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博 士 ( 獣 医 学 )富 岡 幸 子 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 獣 医 学 )富 岡 幸 子

学 位 論 文 題 名

神 経 膠 腫 誘 発 ト リ 自 血 病 ウ イ ル ス の 病原 性 な ら びに 分 子 生 物 学 的 性 状 の 解析

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  いわゆるトりの神経膠腫は散在性髄膜脳炎を背景に星状膠細胞が多発性結節性に増殖する疾患である.

本疾患はトリ自血病ウイルス(avian leukasis virus; ALV)によって誘発されることが示唆されている,ALV はプロ ウイル スとし て細胞DNAに組み 込まれ た後, そのJong teminal repeat (LIR)のプロモーター作用 によっ て宿主 のがん 遺伝子 の発現 を活性 化し細 胞をがん化させる, ALVが誘発する腫瘍の大半は造血器 系腫瘍であることから,神経膠腫誘発ALVの発がん機構解明はレトロウイルスの中枢神経系(centraJ ner‑

vous system; CNS)に 対する 病原性 の理解 に役立 つ.本 研究で はこの 神経膠腫 誘発ALVの性状 を明らか にする ため卵 黄嚢内 へのウ イルス 接種実 験によ って組織親和性を明らかにした,次に,ウイルスゲノム の全塩 基配列 の決定 とLTRの転 写活性 の解析 を行い 本ウイ ルスの 持つ神 経細胞への特異な腫瘍原性につ いて分 子生物 学的に 考察を 加えた .さら に,本 疾患で発現するがん遺伝子産物について免疫組織化学的 検討を行った.

  第I章 で は , 干渉 試 験 に より 神 経 膠 腫誘 発ALVがA亜 群 に属 す る こ とを 明ら かにし た.次に 本ウイ ルスの 組織親 和性と 病原性 を検索 するた めにC/O系specifc pathogene free (SPF)鶏の卵黄嚢内に本ALV を 接種 し た , 組織 学 的 に は50あ る いは100日 齢 の感 染 鶏12羽 中11羽(92%) に非化膿 性脳炎 が認め ら れ,これらのうち3羽(25ゲ。)に本疾患に特徴的な結節性脳病変が認められた.また,細胞質内基質封入 体およ び異型 心筋細 胞の増 殖を伴 う非化 膿性心 筋炎が12羽中9羽(759;)で認 められ た,免 疫組織 化学 的 にはALV抗 原 がCNSお よ び 心臓 を 含 む 全身 諸 臓器 から検 出され た,こ れら免 疫組織 化学的成 績はプ ロ ウイ ル スDNAおよ び ウ イ ルスRNAに 対 する 半 定 量 的PCRに よ っ て 裏付 け られた .以上 の成績 から,

本ウイ ルスは 全身諸 臓器に 広い親 和性を 示すに もかかわ らず,CNSにの み腫瘍を誘発することが示唆さ れた.

  第II章 では , 神 経 膠腫 誘 発ALVがCNSに 腫 瘍 を誘 発 す る 機序 を 解 明 する 糸 口 と して , ウ イ ルス ゲ ノム完 全長の ヌクレ オチド シーク エンス を決定 した.本ウイルスのゲノム全長はがん遺伝子を欠く典型 的なAlpharetrovirus,ALVの 構造に 一致し た,本 ウイル スのコ ード領 域のシークエンスはALVに近似し ていたが,LTRのU3,Rエレメントおよび31LTR上流の3.非翻訳領域く3|untr.anslatedregion;3.UrR)を 含 む非 コ ー ド 領域 は ト リ肉腫 ウイルス (汀10株や肉腫 ウイル スY73株 といった 欠損型 肉腫ウ イルス あ るいはAIv‐ と高い相 同性を 示した .これ らの成 績と3.UrRのシー クエシス解析から,本ウイルスが 複 数の 川 ゾ お よびASVか ら 構成 さ れ る りコ ン ピ ナント ウイル スである ことが 推察さ れた. また,L1R U3エ レ メ ン トを 他 の 缸Vと 比較す ると, 本ウイ ルスに はわずか な欠失 と点突 然変異 が認め られた ,さ らにCmoram‐ph飢icolaceぢltr孤sfer鷁e(C卸アッセイによって,本ウイルスL1Rのプロモーター活性は 鶏 胚線 維 芽 細 胞で はAI,v−A標準 株RAヽL1と 同等な のに対 し,ヒ ト星状 膠細胞 腫由来 細胞株U87MGで は有意 に低い ことが 明らか になっ た.以 上の成 績から, ウイル スのり コンピネーションならびにLTRの シーク エンス および そのプ ロモー ター活 性の差 が神経膠腫を誘発する特異な性状に関与する可能性が推 察された,

  川yに よるり ンパ性自 血病は 通常c一 挧ヅcへ の挿入突然変異によって誘発される.しかしAI´Vの挿入 部位す なわち 関連す るプ口 トがん 遺伝子 の種類 が異なった場合,表現型の異なる腫瘍が誘発される.そ こ で, 第m章 で は 本疾 患 で発現 してい るがん遺 伝子産 物を免 疫組織 化学的 に検索 した. その結 果.病 変を構成する星状膠細胞は疾患の初期から一貫して過剰にlくIR觸を発現していることが明らかになった.

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この 成 績か らK‑珊遺 伝子 の活性化が病変形成 初期から起こり本疾患の病理 発生に重要な役割を果たす ことが示唆された .ー方,リンパ性自血病と倣 異なりり砂cへのプロウイル スの挿入はレーザーマイク ロダ イ セク ショ ン法 では 検出されなかった. しかしながら,病巣内の星状 膠細胞はDMyc弱陽性を示し た こ と か ら ,w緲cが1【 −rロ ぷ と 協 調 作 用 し 腫 瘍 形 成 に 関 与 す る こ と が 推 察 さ れ た .   以上の成績をま とめると,本研究によって神 経膠腫誘発´uVは全身諸臓 器に広い親和性を示すにもか かわ ら ず, 主にCNSに腫 瘍を 誘発 す るこ とが 確認 され た .ま た, このCNSに対する腫瘍原性にはウイ ルスのりコンピネーション,プロウイルスL1Rのシークエンスおよびそのプロモーター活性の差,K ̄rロ|

遺伝子の活性化が 関与していることが推察され た,

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    梅村孝司 副 査    教授    小沼    操 副査   助教授   御領政信 副査   助教授   落合謙爾

学 位 論 文 題 名

神経膠腫誘発トリ白血病ウイルスの病原性ならびに      分子生物学的性状の解析

  いわゆる トりの神経膠腫は散在性髄膜脳炎を背景に星状膠細胞が多発性結節性に増殖する疾患であ る.本疾患はトリ自血病ウイルス(avian leukosis virus; ALV)によって誘発されることが示唆されてい る.ALVはプロ ウイルス として 細胞DNAに組み込 まれた 後,そのlong terminal repeat (LTR)のプロ モーター 作用に よって宿 主のが ん遺伝子 の発現を 活性化 し,細胞 をがん 化させる .ALVが誘発する 腫瘍の大 半は造 血器系腫 瘍であ ることから,神経膠腫誘発Al´Vの発がん機構解明はレトロウイルス の中枢神経系(central nervous system; CNS)に対する病原性の理解に役立っ.本研究では卵黄嚢内へ のウイル ス接種 実験によ って神 経膠腫誘発ALVの組織親和性を明らゐゝにした.次にウイルスゲノム の全塩基 配列の 決定とLTRの転 写活性の 解析を行 い分子 生物学的 に考察 を加えた ,さら に,本疾患 で発現するがん遺伝子産物について免疫組織化学的検討を行った.

  第I章で は , 干渉 試 験 によ り 神 経 膠腫 誘 発ALVがA亜群に 属するこ とを明ら かにし た.次に 本ウ イル ス の 組織 親 和 性と 病 原 性を 検 索 す るた め に 鶏卵 黄 嚢 内に 本ALVを 接種し た.感 染鶏の92%に 非化膿性 脳炎が 認められ ,これ らのうち25%には 本疾患 に特徴的 な結節 性脳病変 が認め られた.ま た,細胞 質内基 質封入体 および 異型心筋 細胞の増 殖を伴 う非化膿 性心筋 炎が感染 鶏の75%で認めら れ た ,ALV抗 原がCNSお よ び 心臓 を 含 む 全身 諸 臓 器か ら 検 出さ れ た .プ ロ ウ イル スDNAお よ び ウ イル スRNAの 半 定量 的PCRの 成 績 は免 疫 組 織化 学 的 成績 と 相 関し た . 以上の 成績か ら,本ウ イル スは 全 身 諸臓 器 に 広い 親 和 性を 示 す に もか かわ らず,CNSに腫 瘍を誘発 するこ とが示唆 された.

  第II章で は,ウイ ルスゲノ ムの全 塩基配列 を決定 した.本 ウイルスのゲノム全長はがん遺伝子を 欠く典型 的なAlpharetrovirus,ALVの構造 に一致 した.コ ード領 域のシー クエン スはALVに近似し ていたが,LTRおよび3|LTR上流の3|非翻訳領域(3' untranslated region;3|UTR)を含む非コード領域 は欠損型 肉腫ウ イルスと 高い相 同性を示 した,こ れらの 成績と3t UTRのシークエンス解析から,本 ウイルスが複数のAlpharetrovirusから構成されるりコンピナントウイルスであることが推察された.

他のAI´Vと比 較すると ,本ウ イルスのLTRには 欠失と 点突然変異が認められた.Chloram‑phenicol acetyltransferase (CAT)アッセイによって,本ウイルスLTRのプロモーター活性は鶏胚線維芽細胞で はALV‑A標 準 株RAV‑1と 同等なの に対し ,ヒト星 状膠細胞 腫由来 細胞株で は有意 に低いこ とが明 ら かになっ た.以 上の成績 から, ウイルス のりコン ピネー ションな らびにLTRのシ ークエ ンスおよび その プ 口 モー タ ー 活性 の 差 が神 経 膠 腫 を誘 発 す る特 異 な 性状 に 関 与す る可能 性が推 察された .

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  ALVに よる りン パ性 自血 病は 通 常c‑緲cへの 挿入 突然 変異 に よっ て誘 発さ れる .し かし,ALVの 挿 入部位すなわち関連するがん遺伝子の種類が異なった場合,表現型の異なる腫瘍が誘発される.そ こ で ,第m章 では 本疾 患で 発現 す るがん遺伝子産物を免疫組織化学的に検索した.その結 果,病変 を 構 成する星状膠細胞は疾患の初 期から一貫して過剰にK‐Rasを発現していることが明ら かになっ た .この成績からK‐朋s遺伝子の活性化が病変形成初期から起こり,本疾患の病理発生に重要な役割 を 果たすことが示唆された.一方,リンバ性自血病とは異なりc‐′りcへのプロウイルスの挿入はレー ザ ーマイクロダイセクション法では検出されなかった・

  以 上の 成績 をま とめ ると ,本 研究によって神経膠腫誘発AINは全身諸臓器に広い親和性 を示すに も か か わ ら ず , 主 にCNSに 腫瘍 を誘 発す るこ とが 示さ れた .ま た, このCNSに 対す る腫 瘍原 性に は ウ イルスのりコンピネーション ,プロウイルスI汀Rのシークエンスおよびそのプロモー ター活性 の 差,K‐mぷ遺伝子の活性化が関与する可能性が示された.よって,審査委員一同は富岡幸子氏が博 士 (獣医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するもの と認めた.

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参照

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