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博士(工学)伊藤文則 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)伊藤文則 学位論文題名

フイールドエミッタアレイの高性能化と デイスプレイデバイスへの応用に関する研究

学位論文内容の要旨

  近年、高度情報化社会の急激な進展により、視覚情報の受け渡し機能の役割を担うディ スプレイデバイスの重要性が年々高まりつっある。マルチメディア分野からインターネッ ト等の通信分野において要求される理想的なディスプレイの仕様は、高表示品位(高輝度、

高精細)を維持しっり、薄型で大画面かつ低消費電カであるという特性を有することであ る。

  代表的なディスプレイデバイスであるCRT (Cathode Ray Tube)は優れた画像表示性能を有 するためディスプレイデバイスの主流である。CRTの電子源(エミッタ)には熱陰極が用い られ、電子励起に必要なヒータ部での電力消費が大きく、大電流密度の実現は困難である。

また、始動に時間を費やすという欠点を持つ。高い放出電流密度を高効率で発生可能なエ ミッタとして、フイールドエミッタの研究開発が活発化している。フイールドエミッタは、

エミッタ先端部に電界を集中させ、卜ンネル現象によって固体内部から外部に電子を放出 させる。そのため、ヒーターレス、瞬時駆動、微細化・集積化が可能の利点を有する。し かし、CRTの内部真空度が低いのため、残留ガスとの相互作用で特性劣化、局所的放電によ る素子破壊等の問題が顕在化している。

  フイールドエミッタの高性能化は、CRTのみならずFED(Field Emission Display)エミッ タヘの応用にも大きな期待が寄せられている。FEDは優れた画像を維持し、かつ薄型化、大 画面化、軽量化の実現可能な次世代ディスプレイとして注目されている。FEDの発光原理は、

CRTと同様に螢光体の電子線励起であるが、その構造と駆動方法は異なる。FEDでは画素ご とに 画素数分の微細エミッタが2次元的に配置され、マトリクス的に駆動する。従って、

FEDではCRT並みの画像品質と薄型の平面ディスプレイを構成することができる。このよう なFEDの実 現には、高効率で大面積化に適した高性能なフイールドエミッタの開発が必要 不可欠である。

  上記課題を解決するために、本研究では鋭利なエミッタを集積化したフイールドエミッ タアレイの高性能化とその機構解明を行なぃ、実用デバイスへの搭載を試みた。特に、CRT の高 輝度・ 高精細化 および 低消費電力化に関しては、モリブテン(Mo)をエミッタ材料と したSpindt型フイールドエミッタアレイを検討した。また、薄型で大画面化が期待される FEDのエミ ッタとし て、カ ーポンナ ノチューブ(CNT)を用いたフイールドエミッタアレイ を 検 討し た 。 本 論文 は 全4章 から なり、そ の主要 な成果は 以下の ように要 約され る。

  第1章では、本研究の背景となっているディスプレイデバイスにおける重要性について述

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ベ 、 その 中 で フィ ール ドエミ ッタアレ イが果 たす役割 と研究の 目的に ついて述 べた。

  第2章では 、Spindt型フ イール ドエミッ タアレ イの高性能化とそのCRTの応用に関して 概説した。上記エミッタアレイの高性能化を実現するために、エミッタの集積化、表面処 理、残留ガスの影響を検討した。エミッタの集積化は、放出電流の増大に寄与し、さらに 個々のエミッタからの電流揺らぎを平均化するために、放出電流の安定化にも有効である。

エミッタの表面処理として、真空アニールを検討した結果、アニールは放出電流を増加さ せるための有効な前処理であることを示した。XPS(X―ray Photoelectron Spectroscopy)お よびTPD(Temperature Programmed Desorption)の表面分析から、アニールによる放射電流 の増 大はMoエ ミッタ表 面上の酸 化層(M003)の 熱脱離 による低仕事関数化が主要因である ことを明らかにした。電子放出に及ぼす種々の残留ガスの影響を調べた結果からは、電子 放出特性はガス圧と同時にガスの種類にも強く依存することがわかった。特に、アルゴン 等の希ガスはエミッタ先端部をスパッタリングし、特性を劣化させる要因になるため、充 分な脱ガスが必要である。上記の知見を基に、エミッタ表面酸化物の除去、CRT内の残留ガ ス制御、および放電破壊防止用の機構等を備えることにより、Spindt型フイールドエミッ タアレイをCRTの電子銃として始めて搭載し、安定な画像表示を実現することに成功した。

  第3章では、カーボンナノチューブを用いたフイールドエミッタアレイの高性能化とFED の応用に関して概説した。Spindt型フイールドエミッタは微小領域にエミッタを集積化す ることは可能であるが、大面積にわたって均一にエミッタを形成することはプロセス的に 困難 である。 近年、 ナノテクノロジーの中心的な材料として注目されているCNTはナノス ケールの微小突起を複雑な微細加工技術を用いることなく大量合成可能であるため、それ らをぺースト化し、塗布することにより、大画面のFEDのエミッタとして適用可能である。

CNTエミッタアレイの高性能化を実現するために、グラインド効果、表面処理、積層3極管 構造の導入を検討した。CNTのグラインドは、放出電流を飛躍的に増大させ、さらにCNT膜 の平 坦化にも 有効な 前処理であることが明らかになった。グラインド後のCNT形状を詳細 に観察したところ、CNTは局所的に分断され、その端部は先鋭化していることがわかった。

グラインドによる高性能化はCNT端部での電界集中度が増加したためと考えられる。また、

表面処理として真空アニールを検討した結果、アニールも放出電流を増加させるための有 効な前処理であることを確認した。TPD等のガス分析から、アニールによる放射電流の増大 はCNTぺース ト形成 時の溶媒成分が熱脱離することによって、表面仕事関数が低下したた めと 考えられ る。さ らに、我々はCNT―FEDとしては始めて積層3極管構造を採用し、従来 の駆 動電圧に 対して1/10以下の 低電圧動 作化を実 証した。積層3極管構造はCNT膜上に薄 い絶縁層を介して引き出し電極を近接させるため、低電圧にて高い実効電界をエミッタ先 端部 に均一に 印加す ることが可能である。このような低電圧駆動可能な積層3極管構造の 形成 が可能に なった 要因は、先述したグラインドによるCNT膜の平坦化とプロセスダメー ジからCNTを保護する保護膜の導入による。

  第4章では 、本研 究から得られた知見を概観し、本研究のもつ意味と役割について総括 し、今後の課題について述べた。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

フイールドエミッタアレイの高性能化と デイスプレイデバイスへの応用に関する研究

  近年、高度情報化社会の進展により、視覚情報の受け渡し機能を担うディスプレイデバ イスの重要性が高まっている。マルチメディア分野から通信分野において要求される理想 的なディスプレイの仕様は、高表示品位(高輝度、高精細)を維持し、薄型で大画面、低 消費電カの特性を有することである。

  代表的なディスプレイデバイスであるCRT (Cathode Ray Tube)は優れた画像表示性能を有 するためディスプレイデバイスの主流である。CRTの電子源(エミッタ)には熱陰極が用い られ、電子励起に必要なヒータ部での電力消費が大きく、大電流密度の実現は困難である。

また、始動に時間を費やすという欠点を持つ。高い放出電流密度を高効率で発生可能なエ ミッタとして、フイールドエミッタの研究開発が活発化している。フイールドエミッタは、

エミッタ先端部に電界を集中させ、卜ンネル現象によって固体内部から外部に電子を放出 させる。そのため、ヒーターレス、瞬時駆動、微細化・集積化が可能の利点を有する。し かし、CRTの内部真空度が低いのため、残留ガスとの相互作用で特性劣化、局所的放電によ る素子破壊等の問題が顕在化している。

  フイールドエミッタの高性能化は、CRTのみならずFED(Field Emission Display)エミッ タヘの応用にも大きな期待が寄せられている。FEDは優れた画像を維持し、かつ薄型化、大 画面化、軽量化の実現可能な次世代ディスプレイとして注目されている。FEDの発光原理は、

CRTと同様に螢光体の電子線励起であるが、その構造と駆動方法は異なる。FEDでは画素ご とに 画素数分 の微細エミッタが2次元的に配置され、マトリクス的に駆動する。従って、

FEDではCRT並みの画像品質と薄型の平面ディスプレイを構成することができる。このよう なFEDの実現 には、高効率で大面積化に適した高性能たフイールドエミッタの開発が必要 不可欠である。

    上記課題を解決するために、本研究では鋭利なエミッタを集積化したフィールドエミ ッタアレイの高性能化とその機構解明を行ない、実用デバイスーの搭載を試みた。特に、

CRTの高輝度・高精細化および低消費電力化に関しては、モリブテン(Mo)をエミッタ材料と

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彦 一

志 史

和 俊

直 眞

谷 藤

場 本

山 武

馬 山

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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したSpindt型フイールドエミッタアレイを検討した。また、薄型で大画面化が期待される FEDのエ ミッタと して、 カーボン ナノチ ューブ(CNT)を用いたフイールドエミッタアレイ を 検 討 し た。 本 論 文は 全4章か ら な り、 そ の 主要な 成果は以 下のよう に要約 される。

  第1章では、本研究の背景となっているディスプレイデバイスにおける重要性について述 ベ 、 そ の 中で フ イー ルドエミ ッタア レイが果 たす役 割と研究 の目的に ついて 述べた。

  第2章 では、Spindt型フィー ルドエ ミッタア レイの高性能化とそのCRTの応用に関して 述べた。エミッタアレイの高性能化を実現するために、エミッタの集積化、表面処理、残 留 ガスの 影響の3点か ら検討した。エミッタを集積化することにより、放出電流が安定化 することが分かった。エミッタの表面処理として真空アニールを検討した結果、アニール は放出電流増加の有効な前処理であることを見出した。その主要因はMoエミッタ表面上の 酸化層(M003)の熱脱離による仕事関数の低下であることを明らかにした。残留ガスの影響 を調べた結果、電子放出特性はガス圧とガスの種類に強く依存することが分かった。特に、

アルゴン等の希ガスはエミッタ先端部をスパッタリングし、特性を劣化させる要因になる ことが分かった。上記の知見を基に、工ミッタ表面酸化物の除去、CRT内の残留ガス制御、

お よび放 電破壊防 止用の 機構等を備えるSpindt型フイールドエミッタアレイをCRTの電子 銃 と し て 初 め て 搭 載 し た 結 果 、 安 定 な 画 像 表 示 を 実 現 す る こ と に 成 功 し た 。   第3章では、カーボンナノチューブを用いたフィールドエミッタアレイの高性能化とFED の応用に関して述べた。Spindt型フイールドエミッタは微小領域に集積化することは可能 であるが、大面積にわたって均一に形成することが困難である。近年、注目されているCNT では、ナノスケールの微小突起を微細加工技術を用いることなく大量合成することができ る 。それ らをぺー スト化 し、塗布することで、大画面のFEDのエミッタとしての可能性が 大である。CNTエミッタアレイの高性能化を目指して、グラインド効果、表面処理、積層3 極管構造の導入を検討した。CNTのグラインドは、放出電流の飛躍的増加に、さらにCNT膜 の 平坦化 に有効な 前処理 であることを明らかにした。グラインド後のCNT形状の電子顕微 鏡観察から、CNTは局所的に分断され、その端部は先鋭化していることを発見した。グライ ン ドによ る高性能 化はCNT端部での電界集中の増加によると結論された。また、表面処理 として真空アニールをした結果、放出電流の増加を見出した。さらに、CNTのFEDとして初 め て積層3極管 構造を 採用した結果、従来の駆動電圧に対して1/10以下の低電圧動作化を 実 現する ことがで きた。 その要因 は、グ ラインド によるCNT膜の平坦化とCNTを保護する 薄い絶縁層の導入によると結論された。

  第4章 では、本 研究か ら得られた知見を概観し、本研究のもつ意味と役割について総括 し、今後の課題について述べた。

  これを要するに、著者は、フイールドエミッタアレイの高性能化とその機構を解明して ディスプレイデバイスの実用化に対して新知見を得たものであり、応用物理学及び電子デ バイス工学の進展に貢献するところ大なるものがある。よって、著者は、北海道大学博士

(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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