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博 士 ( 医 学 ) 菊 池 雄 三

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 菊 池 雄 三

学 位 論 文 題 名

食 道 癌 に 対 す る 1 日 多 分 割 照 射 法 の 臨 床 応 用 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

I.研究目的

  食道癌の放射線治療成績は不良であり,限られた症例での成績を除いて多くは5年生存10%以 下である。その原因の大半は,局所制御の失敗にあり,これまでにも改善を目的として抗癌剤,

腔内照射,温熟療法など様々な併用療法が試みられてきた。線量分割法もその一法であり1日多 分量照射法は,放射線生物学の理論的背景に基づいて臨床応用が試みられ,頭頚部腫瘍などで優 れた局所効果が認められている。この研究の目的は1日多分割照射法を食道癌に応用しその有用 性を検討することにあった。

n.研究方法並びに対象

  1.対 象 :1日 多 分 割照 射 法(MFD)に て1985年10月 よ り1990年7月 ま でに 治療 を行った60     、

    例 。 対 照 と し て1977年 よ り1989年 ま で の間 に1日1回 の 従 来法(CF)で 行 った64例。

  2. 治 療 方 法 :MFD群 ,1回 目 前 後 対 向 二門 に て2Gy,4〜6時 間 の間 隔 を おい て 腫 瘍に     限局して,斜め対向二門1.1,1. 15,1.2Gyの照射で,1日3.1,3.15ないし3.2Gy,総計     62. 63な いし64Gy/40f/5週のconcomitant boostを加味し たaccelerated hyperfrac‑

    tionationによる治療である。

  3.解 析 項 目:MFD法,CF群の累積 ,原病, 非局所 再発生存 率,急 性期,晩 期障害 にっい     て 解 析 。 ま た MFD群 の 1目 線 量 群 に っ い て 同 様 の 項 目 に っ い て 解 析 。   4.解析方法

    生 存 率 :Kaplan・Meier法 を 用 い , 有 意 差 の 検 定 はLogrank testに て 行 っ た 。     背 景 因 子 の 偏 り 並 び に 障 害 発 生 率 の 有 意 差 の 検 定 : ズ 検 定 を 用 い て 行 っ た 。     多 変 量 解 析 法 :Coxの 重 回 帰 型 生 命 表 で あ るSAS program中 ,PHGLM及 びFUNCAT   を 用 い て 行 っ た 。 変 量 と し て 血 液 , 生 化 学 検査 , 腫 瘍に っ い ての14因 子を 用 い た。

(2)

m.結果 及び考案

  1)1日多分割照射法の有用性につ いて

    @ 生 存 率 :MFD群 ,CF群 の5年 累 積 生 存 率 は 各 々14.1% ,8.8% とMFD群 が 幾 分 良     好なるも有意の差を認めなかヮた。しかし他病死を除いた5年原病生存率は,各々31.5%,

    13.9%とMFD群 が統 計学 的に 有意 に良 好 であ った (Pく0.05)。ま た多変量解析による     検討の結果,線量分割法の違い は有意の因子として選択されなかったが,有意の因子とし     て選択された臨床病期を用いて の補正生存率の比較では有意の傾向(P〓0. 0594)を示し     た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 生 存 に っ い て の 有 用 性 は 境 界 領 域 と 考 え ら れ た 。     @ 局 所 制 御 :MFD群 ,CF群 の5年 実 測 非 局 所 再 発 生 存 率tま ,各 々57.2% ,27.3%と     MFD群 が統 計学 的に 有意 に良 好で あっ た (PくO.001)。また多変量解析による検討にお     いて も臨 床 病期(Pく0.001),X・ 線型 分類(Pく0.05)と とも に分 割法の違いが有意の     因子 とし て 選択され(PくO. 005),単変量解析同様,MFDが局所制御に有用であること     を示した。また進行病期別では ,皿期で有意に良好であった。

    ◎障害:急性期障害は,放射性 肺炎,縦隔炎,食道炎とも両群に差を認めなかった。晩期     障 害 に っ い て , 放 射 性 食 道 狭 窄 がMFD群 で8/60例 (13.3% ) と ,CF群 のO/64例 に     比較して統計学的に有意の増加 を示した(Pく0. 025)。

  2)1日多分割法群の至適線量の検 討

    ぐD生存率:3. lGy,3.15並びに3.2Gy群の5年原病生存率は各々50.5%,.37.0%,24.1     %と三群の間で有意の差を認め なかった。多変量解析による検討でも臨床病期のみが唯一     の有意の因子として選択され(Pく0. 001),1目線量3.lGy〜3. 2Gyの間で線量の差は     生存に影響を及ぼさないことを 示した。

    @局所制御:三群にっいて,5年実測非生存再発生存率は各 々76.2%,60.8%,37.3%と     .1目線量に逆相関して3. lGy群に良好,3.2Gyで不良であった。このことは背景因子の     中でT・size,臨床病期で早期または良好な因子が3.lGy群 に多く含まれ,逆に3.2Gy群     に進行または局所制御不良な因 子が多く含まれたことによると考えられ,多変量解析によ     る検討においても1目線量の違いは有意の因子として選択さ れなかヮた。この結果生存率     同 様 ,3. 1〜3. 2Gyの 間で 線量 の差 は局 所制 御に 影響 を及 ぼさ ない こと を 示し た。

    ◎障害:急性期障害にっいて放 射性縦隔炎,肺炎とも3.1,3.15,3.2Gyと,線量の増加     とともに重症度の高い傾向を示 したが,重症な障害の発生は認められなかった。また放射     性 食 道 炎 は3. 15Gyに 多 い 傾 向 を 示 し た が , そ の 大 半 は 中 等 度 以 下 で あ っ た 。     晩期 障害 に っいて放射性食道狭窄の発生 率は,3. lGy,3.15Gy群で10%以下なのに対     ―61―

(3)

し,3. 2Gy群で4/10 (40%)と高率であった。このことよりも放射性食道狭窄の耐容 線量は63Gy/40f/5週程度と 考えら れた。

  以上生 存,局所 制御, 障害の点 よりも1日3. 15Gy,総計63Gy240f/5週が至適線量 と考え られた。

IV.結語

  食道癌 の新し い治療法 としてaccelerated hyperfractionationとconcomitant boostを 併 用 し た1日2回 の 多 分 割 照 射 法 を 考 案 し , 手 術 不 能 例60例 に 試 み 次 の 結 論 を 得 た 。   1)生存の有用性にっいて境界領域と考えられた。

  2)局所制 御の有 用性にっ いて統 計学的に 有意に 良好であ り,特にm期 群で顕著 であっ た。

  3)障害にっいて,急性期では重篤な障害の発生を認めなかったが,晩期では放射性食道狭窄     が有意に増加した。

  4)1回線 量三群 の比較で は,生 存,局所制御に差を認めないものの,食道狭窄は3. 2Gyに     多発し,耐容線量は,63Gy240f/5週と考えられた。

  5)本法は,食道癌の放射線治療として,生命の延長にっいては境界領域であるものの局所制     御 に優 れ , 至適 線 量63Gy/40f/5週 の 選 択に よ り 患者 のQOLを 高 める 有 用 な治 療法と     考えられた。

学位論文審査の要旨

I.研究目的

  食道癌の放射線治療成績は不良であり,限られた症例での成績を除いて多くは5年生存10%以 下である。その原因の大半は,局所制御の失敗にあり,これまでにも改善を目的として抗癌剤,

腔内照射,温熱療法など様々な併用療法が試みられてきた。線量分割法もその一法であり1日多 分量照射法は,放射線生物学の理論的背景に基づいて臨床応用が試みられ,頭頸部腫瘍などで優 れた局所効果が認められている。この研究の目的(ま1日多分割照射法を食道癌に応用しその有用

男 夫

和 征

坂 山

宮 犬

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

性を検討することにあった。

H.研究方法並びに対象

  1.対 象 :1日 多 分 割照 射 法(MFD)に て1985年10月 よ り1990年7月 ま でに 冶 療 を行ワ た60     例 。 対 照 と し て1977年 よ り1989年 ま で の 間に1日1回 の 従 来法(CF)で 行 っ た64例 。   2. 治 療 方 法 :MFD群 ,1回 目 前 後 対 向 二 門 に て2Gy,4〜6時 間 の間 隔 を おい て 腫 瘍 に     限局して,斜め対向二門1.1,1. 15,1.2Gyの照射で,1日3.1,3.15ないし3.2Gy,総計     62. 63な いし64Gy/40f/5週 のconcomitant boostを加味 したaccelerated hyperfrac‑

    tionationによる治療である。

  3.解 析 項 目:MFD群 ,CF群の累 積,原病 ,非局所 再発生 存率,急 性期, 晩期障害 にっい     て 解 析 。 ま た MFD群 の 1日 線 量 群 に っ い て 同 様 の 項 目 に っ い て 解 析 。   4.解析方法

    生 存 率 :Kaplan,Meier法 を 用 い , 有 意 差 の 検 定6まLogrank testに て 行 っ た 。     背 景 因 子 の 偏 り 並 び に 障 害 発 生 率 の 有 意 差 の 検 定 : ズ ゜ 検 定 を 用 い て 行 っ た 。     多 変 量 解 析 法 : Coxの 重 回 帰 型 生 命 表 で あ るSAS program中 ,PHGLM及 びFUN‑

  CATを 用 いて 行 っ た。 変 量 とし て 血 液, 生 化 学検 査 ,腫瘍に っいての14因子を 用いた。

m.結果及び考案

  1)1日多分割照射法の有用性について

    @ 生 存 率 :MFD群 ,CF群 の5年 累 積 生 存 率 は 各 々14.1% ,8.8% とMFD群が 幾 分 良     好なるも有意の差を認めなかった。しかし他病死を除いた5年原病生存率は,各々 31.5%,

    13.9%とMFD群 が 統 計学 的に有 意に良 好であっ た(Pく0.05)。 また多 変量解析 による     .検討の結果,線量分割法の違いは有意の因子として選択されなかったが,有意の因子とし     て選択さ れた臨床 病期を 用いての 補正生存率の比較では有意の傾向(P =0. 0594)を示し     た。

    @ 局 所 制 御 :MFD群 ,CF群 の5年 実 測非 局 所 再 発生 存 率tま , 各 々57.2% ,27.3% と     MFD群が 統計学的 に有意 に良好で あった (PくO.001)。 また多変量解析による検討にお     いても臨 床病期(Pく0.001),X線型分類(Pく0. 05)とともに分割法の違いが有意の因     子として 選択され (Pく0. 005), 単変量解 析同様,MFDが 局所制御に有用であることを     示 し た 。 ま た 進 行 病 期 別 で は , m期 で 有 意 に 良 好 で あ っ た(PくO.005)。     ◎障害:急性期障害は,放射性肺炎,縦隔洞炎,食道炎とも両群の発生率に差を認めなかっ     ―63―

(5)

    た 。 晩期 障 害に っいて, 放射性 食道狭窄 がMFD群で8/60例(13.3%)と ,CF群の0/     64例に比較して統計学的に有意の増加を示した(PくO.025)。

2)1日多分割法群の至適線量の検討

@生 存率:3. lGy,3.15並 びに3.2Gy群の5年原病 生存率は 各々50.5% ,37.O%,24.1     %と三群の間で有意の差を認めなかった。多変量解析による検討でも臨床病期のみが唯一     の有意の因子として選択され(Pく0. 001),1日線量3.lGy〜3. 2Gyの間で線量の差は   生存に影響を及ぼさないことを示した。

@局 所制御: 三群に っいて,5年実 測非生 存再発生 存率は 各々76.2%,60.8%,37.3%と     1日線量に逆相関して3. lGy群に良好,3.2Gyで不良であった。このことは背景因子の   T,stage, 臨床病 期,X線型分類 などで 早期また は局所 制御良好 な因子 が3.lGy群に多     く含まれ,逆に3. 2Gy群に進行または不良な因子が多く含まれたことによると考えられ,

    多変量解析による検討においても1目線量の違いは有意の因子として選択されなかった。

    この結果生存率同様,3.1〜3.2Gyの間で線量の差は局所制御に影響を及ぼさないことを   示した。

◎障 害:急性 期障害 にっいて 放射性縦 隔洞炎 ,肺炎とも3.1,3.15,3.2Gyと,線量の増   加とともに重症度の高い傾向を示したが,重篤な障害の発生は認められなかった。また放   射 性 食 道 炎 は3. 15Gyに 多 い 傾 向 を 示 し た が ,そ の 大 半は 中 等 度以 下 で あ った 。     晩期障害にっいて放射性食道狭窄の発生率は,3. lGy,3.15Gy群で10%以下なのに対     し,3. 2Gy群で4/10 (40%)と高率であった。このことよりも放射性食道狭窄の耐容   線量は63Gy/40f/5週程度と考えられた。

    生 存 ,局 所 制 御, 晩 期 障害 の 点 より ,1日多 分 割 照 射法 の 至 適線 量 は63Gy/40f/5   週と考えられた。

IV.結語

  食 道癌の新 しい治 療法とし てaccelerated hyperfractionationとconcomitant boostを併 用 し た1日2回 の 多 分 割 照 射 法 を 考 案 し , 手 術 不 能 例60例 に 試 み 次 の 結 論 を 得 た 。   1)局所 制御の 有用性に っいて統 計学的 に有意に 良好で あり,特にm期群で顕著であった。

  2)障害にっいて,急性期では重篤な障害の発生を認めなかったが,晩期では放射性食道狭窄     が有意に増加した。

  3)1目線量3.1,3.15,3.2Gy各群の比較では,生存,局所制御に差を認めないものの,合     併 症の点か ら3. 15Gyが 至適と 考えられ ,従っ て,耐容 線量は,63Gy/40f/5週と考 え

(6)

    られた。

  以上のことから本法は,食道癌の放射線治療として,生命の延長にっいては有意の傾向を示す も , 特 に 局 所 制 御 に 優 れ ,63Gy/40f/5週 の選 択に より 患者 のQOLを高 める 有用 な治 療法 と考えられた。

  本研究の価値判定:食道癌放射線治療の局所制御の改善を得,1日多分割照射法の有用性を確 立し,1日線量別での晩 期障害の耐容線量を解明し,1日多分割照射法による適切な線量分割法 を提言した。よって学位論文に値すると考える。

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参照

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