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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 岡 野 和 貴

     学位論文題名

    Organic biogeochemical study

on mid ―Cretaceous Oceanic Anoxic Event la and lb     in Vocontian Basin .SE France

     ( 南 東 フ ラ ン ス ・ ボ コ ン チ ア ン 堆 積 盆 に お け る 中期白亜紀海洋無酸素事変la およびlb の生物地球化学的研究)

学位論文内容の要旨

    近年急速な地球温暖化が進み、地球環境や生物生態系に大きな影響をおよばすことが 懸念されている。その主たる原因のひとっと考えられているのがニ酸化炭素であり、地球 上における炭素循環には海洋生物、あるいは陸上植物などの生態系が大きく関与している ことが知られている。っまり地球温暖化が将来もたらすであろう地球環境の変動を予見す るにあたり、過去の温室期にあたる地球環境を生物地球化学プロセスの観点から復元する ことは重要であると考えられる。白亜紀は地球史におけるもっとも温暖化が進んだ時代の ひとっであり、大気二酸化炭素濃度は現在の312倍であったと推定されている。白亜紀の 地層中には有機物に富み、ラミナ構造が発達した黒色頁岩層が幾層も挟まれ、その堆積が 全世界的に同時に起こっていることが知られており、その時期には全地球的に海洋が無酸 素化する事変が起こっていたことが推察され、海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event;以下 OAE)と呼 ばれるよ うになった。OAEは大量の生物絶減とも関連しいていることから、これ までに古生物学あるいは有機地球化学的研究カミ多く発表されてきた。しかしそれらの多く は、 白亜紀のOAEの 中でもも っとも規 模が大 きかった といわ れるOAE2に関するものがほ と ん どで あ っ た。 と く に有 機 地 球化 学 的研究 に関し ては、近 年OAElaのGoguel層準 や OAElbのPaquier層準での研究報告が数例あるのみである。そこで本研究では、南東フラン ス・ボコンチアン堆積盆におけるOAElaのGoguel層準とOAElbのJacob、Kilian、Paquierヽ Leenhardt層準を 対象にバイオマーカー分析を用いたラミナレベルでの高分解能での古環 境・生物地球科学的プロセスの復元を行うことを目的とした。

    OAElaのGoguel層準においてはシアノバクテリア由来の2ーメチルホパンが検出され、

その濃度変化からGoguel層準内において上位に向かってシアノバクテリアの群集が優位に なっていったことが示唆された。また、シアノバクテリアの増加は海洋表層の貧栄養化や 水温上昇、海洋中層の無酸素化が上位に向かって促進されていたことを示唆する。海洋表 層での生物生産に関する定量的なデータはこれまで行われていないが、本研究ではステラ ン濃度を用いてその復元を試み、Goguei層準での海洋では一様に貧栄養環境が広がってい     ‑ 1113一

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たこと が示唆された。一方で、一時的に生物生産が増加した時期があることがステラン濃 度から みられる。シアノバクテリアは熱帯域など貧栄養環境で優位に存在していることが 知られ ているが、同層準ではシアノバクテリアの群集も現象する傾向が見られという調和 的な結果が得られた。

    OAElbは先行研究によって陸源 物質の大量供給があったことが推察されておるが、本 研究においても陸源バイオマーカーが高濃度に含まれていた。また、それらはとくにKilian やPaquier層準でとくに高濃度であった。また、ステラン濃度の結果からKilian層準とPaquier 層準に おいては生物生産が高かったことが示唆された。陸源バイオマーカーの濃度変化が ステラ ンの濃度変化とよく一致していることから、高生物生産が陸域からの栄養塩の大量 供給に よってもたらされたものと推察した。海洋表層の高生物生産は海洋中の酸素極小層 の拡大 をもたらすことから、OAElbの発生メカニズムは陸域からの物質輸送の増減と大き く関連 していると推察した。また、Kilian層準とPaquier層準からはアーキア由来のバイオ マ ーカ ーであるTMIとPMIが検出され、 その炭素同位体比から水塊中や堆積物中に生息す るメタ ン菌が起源であると推察した。これらのバイオマーカーはは塊状泥灰岩層中ではで はほと んど検出されず、黒色頁岩層で急激に増加した。メタン菌群集の拡大のひとっの要 因とし て無酸素環境の拡大考えられる。海洋表層の高生物生産によって無酸素環境が強化 された と考えられるKilianおよびPaquier層準でメタン菌が増加したことから、陸上からの 大 量物 質供給一海洋表層の高生物生産 一海洋中でのメタン菌群集の拡大がKilianおよぴ Paquier層準 で の一 連のOAE発生 メカ ニズ ム であ ると 推察 した 。一 方で 、Jacobお よぴ Leenharlt層準ではバイオマーカー組成から、陸源の供給量や生物生産が低かったことが示 唆され 、海洋中にメタン菌群集が拡大するほど無酸素環境が強 化されなかったためにTMI やPMIが検出されなかったのではないかと推察した。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    鈴木徳行 副 査    講師    沢田    健 副査   准教授   西   弘嗣 副 査    教授    竹下    徹

     学位論文題名

    Organic biogeochemical study

on mid −Cretaceous Oceanic Anoxic Event la and lb     in Vocontian Basin . SE France

     ( 南 東 フ ラ ン ス ・ ボ コ ン チ ア ン 堆 積 盆 に お け る 中期白亜紀海洋無酸素事変la およびlb の生物地球化学的研究)

  地球史の研究において,急激か つ極端な環境擾乱が起こった時代の地球環境・気候・

生態系の挙動やシステムについて の研究が盛んに行われている。その中でも,白亜紀中 期に海洋水塊の無酸素化が地球規模で進行したと考えられている海洋無酸素事変(以下,

OAE)に つ い て,1990年 代頃 から 注目 され て多 くの 研究 報告 がな され てい る。 白 亜紀 は地球史を通じてもっとも大気中 の二酸化炭素濃度が高く,それによる温室効果によっ て極端に温暖な環境が継続した時 代のーっであると考えられている。したがって,近年 の人 類活 動 に起 因す る大 気中 の二 酸化 炭素 濃度の上昇にともたう急速な地球温暖化が 進行し続けた場合の地球環境の変 化を予見する目的でも,白亜紀の古環境・古気候を復 元するのは重要な研究であると考 えられている。その白亜紀の中期において数回,断続 的に おこ っ たOAEは大量の生物絶減とも関 連していることから,これまでに古生物学,

地質 学ま た は地 球化 学の 研究 が多 く発 表さ れて きた 。し かし それ ら は,白亜紀OAEの 中で もも っ とも 大規 模だ とい われ るOAE2に 関するものがほとんどであった。そこで本 論 文 に お い て , 白 亜 紀OAEの は じ め の2回 に あ た るOAElaとOAElbの2つ の イ ベ ントの時代に着目し,その無酸素 海洋の形成メカニズムと無酸素水塊下での生態系の様 相, 生物 地 球化 学的 な物 質循 環像 の解 明を 目指 し,OAE当 時に 埋積 した堆積物中の生 体由来の生物指標有機分子(バイ オマーカー)の分析から研究を行った。具体的な研究 調査 の対 象 とし て, 南東 フラ ンス ・ボ コン チア ン堆 積盆 にお けるOAElaのGoguel層準 と,OAElbのJacob、Kilian、Paquier、Leenhardt層準で,現地の地質調査,堆積岩の採 集,有機地球化学的分析を行った。その結果,おもに次のような新しい知見が得られた。

1. OAElaのGoguel層準において,シアノバクテリアに由来するバイオマーカーが検出され,

その化合物の濃度分布等からOAEla時における無酸素海洋でのシアノバクテリアが卓越す る特殊な海洋生態系が形成されていたことを明らかにした。このシアノバクテリアの卓越

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はイベント時の堆積層において年代が進むにっれて顕著になる傾向があり,これは特殊な 生態系を生む海洋表層の貧栄養化や水温上昇、海洋中層の無酸素化が促進されていたこと を示唆すると推察した。

2. OAElbの層準において,陸上植物に由来するバイオマーカーの分析から,当時の海洋へ の陸源物質の大量供給があったことを示す明らかな証拠を得た。また,陸源物質の輸送は Kilian,Paquierの両層準でとくに効率的に行われたことが推察され,かつ,それに連動した 海洋藻類由来のバイオマーカー濃度の上昇が示す海洋生物生産の増大があったことがわか った。 海洋表 層の高生物生産は海洋の酸素極小層の拡大をもたらすことから,OAElbの無 酸素水塊の発生メカニズムは陸域からの物質輸送の増減と大きく関連しているという結論 を得た。

3. OAElbのKilian層準とPaquier層準から,メタン生成タイプの古細菌(アーキア)由来の バイオマーカーが高濃度で検出された。その炭素同位体分析の結果とあわせて,当時の水 塊中や堆積物中で,メタン生成アーキアが卓越する特異的な生態系が拡大したことを提示 した。 これはOAElb時の 無酸素 水塊と密 接に関連した結果であり,かつ,OAElbの無酸素 水塊の拡大をさらに進行させる生物地球化学的メカニズムのひとっであったという結論を 得た。

  本 論 文 は, 以 上 の よう に 白 亜紀OAEに 描ける無 酸素水 塊の拡大 につい て,生物 地球 化学的 循環と いう視点 を加え て,より 詳細で本質的なメカニズムに関する議論を得るこ と がで き た 。ま た ,OAE時 に おけ る , 現海洋と は大き く異なる 特殊な 海洋生態 系の拡 大 の生 物 地 球化 学 的 な 証拠 を 提 示し た 。これを 要する に,著者 は,白 亜紀OAEに限ら ず地球 史の急 激かつ極 限的な 環境事変 の研究における,生物地球化学的視点を加えた新 しい知 見を示 したもの であり ,地球史 研究に対して貢献するところ大なるものがある。

よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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