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博 士 ( 医 学) 射 場 美 智代

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学) 射 場 美 智代

     学位論文題名

Neuronal Activity Representing Visuospatial IVInemonic     Processes Associated with Target Selection     in the IvIonkey Dorsolateral Prefrontal Cortex

(サル前頭前皮質背外側部においてターゲット選択と結びついた      視 空 間 性 記 憶 過 程 を 再 現 す る ニ ュ ー ロ ン 活 動 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

背景

我 々はし ばしば雑 多な妨 害刺激の 中から 意味のあるターゲットを見っけ出し(ターゲット選択)、

それらを一時的に保持する(短期記憶/ワーキングメモリ)。しかし脳内の短期記憶には限られた容 量 がある こと、ま た、ワ ーキング メモり は注意と記憶過程の両方に関与すると考えられていること か ら、タ ーゲット 選択と 結びつい た短期 記憶システム過程があると考えるのは理にかなっている。

と ころが 、このこ とは細 胞レベル では全 くアプローチされてこなかった。このようなシステムに関 与 する( 特に視空 間情報 に関して )脳領 域として、これまで視空間ワーキングメモりに重要な役割 を 担うこ とが示さ れてき た前頭前 皮質が 考えられる。実際、この領域はターゲット選択にも関与す る ことが 示されて おり、 また、タ ーゲッ ト選択に関与する前頭眼野や頭頂皮質と強い神経結合を持 っ ている 。これら のこと から本研 究では 「前頭前皮質には視空間情報に関してのターゲット選択と 結 びっい た記憶過 程を再 現するニ ューロ ン群が存在する」という仮説を立て、この仮説を検証する た めにサ ルに眼球 運動を 用いた遅 延視覚 探索課題と遅延反応課題を訓練し、課題遂行中のサルの前 頭前皮質背外側部から単―ニューロン活動を記録・解析した。

方法

萱 堕 壁 筌 :2頭 の オ ス の マ カ ク ザ ル (Macaca mulatta,10kg; Macaca fuscata,9kg)。 行動薦餌:眼球運動遅延視覚探索(Oculomotor delayed visual search: ODVS)課題と眼球運動遅延反応 (Oculomotor delayed‑response: ODR)課題。ODVS課題ではサルが画面中央の注視点を注視することで 課 題が開始 。2秒 問の注 視後周辺 視野に1個の ターゲッ ト(赤 クロス)と5個の妨害刺激(赤バーま た は緑クロ ス)が1秒間 呈示され る(手 がかり期)。3秒間の遅延期の後、注視点が消えこれがGo信 号 となルサ ルはター ゲット があった 位置に 向かって 記憶誘 導性のサ ッケード をする と正答となり 報 酬がもら える。ODR課題は手がかり期にターゲット刺激(赤クロス)のみが呈示されること以外は ODVS課 題 と 同様 の 時 間経 過 で 行っ た 。ODVS課題 は 手がか り期に妨 害刺激 の中から ターゲ ット刺

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激 を 見 っ け 出 す 過 程 、 す な わ ち タ ー ゲ ッ ト 選 択 を 必 要 と し 、 遅 延 期 に は そ の 情 報 を 保 持 す る 必 要 が あ る の で 記 憶 を 必 要 と す る 。 し か し 、ODR課 題 は タ ー ゲ ッ ト の み が 呈 示 さ れ る の で タ ー ゲ ッ ト 選 択は 必要 と しな いが 遅延 期に はODVS課題 と同 様に 記 憶を 必要 とす る 。

三 三 ニ 呈 と 箔 鬱 艫 ヨ : 録 と7ニ2盤 : サ ル が こ れ ら の 課 題 を ラ ン ダ ム に 遂 行 中 に エ ル ジ ロ イ 電 極 を 用 い た 細 胞 外 記 録 を お こ な っ た 。 本 研 究 で は タ ー ゲ ッ ト 選 択 と 記 憶 を 対 象 と し た の で 、 手 が か り 期 と 遅 延 期 の 活 動 に 着 目 し て 解 析 を 行 っ た 。 手 が か り 期 の 前 の1秒 間 を コ ン ト ロ ー ル 期 と し 、 こ の 期 間 よ り 手 が か り 期 で 有 意 に 大 き な 活 動(Mann‑Whitney U‑test,Pく0.05)を 少 なく とも ーつ のタ ー ゲッ ト 方向 に関 し て示 した もの をcue‑related activityと した 。ま た、 遅 延期 の発 火頻 度が コ ン卜 口ー ル期よ りも 有意 に 高い もの をdelay‑period activityと した。さらに、delay‑period activityがタ ーゲット方向 で有 意に 異 なっ た場 合(ANOVA,Pく0.05)、そのニューロンはdirectional delay‑period activityを示した と み な し た 。 さ ら に 、two‑way ANOVA(課 題 条 件 と 方 向 ) を 適 用 し 、 課 題 条 件 の 効 果 を 調 べ た 。

結果

合 計728個 の ニ ュ ー ロ ン 活 動 を 記 録 し た 。 こ れ ら の う ち522個 が 課 題 に 関 連 し た 有 意 な 活 動 変 化 を 示 した 。そ れら のう ち 、97個はcue‑related activityを 示 し、411個はdelay‑period activityを示し た。

411個 のdelay‑period activityの うち 、252個 はタ ー ゲッ トの 方向 に よっ て有 意に 異な る 活動 を示 した (directional delay‑period activity)。Cue‑related activityを示したニューロンはその活動の大きさが、ODR 課 題 よ り もODVS課 題 で 有 意 に 大 き い 場 合 が 多 く 、 こ れ ら97個 を ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン で 見 た と き に は この こと がさ らに 明 らか であ った 。 一方 、252個 のdirectional delay‑period activityを示したニ ュー ロ ン の う ち 、112個 は 主 にODVS課 題 に お い て 有 意 なdelay‑period activityを 示 し た ( こ れ ら を VS‑neuron と 分 類 し た ) 。 残 り の140個 はODVS課 題 とODR課 題 の ど ち ら に お い て も 同 様 の directional delay‑period activityを 示す ニュ ー ロン でこ れら を DR‑neuron と した 。ODR課題の みで directional delay‑period activityを 示す ニュ ー ロン は見 られ な かっ た。VS‑neuronとDR‑neuronの 空間 チ ュ ー ニ ン グ をガ ウス 関数 で調 べ た所 、こ れら のニ ュ ーロ ン群 は同 様 の空 .間 チュ ーニ ン グを 示し た。

ま た、delay‑period activityの時 間経 過(開 始潜時、ピーク時間)も両グ ループで同様だった。さら に、

こ れ ら の ニ ュ ー ロ ン 群 を ポ ピ ュ レ ー シ ョ ン レ ベ ル で 解 析 し た と こ ろ 、DR‑neuronで はdelay‑period activityがODVSとODR課 題 で 同 様 で あ っ た が 、VS‑neuronに お い て は 、ODVS課 題 で の み 持 続 的 なdelay‑period activityを 示 す こ と が よ り 明 ら か に な っ た 。 ま た 、 妨 害 刺 激 の 属 性 を 変 え て も 、 delay‑period activityは変化しなかった。

考 察

本 研 究 で はODVS課 題 とODR課 題 遂 行 中 の サ ル の 前 頭 前 皮 質 背 外 側 部 か ら 単 一 ニ ュ ー ロ ン 活 動 を 記 録 ・ 解 析 し 、 主 にdelay‑period activityを 調 べ た 。 そ し て 、DR‑neuronとVS‑neuronの2つの ニュ ー ロ ン 群 を 見 っ け た 。 今 回 見 っ か っ たDR‑neuronは 従 来 の 研 究 で 報 告 さ れ た 視 空 間 記 憶 過 程 を 再 現 す る ニ ュ ー ロ ン 群 と 同 様 と 考 え ら れ る 。VS‑neuronが 本 研 究 の 主 な 発 見 な の で 、 こ れ に 関 し て 考 察 す る 。VS‑neuronはODVS課 題 でdirectional delay‑period activityを 示 した ニュ ーロ ンで あ るが 、記 憶 誘 導 サ ッ ケ ー ド の 潜 時 や 正 答 率 がODVS課 題 とODR課 題 間 で 差 が な か っ た こ と 、 さ ら に こ れ ら の 課 題 は ラ ン ダ ム に 行 わ れ て い た こ と か ら 全 体 的 な 覚 醒 や 課 題 の 難 し さ が こ の 活 動 に 反 映 し た こ

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とはありそうにない。妨害刺激の種類を変えた場合でも同様のdelay‑period activityが観察されたこ とか ら、 視覚 刺 激の 物理 的特性自体がVS‑neuronに影響したこともなさそうである。また、時間的 プロ ファ イル や 空間 チュ ーニ ング がDR‑neuronの ものと同様であった。以上 のことからVS‑neuron はDR‑neuronと 同様 に遅 延期の問にターゲットの 視空間位置をコードする、すなわち、視空間記憶 過程 に関 与す る と考 えら れる。しかし、VS‑neuronは手がかり期にターゲット選択によって選ばれ た視空間情報(ターゲット位置)を 保持するので、これらのニューロン群はDR‑neuronよりも、より 特異化した役割、っまり、「選択結 果の保持」を担うと結論できる。さらに、ターゲット選 択は選 択的注意のー形態であると考えられ ているので、VS‑neuronは attention‑memory system を形成し てい ると 考え ら れる 。時 間経 過や 空間 チュ ーニ ング がDR‑neuronと 同様 であ ったことから、この attention‑memory systemは従来報告されてきたようなより一般的な general visuospatial memory system とは 並列 的に 背 外側 前頭 前皮 質内 に再 現さ れて いる こと が示 唆さ れる 。 そし て、 この attention‑memory systemは様々な妨害情報からターゲットを見 っけ出して保持しなければならない 時、すなわち、注意の要求が高い時 に使われるだろう。前頭前皮質背外側部の担うワーキン グメモ りの主な役割は、どのような状況下 でも適切な行動を導くことにあるので、このattention‑memory

systemはワーキングメモりの中心的 なシステムかもしれなぃ。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Neuronal Activity Representing Visuospatial R/Inemonic     Processes Associated with Target Selection     in the rvIonkey Dorsolateral PrefontalCOrteX

(サル前頭前皮質背外側部においてターゲット選択と結ぴついた      視 空 間 性 記 憶 過 程 を 再 現 す る ニ ュ ー ロ ン 活 動 )

  本研究は 前頭前 皮質背外 側部に ターゲッ ト選択 の結果を 保持する 特別の 記憶シス テムが 存在す ることを発見したものである。

  我々は雑 多な情 報の中か らター ゲットを 選択しそれを一時的にメモりとして保持し、次の行動を 導くとい う一連 の認知機 能を働 かせてい る。この一連の機能に関与する脳領域として前頭前皮質が 考えられ るが、 これまで ターゲ ット選択 とメモりの関係に関して前頭前皮質では研究がされてこな かった。 本研究 では「前 頭前皮 質には視 空間情報に関してのターゲット選択と結びっいた記憶過程 を再現す るニュ ーロン群 が存在 する」と いう仮説を立て、この問題にニューロンレベルでアプロー チした。2頭のサルを被験体とし、眼球運動を用いた遅延視覚探索(Oculomotor Delayed Visual Search:

ODVS)課 題 と 遅延 反 応(Oculomotor Delayed‑Response: ODR)課 題を訓練 し、こ れらの課 題を遂 行 中に前頭 前皮質 背外側部 から単 一ニュー ロン活動を記録・解析した。97個のニューロンが手がかり 刺激 に 関 連す る 活 動を 示 し たが 、 そ の 活動 の 大 きさ はODR課 題 中よ り もODVS課題 中で より大き くなった 。252個のニュ ーロン が方向性 のある遅 延期活 動を示し 、これ らのニュ ーロン は2つ のニ ユーロン 群、VS‑neuron (ODVS課題 のみで有 意な方 向性のあ る遅延 期活動を示したニューロン群)

とDR‑neuron (ODVS、ODRの両方の 課題で有 意な方 向性のあ る遅延 期活動を 示した ニューロ ン群)

に分類で きた。 そしてこ れらの ニューロ ン群は同様の空間チューニング(チューニング幅とべスト ダイレク ション )を示し 、遅延 期活動の 時間経過(開始潜時とピーク時間)、さらに全体的な活動 パターン も類似 していた 。これ らの結果 から、前頭前皮質背外側部が視空間性のターゲット選択と 結びつい た記憶 システム(Attention‑memory system)とより一般的な記憶システム(general memory system)を 含 み 、 さ ら に そ れ ら が 並 列 的 に 存 在 す る こ と を 示 唆 さ れ る と 結 論 し た 。   口頭発表 後、副 査の渡邉 教授か ら、ニュ ーロン活動はエラー試行ではどのように変化するのか、

彦 之

雅 俊

島 邉

渡 澤

授 授

教 教

査 査

主 副

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チューニン グは変わるのか、空間情報以外についてはどうか、伝達 物質などとの関係はどうか、に っいての質 問があった。ついで、主査の福島教授から、二っの記憶 システムが直列的に存在する可 能性、これ らのニューロン群の皮質内分布についての質問があった 。認知行動学分野の田中講師か ら 刺激 属性 によ る違 いの定量的解析は行っていな いのか、VS‑neuronの遅延期 活動が反映するもの は何かにつ いての質問があった。最後に副査の澤口教授から本研究 が医学に貢献する意義に関して の質問があ った。いずれの質問に対しても、申請者は自らの実験経 験および先行研究による知識に 基づぃて、 概ね適切な回答を行った。

  こ の 論文 は、 ヒト と近 い 認知 機能 を持 っサ ルで 、タ ーゲ ット 選択 と結 びつ いた 記 憶シ ステ ム (Attention‑memory system)が存在することを世界で初めて明らかにしたこと、さらに、前頭前皮質の 担う高次脳 機能の理解をより深めたことで高く評価された。

  審査員一 同は、これらの成果や申請者の研鑚を高く評価し、申請 者が博士(医学)の学位を受け るのに十分 な資格を有するものと判定した。

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参照

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