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博 士 ( 工 学 ) 奥 山 裕 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 奥 山    裕

学 位 論 文 題 名

半 導 体 ヘ テ 口 接 合 に お け る 二 次 元 電 子 系 の 電 子 輸 送 理 論

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    近年、二次元亀子系の研究対象として、また微細カロエにより微り、な構造を作暑型 で き る 系 とし て 半 導 体 ヘテ ロ 接合 が注目 されて いる 。本研 究は特 にAエGal一エAs

/G aAsヘ テ ロ 接合 に お け る 二次 元 電 子 系 の 電子 輸 送の 理論的 研究 という テーマ で 、 マ ク 口ス コ ピ ッ ク な系 と メ ゾ ス コ ピッ ク な 系 とい う2っの異 なった 領域で の 電 子 に 対 する 散 乱 メ カ ニズ ム の特 性を明 らかに する ことを 目的と して行 われた も の で あ る 。 本 論 文 は 全6章 か ら 構 成 さ れ る 。 以 下 に 各 章 の 内 容 を 概 説 す る 。     1章 は 序 論 に当 て ら れ 、 本研 究 の 目 的 が 述べ ら れる 。すな わち 、まず マク口 ス コ ビ ッ クな 系 に お け る電 子 の散 乱メカ ニズム とし て、特 に電子 ・音響 フォノ ン 散 乱 を 取 り上 げ 、 変 形 ポテ ン シャ ル結合 の特質 を電 子移動 度、電 子エネ ルギー 損 失 率 、 熱 電能 と い っ た 量の 実 験 デ ー ク を理 論 と 比 較 する こ と に よ り明 ら かに す る 。 最 近の微 細功nエ技 術の 進歩は 電子の 非弾性 散舌 帳より も短い 系を作 ること を 可 能 に し たが 、 こ の よ うな 系 はメ ゾスコ ピック 系と 呼ぱれ 、新し い輸送 領域と し て 注 目 を 集め て い る 。 メゾ ス コピ ッ・ク 系の中 にも2っの 輸送 領域が あり、1っ は 不 純 物 な どに よ り 電 子 カ瀕 繁 に 散 乱 を 受け る 拡 散 領域 、もう1っ は篭子 が散乱 を 受 け ず に 弾道 的 に 運 動 する バ リス ティッ ク領域 であ る。本 研究で はバリ スティ ッ ク 領 域 に お け る 熱 電 能 の ふ る ま い を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 。     2章 で はAlrG al̲エAs/G aAsヘ テ ロ 接 合に お け る 電 子移 動 度 及 び 電 子エ ネ ル ギ 一 損 失率 の 角 斯 か ら変 形 ポ テ ン シ ャル 定 数Dの 値を求 める。 二次元 亀子ガ ス はGaAs層 側 に あ り 、Dの 値 は バ ル クGaAsの も の と 同 じ と 考 え ら れ る が 、 こ れ ま で の 研 究 の 多 く は バ ル クGaAsの7〜8eVよ り か な り 大 き な11〜16eVと い う 値 を 主 張し て い る 。 この 導 出は 、イオ ン化不 純物 散乱の 寄与は 温度依 存性を も た な い と いう 仮 定 に 基 づい て 、低 温にお ける移 動度 の温度 依存性 の解听 から行 わ れ て い た 。し か し 、 電 子系 が 強く 縮退し ていな い限 りこの 仮定は 成り立 たない 。 一 フ与、 低温で の電子 エネ ルギ一 損失率 も調べ られ 始めて いる。 エネルギ一損失率 に は イ オ ン 化 不 純 物 散乱 の よ う な 弾 性散 乱 は 関 与 しな い の で 精 度良 くDの 値 を

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得ることができると期待される。解断結果には用いた電子包絡関数やスクリーニ ング因子の取り扱い方が影響する。そこで包絡関数としては従来用いられていた 関数を拡張した、より現実的な関数を用いた。スクリーニング因子の取り扱い方 に関しては、短距離型の相互作用である変形ポテンシャル結合に対するスクリー ニンク1因子の妥当性を実験デークとの比較から判断するという立場をとった。比 較の結果、スクリ ーニンク僻は長2巨齏餅蹴用 であるピェゾェレクトリック結 合に対しては必要だが、短距離相互作用である変形ポテンシャル結合に対しては 不適当でむしろ入れない方が良いことがわかった。この取り扱いをすると結合定 数はバルクGaAsの ものと同じになり、バルクと へテロ接合の間で結合定数に違 いはないという結諭に達した。

    3章では熱竃効 果を議論の対象とし、特に熱電能を取り上げる。熱電能には 電子拡散による寄与とフォノン・ドラック.による寄与があるが、低温では後者が 支配的である。こ のため低温での熱電能は電子 ・音響フォノソ相互作用のふる まいを調べるのに 適した量である。この章では2章と同様の観点からフエノン・

ドラッグ熱電能の 解析を行った。解析にはフォ ノン・ドラッグ熱亀能に対する CantreuとButcherのモデルを用い、温度依存性 及び亀子濃度依存性に関して実 験データとの比較検討を行った。その結果、電子・音響フォノン相互作用結合定 数とスクリーニン ク.因子の取り扱い方に関して2章と同様讎蕎侖が得られた。

    4章ではまずメ ゾスコピック系で発見された興味深いいくっかの現象を簡単 にレビュ―する。 拡散領域では普遍的コンダク タンスゆらぎとAhmnov.BobIIl 効果を、バリスティック領域では十字型細線でのホール効果の消失と負の曲がり 抵抗を実験データを中心に説明する。次にメゾスコピック系の電子輸送を議論す る際に大変有用な多端子系のL弧da111er一B轟tnker公式をBattikerの議論に基づ いて導出し、さらにその公式を温度差がある場合に拡張する。La亅ldauer公式あ るいはLa亅1da11eトB五ttiker公式を線形応答理論から導き出す試みは80年代の初 めから行われている。本論文ではこれらの導出を温度差がある場合に拡張する。

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化されたコンダクタンスに対する補正項を議論する。

    5竃ではポイントコンタクトにおける熱黽fjヒのふるまいを議論する。バリス ティック電子に対する熱屯能はまず理論的に調べられ、この結果、くびれ幅の関 数として振動し、そのピーク値が試料や温度によらない値に盈子化されることが 予想された。その後、この予想をほば確認したと思われる実験が行われた。測定 方法は細線の両側面に異なった2っのポイントコンククトを介して二次元電子系 をっなげ、細線中の電子系のみを加熱して生じた各ポイントコンタクトの熱起電 カの差を細線の横電圧として測定するというものであり、理論吾十算で用いたモデ ルに比ベ複雑な3っの二次元電子領域から構成された系に′よっている。そこで、

この系に合うモデルを考え、横電圧の原因である各二次元領域の化学ポテンシャ ルのふるま いを調べた。その結果、従来の計算では見逃されていた化学ポテン シャルの振動を見いだした。実験では2っのポイントコンタクトのうち一方のく びれ幅を固定し、もう−I方のくびれ幅を変えているため、従来は1っの二次元領 域の化学ポ テンシャルのみが振動し、 それがI#1の振勁の原因と考えられてい たが、今回3っの領域すべてにおいて化学ポテンシャルが振動している状況が明 らかになった。

    さらに 、測定された熱電能のピーク値が予想された盈子化値より常に小さ い事実を説明するために、これまでの理論をコンダクタンスと同様のt『H正項を考 慮して検討し直した。得られた結果はこれまでの理論的予想とは異なり、現実の 系ではピーク値は必ず盈子化値より小さくなり、さらにくびれの形状や系の温度 にも依存する盈であることを示した。この事実はこれまでの実験デ―夕の解釈に 対して大きな見直しを迫るものである。

    6章は全体のまとめに当てられる。

    最後に、本研究では半導体ヘテロ接合における電子・音響フォノン相互作用 の特質を明らかにするとともに、バリスティック領域における熱亀fj旨に関して全 く新しい知見を得た。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    徳 田 直 樹 副査    教授    佐久間哲郎 副 査    教 授    中 山 恒 義

     学位論文題 名

半導体ヘテロ接合における二次元電子系の電子輸送理論

   本論文はへテロ接合における二次元電子系に関して、マクロスコピックな系とメ ゾスコピックな系という2 っの異なった領域での電子輸送現象のメカニズムとその 特性を理論的に明らかにするこ とを目的として行われたものである。本論文は全6 章から構成される。以下に各章 の内容を概説する。

  1 章は序論に当てられ、本研究の目的が述べられる。まずマクロスコピックな系 における電子の重要な散乱メカニズムである電子・音響フォ丿ン相互作用の性質を 電子移動度、電子エネルギ―損失率、熱電能といった量の実験データを理論と比較 することにより明らかにする。最近の微細加工技術の進歩により作られたメゾスコ ピック系は、新しい輸送領域として注目を集めている。本研究では電子が散乱を受 けずに運動するバリスティック 領域における熱電能のふるまいを明らかにする。

  2 章ではAIGaAs/GaAs ヘテロ接合における電子移動度及び電子エネルギ一損失率の

解析から電子・フォ丿ン結合定数及び結合の型とスクリーニング因子の関係を議論

する。電子・フォ丿ン相互作用に関するこれまでの研究の多くはイオン化不純物散

乱の寄与は温度依存性をもたないという事実に基づいて、低温における移動度の温

度依存性の解析から行われていた。これに対し、エネルギ一損失率にはイオン化不

純物散乱のような弾性散乱は関与しないので精度良く結合定数の値を得ることがで

きる。解析の結果、スクリーニング因子は長距離相互作用であるピェゾェレクトリ

ック結合に対しては必要だが、短距離相互作用である変形ポテンシャル結合に対し

ては不適当で入れるべきではないことがわかった。このような取り扱いをすると結

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子の取り扱い方に関して2 章と同様の結論が得られた。

  4 章ではメゾスコピック系の電子輸送を議論する際に大変有用な多端子系のLanda uer ―Buettiker 公式を温度差がある場合に対して線形応答理論から求めた。温度差 があるときの電流及び熱流を線形応答理論から導出するには、温度勾配を直接摂動 項に取り込むことができないために電気伝導度を求めるときとは別の困難が存在す るが、得られた結果はBuet tiker 流の導出法で求めたものと一致した。最後にポイ ソ ト コ ンタ ク ト に おけ る コ ソダ ク タ ソス の 量 子化 の 理 論を 中 心に 議論する 。   5 章で はポイントコソタクトにおける熱篭能のふるまいを議論する。バリスティ ック電子に対する熱電能はまず理論的に調べられ、くびれ幅の関数として振動し、

そのピーク値が試料や温度によらナょい値に量子化されることが予想された。その後 この予想をほば確認したと思われる実験が行われたが、その解釈に関しては検討の 余地が残されていた。そこで、この実験に対し詳しい理論解析を行ったところ、従 来の計算では見逃されていた化学ポテンシャルの振動を見いだした。さらに、測定 された熱電能のピーク値が予想された量子化値より常に小さい事実を説明するため に、これまでの理論を補正項を考慮して検討し直した。得られた結果は、現実の系 ではピーク値は必ず量子化値より小さくなり、さらにくびれの形状や系の温度にも 依存する量であることを示した。この事実はこれまでの実験データの解釈に対して 大きな見直しを迫るものである。

  6 章は全体のまとめに当てられる。

   これを要するに、著者は、半導体ヘテロ接合における電子・音響フォノン相互作 用の特質を明らかにするとともに、バリスティック領域における熱電能に関して新 しい知見を与えており、物性工学及び応用物理学の発展に貢献するところ大なるも のがある。

   よ って 著 者 は 、博 士 ( 工学 ) の 学位 を 授 与さ れ る 資格 あ る ものと 認める。

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参照

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