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博士(工学)伊達広行 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)伊達広行 学位論文題名

Studies on Development of Electron Swarms     1n Gases by the Boltzmann Equation

(気体中における電子スオームの発展過程に関するボルツマン方程式解析)

学位論文内容の要旨

  近年、弱電離非平衡プラズマは、照明灯、気体レーザー、オゾナイザ一、プラズマディ スブレイ等の機器はもとより、半導体素子製造プロセス、大気汚染ガスの分解プロセス等 の様々な分野において応用されている。弱電離非平衡プうズマは、電子のみが非常に高い 温度を有しながら中性気体粒子やイオンは常温に近いため、ガラス管や金属容器での閉じ 込めが容易なー方、電子の衝突を介しての様々な化学反応を起こしうる、という特長をも つ。このような弱電離気体を用いた応用システムの最適化、高効率化を達成するためには、

気体プラズマを構成する電子群(スオーム)の時間的空間的挙動や電子エネルギー分布に ついての深Vヽ理解が必要となる。本研究は、電子スオームの振る舞Vヽを記述する連続の式 や発展方程式、電子スオームパラメータの定義を詳細に検討するとともに、利用頻度の高 kヽ 実際の ガス(Kr,CH4,SF6,N2) 中でス オームパラメータや電子エネルギ一分 布をボルツマン方程式解析によって算出するものである。そして、これにより、気体の電 子衝突断面積から演繹的にプラズマのマクロ訟特性を推定する明確な手段を確立し、工学 的 応用 に 寄 与 する 電 算 機シ ミ ュ レー シ ョ ンを 支 援する ことを目 的として いる・

  本論文は全8章で構成されている。第1章は序論であり、研究の歴史的背景と本研究の 意義を述ぺている。第2章は、従来のいわゆるタイムオプフライト(TOF)理論の再検 討を行なっている。第3章は、エキシマレーザーなどで用VヽられるKrの電子衝突断面積 を決定している。第4章では、電子到着時間分布に関するATS理諭の検証を行った結果 について述べている。第5章と第6章は、フ―リエ変換形ボルツマン方程式による、電界 方向と電界と垂直な方向の電子スオームパラメータの解析について、その方法と結果を述 ぺている。第7章では、電子到着時間分布を観酒した実験に対する直接的な理諭解析結果 を提示している。第8章は全体のまとめである。このうち、第4章と第7章は本諭文のメ インテーマを扱っており、電子スオームの発展過程を記述する際の原理的な問題点の解決 を目指している。すなわち、電子スオームが電界により移動し成長する過程を観測する際 に、従来のTOF理論では電子スオームの時々謝々の全空間電子密度をコマ取り写真的に とらえて記述するのに対して、実際のいわゆるTOF実験と呼ぱれる方法ではドリフトチ ユープ内の固定された位置で電子が至IJ着する時間分布を観測していることに着目し、この 実験的観測方法に直接対応する解析を行おうとするものである。ATS理論はこれを可能 とする理論として1990年に報告されたが、実際の解析に用いられたことはなく、本研 究ではじめて実ガスに適用され、有効であることが確認されている。また、第2章のTO Fパラメータの意味の厳密な検討に加え、観測法によるパラメータの違いと相互の関係を 明らかにしている。さらに、第5,6章ではATS理論で導入された新しいスオームバラ メータとTOFパラメータを求める効果的を方法を確立している。

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  第2章から第7章にお けるテーマの概要と結果を以 下に述ぺる。

  第2章 で はTOF理 諭 の 基 本 を な す 電 子 流 連 続 の 式 か ら 、TOFパ ラ メ ー タ が ど のよ う に定義されるかを明確 に示すとともに、ボルツマン 方程式の電子密度勾配によ る展開を用 いた解法につV、て明らかにした。ま´た、各種パラメータの物理的意味を探り、特に、電離 や電子付着の空間的不 均一の影響や電界による電子 の加速の効果等が、電子拡 散係数の中 に含まれていることを 示した。

  第3章 のKrの電 子衝 突 断面 積の 決定 で は、 電子 スオ ーム の ドリフト速度 と電離係数の 計 算 値 が 実 測 値 と 良 く 一 致 す るよ うに 、1〜30eVの エネ ル ギー 範囲 にお いて 、 これ ま での報告データをもと に運動量移行断面積を修正す るとともに、電子励起断面 積を下位の 4励 起準 位と 残り の全 励 起準 位を ひと ま.とめ にしたものに分けて推定した 。KrFレ―ザ ーなどに用いられる換 算電界強度の範囲で、パラメ ータの計算値が実測値と良 く一致する 断面積のセットカ滑ら れた。

  第4章 では 、ATS理 論に おV、て 基本 と なる 発展 方程 式が 、 良く知られた 電子流連続の 式と 時空 対 称な関係 にあること、またその方程 式に導入される新しい係数群 (aパラメー 夕)が、電子至fJ着時 間分布のn次時間モーメント に関する位置微分で定義されることを示 し、この係数を求める ルジャンドル多項式展開によ るボルツマン方程式解析法 を具体的に 示した。この方法はCH ガスに適用され、ロパラメ ータと定位置での至lJ着電 子の電子エ ネル ギ一 分 布が算出 され、モンテカルロ法の結 果と比較された。6項近似ポ ルツマン方程 式解 析の 結 果は モン テカ ルロ 法 と良 く一 致し 、ATS理 諭の 妥 当性が実証さ れた。また、

ATS理 論 で 求 め ら れ る 平 均 到着 時間 から 定 義さ れる ドリ フ ト速 度W.と定 常タ ウ ンゼ ン ト 法 実 験 で の ド リ フ ト 速 度Vd、従 来のTOF理論 で得 られ る スオ ーム 重心 のド リ フト 速 度Wrと ス オ ー ム 内 電 子 の 平 均 ドリ フト 速度Wvを 、CH4ガ ス 中で 算出 し比 較し た 。そ の 結 果 、 ほ ぽE/N=150Td以 上 で4種 の ド リ フ ト 速 度 値 が 皆 異 な る こ と が わ か っ た 。   第5章 では 、ボル ツマン方程式を位置空間につ いてフーリエ変換すること によって得ら れる方程式の固有値問 題を考えることによルスオー ムパラメータを求める方法 を導入し、

実際のガスの解析に適 用した。この方法は、量子力 学におけるシュレーディン ガ一方程式 の摂 動法 に よる 解法 と類 似し て おり 、摂動パラ メー夕ikと固有値りのいわ ば分散関係を 求め、これに高次多項 式をカ―プフイッテイングす ることによって多項式の係 数としての バ ラ メ ー タ が 決 定 さ れ う る 。TOF、ATS解 析 で の パ ラメ ー タを 、高 次に わた っ て一 括 し て 求 め ら れ る こ と が 、 本 方 法の 大き な特 長で あ る。 電界 方向 の解 析 をKrとSF6に 対 して 行な い 、従 来求 める こと が 困難 であった3〜4次までの高抜バラメータ を数値計算上 比較 的安 定 に算 出す るこ とが で きた 。また、電 離や電子付着が存在する条 件でのWrとWm の相 違が 、ik‑り 関係 曲 線に よっ て明 確 に示 され るこ とが 明 らかとなった 。電界と垂直 な 方 向 で の 解 析 は 第6章 で 述 ぺ ら れ て お り 、CH とSF6中 にお いて 、横 方向 拡 散係 数 DT等 が算 出 され た。 さら に、 電 子付 着が電離よ りも優勢となるとき、定常 タウンゼント モデル条件下で、電界 と垂直な横方向の電子密度分 布に関し、電離係数に類似 した新しい パラメータを導入する ことが可能となることを示し た。

  第7章 で は 、 第4章 で 述 ぺ たATS解 析 をN2中 の 解 析 に 適 用 し 、N2中 の 電 子 到 着時 間 分布 を求 め た実 際のj1定 (2重シ ャッ タ・ドリ フトチュープを用いた典型的 なTOF実験)

での 結果 と 比較した 。aパラメータを理論的にボ ルツマン方程式解析で導出 する一方、実 験の 測定 波 形から直 接時間モーメントを考慮し てaパラメータを求め、両者 を比較した。

また、aパラメータを用Vヽて逆に至q着時間分布を 理論的に予想し実測値と比較した。理論 と 実 験 の 結 果 は ほ ぽ 良 い 一 致 を 示 し 、 こ の こ と か ら、ATS理論 がい わ ゆるTOF実験 の 原理に直接対応するも のであることが確認された。

  本 研究 で は、 以上 のよ うに 、 弱電 離気 体中 の電 子 スオ ーム の発展過程が 従来のTOF理 論に 加え 、 これ と時 空対 称な 関 係に あるATS理論 によ って も 解析され得る ことを実証す る と 共 に 、ATS解 析 の 有 効 性 を 実 際 の ス オ ー ム 実 験 と の対 応か ら示 し た。 また 、TOF

‑ 126

(3)

とATS解析両者にわたる種々のスオームパラメータの定義と意味を明確にし、それらの 有効な算出方法を確立した。第8章のまとめでは、以上のような本研究での成果を要約し ている。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Studies on Development of Electron Swarms     1n Gases by the Boltzmann Equation

( 気 体 中 に お け る 電 子 ス オ ー ム の 発 展 過 程 に 関 す る ボ ル ツ マ ン 方 程 式 解 析 )

  近 年、非平衡プラズマ(グロ一放電プラズマ)は、気体レーザ−、半導体素子製造、汚 染 ガスの分解等、様々な分野で利用されており、その最適化のため、放電プラズマのシミ ユ レーションが行なわれている。本論文は、これに必要な電子スオームパラメータを提供 するための理論的手法に関するもので、全8章から成っている。

  第1章は 序論で あり、研 究の歴史的背景とその中における本研究の意義を述ぺている。

  第2章は 本研究 の理論展 開の基 盤となる 部分で 、従来のTOF(Time of Flight)理論の 出 発点の電子流連続の式から、 TOFパラメータがいかに定義される かを示すとともに、

亀 子密度勾配展開によるポルツマン方程式の解法にっいて述べている。また、各種パラメ ー タの物理的意味を明かにし、特に、電離や電子付着生起の空間的不均一性の影響や電界 に よ る 電子 加 速 の効 果 等 が、 電 子 拡 散係 数 の 中に 含 ま れて い る こと を 述 べて いる。

  第3章で はエキ シマレー ザで重 要なKrの電 子衝突 断面積の 決定を 電子スオ ーム法で行 な っている。電子スオームのドリフト速度と電離係数の計算値が実測値とよく一致するよ う に、1〜    30eVのエ ネルギ 一範囲に対し、従来の運動量移行断面積を修正するととも に、主要な電子励起断面積も推定し、スオームパラメータの計算値が実測値とよく.一致す る断面積のセットを得ている。

  第4章で は、ATS (Arrival Tine Spectrum)理 論におい て基本となる発展方程式は、よ く 知られた電子流連続の式と時空対称な関係にあること、またその方程式に導入される新 係 数群(ば パラメ ー夕)が 、電子到着時間分布のn次時間モーメントに関する位置微分で 定 義されることを述べ、この係数を求めるルジャンドル多項式展開によるポルツマン方程 式 解析法を 具体的 にはじめ て示した。さらにこの方法をCH ガスに適用し、aパラメータ と 到着電子 の電子 エネルギ 一分布 を算出し て、モ ンテカルロ法の結果と比較した06項近 似 ポルツマ ン方程 式解析の 結果は モンテカ ルロ法 とよく一 致し、ATS理論 の妥当性が実 ガ スにっい てはじ めて実証 された 。また、ATS理 論で求め られる平 均到着 時間から定義 さ れ る ドリ フ ト 速度Wmと定 常 タ ウ ンゼ ン ト 実験 で のドリフ ト速度Vd、従来のTOF理 論 で 得られる スオー ム重心の ドリフ ト速度Wrと スオ― ム内電子の平均ドリフト速度Wvを、

CH4ガ ス 中 で 算 出 し 比 較 し た 。 そ の 結 果 、 ほ ぼE/N=150Td以 上 で4種 の ド リ フ ト 速度値が皆異なることを明らかにしている。

  第5章で は、ポ ルツマン 方程式に位置空間のフーリエ変換をほどこした方程式の固有値

昭 輔 久 機 男 博 洋 利 英 初 頭 井 間 川 崎        

田 酒

本 長

(5)

問題としてスオームパラメータを求める方法を実ガスの解析にはじめて適用した。この方 法ではik と固有値u の分散関係を求め、.これに高次多項式をカーブフイッティングし、

多項式の係数としてパラメータが決定されるo TOF 、

ATS

解析の高次にわたるパラメ ータが一括して得られる点が、本方法の大きな特長となっている。電界方向のパラメータ の解析を

Kr

とSF6 に対して行ない、従来求めることが困難であった3 〜4 次までの高次 パラメータを数値計算上比較的安定に算出しうることを示している。また、電離や電子付 着 が 存 在 す る 条 件 で の

Wr

w.

の 相 違 を 、

ik‑

り曲 線 に よっ て 明確 に 示 した 。

  

第6 章は電界と垂直な方向の解析にあてられている。 CH4 と

SF6

中において、横方向 拡散係数DT 等が算出された。さらに、電子付着が電離よりも優勢なとき、定常タウンゼン ト条件下で、電界と垂直な方向の亀子密度分布が、電離係数に類似した新しいパラメータ によって記述可能となることをはじめて示した。

  

7

章 では、第

4

章で述べ たATS 解析を

N2

の解析に適用し、N2 中の電子到着時間分 布を求めた実際の測定(2 重シャッタドリフトチュープを用いた典型的なTOF 実験)の結 果と比較したoa パラメータを理論的にポルツマン方程式解析で導出する一方、実験の測 定波形から直接、時間モーメントを考慮してロパラメータを求め、両者を比較した。また ゼパラメータを用いて逆に到着時間分布を理論的に予想し実測値と比較した。理論と実験 の結果はほばよい一致を示した。これらのことから、ATS 理論がいわゆる

TOF

実験の 原 理 に直 接 対応 す る もの で あ ること をはじめ て実ガス に対して 確認して いる。

  

以上を要するに本論文は現代の産業技術に多くの応用を持つ非平衡放電プラズマ(グロ 一放電プラズマ)のシミュレーションに要求される電子スオームパラメータのより現実に 即した理論的決定法を開発してその新規性、有用性、有利性を明らかにするなど、多くの 知見を与えたもので、放電工学と気体エレクトロニクスに貢献するところ大である。よっ て 著 者は 北 海道 大 学 博士 ( 工 学)の 学位を授 与される 資格ある ものと認 める。

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参照

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