3電 極型 刺激 方 式で は, 複数 個あ る電極の内,任意の3電極を 選び刺激電流を制御し ている,具体 的には,中央の電極を通し て刺激電流を引き込み,両側 の電極で,中央の電極から 与えた電流値 に一致する電流を放出する 方法を提案している.本方式では|聴和11経線維上の限ら れた領域に, 電極アレイ径方向電流密度 の負の最大値をもたせることができるようになっている.

また,両側の 電極に供給する電流の割合 を動的に変化させて,電極ア レイ径方向電流密度の分布 パタ―ンすな わち刺激部位を移動させる ことにより,見かけ上無数の 仮想電極があるようにして いる,これら の機能が実際にヒト蝸牛内 で成立し得るか否かを確認す るために,ヒトの摘出蝸牛 内で調べ,従 来の方式と比較している. その結果,本方式では,他の 方式よりも分布を先鋭化で

676

(5)

きる こと を 剛ら かに して いる ,また,3電極型刺激方式で は,神経線維に対し,刺激 として有効 であ る電極アレイ径方向電界 強度の負の最大値を持つ蝸牛 内位置を移動し得るという ことを明ら かに している.このように, 電極の存在しない部位に神経 興奮を移動させ得るという ことは,電 極数 が限られている人工内耳 では極めて有用であり,この 機能によって中枢ヘ送るこ とができる 情報量の増加に貢献することを推察している.

  4章 では ,前 章 で得 られ た事 実に 基 づき ,さ らに神 経レペルでの3電極型刺激方 式の動作を 確認するために,モル モットを川いた動物実験とJ噫神経モデルを利用した数値解析から,以下に 示す結果を導いている.

  ま ず, 従 来の 方式 であ る単 極型,双極型および3電極型 刺激方式の神経レペルでの 比較を数値 解析によって比!皎し ている.その結果,3電極型 刺激方式で両側の電極に通電する電流をバラン スさ せた場合が,他の方式よ りも,神経興奮の広がりを抑 えるということを明らかに している,

  ま た, モ ルモ ット を用 いた 動物実験で,3電極型刺激方 式によって誘発させられる 複合活動電 位を亅隠キIIl経束から導出し,聴和|1経線維モデルを利用した数値解析から算出した¨鬪値を超えるモ デル聴和11経線維の総 数 と比較している,その 結果,3電極型刺激方式が形成する電極アレイ径 方向 電流密度分布から見いだ した 幅 と名付けたパラメ 一夕が,複合活動電位の大 きさを決定 する 主要因であると推察して いる.この 幅 を一定に保 っようにして,刺激部位の 移動を行う こと で,刺激される範囲を一 定に保ちながら,刺激位置を 移動させ得ることを示唆し ている.こ れは ,電極アレイ上に固定さ れている限られた数の電極を 用いて,蝸牛内にアレイ状 に配置され て い る 聴flII経 の 任 意 の 位 鐙 を , 興 奮 さ せ る こ と が で き る と い う こ と を 表 し て い る .   5章では,第4章で行った 動物実験および数値解析の検 証および妥当性について述 べている.

その 結果,数値解析と動物実 験で多少の差異はあるものの ,その傾向は変わらないと いうことを Iリjらかにしている.加えて,配越した聡神経線維モデルの密度についても論じている.その結果,

数 値 解 析 で 設 定 し た 聡 キIll経 線 維 モ デ ル の 密 度 が 妥 当 な 値 で あ る こ と を 示 し て い る .    6章 で は , 本 研 究 の 成 采 を 統 括 し , ま た 将 来 の 展 望 に つL、 て 触 れ て い る .   本 研究の結果から,人工内 耳における伝達情報量の更な る増加が期待でき,より高 い周波数弁 別能または高い聞き取り能カを得ることが予想される,

  以 上のように,本研究では ,難聴者のためのマルチチャ ネル人工内耳の伝達情報量 の増加を目 的とした*0激方式を 提案し,その有効性を示した ことから生体工学に貢献するところが大きい,

  よ っ て , 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与さ れる 資 格あ るも のと 認め る .

‑ 677 ‑

参照

関連したドキュメント

   海 棲の 高次 捕食 者で ある イル カ類は 、自 ら発 した超音波音のエコーから、周辺環境の認 知や 餌生 物の 検出 を行 うこ とが できる

    OAElb は先行研究によって陸源 物質の大量供給があったことが推察されておるが、本

両配座がとも にエネルギー極小構造であることから、結晶中では格子工ネルギー程度の小さな摂動によって

   審査にあたって菊池教授から、P425 点突然変異によるp73 の転 写活性化能の低下は4

本家 系の候補領域での口ッド値は2 点連鎖で 3.51 、多点連鎖で 4.08

TLR2 およぴTLR4 陰性リンパ管でもCCL21 の発現が認められたことから、TLR 以外にも CCL21 を産生する経路が存在する可能性が考えられた。. ー

   切片に直接、及びコロジオン膜で被覆してから乾式法で乳剤貼付 を行なったものでは、いわゆるpositlve chemography

   また 、 vanance の 理論式には 、ディスクの数N とki も含ま れている。理論式で実験結果