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Academic year: 2021

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     博 士 ( 歯 学 ) 黒 嶋 伸 一 郎 学 位 論 文 題 名

ヒ トリンパ 管内皮細胞における CCL21 , TLR2      および TLR4 の発 現

学位論文内容の要旨

【緒言】

  近年、自然免疫機構の担い手のひとっとして、Toll‑like receptor (TLR)が同定された。

TLRは病原体共通の分子構造であるpathogen‑associated molecular pattems  (PAMPs)を認識 するが、このうちTLR2はグラム陽性菌のりポタイコ酸、ペプチドグリカンなどを、また、

TLR4はグラム陰性菌のりポポリサッカ、ライドを認識し、種カのサイトカインおよび共刺 激因子産生を誘導して自然免疫ならびに獲得免疫に関与すると考えられている。TLRを介 して産生誘導される種々のサイトカインの中には、白血球特異的走化性サイトカインであ るケモカインが存在する。このひとっであるcys‑cys (C‑C) chemokineligand21 (CCL21) は2次リンパ組織で恒常的に産生され、その受容体C‑C chemokine receptor7(CCR7)陽性 を示 すT細胞 とB細胞 の2次リ ンパ 組織 への 遊走、 およ びCCR7陽性抗原提示細胞のりン パ管への遊走とりンパ節への移動に貢献すると考えられている。

  一方リンパ管は、過剰な組織液の取り込み、自血球の循環、抗原提示細胞の輸送経路と しての役割を担うと考えられているが、CCR7陽性免疫細胞におけるりンパ管への流入メ カニズムは不明であることから、本研究ではヒト組織末梢のりンパ管内皮細胞がTLRを発 現し、これを介してCCL21の産生が誘導され、CCR7陽性免疫細胞のりンパ管への流入に 関与 する 可能 性を考 え、 リン パ管内 皮細 胞に おけ るCCL21、TLR2およびTLR4の発現を 検索した。

【材料と方法】

  1.抗体の特異性の確認

    抗TLR2お よびTLR4抗 体の 特異 性は 、TLR2また はTLR4遺伝 子を 導入 した ヒト胚 腎

(2)

  性293細 胞(TLR2‑HEK293お よ びTLR4‑HEK293)を 用 い た免 疫 染 色 と 、TLR2とTLR4   を通常発現するヒト単球性白血病細胞株(THP‑I)、また、ヒト培養臍帯静脈血管内皮細   歯 髄中央部の大多数の集合リンパ管は抗CCL21抗体反応陽性であった。一方、炎症組   織 において、すべてのりンパ管が抗CCL21抗体反応陰性であった。なお、すべてのり   ンパ管は抗TLR2およぴTLR4抗体反応陰性であった。

  な お、検 索組 織に おい て、す べて の血 管で は抗CCL21、TLR2韜 よびTLR4抗体反応陰   性であった。

【考察】

1.抗体の特異性について

  TLR2ま た はTLR4遺 伝 子 導 入HEK293お よ ぴ 未 導 入HEK293の免 疫染 色、ま た、THP‑1 にお ける遺 伝子 発現 なら ぴに免 疫染 色から、抗TLR2およびTLR4抗体の特異性が確認さ れ た 。一 方 、CCL21遺 伝 子 を 通 常 発現 し な いHUVEC船 よびIMR‑90で は、抗CCL21抗 体 反応陰性であったことから、本研究で用いた抗CCL21抗体は血管内皮細胞およぴ線維芽細 胞に反応しないことが確認された。

2.  CCL21の発現について

  健常組織におけるCCL21発現は、血管でなくりンパ管で認められた。また、組織により

CCL21を発現するりンパ管の種類が異なることが考えられた。一方、炎症組織では、すべ

てのりンパ管がCCL21を発現しなかったことから、炎症微小循環系では、健常時に存在す るCCL21とCCR7陽 性 細 胞 と の 相 互 作 用 が 失 わ れ る 可 能 性 が 考 え ら れ た 。 3.TLR2およびTLR4の発現について

  小 腸の毛 細リ ンパ 管お よび多 くの 中心リンパ管はTLR2およぴTLR4を通常発現し、血 管お よび培 養ヒ ト血 管内 皮細胞 ではTLR2およびTLR4を発現しなかったことから、小腸 微小循環系において、血管ではなくりンパ管内皮細胞が外来抗原の認識機構を有する可能 性が示唆された。

  また、歯肉およぴ歯髄では、炎症の有無に関わらず、すべての脈管がTLR2およぴTLR4 を発現しなかったが、このことが小腸の特異性を示すのか、歯髄および歯肉の特異性を示 すの かは不 明で ある ため 、さら に多 くの組織・器官を対象とした検索が必要である。

  一 方、小 腸に おい てTLR2およ びTLR4陽 性毛 細リン パ管 のり ンパ管 の多くがCCL21を 同時発現したことから、TLRを介してCCL21が産生される可能性が考えられた。しかし、

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(3)

TLR2およぴTLR4陰性リンパ管でもCCL21の発現が認められたことから、TLR以外にも CCL21を産生する経路が存在する可能性が考えられた。

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(4)

学位論文審査の要旨

     学位論文題名

ヒトリンパ管内皮細胞における CCL21 ,TLR2 お よ び TLR4 の 発 現

  審査は、 審査担当者 全員の出 席の下に 行われた 。最初に 申請者よ り提出論文の概要が説 明され、 その後、申 請者に対 し提出論 文とそれ に関連し た学科目 にっいて口頭試問が行わ れた。以 下に、論文 の要旨と 審査の内 容を述べ る。

  近年、自然免疫機構の担い手のひとっとして、Toll−like receptor (TLR)が同定された。

TLRは病 原体共通 の分子構 造であるpathogen−associated molecular patterns (PAMPs) 認識 するが、 このうちTLR2はグラム 陽性菌のり ポタイコ 酸、ペプ チドグリ カンなど を、ま た、TLR4はグラム 陰性菌の りポポリ サッカライ ドを認識 し、種々 のサイト カインお よび共 刺 激 因子 産 生を 誘 導 して 自然 免疫なら びに獲得免 疫に関与 すると考 えられて いる。TLR 介し て産生誘 導される 種々のサ イトカイン の中には 、自血球 特異的走 化性サイ トカインで あるケモカインが存在する。このひとつであるcys−cys(C―C)chemokine ligand 21 (CCL21) 2次 リ ンパ 組 織で 恒 常 的に 産 生さ れ 、 その 受 容 体CC chemokine receptor7(CCR7) 性 を 示すT細 胞 とB細胞 の2次 リ ンパ 組 織へ の 遊 走、 お よびCCR7陽 性 抗原 提 示細 胞 の りン パ管への遊走とりンパ節への移動に貢献すると考えられている。

  一方 リンパ管 は、過剰 な組織液 の取り込み 、白血球 の循環、 抗原提示 細胞の輸 送経路と して の役割を 担うと考 えられて いるが、CCR7陽 性免疫細 胞におけ るりンパ 管への流 入メカ ニ ズ ムは 不 明で あ る こと から 、本研究 ではヒト組 織末梢の りンパ管 内皮細胞 がTLRを発現 し 、 これ を 介し てCCL21の 産生が誘 導され、CCR7陽性免疫細 胞のりン パ管への 流入に関 与 する 可能性を 考え、リ ンパ管内 皮細胞にお けるCCL21、TLR2およぴTLR4の発現を検索した。

【材料と方法】

  組織 にはヒト 健常小腸 、健常・ 炎症歯肉、 および健 常・炎症 歯髄を用 いた。各 組織の連 続 凍 結組 織 切片 を 作 製し 、リ ンパ管に おけるCCL21、TLR2お よびTLR4の発 現を免疫 組織化 学的に検索した。

  リン パ管の同 定は、通 常リンパ 管が発現し 、血管は 発現しな いことが 明らかと なってい る デ ス モ ゾ ー ム 関 連 蛋 白desmoplakinに 対 す る 特 異 抗 体 を 用 い て 行 っ た 。 な お 、

男 光

夫  

  一

農 重

上 田

井 古

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

desmoplakinは上皮においても発現が認められるため、小腸および歯肉では、すべての脈 管で発現するplatelet endothelial cell adhesion molecule―1(PECAM―1)に対する特異 抗体を用いて上皮近傍のりンパ管を区別した。また、歯髄においては血管の同定に抗von Willebrand factor (vWf)抗体を用いた。

【結果と考察】

1. CCL21の発現

  @健常小腸では毛細リンパ管と中心リンパ管のほとんどが抗CCL21抗体に反応陽性であ ったが、集合リンパ管および血管では反応陰性であった。◎健常歯肉ではすべての毛細リ ンパ管および集合リンパ管が抗CCL21抗体に反応陽性であったが、一部の集合リンパ管で は抗体反応が微弱であり、血管では反応陰性であった。◎健常歯髄では大部分の集合リン パ管は抗CCL21抗体に反応陽性であったが、毛細リンパ管と血管ではすべて反応陰性であ った。@炎症歯肉および炎症歯髄ではすべてのりンパ管と血管が抗CCL21抗体に反応陰性 であった。以上のことから、健常組織では組織によりCCL21を発現するりンパ管の種類が 異なることが明らかになるとともに、炎症組織では健常時には存在すると考えられるCCL21 とCCR7の相互作用が消失してしまう可能性が示唆された。

2. TLR2とTLR4の発現

  @健常小腸では抗CCL21抗体に反応陽性を示す毛細リンパ管と一部の中心リンパ管が抗 TLR2抗体およぴ抗TLR4抗体に反応陽性であったが、血管はすべて反応陰性であった。◎

健常・炎症歯肉ならびに健常・炎症歯髄ではすべてのりンパ管と血管が抗TLR2抗体および 抗TLR4抗体に反応陰性であった。

  以上のことから|小腸微小循環系では血管ではなくりンパ管内皮細胞が外来抗原の認識 機構を有し、組織の病態制御に関与している可能性が示唆された。しかし、歯肉ならびに 歯髄においてはTLR発現がみられないことから、リンパ管内皮細胞におけるTLR発現能は 組織・器官により異なっている可能性が示唆された。

  論文にっいて概要が説明された後、各審査員より、本研究の背景、方法、結果、考察お よび関連の研究について質問がなされた。論文提出者はいずれの質問に対しても明確で的 確 な 回 答 し 、 さ ら に 今 後 の 研 究 に っ い て も 発 展 的 な 将 来 展 望 を 示 し た 。   試問の結果、本論文はヒト組織末梢のりンパ管内皮細胞におけるTLR発現能が組織・器官 により異なっている可能性があることを示唆した点において新規性が高く、今後の歯科医 学の発展にも大きく貢献するものと評価した。さらに、学位申請者は、本研究を中心とし た専門分野はもとより、関連分野についても十分な学識を有していることを審査員一同が 認めた。

  よって、学位申請者ぼ博士(歯学)の学位を授与される資格を有するものと認めた。

参照

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