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博士(地球環境科学)崔 光沫 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(地球環境科学)崔   光沫 学位論文題名

Geographic Differences in Lung Cancer Mortality in Japan         in Relation to Air Pollution and Temperature

(日 本の 肺癌 死亡 率の 地域分布と大気汚染や温度との関連性)

学位論文内容の要旨

【 背景】悪性新生物中で現在最も注目されている問題のーっは肺癌死亡率の増加である。

1990年 の日 本の 肺癌 死亡 数は 男性26,872人、女性9,614人であり、1970年度に比べてそ れ ぞれ3.6倍お よび3.2倍 に増 加し た。 人口10万 当た りの標 準化死亡率でみても、1990年 で は男 性43.7、 女性11.4であ り、1970年に 比べ てそ れぞれ2.0倍および1.6倍増加した。

一 方、世界における肺癌の死亡率は地域差が著明で、肺癌の発生要因には環境的な側面が 強 く働くものと考えられる。そこで、日本においても、肺癌の発生と環境要因との関係を 調 査研 究す るこ とが 望ま れて いる 。

【目的】肺癌の発生については、夕バコの他、燃料や自動車に起因する大気汚染も重要と 考えられているので、各統計資料に基づぃて日本の都道府県別の肺癌死亡数の割合を検討 す る と と も に 、 肺 癌 発 生 に 及 ぽ す 環 境 要 因 を 大 気 汚 染 の 観 点 か ら 検 討 す る 。

【 方法 】日 本の47都 道府 県を 対象 に疫 学的 分析 を行 った。 分析資料として、厚生省の人 口 動態統計、総務庁の国勢総覧および日本統計年鑑、環境庁の日本の大気汚染状況、気象 庁 月報 など を用 いた 。大 気汚 染度 資料 以外 のす ぺて の統計 資料は、1970年から1990年ま での国勢調査の行われた年,すなわち,1970年,75年,80年,85年,90年の資料を、大気汚染度 資 料は1975年度 以後 の資 料を 用い た。 都道 府県 別の 肺癌の 標準化死亡率は1985年度モデ ル 人口 を基 準人 口と して 人口10万 当り の死 亡率 とし て計算 した。都道府県別の環境資料 と して二酸化窒素および二酸化硫黄を選ぴ、地域内一般大気測定局で測定されたすべての デ ータをまとめて年平均濃度を求めた。車台数は各地域内車保有台数を住宅面積で割った も のを用いた。気象資料は月報から年平均気温などを算出し、用いた。これらの資料に基 づ ぃて 肺癌 死亡 率や 環境 要因 の地 域差 およ び各 要因 の間の 相関性などについて調べた。

【結果】都道府県別の肺癌標準化死亡率をみると、沖繩、大阪、福岡などが高く、長野、

高知 ,福 島な どで 死亡 率が低かった。鳥取、島根、高知などが低いとぃう一部の例外は あるものの、関東・中部地方で肺癌死亡率が低かった。男女とも同様の傾向であったが、

(2)

男 性 に よ り 顕 著 で あ っ た 。 こ の 都 道 府 県 別 標 準 化 肺 癌 死 亡 率 分 布 か ら 、 日 本 を 北 海 道 ・ 東 北 プ ロ ッ ク(Bl)、 関 東 ・ 中 部 ブ ロ ッ ク(B2)、 近 畿 ・ 中 国 ・ 四 国 ・ 九 州 ブ ロ ッ ク(B3) に 分 け た 。 男 女 全 体 の 肺 癌 死 亡 率 を み る と 、Bl地 域 が 人 口10万 対19.9、B2地 域 が18.1、B3 地 域 が20.4で 、 B2に 比 べ て Bl、 B3で 、 そ れ ぞ れ 、9.9% 、12.7%死 亡 率 が 高 か っ た 。 性 別 で 比 較 す る と 女 性 よ り も 男 性 の 方 が 約3.7倍 死 亡 率 が 高 か っ た が 、 男 女 全 体 お よ ぴ 甥 性 で は 、B2の 肺 癌 死 亡 率 がBl、B3に 比 べ て 有 意 に 低 か っ た(p<0.05お よ びp<0.01)。 女 性 の 場 合 、 男 性 の よ う に 明 ら か な 差 は み ら れ な か っ た が 、B3の 肺 癌 死 亡 率 はB2に 比 較 し て 有 意 に 高 かっ た(p〈0.05)。 女性 の肺 癌死 亡率 の 増加 の割 合は 緩や かで 、男 性で は急 速な 死 亡 率 の 増 加 が み ら れ た が 、 こ の 増 加 の 割 合 は い ず れ の ブ ロ ッ ク でも 差が なか った 。し かし 、 B2の 死 亡 率 は 他 の ブ ロ ッ ク に 比 ぺ て 常 に 低 く 、 そ の 差 は ほ ぼ 一 定 で あ っ た 。B3に 限 っ て 省15述府りふ別JJliim‑死亡率と環境要因との相関をみると、男性の)Jili癇死亡ネとタバコれ|jIい;.:

(r ̄0.671、p<0.01)および気温(rニニ0.514、p<0.01)との1剛にイ亅I意な相惻がみられたが、女性の 肺 癌 死 亡 率 で は 大 気 中 のN02 (r=0.476、p<0.05)、 車 台 数(r=0.458、p<0.05)お よ び タ バ コ 消費量(r=0.630、p<0.01)との間に有意な相関がみらた。

  一 方 、 大 気 中 のN02濃 度 お よ ぴ 平 均 気 温 を 合 わ せ て 肺 癌 死 亡 率 と の 関 係 を み る と 、N02 濃 度 単 独 よ り 影 響 カ が 強 く な っ た ( 男 性 の 肺 癌 死 亡 率 と は1.3倍 、 女 性 の 肺 癌 死 亡 率 と は 1.2倍)。これはB3のみで有意な関係がみられた(F=10.3 20、p<0.05)。

【 考 察 ・ 結 論 】 以 上 の 結 果 を ま と め る と 、1) 日 本 の 三 つ の ブ ロ ッ ク に お け る 肺 癌 死 亡 率 は 関 東 ・ 中 部 ブ ロ ッ ク が 他 の ニ つ の ブ ロ ッ ク に 比 べ て 有 意 に 低 か っ た 。 こ の 差 は 男 性 の 方 が 女 性 よ り も 常 に 大 き か っ た 。2) 都 道 府 県 別 肺 癌 死 亡 率 と 環 境 要 因 と 関 係 は 、 男 性 で は 明 ら か な 相 関 が み ら れ な か っ た が 、 女 性 で は 大 気 中 のN02、 全 車 台 数 や ト ラ ッ ク 台 数 お よ び 気 温 と の 間 に 有 意 な 相 関 性 が み ら れ た 。3) 肺 癌 死 亡 率 の 地 域 差 と 環 境 要 因 関 係 に 男 女 差 が あ る こ と は 、 男 性 の 場 合 、 喫 煙 と か 職 場 環 境 な ど の 要 因 が 強 く 働 き 、 女 性 に 見 ら れ る よ う な 相 関 関 係 が 認 め ら れ な っ か た の で は な い か と も 考 え ら れ る 。 し か し 、 男 性 に 比 ぺ て 職 業 を 持 た ず 、 限 定 さ れ た 居 住 地 で 生 活 し て い る 女 性 の 場 合 で も 大 気 汚 染 と か 車 台 数 な ど の 環 境 要 因 と の 相 関 が み ら れ た こ と は 意 味 が あ る 結 果 だ と 思 わ れ る 。4) 関 東 ・ 中 部 地 域 は 大 気 汚 染 が 高 い に も か か わ ら ず 、 肺 癌 死 亡 率 が 他 の ニ つ の 地 域 よ り も 低 か っ た 。5) 肺 癌 発 生 に 気 温 が 大 気 汚 染 の 影 響 を 相 乗 的 に 増 強 し て い る と 考 え ら れ た 。   本 研 究 で は 肺 癌 の 成 因 解 明 を 目 的 と し て 日 本 各 都 道 府 県 を 対 象 に 喫 煙 以 外 の 因 子 、 特 に 大 気 汚 染 と の 関係 と、 これ に及 ぼす 気温 の影 響に つい て疫 学的 分 析を 行しj、 .気 温が 肺癌 発 生 に 密 接 な 関 係 を 持 っ こ と を 明 ら か に し た 。

【 今 後 の 方 針】 既に 、flow cytometryやpostlabeling法を 用い て、 大気 中の 発癌 物質 の主 体 と 考 え ら れ る べ ン ッ ピ レ ン とDNAと の 付 加 体 を 測 定 で き る よ う に な っ た 。 こ の 方 法 を 用 い て 、 付 加 体 形 成 に 及 ぽ す 温 度 の 影 響 を 検 討 し 始 め て い る 。

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    東    正 剛 副 査    教授    山村 悦 夫 副 査    教授    吉田 廸 弘 副査   助教授   井上勝一

学 位 論 文 題 名

Geographic Differences in Lung Cancer Mortality in Japan         in Relation to Air Pollution and Temperature

( 日本 の肺 癌死 亡率 の地 域分布と大気汚染や温度との関連性)

  

肺癌 の発 生に は、 夕バ コの他 、燃 料や自動車に起因する大気汚染も重要と考えられてい る ので 、各 統計 資料 に基 づぃて 日本 の都道府県別の肺癌死亡数の割合を検討することと、

肺癌発生に及ぼす環境要因を大気汚染の観点から検討することを本論文は目的としている。

  

分析 資料 とし て、 厚生 省の人 口動 態統計、総務庁の国勢総覧および日本統計年鑑、環境 庁 の日 本の 大気 汚染 状況 、気象 庁月 報などを用い、日本の47 都道府県を対象に疫学的分析 が 行な われ た。 大気 汚染 度資料 以外 の統計資料は、1970 年から1990 年までの国勢調査年の 資 料が 、大 気汚 染度 資料 は1975 年以 後の資料が用いられた。都道府県別の肺癌の標準化死 亡 率は

1985

年度 モデ ル人 口を基 準人 口として人口10 万当りの死亡率として計算し、環境資 料 とし て二 酸化 窒素 およ び二酸 化硫 黄について、地域内一般大気測定局で測定されたデー タ をま とめ て年 平均 濃度 が求め られ た。車台数は各地域内車保有台数を住宅面積で割った も のが 用い られ 、気 象資 料は月 報か ら年平均気温などが用いられた。これらの資料に基づ い て肺 癌死 亡率 や環 境要 因の地 域差 および各要因の間の相関性などについて調べられると ともに面vitro 実験も行なわれた。

  

本 論 文 は

3

章に 分 け ら れ て い る 。 第

1

章 では 、日 本を 地理 学的 に3 部 分に 分け 、男 女の 肺 癌死 亡率 と環 境要 因お よび温 度と の関 係が 解析 され てい る。 第2 章では日本を女性の肺 癌 死 亡 率 の 多 寡 の 順 に3 群 に 分 け 、 環 境 要 因 お よ び温 度 と の 関 係 が 解 析 さ れ て い る 。 さ らに 、第

3

章で はべ ンゾ ピレ ンDNA 付加体の形成に及ぼす温度の影響がin vitro 実験で調 べられている。

  

都道 府県 別の 肺癌 標準 化死亡 率を みると、沖繩、大阪、福岡などが高く、長野、高知,

福島などで死亡率が低かった。この都道府県別標準化肺癌死亡率分布から、日本を北海道・

東 北 ブ ロ ック

(Bl)

、関 東・ 中部 ブロ ック

(B2)

、近畿 ・中 国・ 四国 ・九 州ブ ロッ ク(B3) に

分 け た 。 男女 全体 の肺 癌死 亡率 をみ ると 、Bl 地域が 人口

10

万 対19.9 、

B2

地 域が

18.1

、B3

地 域が

20.4

で、B2 に比べてBl 、B3 で、それぞれ、9.9 %、12.7 ワ。死亡率が高かった。女性

よ りも 男性 の方 が約

3.7

倍 死亡 率が 高か った が、 男女 全体お よぴ 男性では、B2 の肺癌死亡

率がBl 、B3 に比べて有意に低かった(p く0.05 およびp く0.01 )。女性の場合、男性のように

明らかな差はみられなかったが、B3 の肺癌死亡率はB2 に比較して有意に高かった(p く0.05) 。

B2

の 死 亡 率は 他の ブ口 ック に比 べて 常に 低く 、その 差は ほぽ 一定 であ った 。B3 に限 って

(4)

都 道 府 県別 肺 癌死 亡 率 と環 境 要因 と の 相関 をみ ると、男 性の肺癌死 亡率とタ バコ消費 量 (r=0.671、pく0.01)および気温(r=0.514、pく0.01)との間に有意な相関がみられたが、女性の 肺癌死亡率では大気中のN02 (r=0.476、pく0.05)、車台数(r=0.458、pく0.05)およびタバコ消 費 量(r=0.630、pく0.01)との間に有意な相関がみらた。一方、大気中のN02濃度および平均 気 温 を 合わ せ て肺癌 死亡率と の関係を みると、N02濃度単独 より影響カ が強くな った(男 性 の 肺 癌死 亡 率と は1.3倍、 女 性の 肺 癌 死亡 率とは1.2倍)。こ れはB3のみで 有意な関 係 カミみられた(F=10.320、pく0.05)。

  さ らに、女 性に限っ て肺癌死 亡率の多さ の順に3グ´レープに分け、大気汚染や温度の関 係を調べたが、やはり明らかに両者が肺癌死亡率に関係していた。

  伽vitro実 験で も 温度 が べ ンゾ ピ レンDNA付加体 の形成を 促進する ことが証明 された。

  以 上のよう に、本論 文では、 肺癌の成因 解明を目 的として 日本各都 道府県を対象に喫煙 以 外の因子 、特に大 気汚染と の関係と、 これに及 ぼす気温 の影響に ついて疫学的分析と加 vitro実 験が行な われた。 その結果 、気温が他 の環境因子とともに肺癌発生に密接な関係を 持っことが明らかにされた。

  申 請者の本 論文をま とめるに 至る精力的 な調査と膨大なデータの分析、さらに加vitro実 験 の適用と 、環境医 学の幅広 い範囲での 研究努カ は高く評 価できる 。大学院では、原著投 稿 論文を速 やかにま とめる実 カも培われ た。一方 、申請者 は後進大 学院生への助言・指導 に も熱心で あり、さ らに、帰 国後に役立 てるよう 、本申請 論文以外 の研究も熱心に行って お り、今後 、独立した研究者として高い能カを発揮して行くことが期待できる。以上から、

審 査員一同 は申請者 が博士( 地球環境科 学)の学 位に相当 する、充 分な資格を有するもの と判定した。

参照