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博 士 ( 医 学 ) 蒲 池 浩 文

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 蒲 池 浩 文

学 位 論 文 題 名

リ コ ン ビ ナ ン ト ヒ ト 肝 細 胞 増 殖 因 子 の ラ ッ ト 初 代 培 養 肝 細 胞 機 能 に 及 ぽ す 効 果

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  肝 再 生 を 促 す 液 性 因 子 の な か で 肝 細 胞 増 殖 因 子 (Hepatocyte Growth Factor 以 下HGF)は最 も 強 カ な肝 再 生 促進 作 用 を有 し 、 その 構 造 、分 子 生 物学 的 作 用機 序が 解明 されつ っある。 一方、 リコンピ ナントヒ トHGF (rhHGF)が生産され、HGFの生理学的 機能 の研究 が進めら れてお り、HGFは肝再生 のみな らず、他 の上皮 系細胞の 増殖を 促進 し、 ある種 の癌細胞 の増殖 を抑制す ることが 判明し ている。また、細胞運動促進作用、

器官 形成作 用など多 様な機 能も有す ることが 明らか になった 。

  しか しHGFの 肝 細 胞機 能 に 対す る 影 響と し て は、 肝細胞 が特異 的に産生 する蛋 白の ひ と つで あ る アル プ ミ ンの合 成能促進 作用が 解明され ている のみであ り、他の 肝細胞 代謝 機能に ついての 検討は ない。そ こで今回 、ラツ 卜初代培 養肝細 胞を用い 、HGFが肝 細胞 の糖新 生能、尿 素合成 能に及ば す効果、 ならび に培養形 態、細 胞内ATP量の変 化を 検討 した。

  材料と方法

1)ラット肝細胞の分離、精製

  体重200〜250g (6〜7週齢) の雄性SpragueーDawleyラ ットを用いた。ネンプタール麻 酔下に 開腹、 門脈にカ ニュレ ーションし、in situで37℃、0.5ruNI EGTA添加Ca2+free HANKS−HEPES bufferで脱血し、0.05%コラゲナーゼ溶液にて濯流した。肝臓を摘出後、

十分に 細切し 、濾過後 得られ た粗分散 細胞浮遊 液に、50 Xgの遠 心操作 を4〜5回繰 り返 し 、単 離 肝 実質 細 胞 を精 製 した。ト リパンプ ルー排 泄試験よ り、生 存率85%以 上の肝 細胞を実験に用いた。

2)肝細胞培養方法

  単離さ れた肝 実質細胞 は、10% ウシ胎児血清、インスリン(10‑8M)、デキサメサゾン

(10‑。M)、を加えたWilliams E(WE)培地に分散し、O.03%I型コラーゲンでコーテイン グ した プ ラ ステ イ ク ディ シ ュ 上 に2X l05 cells/0.2ml/cmzの 細胞密度 で播種 した。

37℃ 、20%02、5%C02の 条 件 下に2時 間培 養 し 、肝 細 胞が接 着後、培 地をイン スリン

(10‑。M)、デキサメサゾン(10‑。M)、グルカゴン(10‑8M)を含み、増殖因子として、それ

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ぞれ、thHGFを1、5、10ng/ml、ヒト上皮性増殖因子(hEGF) 10ng/ml添加したWE培地に交 換 し た 。 以 上 の 培 地 は 培 養1、3日 後 に 交 換 し 、 培 養 を5日 聞 継 続 し た 。   増殖因子濃度の条件で以 下の4群に分けた。

Iヨ≠: HGFlOng/ml添加ヨ≠(n 7) n君≠:HGF5ng/ml添加君≠(n 7) III君≠:HGFlng/ml添加ヨ≠(n 7) 1群:EGFlOng/ml添加群(n 7)

  検討項目

1) 培養 肝細 胞の 形態 学的 変化 :各 群の 培養 肝細 胞の 細胞 形 態の 維持 、脱落細胞の有 無等を位相差頭 微鏡下.にて連日、観察、比較した。

2) 総蛋 白質 量: 各デ ィシ ュに1N水 酸化 ナ卜 リウ ムをO.5ml加え 、細 胞を溶解し総蛋 白質量を測定し た。

3) 糖新 生能 :Hanks液に2mMア ラニ ンと2utld乳酸を 添加した溶液中で90分間肝細胞を 培養し、肝細胞 で合成された糖量を測定した。

4) 尿素 合成 能:Hanks液 に5mM塩化 ナト リウ ムを 添加 した 溶 液中 で90分間肝細胞を培 養し、肝細胞で 合成された尿素量を測定した。

5) 細胞 内ATP量 :各 ディ シュ に3%過 塩素 酸をIml加え 、セ ル スク レ― パーにて回収、

ポルテックス処 理後、細胞内ATP量を測定し た。

  2、 3、4、5) は 培 養 1、 2、3、5日 後 に 測 定 し 、3、4、5) の 結 果 は 単 位 蛋白質量あたり の量で示した。

  実 験 の 結 果 はmean士SDで 表 し 、 検 定 は 、 各群 間の 比較 にはone―factor ANOVAと Scheffe s―F.Pairedtーtestを、群内の比較にはWilcoxon Singed Rank testを用いて 行なった。危険 率5%以下(p<0.05)を有意差ありと判定した。

  結  果

1) 培 養 肝 細 胞 の 形 態 学 的 変 化 : 各 群 とも 培 養3日後 まで は安 定し た単 層 を形 成し た が 、5日 後に は細 胞の 変性 、脱 落等 を認 めた 。そ の傾 向はI、H、m群 に顕著であった。

2) 総 蛋 白 質量 : 培養1日 後にI、H、m群 はO.376土0.092,O.354土O.115,O.367 土0.102 (mg/dish)で3日後まで維持されたが、5日後にはO.238土O.057,0.235土0.065, O.238土0.061と 有意に(P<O.05)に低下した。またW群は1日後に0.412土O.078、5日後 に0.377土0.092と5日間 維持 され 、I、u、m群よ り高 い傾 向を 示し 、5日 後に は有 意 に高値を示した。

3)糖 新 生能 :培養1日後にI、II、m群は32.621土4.162,33.822土10.329,31.968 土7.321(mg/90min/mg protein)であったが、1V群は17.95土4.95であり、W群に比ペ 有 意に 高値 を示 した。2日後にはI、矼、m、1V群は11.122土3.801,11.363士4.57, 11. 519土 6. 429, 9. 15土 2. 413と 1日 後 に 比 ペ 有 意 に 低 値 を 示 し た 。 4)尿 素 合成 能:IV群は培養1日後に6.523土3.735 (ng/90min/mg proteln)、5日後に 5.784土1.307と培 養中 維持 され た 。I、n、m群 は1日 後に7.655土2.763,7.876土

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5.705,7.359土3.549で あったが、5日後に3.595土1.116,4.682土2.981,4.603土3.173 と有意に低下した。

5) 細 胞 内ATP量 :W群 は 培 養1日 後 に2631. 75土797.3(CPM/mg protein) 、2、5日 後に は3218. 57土1216. 23,3409. 38土1362. 06と1日後 に比 ベ 有意 に上昇した。I、II、皿 群は1日後に2622. 43土913. 42,2740. 71土938. 25,2656. 57土875. 17であった が、5日後に 1773. 71土449. 88,1966. 86土443. 33,1986. 43土486. 26と有意に低下した。また1V群の5日 後に比較して有意に低値を 示した。

  考  察

  EGFは 肝 細 胞 増 殖 作 用 の ほ か 、 糖 新 生 、 グ リ コ ー ゲ ン 合 成 の 促 進 、 ア ミ ノ 酸 代 謝 な ど 肝 代 謝 に も 関 与 す る と さ れ て い る 。HGFは 尿 素 合 成 能 に 影 響 を 与 え な か っ た が 、 培 養 早 期 に 糖 新 生 を 促 進 す る こ と が 判 明 し 、 そ の 作 用 は 濃 度 に 影 響 さ れ な か っ た 。   EGFの 糖 新 生 促 進 作 用 は 細 胞 内Ca2+上 昇 に よ る と さ れ る が 、HGFに も 細 胞 内Caz+流 入 作 用 が 報 告 さ れ て お り 、 同 様 の 作 用 機 序 が 関 与 し て い る こ と が 推 察 さ れ た 。   HGFに は 細 胞 運 動 促 進 作 用 が あ る が 、 今 回 の 検 討 で も 総 蛋 白 質 量 は 、EGF群 に 比 ペ 培 養 早 期 か ら 低 値 を 示 す 傾 向 が あ り 、HGFは 培 養 肝 細 胞 の 接 着 に は 抑 制 的 に 働 く と 考 え ら れ た 。 ま た 、 培 養5日 後 に はHGF群 の 総 蛋 白 質 量 はEGFに 比 ペ 有 意 に 低 値 を 示 し 、 位 相 差 頭 微 鏡 で の 観 察 で も HGF群 で は 細 胞 の 変 性 、 脱 落 が 著 明 で あ っ た 。   こ れ と 時 期 を 同 じ く し て 、HGF群 で は 細 胞 内ATP量 の 減 少 を 認 め た 。 こ れ は 、HGFの 長 期 暴 露 は 、 肝 細 胞 のATPの 産 生 と 消 費 の 均 衡 を 崩 し 、ATPの 減 少 と 細 胞 死 を 誘 発 す る 可 能 性 を 示 唆 し て い る と 考 え ら れ た 。 従 っ て 、 細 胞 長 期 培 養 で はHGFは 有 利 に 作 用 し な い と 考 え ら れ た 。

  著 者 ら は 培 養 肝 細 胞 を 利 用 し た 人 工 肝 臓 を 開 発 、 研 究 し て い る が 、 劇 症 肝 炎 患 者 の 血 清HGF値 は 高 値 を 示 す こ と が 多 く 、 培 養 肝 細 胞 の 維 持 に つ い て 臨 床 応 用 上 検 討 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ た 。

  結  語

  HGF存 在 下 で 、 ラ ッ ト 肝 細 胞 培 養 を 行 い 、 そ の 機 能 を 検 討 し た 結 果 以 下 の こ と が 判 明 し た 。

  1: 糖 新 生 能 は 培 養 早 期 に 促 進 さ れ 、HGF濃 度 に は 影 響 さ れ な か っ た 。   2: 尿 素 合 成 能 はHGFに よ り 促 進 さ れ な か っ た 。

  3:HGFは 細 胞 接 着 を 若 干 抑 制 し 、 長 期 培 養 で 培 養 肝 細 胞 の 死 と 、 そ れ に 時 期 を 同 じ く す る 細 胞 内ATP量 の 低 下 が 観 察 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   内野純一 副査   教授   安田慶秀 副査   教授   加藤紘之

学 位 論 文 題 名

リコンビナン卜ヒト肝細胞増殖因子の ラット初代培養肝細胞機 能に及ぼす効果

リコンビナ ントヒト肝細 胞増殖因子の ラット初代培養肝細胞機能に 及ばす効果

   肝 再 生 を 促 す 液 性 因 子 の な か で 肝 細 胞 増 殖 因 子 ( Hepatocyte Growth Factor 以下 HGF )は 強カな肝再生 能を有し、そ の構造、分子 生 物学 的 作用 機 序の 解明 が 進んでいる。ま た近年リコン ビナントヒ トHGF (thHGF) の生成 され、HGF の生理学的機能の研究が進んでいる。

HGF は肝 再 生の み なら ず他 の 上皮 系 細胞 の 増殖 の促 進 、あ る 種の癌 細 胞の 増 殖の 抑 制の 他、 細 胞運動促進作用 、器官形成作 用など多様 な機能 も有すること が明らかになっ た。しかし、 HGF の 肝細胞機能に 対 する 影 響と し ては 、肝 細 胞が特異的に産 生する蛋白の ひとつであ る アル ブ ミン の 合成 能促 進 作用などが報告 されているに すぎず、他 の肝細胞代謝機能については不明である。

   著者はラ ット初代培養 肝細胞を用い 、 HGF がその糖新生 能、尿素合 成能、 ならびに培養 形態、細胞内ATP 量 に及ばす効果の 変化を検討し た。

   材料と方 法: 6 〜7 週齢の 雄性Sp rague −Dawley ラットを用い、門脈

に カニ ュ レー シ ョン し、 EGTA を 含む 37 ℃ の Ca2+free HANKS ― HEPES

buffer で 脱 血し 、次 に 、コ ラゲナーゼ 溶液で潅流、 消化された肝 臓

を 細 切 、 濾 過 後 、 遠 心 し 、 単 離 肝 実 質 細 胞 を 精 製 し た 。

   単離された肝実質細胞を、10% ウシ胎児血清、インスリン(10‑8M )、

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デキサメサゾン(10‑ 。M )を加えたWilliams E(WE )培地に分散し、I 型 コ ラ ー ゲ ン に て コ ー テ ィ ング し たプ ラス テ ィク デ ィシ ュ 上に 2x 10s cells/0 .2ml /cm2 の細胞密度で播種した。2 時間培養し肝細胞が 接着後、培地をインスリン(10‑8M )、デキサヌサゾン(10‑ 。M )、グル カゴン(10 ‐8M )を含み、増殖因子として、それぞれthHGF を1 、5 、10 ng/ml 、ヒト上皮性増殖因子 (hEGF )10ng/ml 添加したWE 培地に交換し、

培養を5 日間継続した。

   増殖因子濃度の条件で以下の4 群に分けた。

I 君≠: HGFlOng /ml 添加君≠(n=7 ) II 群:HGF5ng /ml 添加群(n=7 )

IH ヨギ: HGFlng /ml 添加君≠(n=7 ) IV 群:EGFlOng /ml 添加群(n=7 )

   検 討項 目 とし て 、位 相差顕微鏡 下に培養肝細 胞を連日観察 し、総 蛋白 質 量、 糖新 生 能、 尿 素合 成 能、 細 胞内 ATP 量 を 培養 1 、2 、3 、 5 日後に測定した。

   結果:位相差 顕微鏡での観察 では、各群と も培養3 日後までは安定 した単層を形 成したが、5 日 後には細胞の変 性、脱落等を 認め、その 傾 向 は I 、 u 、 ni 群 に 顕 著 で あ った 。 また 総 蛋白 質 量は , IV 群は 培 養5 日 後 まで 維 持さ れ たが 、 I 、II 、ni 群で は 5 日 後に 有意 に低下し た。 糖 新生 量は 、 培養 1 日 後 にI 、 n 、 ロI 群は 、 I 群に 比 ベ有意に 高 値を示し、検討した範囲ではHGF 濃度に依存性を認めなかった。また、

2 日後 以 降は 、 各群 と も1 日後に比 ペ有意に低値 を示し群間に 差を認 めなかった。 一方、尿素合 成能は、培養 3 日 後までは各群 で差を認め なか っ たが 、培 養 5 日 後に は 、IV 群は 1 日 後の 値 を維 持 したが、 I 、 II 、皿群は低値 を示し、IV 群に比 ペ有意に低下 した。細胞内ATP 量は IV 群は培養期間 中維持され、2 、 5 日後には1 日後に 比ペ有意に上昇し た 。 一 方 、 I 、 II 、 m 群 は 3 日後 ま で維 持 され たが 、 5 日 後に 有意 に 低 下 し 、 IV ′ 群 の 5 日 後 に 比 較 し て 有 意 に 低 値 を 示 し た 。    以上より、HGF 存在 下で、ラット 培養肝細胞の糖 新生能は培養早期 に促 進 され 、そ の 効果 は 検討 し たHGF 濃度 で は影 響 され ない ことが 判明した。一 方、尿素合成 能については 、HGF に促進作用を認めなぃ ことが明かとをった。また、HGF は、培養後期には培養肝細胞の死と、

細胞内ATP 量の低下 を誘発し、肝 細胞のェネル ギーバランスに障害を

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与えることが判明した。

   著者は培養肝細胞を利用した人工肝臓の開発を目ざしているが、

劇症肝炎患者の血清 HGF 値は高値を示すことが多いので、培養肝細胞 の 機 能 維 持 当 た っ て 臨 床 応 用 上 問 題 と な る と 考 え ら れ た 。    審査に当たって、安田教授より肝細胞培養における増殖因子の役 割と、人工肝臓の臨床応用の可能性について、加藤教授より、劇症 肝炎とHGF の関わりついて、また、小山教授より培養肝細胞増殖と細 胞外基質との関係についてなどの質疑があったが、申請者はおおむ ね妥当な回答をおこなった。

  HGF が培養肝細胞の糖新生能を亢進させること、また、長期培養に

おいてはHGF が肝細胞のエネルギーバランスに障害を及ぼし肝細胞

死を誘発することを示した報告はなく、HGF の肝細胞機能ならびに培

養に及ばす影響について、新たな知見を加えたものであり、学位授

与に値するものと考えられる。

参照

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