細胞性粘菌の走化性
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石川顕一
生体システム
細胞性粘菌
•
キイロタマホコリカビDictyostelium Discoideum
•
アメーバ状の生活と、菌類のような子実体 を、その生活環の中に 持っている微生物
•
モデル生物:分子生物学において、普遍的な 生命現象の研究に用い られる生物
細胞性粘菌の走化性
細胞性粘菌
環状アデノシン1リン酸
(cAMP)
走化性
走化性
細胞が誘引物質源のある方向を検出し それに向かって移動する性質
様々な生物過程において重要な役割
•
免疫•
傷の治癒•
形態形成(形作り)集合・形作りの連絡信号
集合期
驚異の高感度
濃度 濃度勾配
ダイナミックレ ンジ
8.0 × 10 − 10 M
4.0 × 10
−12M/µm
10 7
0 3 6 9
-5
ミクロン5
ミクロン濃度の濃い側 10μm
80000
個の受容体(細胞のカギ穴)
cAMP
分子80000 個のカギ穴のうちいく つに cAMP がついてるか
cAMP + R cAMP · R
cAMP 80000
個中40000
個中642.8 321.4
634.9 317.5
627.0 313.5
8.0 × 10 − 10 M
7.9 × 10 − 10 M
8.1 × 10 − 10 M
決定論的な(ゆらぎを考えな い)シミュレーション
0 100 200 300 400
前側 後ろ側
0 3 6 9
-5
ミクロン5
ミクロンcAMP
濃度わずかではあるが、確実に前側 の結合度が高い。
カギ穴の結合度
ゆらぎを考えないシミュレー ションの問題点
• cAMP が結合しているカギ穴の数(結合 度)が小数になってしまう。
• 結合数がいつも同じになってしまう。
• サイコロを 12 回振って 6 の目が出る回
数の平均は 2 回だが、いつも 2 回なわけ
ではない。
ゆらぎを考慮した シミュレーション
ポイント
→
確率を考えるcAMP + R ⇒ k
1cAMP · R 0.25 0
0.50 0.75 1.00
∆t
時間 結合確率p
結合確率
p = 1 − e − k
1[cAMP]∆t
ゆらぎを考慮した シミュレーション
時間ステップ
∆t
を設定一様乱数
x ∈ [0, 1]
例x = 0.13, 0.65, 0.54, · · ·
0 0.25 0.50 0.75 1.00
∆t
時間 結合確率p
x < p
ならx > p
なら終状態
始状態
ゆらぎを考慮した シミュレーション
一様乱数
x ∈ [0, 1]
をこれらの値と比較e − k
1[cAMP]∆t 1 − e − k
1[cAMP]∆t 1 − e − k
−1∆t e − k
−1∆t
すべてのカギ穴(受容体)についてこの手続きを繰 り返し、
モンテカルロシミュレーション cAMP
の結合・解離をシミュレーションカギ穴の結合度の時間変化
•
高濃度側と低濃度側で結合度が 逆転
•
一目ではどちらが高濃度側か判 別不能
それでも粘菌は迷わない!
400 300 200 100 cAMP受容体の結合度 0
60 50
40 30
20 10
0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
細胞内情報伝達
誘引物質
cAMP
細胞外細胞内
受容体
細胞内伝達物質(セカン ドメッセンジャー、
PIP3
)G
タンパク質モンテカルロシミュレーション
ここもシミュレーション
細胞内情報伝達のモデル
セカンドメッセンジャー
(PIP3)
これをモデルするには…
x
セカンドメッセンジャー濃度
m ( x, t )
位置と時間の関数 反応拡散方程式
∂m
∂t = P ( x, t ) + D ∂ 2 m
∂x 2 − k m m
反応拡散方程式
x
∂m
∂t = P ( x, t )
∂m
∂t = P ( x, t ) + D ∂ 2 m
∂x 2 − k m m
生成
0 0.25 0.50 0.75
1.00
生成反応拡散方程式
x
∂m
∂t = D ∂ 2 m
∂x 2
∂m
∂t = P ( x, t )
∂m
∂t = P ( x, t ) + D ∂ 2 m
∂x 2 − k m m
生成 拡散
1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0
m(x,t)
-20 -10 0 10 20
x t=0
t=10 t=10
拡散
反応拡散方程式
x
∂m
∂t = D ∂ 2 m
∂x 2
∂m
∂t = − k m m
∂m
∂t = P ( x, t )
∂m
∂t = P ( x, t ) + D ∂ 2 m
∂x 2 − k m m
生成 拡散
消滅
0
0.25 0.50 0.75
1.00
消滅400 300 200 100 cAMP受容体の結合度 0
60 50 40 30 20 10 0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
PIP3 濃度の時間変化
20 15 10 5 0
PIP3濃度 (μM)
60 50
40 30
20 10
0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
細かいゆらぎが抑制されている。
PIP3 濃度の時間変化
20 15 10 5 0
PIP3濃度 (μM)
60 50
40 30
20 10
0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
前側と後ろ側は差は小さいまま
差を増幅するしくみがあるはず
400 300 200 100 cAMP受容体の結合度 0
60 50 40 30 20 10 0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
細胞内信号増幅
G
タンパク質 受容体cAMP
PIP3
PIP2 PIP
小
G
タンパク質(Rac, Rho, Arf)
セカンドメッセンジャー
• PIP3
が増加•
小G
タンパク質が増加
• PIP2
が増加• PIP3
が増加• …
正のフィードバック
1.
4. 3.
2.
・細胞内の
Effector(E)
は、細胞膜内のSecond-Messenger(S)
に結合(SE)
する。・ 誘因物質の結合している受容体が付近に ある時、
SE
はSecond-Messenger
を生成。誘因物質が 受容体に結合
更に、多くの
Second-
Messengerを
生成 ⇒ 正のフィード バック生成された
Second-
Messenger
に、Effector
が結合⇒SE濃度が増加 付近のSEは、
Second-
Messenger
を 生成Postma and Van Haastert, Biophys.J. 81, 1314(2001)
受容体と誘因物質 の結合・解離
(モンテカルロ)
Second-
Messengerの
生成・拡散・消滅(クランク・ニコルソン)
EffectorのSecond- Messenger
への結合・解離 (陽解法)
{
{ {
PIP3 濃度の時間変化
前側と後ろ側にはっきり差 がついている!
400 300 200 100 cAMP受容体の結合度 0
60 50 40 30 20 10 0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
1200 1000 800 600 400 200 0
PIP3濃度 (μM)
60 50
40 30
20 10
0
時間(秒)
高濃度側 低濃度側
まとめ
細胞内情報処理のシミュレーションには
…
•
乱数を用いたモンテカルロシミュレーション•
偏微分方程式(細胞内反応・拡散)細胞性粘菌がゆらぎに惑わされないのは