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論文 あと施工アンカーの耐振動性に関する実験的検討

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全文

(1)

論文 あと施工アンカーの耐振動性に関する実験的検討

井口 重信*1・菅原 寛文*2・倉岡 希樹*2

要旨:あと施工アンカーを打設した

RC

スラブ板を上下および水平に加振することで,あと施工アンカーの 耐振動性を実験的に確認した。鉛直加振で

4,780

万回,水平加振で

6,550

万回の加振試験を実施したが,打音 および触診ではあと施工アンカーやナットの緩みは確認されなかった。一方,加速度振幅では鉛直加振で

1.17

倍,水平加振で

2.36

倍まで増大するものが見られた。固有周波数では鉛直加振で

5%,水平加振で 40%程度

低下するものが見られた。

キーワード:あと施工アンカー,振動,衝撃振動試験

1.

はじめに

あと施工アンカーの耐久性については,近年,各箇所 において研究が進められているが,耐振動性に関する知 見は未だに少ない 1)。鉄道構造物を例にとってみても,

図-1に示すように列車風圧や列車振動等の影響を受け る付帯構造物は数多くあり,それらを固定するために用 いられているあと施工アンカーには常に振動が加わって いる。これらのあと施工アンカーに振動によって作用す る力は,あと施工アンカーの引抜き耐力やせん断耐力と 比較すると非常に小さいものと思われるが,実構造物で は緩みや脱落を生じるアンカーが散見される。しかし,

あと施工アンカーの耐振動性を確認するための試験方法 や判断指標などは少なく,過去の経験から使用の可否を 決めているのがほとんどである。そこで,あと施工アン カーの耐振動特性を把握するため,模型試験体を用いた 実験的な検討を行ったので以下に述べる。

2.

試験概要

2.1

試験体

(a)プレキャスト高欄支柱 (b)排水樋

(c)プレキャスト擁壁,手すり (d)ケーブル

図-1 振動を受けるあと施工アンカーの例(検討対象)

1000

1000

250

50補強鉄筋

(D10)

PC鋼棒

200200 G

B A

H

N-1

200 200

Q-2

L D

E

N-2

Q-3 M

C

I

F

J Q-1

N-3

振動台 K

(a)全体一般図

加速度 センサー

鋼板 あと施工アンカー 接着剤

ナット

100削孔長L

削孔径d

振動台

(b) あと施工アンカー部詳細図 図-2 試験体略図

*1

東日本旅客鉄道(株) 上信越工事事務所

(正会員)

*2

東日本旅客鉄道(株) 構造技術センター

(正会員)

コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.2,2017

(2)

図-2 に試験体の概要を示す。あと施工アンカーを打 設 し た 試 験 体 は , 幅

1000mm

× 長 さ

1000mm

× 厚 さ

250mm

RC

スラブ板で,水平加振用と鉛直加振用に

2

体を製作した。試験体上面に互いに干渉しないように離 隔を設けて

A~Q-3

19

本のあと施工アンカーを打設し た。実物はあと施工アンカーにより固定する対象物によ りあと施工アンカーの打設向きは異なるが,本試験では 穿孔および打設ともに下向きに統一して実施した。打設 したあと施工アンカーのアンカー筋上部には,慣性力の 負荷となる厚さ

10mm,辺長 60mm

の正方形状で,重量 約

270g

の鋼板を

RC

スラブ板上面から

100mm

の位置に 取り付けた。鋼板の重量は,慣性力を静的に引抜あるい はせん断方向に載荷した場合にアンカー筋(SNB7)が降 伏しない範囲として設定した。鋼板は上下のダブルナッ トで行い,ナットの締結時にはナットとアンカー筋の境 界部に接着剤を塗布して緩み止めを行った。

表-1 に試験で使用したあと施工アンカーの諸元を示 す。あと施工アンカーの選定には,振動に弱いとされて いる金属系拡張アンカーを中心に,金属系拡底アンカー,

接着系アンカー,および金属系でも耐荷機構の異なるア ンカーなどから代表的なものを選定した。製品

N-1~N-3

および製品

Q-1~Q-3

は同一諸元のアンカーで,本試験 方法の結果の再現性を確認する目的で

3

本ずつ用意した。

あと施工アンカーの諸元はアンカー筋径を

M12

とした ほかは,削孔径

d,削孔長 L

などの諸元は各製品の推奨 値に合わせた。また,金属系のアンカーについてはトル ク等により耐荷機構を発するものもあるため,アンカー 筋根本部分をナット止めとし,接着系アンカーの製品

K,

L,M

についてはナット止めはしなかった。

2.2

加振試験

あと施工アンカーを打設した試験体を,

9

本の

PC

鋼棒 およびナットを用いて振動台に固定した。その後,各ア ンカーに取り付けた鋼板端部および試験体端部に加速度 センサーを設置し加振時の加速度を逐次測定した。

加振試験は水平,鉛直の

2

方向で,表-2に示す加振 パターンで行った。図-1に示すような用途のあと施工 アンカーに作用する振動の加速度および周期についての 知見がないことから,今回は,試験装置で載荷可能な範 表-1 あと施工アンカー諸元

A 芯棒打込み式 12.7 62 ナット止め

B 締付け方式

(コーンナット方式) 18 70 ナット止め

C 締付け方式

(テーパーボルト式) 16.5 83 ナット止め

D スリーブ打込み式 18 65 ナット止め

E スリーブ打込み式 18 56 ナット止め

F ウェッジ式 12 95 ナット止め

G 拡底 22 120 ナット止め

H 拡底 22.5 100.8 ナット止め

I 拡底 22 107 ナット止め

J 拡底 18 68 ナット止め

K

有機(ガラス管、

不飽和ポリエステル 樹脂)

14.5 72 ナット無し

L 無機(紙袋、

セメントモルタル) 16 108 ナット無し

M 無機(紙袋、

セメントモルタル) 14.5 100 ナット無し

N-1

N-2

N-3

Q-1

Q-2

Q-3

※削孔径dおよび削孔長は設計値

記号 形式 略図

分類

削孔径 d (mm)

削孔長 L (mm)

アンカー 根本

その他

(樹脂充填なし)

その他

(樹脂充填あり)

21.5

21.5

120 ナット止め

120 ナット止め

芯棒 本体

拡張部 ナット

スリーブ コーンナット 拡張部

スリーブ 拡張部 ナット

テーパー部 テ ー パ ー 付 スリーブ

ボルト

テーパー部

拡張部

テーパー付ボルト ナット ウェッジ テーパー部

スリーブ テ ー パ ー 付 ボルト

キャップ 樹脂

硬化剤 ガラス管

骨材・樹脂 ガラス管

ボルト テーパー部薄板

ボルト テーパー部薄板

充填剤(有機)

表-2 加振パターン

載荷 順序

加速度 (G)

周波数 (Hz)

回数 (×105回)

載荷 順序

加速度 (G)

周波数 (Hz)

回数 (×105回)

1 10 80 1 10 80

2 30 200 2 30 200

3 5 40 3 50 1,000

4 50 1,000

4 30 200

5 10 80 5 10 1,000

6 30 300 6 70 700

7 50 1,000 7 50 1,000

8 10 80 8 30 200

9 30 300 9 10 100

10 70 700 10 70 70

11 50 1,000 11 50 1,000

4,780 12 6 50 1,000

6,550 衝撃応答試験(6G後)

合計回数 合計回数

衝撃応答試験(4G後)

衝撃応答試験(加振前)

衝撃応答試験(2G後)

4

加振パターン(水平)

衝撃応答試験(加振前)

1

衝撃応答試験(1G後)

2

衝撃応答試験(2G後)

4 1

衝撃応答試験(1G後)

2

加振パターン(鉛直)

衝撃応答試験(4G後)

図-3 衝撃振動試験の状況(鉛直加振時)

(3)

囲から加速度については

1G~6G,周波数については 5Hz

~70Hzの間で加振した。加振は加速度制御で行い正弦波 にて最大加速度,周波数を設定して行った。各加振ケー スが終わるごとに触診および打音で各アンカー筋に取り 付けたナットの緩みを確認し,緩みがあれば締め直して 次の加振ケースに進むこととした。なお,実際にはいず れのアンカーにおいても加振中にナットの緩みは確認さ れなかったため締め直し等は行わなかった。

2.3

衝撃振動試験

加振試験の前および加振加速度が変わるごとに,アン カー筋上部をハンマーで打撃し衝撃振動試験を実施した。

図-3に衝撃振動試験の実施状況を示す。鉛直加振試験 の試験体については鉛直方向に,水平加振試験の試験体 については水平方向に打撃した。衝撃振動試験は各

3

回 実施しあと施工アンカーの健全性を把握した。

3.

試験結果

3.1

加振試験

図-4に水平加振

4G 30Hz

における製品

G

の加速度波 形を示す。図-4(左)は加振初期の

1~300

回時,図-

4(右)は加振終盤の 1,980,180~1,980480

回時の加速度波 形である。試験体の加振加速度は

39.2m/sec

2(4G)であ

るが,アンカー筋天端では最大で

65.6m/sec

2の加速度と なることから増幅されていることが分かる。また,加振 初期には最大で約

131m/sec

2の加速度振幅であったが,

加振終盤では約

172m/sec

2と約

1.3

倍に大きくなっており,

加振による影響が現れた。

加速度データの取得は

10

分ごとに

10

秒間ずつ行った ため,

10

秒間における加速度の最大値,最小値および平 均値の推移を図-5に示す。製品

L

では加振中に加速度 の最大値,最小値および平均値の変動がほとんどなかっ たが,製品

G

では加振開始から

1.0×10

6回の間で加速度 振幅が徐々に増大していった。平均値についてはほとん ど変動がなかった。

各アンカーの加速度振幅の最大値を試験体の加速度 振幅の最大値で除して算出した加速度応答倍率は各アン カーの諸元により異なるため,最初の加振である

1G 10Hz

加振時の加速度応答倍率を

1.0

としたときの各アン カーの加速度応答倍率の比を図-6に示す。

鉛直加振では,多くの製品において,4G 30Hz加振の 時が同一製品中で加速度応答倍率が最大となっており,

大きく変化が現れており,加振による負荷が大きかった ものと思われる。また,製品同士で比較すると,金属系 拡底の製品

G,I,金属系その他の Q-2,Q-3

などが加速 度応答倍率の変化が小さく,加振による影響が小さかっ Min -64.988

Max 65.621

-120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120

0 2 4 6 8 10

加速度(m/sec2)

時間(sec)

1300

Max 87.354

Min -84.611 -120

-90 -60 -30 0 30 60 90 120

0 2 4 6 8 10

加速度(m/sec2)

時間(sec)

1,980,180~1,980,480回

図-4 加速度波形の例(水平加振

4G 30Hz

製品

G)

-120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120

0.0E+00 5.0E+05 1.0E+06 1.5E+06 2.0E+06 加速度(m/sec2)

回数 水平 4G 30Hz(L)

Max Min

Ave -120

-90 -60 -30 0 30 60 90 120

0.0E+00 5.0E+05 1.0E+06 1.5E+06 2.0E+06 加速度(m/sec2)

回数 水平 4G 30Hz(G)

Max Min Ave

図-5 加速度の最大値・最低値・平均値推移(水平加振 4G 30Hz 左:製品

L,右:製品 G)

130.6m/sec2 172.0m/sec2

(4)

たものと推察される。

水平加振では,製品ごとに加速度応答倍率が最大とな る加振加速度や周期に,目立った特徴は見られなかった。

また,製品同士では,接着系の製品

L

が他の製品よりも 加速度応答倍率が低い傾向にあり,金属系拡底の製品

G,

金属系その他の製品Nなどで高い傾向のものが多かった。

同一諸元で試験を行った製品

N-1~N-3,Q-1~Q-3

の 差を見ると,鉛直加振では製品

N-1~N-3

についてはい ずれも同じような加速度応答倍率となったが,製品

Q-1

~Q-3では製品

Q-1

のみ傾向が異なった。一方,水平加 振ではいずれも,同じ傾向とは言い難く,個体差が現れ たものと思われる。

鉛直加振と水平加振で比較すると,鉛直加振では最大 でも

1.17

程度なのに対し,水平加振では

2.36

程度まで大

きくなっており,水平加振のほうが変化が大きく現れた。

3.2

衝撃振動試験

図-7に製品

C

および製品

Q-1

の水平加振前後におけ る衝撃振動試験(1回目)の加速度波形を示す,なお,Y 軸の値は各波形で加速度の絶対値が最大の加速度を

1.0

としたときの加速度の比を表している。製品

C

では,加 振前よりも加振後のほうが周期が伸び,減衰が小さくな る波形となった。一方,製品

Q-1

では,周期はほとんど 変化がなく減衰のみ小さくなったが,減衰の減少率も製 品

C

に比較して小さかった。このことから,製品

C

は加 振の影響によりアンカー先端の固着部あるいは試験体天 端位置での締め付けナットの緩みが生じていたものと推 測され,製品

Q-1

についてはそれが生じていなかったも

1.17

0.90 0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20

A B C D E F G H I J K L M N-1 N-2 N-3 Q-1 Q-2 Q-3

1G 10Hz加速度応答倍率を 1.0の加速度応答倍率

製品種別

鉛直 1G 10Hz

1G 30Hz 2G 30Hz 2G 10Hz 2G 70Hz 2G 50Hz 4G 30Hz 4G 10Hz 4G 70Hz 4G 50Hz

2.36

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

A B C D E F G H I J K L M N-1 N-2 N-3 Q-1 Q-2 Q-3

1G 10Hz加速度応答倍率を 1.0の加速度応答倍率比

製品種別

水平 1G 10Hz

1G 30Hz 2G 30Hz 2G 10Hz 2G 70Hz 2G 50Hz 4G 30Hz 4G 10Hz 4G 70Hz 4G 50Hz

図-6 初回加振(1G 10Hz)加振時の加速度応答倍率を

1.0

としたときの加速度応答倍率比(上:鉛直,下:水平)

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

最大加速度を1.0

時刻(sec)

製品C

C1 加振前 C1 6G加振後

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

最大加速度を1.0

時刻(sec)

製品Q-1

Q1 加振前 Q1 6G加振後

図-7 水平加振前後における衝撃振動試験の加速度波形の例(左:製品

C,右:製品 Q-1)

(5)

のと思われる。

図-8 に水平加振前後での図-7 の方法と同様に求め た加速度比の時刻歴をフーリエ変換したスペクトル波形 を示す。製品

C

では,加振加速度が増えるごとにスペク トルの絶対値が最大となる周波数(以下,固有周波数)

が小さくなり,

4G

から

6G

へ変わった際が最も減少した が,製品

Q-1

では固有周波数の変化はほとんどなかった。

また,スペクトルの絶対値は,製品

C

よりも製品

Q-1

の ほうが大きくなった。

図-9 に各加振後の固有周波数の推移を示す。ここで の固有周波数は,各アンカーにおける

3

回の衝撃振動試 験結果の平均値とした。鉛直加振では,金属系拡張の製

C

5%程度減少したほか,同じく金属系拡張の製品

A, B, D

で加振ステップごとに固有周波数が減少してい

く結果となった。水平加振では,金属系拡張の製品

C

に おいて固有周波数の大きな減少が見られ,

6G

加振後には

加振前の

61%程度まで固有周波数が低下しており,顕著

に変化が現れた。固有周波数の低下率では鉛直加振に比 較し水平加振のほうが低下率が大きいものが多かった。

4.

考察

衝撃振動試験の結果,固有周波数の低下が顕著であっ た水平加振時の製品

C

を対象に,固着状況がどの程度で あったものかを推定するため,あと施工アンカーを

1

質 点系モデルに置換して検討した。図-10にモデル化の概 要を示す。加振前は試験体天端位置のナットが締結され た状態であることから,天端位置を固定端として振動す ると仮定し,固定端と質点の距離

L=100mm,質量 M=

181Hz 167Hz

171Hz 150Hz

108Hz

0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030

5 50 500

加速度比の

周波数(Hz)

製品C

加振前 1G加振後 2G加振後 4G加振後 6G加振後

146Hz

0.00 0.03 0.06 0.09 0.12 0.15

5 50 500

スペ

周波数(Hz)

製品Q-1

加振前 1G加振後 2G加振後 4G加振後 6G加振後

図-8 水平加振前後における衝撃振動試験のフーリエスペクトルの例(左:製品

C,右:製品 Q-1)

0.97 0.95

0.96

0.90 0.95 1.00 1.05

A B C D E F G H I J K L M N-1 N-2 N-3 Q-1 Q-2 Q-3

加振前固有周波数を1.0たと 振後の固有周波数比

製品種別

鉛直

加振前 1G後 2G後 4G後

0.85

0.61

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1

A B C D E F G H I J K L M N-1 N-2 N-3 Q-1 Q-2 Q-3

加振前固有周波数を1.0たと 振後の固有周波数比

製品種別

水平

加振前 1G後 2G後 4G後 6G後

図-9 加振前の固有周波数を

1.0

としたときの各加振後の固有周波数比(上:鉛直,下:水平))

(6)

270g,減衰定数 h=2%として,固有周波数が製品 C

の加 振前固有周波数(181Hz)になるようにアンカー鋼材部 分の剛性

EI

を調整して作成した。

加振後は,あと施工アンカー先端の定着部分が加振の 影響により上方へ抜出したと想定すると,試験体天端位 置で締め付けていたナットが緩み,アンカー筋下端部を 固定端として振動するようになると推定できる。そのた め,固定端と質点との距離が

L=185mm

に変化したと考 えられる。

図-11に1質点系モデルにより算出した加速度フーリ エスペクトルを示す。加振前には

181Hz

だった固有周波 数が,加振によりアンカー筋先端部を固定点として振動 することにより

72Hz

(約

40%)まで低下する結果となっ

た。加振試験結果では

6G

載荷後に加振前の

61%までの

固有周波数が低下していたことから,今回モデル化した 程度までの緩みは発生していなかったものと想定される。

5.

おわりに

あと施工アンカーの耐振動性を確認するため,模型試 験体による実験的検討を行ったところ,以下のことが分 かった。

(1)

鉛直加振で

4,780

万回,水平加振で

6,550

万回の加振 を実施したが,本試験条件の範囲では,あと施工ア ンカーやナットの緩みは見られなかった。

(2)

加振試験により加速度振幅で,鉛直加振では

1.17

倍,

水平加振では

2.3

倍程度まで加速度振幅が増大した ものがあった。

(3)

鉛直加振では,金属系拡底アンカーG,I,金属系そ の他アンカー(樹脂充填あり)Q-2,Q-3で加速度振 幅の変化が小さかった。

(4)

水平加振では,接着系アンカーLで加速度応答倍率が 小さく,金属系拡張アンカーG,金属系その他のアン カー(樹脂充填なし)G で,加速度応答倍率の変化 が大きかった。

(5)

鉛直加振と水平加振では,水平加振のほうが加速度

応答倍率の増大率が大きく,相対的に負荷が大きか ったものと思われる。

(6)

加振前後の衝撃振動試験により,鉛直加振では金属 系拡張

B, C

およびFで,水平加振では金属系拡張

A,

C,F,および金属系拡底 J

において周期が伸び,減

衰が小さくなる傾向が顕著に見られた。

(7)

加振前後の固有周波数は,鉛直加振では金属系拡張 アンカーB,

C

および

F

3~5%程度,水平加振では

金属系拡張アンカーCで

39%程度低下した。

(8)

あと施工アンカー根本(試験体天端)位置でのトル クの締め付けにより耐荷機構を発するようなアン カーでは,ナットの緩みにより固有周波数の低下が

35%まであると推察されるが,今回の試験範囲では 60%程度までの低下となり,完全にナットの締結効

果が失われた状態までは達していなかったものと 思われる。

今回の試験範囲では,完全にあと施工アンカーの定着 機構が失われる製品は見られなかったことから,加速度 振幅あるいは固有周波数の変化がほとんど見られなかっ たあと施工アンカーについては,一定の耐振動性を有し ているものと思われる。また,今回実施したような試験 方法で,一定程度あと施工アンカーの耐振動性を評価可 能なものと思われる。今後,本検討があと施工アンカー の耐振動性確認方法の確立ならびに,耐振動性の高いあ と施工アンカーの開発の参考になれば幸いである。

謝辞

本検討は,日本建築あと施工アンカー協会(JCAA),

ならびに協会加盟の各あと施工アンカーメーカーの協力 により実施できたものである。記して謝辞としたい。

参考文献

1)

あと施工アンカーの耐久性の評価方法の確立と設 計の高度化研究委員会報告書,日本コンクリート工 学協会,2016.

181Hz 72Hz

0 5 10 15 20 25 30

5 50 500

周波数応答倍率L

載荷振動数(Hz) 水平加振

L=100mm L=185mm

図-11 1質点系モデルでのフーリエスペクトル

L=100

(a) 初期状態 (b) 抜出した状態

L=185

M

EI

1質点モデル h

1質点モデル

実物 実物

・質量M=270g(試験条件と同値)

・減衰定数h=2%(仮定)

・曲げ剛性EI:衝撃振動試験結果の固有振動 数と同値になるように設定

M

EI h

抜出し 固定端 緩み

85 (削孔長) 固定端

固定端

固定端

図-10 1質点系モデル

参照

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