博 士 ( 薬 学 ) 大 野 雅 子
学 , 位 論 文 題 名
固.定化リポソームカラムクロマトグラフイーの 溶離パターンの解析:吸着及び解離速度定数の推定
学位論文内容の要旨
`【 は じめ に】
経 口 投 与 さ れ た 薬物 は 、消 化管 、 特に 小腸 大 腸の 上皮 細 胞か ら吸 収 され 血流 に よっ て全 身 に運 ぼ れ て い く 。 従 っ て、 薬 物の バイ オ アベ イラ ビ リテ ィを 大 きく する た めに は、 細 胞膜 にお け る吸 収 速 度 が 大 き い こ とが 必 要で あり 、 新薬 開発 の スク リー ニ ング にお い て吸 収速 度 を見 積も る こと が重 要 にな る。 こ のた め、 細 胞膜 を模 し たモ デン レ によ る予 測 が必 要と される。 現在までに、水/
オ ク タ ノ ー ル 分 配 法な ど の手 法に よ って 、薬 物 透過 陸の 予 測が 行わ れ てき た。 し かし 、生 伽 莫に よ り 近 い 膜 は り ポ ソー ム であ る。 近 年、 リポ ソ ーム をカ ラ ム担 体に 固 定化 した 、 固定 化リ ポ ソー ム カ ラ ム ク ロ マ ト グラ フ ィー(ILC)法が 開 発さ れ、I工£ 法 によ って 薬 物と りポ ソ ーム との 相 互作 用 の 解 析 が 広 く 行 われ る よう にな っ た。 しか し 、こ の方 法 によ る相 互 作用 の解 姉 ま、 膜分 酉 酌徴
( 盈 曲 の 算 出 の み に 限 ら れ て い る 。 本 研 究 で は 、 薬 物 と り ポ ソ ー ム との 相互 作 用に おい て 、1L の 溶 離 パ タ ー ン が 薬物 の 脂溶 性が 高 まる にっ れ ピー クの 幅 がよ り広 が るこ とに 注 目し 、こ の 広が り か ら 、KM以 外 の 物 理 的 パ ラ メ ー タ が 求 め ら れ な い か 、 溶 離 パ タ ー ンの 広が り が何 で決 ま って いる の かを 考察 し た。
【結果 と考察】
n Diffusめn一reac箜Q塾〓曁璽蛔凶瓲理諭
HPLCの 瀦 ¢ 曲 線 の 理 論式 、 すな わち 平 均滞 留時 間 のと ピー ク の広 がり の 偏差 くvariance)に 関 し て 、 古 典 的 な 理 論 で あ る 「dm8めnI地ac曲mtrampon理 論 」 が あ る 。 こ の 理 論 は 、 固 定 相 と 移 動 相の 間で吸着速度 定数(血)及び卿 繭臨鍍定数(丘l冫で溶質が 吸着・解離を繰り返 しながら、全 体 と し て 溶 質 の バ ン ド を形 成 し、 カラ ム を上 から 下 へ移 動す る と考 える も ので ある 。 この 理論 を ILCに適 用 する と、 モ およ び、 弧rぬnoeの 理 論式 は、 流速の逆数の 比例式となった。そ こで、ロ旨質 膜 へ の 透 過 性 を 持 っ た め 、 細 胞 膜 と の 相 互 作 用 の 研 究 に 多 く 用 い ら れ て き た 脂 溶 陸 カ チ オ ン tetrapl塒nybk即honiumnPPりとそのホモログくPhe)3 P←,(CH巍.CH3(nニ.6)をモデンレイヒ:合物 と し て使 用し 、 流速 の逆 数 に対 し、 モ およ びva血lnceをプ ロ ット した 。 その結果、モ は理論式に従 っ て いた が、vadanceは流 速の 逆 数に 対し 曲 線を 示し て おり 、理 論 式に 従わ な いこ とが わ かっ た。
こ れ は、dim鳩 めn‐macぬn.tran8port理 論 が成 り立 た ない こと を 示唆 して い る。 親水 性 であ り、
リ ポ ソ ー ム と は ほ と ん ど相 互 作用 しな い と考 えら れ るア ザイ ド を用 いた 場 合で も、 流 速の 逆数 に 対 し てvananoeが 曲 線 を 描 い て 増 加 す る 傾 向 が見 ら れた 。こ の こと から 、 流速 の逆 数 とva鹹ance が 直 線関 係に な らな いの は 、リ ポソ ー ムと モラ ル レイ 臨拗 の 相互 作用 に 起因するもの ではないと考 え ら れ た 。 そ こ で 、 新 し い 考 え 方 、 ま た は こ の 理 論 の 不 足 部 分 を 考 え る 必 要 性 が 生 じ た 。
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盟Well‑mixing̲zone model
HPLC用のゲル担体と異なり、 リポソームカラムで用いる ゲルは捻れた網目状となっており、
ま たりポソームを固定化するのに十分な大きさの空隙があるため、撹拌が生じると考えられる。
こ の効果により、ある容積の溶質を注入した場合、カラムはある厚みを持った層状のディスクに 分割される。Diffusiorrreacめn・tra亅瑚pon理論と同様に、溶質は帯状となってカラムを移動する が、流れていく溶質そのものが舌L流となっている可冑旨陸がある。溶質とりポソームの相互作用は、
デ ィスク状になった微小区間の中で撹拌されながら行われ、さらに全体の流れに従い次のディス ク ヘと連締拘に移動していく。これを、「weu一mi妬ngめnemodel亅と名付けた。この理論では、
溶 質が撹拌しながらりポソームと相互作用するディスクがいくっも繋がり、ひとつのカラムを構 成 していると考えている。その 分割されたディスクの数をNとし、モおよびva五anceの理論式を 誘導すると、は出伍18めn.ロactめn‐tran8port理論と同じ理論式が得られた。また、varぬIlceの 理 論式は二次式となり、実験結 果が曲線を描いていたこと をよく説明できた。この結果より、
we小皿畄ngめ珊modelの理論を用いるこ とにより、リポソームカラ ムでりポソームと薬物との 相互作用を解析できることが示唆された。
モおよぴvarianceの理論式には、KJMが含まれている。そこで、瓸Mが物理的条件に影響され るかどうか 、流速、カラムに充填するゲ ル量、注入量を変化させて測定した。Ktの算出式は、
カラムクロ マトグラフの基本式をILC用 に書き換えたものである。固定相体積は固定化されたり ポソームの 総量で表される。この値で溶 質保持容量とボイド体積の差を除算するとKJMが求まる のだが、流遠を変化させても溶質保持容量はほば一定の値を示したため、」あiMもまた一定の値と なった。他 の条件下でも同様の結果となり、KMは物理的な変化によらず求まることがわかった。
また 、vananceの 理論式には 、ディスクの数Nとkiも含ま れている。理論式で実験結果 をフ イッティングすると、それらの値を算出できる。注こ入量を変化さ世てみたところ、注こ入量の増加 に対しNが減 少することがわかった。こ れは、ディスクの厚みが増すためと考えられる。カラム 長 を2倍に した 場合 も同様の結 果となったが、Nは約2倍に増 加していた。しかし、Nの算 出時 に 同時 に求 まっ たkiお よびkiと 盈Mの関 係か ら求めた面は 、注入量を変化させてもほぼ 一定 の値となっ ていた。さらに、この理論か らモデンレイb金物のKM、あおよびk1を求めたところ、
脂溶性が高 まると面Mは増大するが、血 およびk1はモデル化合物のメ チレン基の数が偶数か奇 数かによっ てジグザグのパターンとなる ことが示された。ただし、脂溶性の高い化合物でkiが メチレン基 の増加とともに増大していた。これは、より疎水的なイオンは、脂質膜から早く除去 されること を示唆している。もし、疎水性イオンが脂質二重層の中間部分である疎水的な部分ま でしか透過 しないのであれぱ、このkiの 挙動が説明できる。しかし、この挙動の分子的解釈は 現在明らかになっていない。
塑経旦墓物を用いた測定
Well‑mixing zone modelの理論で経口薬物とりポソームとの相互作用を解析した。それぞれの 薬物の血お よびkiを算出したところ、モ デル化合物と異なり、脂溶性が比輓拘高い薬物で、吸 着が速いと 解離が遅くなる傾向が見られた。これは、薬物が膜を深く貫通して相互作用している ためではな いかと考えられる。しかし、 経口薬物とモデル化合物とのこの違いは不明である。
HPLCでは一 般的に撹拌は好ましい物では ないため、リポソームカラムによる薬物と膜の相互作 用の解析に はwell‑mixing zone modelが 適していると考えられる。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
加 茂 直 樹 井 関 健 宮 内 正 二 菅 原 満
学位 論文 題名
、 固定 化リ ポソ ーム カラ ムク ロマ トグ ラフイーの 溶 離パターンの解析:吸着及び解離速度定数 の推定
薬 物 の パ イ オ ア ベ イ ラ ピ リ テ イ を 大 き く す る た め に は , 細 胞 膜 に お け る 透 過 速 度 が 大 き い こ と が 必 要 で あ り , 新 薬 開 発 の ス ク リ ー ニ ン グ に お い て 透 過 速 度 を 見 積 も る こ と が 重 要 に な る . こ の た め , 細 胞 膜 を 模 し た モ デ ル に よ る 予 測 が 必 要 と さ れ て い る . こ の 方 法 の
1つ と し て り ポ ソ ー ム カ ラ ム の 使 用 が あ る . こ れ は , リ ポ ソ ー ム を カ ラ ム ゲ ル 担 体 に 固 定 化 し , カ ラ ム の 考 え 方 を 用 い て , 薬 物 の り ポ ソ ー ム ヘ の 分 配 率 を 推 定 し よ う と す る も の で あ る . あ る 薬 物 を カ ラ ム に 与 え , 溶 離 液 を カ ラ ム に 流 し て , 薬 物 が カ ラ ム か ら 溶 離 す る ま で の 溶 離 液 の 体 積 ℃ を 求 め る . 全 く り ポ ソ ー ム と 相 互 作 用 し な い 化 合 物 が カ ラ ム か ら 溶 離 す る ま で の 溶 離 液 の 体 積 を ℃ と し , 固 定 相 で あ る り ポ ソ ー ム の 膜 の 部 分 の 体 積
Vsを と す れ ば , 薬 物 の り ポ ソ ー ム ヘ の 分 配 率 ん は , 次 式 で 与 え ら れ る ・
KLM:堅
VVs
こ の 式 は 一 般 に カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー の 基 本 式 と 呼 ば れ , こ の 式 が り ポ ソ ー ム カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ イ ー に 対 し て も 実 験 的 に 成 立 す る こ と は , す で に , 先 行 研 究 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る . そ の 結 果 を 利 用 し て , リ ポ ソ ー ム と 種 々 の 薬 物 と の 相 互 作 用 が 調 ぺ ら れ て い る . ま た , 輸 送 担 体 や レ セ プ タ ー を 再 構 成 し た り ポ ソ ー ム を 使 用 す れ ば , 膜 夕 ン バ ク と 薬 物 と の 相 互 作 用 が 測 定 さ れ るはず であり, 今後の 利用が期 待され ている.
リ ポ ソ ー ム カ ラ ム を 用 い て , 薬 物 の 溶 離 位 置 す な わ ち 溶 離 ピ ー ク の 位 置 か ら , 分 配 率 を 求 め る こ と が 従 来 な さ れ て き た . 学 位 申 請 者 は , 溶 離 の 位 置 の み で な く , 溶 離 ピ ー ク の 広 が り は 何 で 決 ま っ て い る か に 興 味 を 持 ち , 本 研 究 を 進 め た・