論文内容要旨
Human mesenchymal stem/stromal cells suppress spinal inflammation in mice with contribution of pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP).
(ヒト間葉系幹/間質細胞は下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポ リペプチド(PACAP)の関与によりマウスの脊髄の炎症を抑制する)
Journal of Neuroinflammation 2015 年 掲載予定
生理系解剖学顕微解剖学分野専攻 圓谷 智海
【背景】
ヒト成人骨髄由来間葉系幹/間質細胞(hMSCs)の細胞移植は、脳虚血や 脊髄損傷(SCI)などの神経損傷の神経細胞死の改善に寄与することが報 告されている。一方神経ペプチドである下垂体アデニレートシクラーゼ活 性化ポリペプチド(PACAP)もまた神経損傷を軽減することが知られてい る。以前、申請者らのグループは、脳虚血後に hMSCs 移植を受けたマウス は、マウス PACAP 遺伝子(
Adcyap1
)の発現が移植もしくは虚血のみを受 けた動物に比べ増大することを見いだした。しかし、PACAP と hMSCs の関 わりや神経損傷に対する役割はよく分かっていない。申請者は hMSCs の神 経損傷抑制作用に、Adcyap1
が関与しているという仮説を立て、野生型(WT)および
Adcyap1
+/-マウスを用い SCI 後の hMSCs の有用性を検討した。さら に、hMSCs による抗炎症作用に着目し、マウスおよびヒトサイトカイン遺 伝子の発現に対する作用についても調べた。【材料と方法】
WT および
Adcyap1
+/-マウスに第 11/12 胸椎椎間の脊髄離断手術を行い、術後1日目に hMSCs(5×105個)を 1 椎体尾側の脊髄に移植した。SCI 後 最大 7 日間、下肢を中心とした自発運動能、損傷体積、hMSCs の残存量、
Adcyap1
発現量およびマウスもしくはヒトサイトカインの遺伝子発現量を評価した。
【結果】
WT マウスに hMSCs を移植(WT/hMSCs)すると、溶媒投与対照群(WT/HBSS)
に比べ、自発運動能や損傷体積が改善した。それに対し、凍結融解により 破壊した hMSCs を WT マウスに移植した場合や、hMSCs を
Adcyap1
+/-マウス に移植(KO/hMSCs)した場合は損傷抑制効果を認めなかった。WT/hMSCsは、
Adcyap1
発現量が増加し、脊髄前角細胞で PACAP の陽性反応が観察さ れた。hMSCs は移植後、漸次的に減少したが、移植後損傷領域に向かい遊 走している像が観察された。WT/hMSCs は、WT/HBSS に比べ IL-1、TNFα、IL-10、TGFβ の遺伝子レベルが減少し、IL-4 遺伝子の発現は増加した。
さらに、WT/hMSCs は代替経路型マクロファージマーカーが増加した。し かし KO/hMSCs は、IL-1、TNFα、TGFβ、IL-4 遺伝子レベルは WT/HBSS と ほぼ変わらなかった。WT/hMSCs はヒト由来の抗炎症および成長因子の増 加が認められたが、KO/hMSCs はそれらの遺伝子発現は抑制された。hMSCs の培養細胞は、IFNγ の暴露により
ADCYAP1
やその受容体の増加を認めた。【結論】
以上の研究結果は、hMSCs が PACAP を部分的に介することで、SCI に付 随する有害反応を軽減させる可能性を示唆した。その作用には IL-4 産生 が関与している可能性が考えられる。