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博 士 ( 医 学 ) 白 川 春 美

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 白 川 春 美

学 位 論 文 題 名

肝 細 胞 癌 に お け る C 型 肝 炎 ウ イ ル ス 遺 伝 子 型 の 解 析

Analysis of Hepatitis C Virus( H CV) Genotypes in  Hepatocellular Carcinoma

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    1.目的

  C型 肝 炎ウ イ ル ス(HCV)は、 現 在の と こ ろ輸 血 後あ る い は特 発 性のnonAnonB肝炎の 大き な 原因 で あ るこ と が知 ら れ てい る。HCVに よる急性 肝炎の約50% は引き続 き慢性肝 炎に 進展し、 そのうちか なりの症 例が肝硬 変に、さ らに肝癌 を発症す る。我が国ではB型肝炎ウイ ルス 感 染の な い 肝細 胞 癌の94%の 症 例にHCV感染 が存在す ることが明 らかにな った。そ れに 対し 他 の地 域 、 たと え ば米 国 な どで は、HCVの 感染率は 同様に高い のに対し 、肝細胞 癌は比 較的 少な い傾向に ある。現 在のとこ ろ肝細胞 癌の病理 学的発癌機 構は不明 な点が多 く、未だ 解明 され ていない が、この ことは、 宿主およ び遺伝的 背景、感染 様式、ウ イルスの 遺伝子型 な ど の ウ イ ル ス 側 の 要 因 が 関 与 し てい る もの と 思 われ る 。肝 細 胞 癌発 症 症 例に お いて は genotype lbの 占 める 率 が 高い の では ないかと の報告が あるが、 いずれも母 集団が少 なく、

解析 の煩 雑さもあ りいまだ 明確な結 論が得ら れていな い。本研究 では、今 迄ウイル スの変異 など のた め増幅が 困難であ った非構 造領域(nonstructuraI:NS5) で、比較 的高率に増 幅でき る プ ラ イ マ ― を 作 製 し 、reverse transcriptlonpolymeraSechainreaCtionRTPCR) 法 に て ウ イ ル ス 遺 伝 子 を 増 幅 し 、 そ の 配 列 を 決 定 し た 。 得 ら れ た 結 果 をphyIogenetic analysisの 手 段 によ っ て 肝癌 に 関連 するHCVウ イルス型 について 、今までに 報告され ている 他の地域 あるいは各 国の臨床 家による 集積結果 と比較検 討した。

    lI.方法

1. 対 象 症 例19931月 か ら12月 ま での 間 に北 海 道 大学 医 学 部第 ー 外科 で 肝 細胞 癌 の診 断 で 入 院 し肝 切 除 を行 っ た症 例 の うちHCV抗体 陽 性 であ っ た11例 を対 象 と した 。 また 、19943月 か ら10月 ま で の 間 にMemoriaISoanKetteringCanCerCenterNeWYOrk) に 肝 癌 の診断で 入院した12症 例の血清 を5 ̄側非 翻訳領域(5 ̄untranslatedregion5UTR)によ るRTPCRで 検 索 しHCV陽 性 で あ る こ と が 判 明 し た 計4例 を 対 象 と し て 解 析 し た 。 2RNAの 分 離RNAは 、 血 清 お よ び 切 除 肝 よ り 抽 出 しpelIetと し て 回 収 。75% エタ ノ ―ル に て2回 洗 浄 後 真 空 乾 燥 し 、 最 終 的 に251の 滅菌 し 核 酸酵 素 を除 去 し た水 に 溶解 し た 。 3RTPCRによ るCDNAの合成

抽 出 さ れ た 251の 丶 NA溶 液 の う ち 51RTPCRを 用 い cDNAを 合 成 し た 。 45UTRNS5及 びE2/NS1超 可 変 領 域 のPCRに よ る 増 幅HCVRNAの 逆 転 写 反 応 に よ り 得 ら れ たCDNAを 特 異 的 なprimerを 用 い 、nestedPCRを 施 行 した 。 最終 的 なPCR産 物 (101) はethidiumbromideを 含 む1% のagarOSegel上 で 電 気 泳 動 し 、UVfluorescenceのも とで判定 した。

(2)

5

  Nucleotide sequence

によ る解 析

PCR

産 物を 電気泳 動し 、DNA 精 製キ ッ卜

(Wizard PCR Preps

,Promega) により精製し40 ルI の核酸酵素を除去した水に溶解した。精製後の

PCR

産物 をさ らに

PCR

Script TM SK(+)cloning Kit (STRATAGENE)

によルクローニング し た 後、 精 製 し 、 エ タ ノ ― ル 沈 殿 して え ら れ た

900ng

plasmid DNA

M13primer

及 び

KS primer (Operon Technologies)

を 用 い 、

AppliedBiosystems Model 373 DNA Stretch Sequencer (Perkin Elmer)

により塩基配列を決定した。

6

  Phylogenetic analysis

に よる

HCV genotype

の判定得られた

HCV

遺伝子断片をすで に 報 告 さ れ て い る

sequence

と 共 に

Saitou and Nei

1987)

に よ る

neigbor‑OInlng method

Clusta

Vprogram

を用 いて 解析し た。 計18 例の

UTR

及び 急性肝 炎症 例、 教室 症例の癌部、非癌部を含む計15 例のNS5 領域の増幅産物をすでに報告されているUTR20 例、

NS539

例と比較検討した。

    

川.結果

RT

PCR

法により増幅された

HCV

5

UTR

のシークエンスを従来の報告から確立されている 分子系統樹にあてはめて比較解析したところ、肝癌9 症例はtype1 に属し、残り2 例はtype

2

に 属し ていた。また、4 例の米国の肝癌症例はいずれもtype1 であった。NS5 領域に関し ては、変異の存在を考慮して作製したprimer を使用することにより比較的効率のよい増幅産 物を得ることができた。5 .

UTR

にくらべると効率は低いが、日本の症例で11 例中7 例、米国 の症例で4 例中1 例が増幅可能であった。NS5 によるデ一夕は5 UTR による分析と良く相関し、

NS5

領 域が 増 幅 可 能 で あ っ た 症 例 は、

1

例 を 除 き

genotypelb

に細 分類す るこ とが でき た。 以上の より、肝細胞癌症例において、HCV のタイプはtype1 ないし

genotypelb

が優位 であると思われた。E2/NS1 の超可変領域の増幅は極めて困難であったが、米国の急性肝炎 及び慢性肝炎の増幅が可能となるprimer を新たに設定し全症例に試みたところ、急性肝炎例 と慢性肝炎例では増幅されたが、急性例ではprototype に比べいくつかの塩基置換がみられ、

慢性肝炎例ではさらに多くの塩基置換がみられた。しかし肝癌症例では全例増幅されなかっ た。癌部と非癌部から抽出したHCV について5  ̄

UTR

のシークエンスを比較したが、塩基配列 に変化は認められなかった。NS5 領域では両組織を採取できた6 例中、両者ともに増幅され た5 例で 、わ ずか の塩基 配列 の違 いが認 められたが、homoIogy が高いことがわかった。

    lV

.考察

最近、ウイルスのgenotype が肝疾患の悪性化及び肝癌への進展に関連する重要な因子の1 つ であることが示唆されているが本研究において米国と日本共にHCV 肝炎に併発した肝細胞癌 症 例 では 、

type1

な いし はgenotypelb が 優位 であ ること が判 明し た。近 年、 約47 %の 肝癌合併C 型肝炎症例がgenotypelb に感染しているとされているとの報告があるが、今回 の研 究では 、genotypelb の感染率はさらに高値を示した。以上より肝癌の発症及び進展 には

HCVgenotypelb

が強 く関 与し ている ことは確実と思われる。E2/NS1 超可変領域は、

ウイルスのsu 幵aceglycoprotein をコードしており、ウイルスの中和抗体の存在が示唆され

ているが、今回の研究では肝癌患者からの肝組織 血清いずれからも増幅されなかった。こ

の原因は不明であるが、急性あるいは慢性肝炎では増幅されたこと、急性例、慢性例を比較

すると、慢性例に塩基の変異が多いことなどを考慮すると、長期にわたる感染がウイルスの

塩基配列の変化を誘発し駆逐されなかったとも考えられる。悪性化の機構はいまだ解明され

ていないが、ある特定のウイルスの長期感染がより重篤な肝疾患あるいは持続的な炎症を誘

発し肝硬変に移行する可能性がある。本研究により、ウイルスのgenotype による分類がHCV

感染患者の診断、治療に重要であることが示唆された。HCVgenotypelb による感染が判明

した際には、肝細胞癌の発症がっよく予測されるので、血清AFP の測定、超音波などにより

(3)

定 期 的 な 検 索 を 行 い 、 長 期 に わ た る 経 過 観 察 が 必 要 で あ る と 思 わ れ た 。

    V

.結語

1

5 UTR

の分子系統 樹による検 索では、日本の肝細胞癌症例11 例中9 例がtype1 、2 例が

type2

であり、米国症例は4 例ともにtype1 であった。

2

.NS5 領域は本邦症例7 例、米国症例

1

例のみが増幅され、分子系統樹による検索では、すべ てgenotype lb であった。

3

.E2/NSl 領域に関しては、肝細胞癌症例に対しては全例、`増幅されなかった。このことは、

HCV

感染が長期化した症例ではウイルスの塩基配列に変異が蓄積されていることが示唆され た。

以上よりgenotype1 あるいは

genotype lb

は肝細胞癌症例において優勢なウイルス型の可能

性が示唆 され、ウイルスのgenotype による分類が

HCV

感染患者の診断、治療上、童要であ

る。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

肝細 胞癌 に おけ る C 型肝 炎ウ イル ス遺 伝子 型の 解析

Analysis of Hepatitis C Virus( HCV)Genotypes in Hepatocellular Carcinoma.

C型 肝 炎 ウ イ ル ス は 、 輸 血 後 あ る ぃ は 特 発 性 のnonAnon‑B肝 炎 の 主 要 な 原 因 で あ る こ と が 知 ら れ て お り 、HCVに よ る 急 性 肝 炎 の 約50V6は 引 き 続 き 慢 性 肝 炎 さ ら に 肝 硬 変 、 肝 癌 を 発 症 す る 。 我 が 国 で はHBAg陰 性 の 肝 細 胞 癌 の94%の 症 例 にHCV感 染 が 存 在 す る が 、 現 在 の と こ ろ 肝 細 胞 癌 の 病 理 学 的 発 癌 機 構 は 不 明 な 点 が 多 く 、 未 だ 解 明 さ れ て い な い 。   本 研 究 で は 、19931月 か ら12月 ま で の 間 に 北 海 道 大 学 医 学 部 第 一 外 科 で 肝 細 胞 癌 の 診 断 で 入 院 し 肝 切 除 を 行 っ た 症 例 の う ちHCV抗 体 陽 性 、 か つHCV5 側 非 翻 訳 領 域 のRT‑PCRHCV陽 性 で あ る こ と が 判 明 し た 11例 お よ び19943月 か ら10月 ま で の 間 にMemorialSloan Kettering Cancer Centerに 肝 癌 の 診 断 で 入 院 し た12症 例 の 血 清 を5 UTRによ るRT ‑ PCRで 検 索 しHCV陽 性 で あ る こ と が 判 明 し た 計4例 を 対 象 と し て 解 析 し た 。 こ れ ら の 肝 細 胞 癌 症 例 に お い て 、5 UTRE2/NSlを 増 幅 、 さ ら にNS5領 域 を 比 較 的 高 率 に 増 幅 で き るdegenerat ed primerを 作 製 し 、RT ‑ PCR法 に て ウ イ ル ス 遺 伝 子 を 増 幅 し 、 直 接 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 分 子 系 統 樹 に よ り 解 析 し 、 諸 家 に よ るC型 慢 性 肝 炎 、HCV抗 体 陽 性 症 例 の 集 積 結 果 と 比 較 し 、 肝 細 胞 癌 に 関 わ るHCVの 遺 伝 子 型 に つ い て 検 討 し た 。

  そ の 結 果 、 本 邦 肝 癌9症 例 はty'pe1に 属 し 、 残 り2例 はtype2に 属 し て い た 。 ま た 、4例 の 米 国 の 肝 癌 症 例 は ぃ ず れ もtypelで あ っ た 。NS5領 域 に 関 し て は 、 本 邦 例 で11例 中7例 、 米 国 の 症 例 で4例 中1例 が 増 幅 可 能 で あ り 、5 UTRに よ る 分 析 と 良 く 相 関 し 、NS5領 域 が 増 幅 可 能 で あ っ た 症 例 は 、1例 を 除 きgenotype  lbに 細 分 類 す る こ と が で き た 。 以 上 よ り 、 C型 肝 炎 関 連 肝 癌 症 例 で は 、HCVtypelな ぃ しgenotype lbが 優 位 で あ る と 思 わ れ た 。 ま た 、 肝 癌 症 例 に お い て 、E2/NSlの 超 可 変 領 域 は全 例増 幅さ れな かっ た。5 UTRの塩 基配 列は 癌部 、 非 癌 部 共 に 変 化 を 認 め な か っ た 。NS5領 域 で は 両 組 織 を 採 取 で き た6例 中 、 両 者 と も に 増 幅 さ れ た5例 で 、 わ ず か の 塩 基 配 列 の 違 い が 認 め ら れ た 。

  本 研 究 に よ っ てHCV肝 炎 に 併 発 し た 肝 細 胞 癌 症 例 で は 米 国 と 日 本 共 に 、typelな ぃ し は genotypelbが 優 位 で あ る こ と が 判 明 し た 。 わ が 国 で はC型 慢 性 肝 炎 の60か ら70% がlb型 と い わ れ て い る が 、 対 象 を 肝 癌 に す る と よ りlbの 占 め る 率 は 高 値 を 示 し た 。 以 上 よ り 肝 病 変 の 悪 化 お よ び 肝 癌 の 発 症 あ る い は 進 展 に はHCV genotype lbが 強 く 関 与 し て い る も の と 思 わ れ る 。E2/NSl超 可 変 領 域 に は 、 ウ イ ル ス の 中 和 抗 体 の 存 在 が 示 唆 さ れ て い る が 、 今 回 の 研 究 で は 肝 癌 患 者 か ら の 肝 組 織 、 血 清 い ず れ か ら も 増 幅 さ れ な か っ た 。 こ の 原 因 は 不 明 で あ る が 、 急 性 あ る い は 慢 性 肝 炎 で は 増 幅 さ れ た こ と 、 急 性 例 、 慢 性 例 を 比 較 す る と 、 慢 性 例

(5)

に 塩基 の変 異が 多い こと などを 考慮 する と、 長期にわたる感染がウイルスの塩基配列の変 化を誘発し駆逐されなかったとも考えられる。悪性化の機構はぃまだ解明されていないが、

あ るgenotype 、 ある いは 変異株 の長 期感 染が より重篤な肝疾患あるいは持続的な炎症を誘 発 し肝 硬変 に移 行す る可 能性が ある と思 われ る。本研究により、ウイルスのgenotype によ る 分類 がHCV 感染 患者 の診 断、 治療 に重 要で ある こと が示唆 され た。 こと にHCV genotype

lb

はイ ンタ ーフ ェロンによる治療に抵抗するため、C 型肝炎患者にたいしては肝病変の予測 を すべ く積 極的 に遺伝子型を同定しHCV genotype lb による感染が判明した際には、肝細胞 癌 の発 症を 念頭 において、血清AFP の測定、超音波などにより定期的な検索を行い、長期に わたる経過観察が必要であると思われた。.

  

審査 にあ たり 、浅 香教 授より 、血 清、 肝組 織における癌部、非癌部のウイルス塩基配列

の 差異 、米 国症 例の民族的背景、米国とわが国のHCV 遺伝子型の比率、各遺伝子型における

イ ンタ ーフ ウロ ンの 有効 性に関 して の質 問が あり、また発癌に関与していると考えられる

HCV

の領 域に つい て意見を求められた。次いで長嶋教授よりHCVquasispecies の問題、NS5 領

域 に関 する

PCR

条 件、 胆管 細胞 癌と

HCV

に 関す る最近の知見についての質問があり、申請者

は 、血 清と 肝組 織ではquasispe cies のpopulation に差異は認められなぃこと、本邦の慢性

肝炎例でHCV genotype lb が約70 %であるのに対し、米国では20 ‑ 30ph であるが民族的背景が

複 雑で あり 比較 は困難であること、胆管細胞癌及ぴ肝細胞癌、胆管細胞癌合併例でHCV 抗体

陽 性率 が高 いこ とが 指摘 されて おり 、今 後検 討が必要と思われること、また長期感染の成

立 およ び変 異の 蓄積の観点よりe nvelope 領域が発癌に関与している可能性が高いと思われ

る など 独自 の意 見を まじ えなが ら明 解に 回答 した。審査員一同は、これらの成果を高く評

価 し、 また 研究 者と して 誠実か つ熱 心で あり 、大学院過程における研鑽や単位取得なども

併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け るの に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判定 した 。

参照

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