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博士(農学)小櫃剛人

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Academic year: 2021

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博士(農学)小櫃剛人

     学位論文題名

第一胃内産生プロピオン酸の若齢子牛における栄養上の意義

一精製飼料胃内注入法の適用による研究一

学位論文内容の要旨

  反 芻 家 畜 は 維 持 や 生 産 に 要 す る エ ネ ル ギ ー の 大 部 分 を 、 反 芻胃 内 の 発 酵 産 物 で あ る 揮 発 性 脂 肪 酸 に 依 存 し て い る 点 に 栄 養 上 の 大 きな 特 徴 が あ る 。 反 芻 胃 内 で 産 生さ れ る 揮 発 性 脂 肪 酸 は 主 に 酢酸 、 プロ ピオ ン 酸 、 酪 酸 か ら 構 成 さ れ 、 給 与 飼 料 に よ り そ の 組 成 は 変 動 す る 。揮 発 性 脂 肪 酸 の 第 一 胃 内 産 生 量 の 変 動 に 対 す る 家 畜 の 反 応 か ら 、 反 芻家 畜 に お け る 揮 発 性 脂 肪 酸 の 栄 養 上 の 意 義 を 明 ら か に す る こ と は 、 種々 の 生 産 目 的 や 生 産 段 階 に 応 じ た 効 率 的 な 飼 料 給 与 方 法 を 確 立 す る 上で 重 要 な 知 見 を 提 供 す る こ と と な る 。 こ れ ま で も 反 芻 家 畜 の 成 畜 で は、 揮 発 性 脂 肪 酸 の 栄 養 上 の 意 義 、 特 に 蛋 白 質 ・ エ ネ ル ギ ー 栄 養 と の 関連 に つ い て 膨 大 な 研 究 が 行 わ れ てい る 。 し か し 、 離 乳 を 境 に 主な エ ,ネ ルギ ー 源 が 液 状 飼 料 に 由 来 す る グ ル コ ー ス か ら 反 芻 胃 内 発 酵 に 由 来 する 揮 発 性 脂 肪 酸 に 大 き く 転 換 す る 若 齢 子 牛 の 蛋 自 質 ・ エ ネ ル ギ ー 栄 養に 対 す   る 揮 発 性 脂 肪 酸 の 意 義tこ関 する 研究は ほと んど ない。 また 若齢 子牛 の   栄 養 上 の 特 色 と し て 、 蛋白 質 と と も に グ ル コ ー ス の 要求 量 が高 いこ と   が指 摘さ れて いる。 本研 究は 糖原性 物質 であ るプ ロピオ ン酸 に着 目し、

  胃 内 へ 注 入 し た 精 製 飼 料だ け で 動 物 を 飼 育 す る 手 法 (胃 内 注入 法) を   若 齢 子 牛 に 適 用 す る こ とに よ り 、 若 齢 子 牛 の 蛋 白 質 ・エ ネ ルギ ー栄 養   に お け る 第 一 胃 内 産 生 プ ロ ピ オ ン 酸 の 意 義 を 検 討 し た も の であ る 。     I章 に お い て は 、 研 究 目 的 に つい て 述 べ る と と も に 、 第 一胃 内 産   生 揮 発 性 脂 肪 酸 と 反 芻 家畜 に お け る 蛋 白 質 ・ エ ネ ル ギー 栄 養と の関 連   に 関 す る 研 究 の 概 要 を 紹介 し た 。 即 ち 、 給 与 飼 料 と 第一 胃 内産 生揮 発

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性脂肪酸組成の関係、揮発性脂肪酸の動物体内での代謝、揮発性脂肪 酸組成と蛋白質・エネルギー代謝との関連について概括するとともに、

若齢子牛における反芻胃発達や蛋白質・エネルギー代謝に対する揮発 性脂肪酸、特にプロピオン酸の意義に関する研究の必要性を指摘した。

また、第一胃内産生揮発性脂肪酸と家畜の栄養との関連を検討するた めの一手法として、動物への揮発性脂肪酸の供給量を任意かつ正確に 制御できる精製飼料の胃内注入による飼育法を適用することの有効性 を述ぺた。

  第H章では「若齢子牛への胃内注入法の適用」と題し、専ら成長の 進んだ反芻家畜に適用されてきた精製飼料の胃内注入による飼育法を、

反芻胃の未発達な若齢子牛へ適用する際の方法について、第一胃内容 液の性状や消化管の形態をもとに検討した。子牛の第一胃内へ揮発性 脂肪酸混合液と緩衝液を、第四胃内ヘカゼインと微量栄養素を注入す る胃内注入法による飼育を3―5週齢から開始し、これらの注入精製飼料 だけで長期間飼育した。その結果、この時期の子牛に胃内注入法を適 用する場合、第一胃内容液のpHと浸透圧を正常範囲に維持するために は、成畜に対するより希薄な注入液を用いることが必要であった。ま た、胃内注入法による飼育期間中の増体量は、栄養注入量に見合うも     L

のであり、反芻胃の組織重量は慣行的な飼育をした子牛のそれとほぼ 等しいとみなされた。胃内注入法で飼育した子牛の第一胃絨毛の形状 は櫂状で、第一胃粘膜の色調は淡色であった。

  第m章では「第一胃内揮発性脂肪酸組成と第ー胃吸収能発達」と題 し、異なる組成の揮発性脂肪酸混合液を3−6週齢子牛の第一胃内へ注入 し、第一胃内からの揮発性脂肪酸の吸収速度を調べた。その結果、注 入揮発性脂肪酸混合液中のプロピオン酸割合の違いによって、注入期 間の進行に伴う吸収速度の増加の程度が異ることを明らかにした。す     :

なわち、プロピオン酸割合を42mol/100mol含む揮発性脂肪酸混合液を 注入した場合は、胃内注入開始後約40日で吸収速度は最大値に達した が、プロピオン酸割合を14mol/10 0molとした混合液を注入した場合で

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は、吸収速度は約70日後まで緩やかに増加した。

  第IV章 では 「 第一胃 内揮発性脂肪 酸組成と若齢 子牛の蛋自質・ エネ ルギ ー 代謝 」と 題 し、若齢子 牛の窒素・エ ネルギー出納、 血液中代謝 物濃 度 に及 ぼす 第 一胃内注入 揮発性脂肪酸 組成の影響を検 討するとと もに 、 グル コー ス および高プ ロピオン酸混 合物のエネルギ ー利用効率 について調べ た。その結果 、維持の1.3倍の栄 養水準で胃内注入飼育を した場合、低 プロピオン酸組成の揮発性脂肪酸混合液の注入によって、

血液 中 グル コー ス 濃度は低下 し、ロヒドロ キシ酪酸濃度が 増加した。

熱発 生 量は 注入 揮 発性脂肪酸 の組成の影響 を受けなかった が、窒素蓄 積量 は 低プ ロピ オ ン酸組成の 混合液の注入 の際の方が低く なった。し かし 、 第四 胃内 へ 同時にグル コースを注入 した場合では、 第一胃内へ 注入した揮発 性脂肪酸の組成の違いは窒素蓄積量に影響を及ぼさなかっ た。第四胃内へ注入したグルコースとしての粗エネルギー量lMJにっき、

窒素蓄積量は1. 25g増加したが、第一胃内へ注入した高プロピオン酸組 成の 揮 発性 脂肪 酸 混合物とし ての同1MJあたりの 窒素蓄積増加 量は0.9 8gであった。また、、第四胃内へ注入したグルコースの成長のため.のエ ネルギー利用 効率は72%であった が、第一胃内 へ注入した高プロピオン 酸組 成 の揮 発性 脂 肪酸混合物 のエネルギー 利用効率は60%で あった。

  第V章 では 以上 の 結果 を 総括 し 、胃 内注 入 法で 飼 育した子 牛は、通 常に 飼 育し た子 牛 のモデルと して適用でき ることを示すと ともに、第 一胃 内 産生 プロ ピ オン酸の若 齢子牛の蛋白 質・エネルギー 栄養におけ る意 義 は、 第一 胃 吸収能の発 達を促進し、 動物体に吸収さ れる揮発性 脂肪 酸 量を 増加 さ せること、 および糖原性 物質として蛋白 質の有効利 用に寄与することにあると結論した。

    以上のように本研究では、胃内注入飼育法を適用することによって、

若齢 子 牛の 蛋白 質 ・エネルギ ー栄養におけ る第一胃肉産生 プロピオン 酸の 意 義を 、第 一 胃吸収能の 発達および個 体レベルの蛋白 質・エネル ギー 代 謝の 面か ら 明らかにし 、若齢子牛へ の飼料給与方法 を確立する ための基礎的知見を得た。

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  学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査  教 授  朝 日 田 康 司 副 査   教 授   上 山 英 一 副 査  助 教 授  大久保 正彦

第一胃内産生プロピオン酸の若齢子牛における栄養上の意義     一 精 製 飼 料 胃 内 注 入 法 の 適 用 に よ る 研 究 ー

    反芻家畜の栄養上の大きな特徴は、維持や生産に要するエネルギー の大部分を、反芻胃内の発酵産物である酢酸、プロピオン酸、酪酸等 の揮発性脂肪酸に依存している点にある。しかし、若齢反芻家畜では 反芻胃は未発達であり、このような反芻家畜としての特徴は発達過程 にあるため、若齢反芻家畜に対する効率的な飼料給与方法を確立する 上で、揮発性脂肪酸の栄養上の意義、特に蛋白質・エネルギー栄養と の関連を明らかにする必要がある。これまでも反芻家畜の成畜では、

揮発性脂肪酸と蛋白質・エネルギー栄養との関連について膨大な研究 が行われているが、通常の飼料給与下では複雑な反芻胃内発酵を介す るために、揮発性脂肪酸と蛋自質・エネルギー栄養との直接的な関連 を明確にすることは困難とされてきた。本研究は、専ら反芻家畜の成 畜に対して行われている精製飼料胃内注入法の若齢子牛への適用方法 を確立し、この手法を用いて若齢子牛の蛋白質・エネルギー栄養に対 する第一胃内産生プロピオン酸の意義を、第一胃揮発性脂肪酸吸収能 の発達および個体レベルの蛋白質・エネルギー代謝の面から明らかに したものである。

  本論文は表11、図18、写真2、引用文献103を含む総頁数101の和文論 文であり、5章に分けて論述されている。研究の成果は以下のように要 約される。

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  l)まず第一胃内ヘ揮発性脂肪酸と緩衝液、第四胃内へ蛋自質と微量 栄養素を それぞれ連続 して注入する胃内注入法の子牛への適用法につ いて、第 一胃内容液の 性状や消化管の形態をもとに検討し、若齢子牛 に対する 適切な注入液 濃度や注入法を明らかにした。胃内注入法で飼 育した子 牛は注入栄養 量に応じた増体量が得られ、第一胃組織重量も 通 常 飼 育 子 牛 の そ れ と 遜 色 の な ぃ こ と が 認 め ら れ た 。   2)ついで第一胃内へ注入した揮発性脂肪酸組成と第一胃吸収能発達 の関連を検討し、3→6週齢子牛の第一胃内へ高プロピオン酸組成の揮発 性脂肪酸混合液を注入すると、第一胃からの揮発性脂肪酸吸収速度が、

急激に増 加すること示 し、プロピオン酸の第一胃吸収能発達に対する 効 果 は 酢 酸 の そ れ に 比 べ 大 き い こ と を 明 ら か に し た 。   3)第一胃内注入揮発性脂肪酸組成の違いが窒素・エネルギー出納、

血液中代謝物濃度に及ぽす影響を6―14週齢の子牛を用いて調べたとこ ろ、低プ ロピオン酸組 成の揮発性脂肪酸混合液の第一胃内注入によっ て、血液 中グルコース 濃度は低下するが、ロヒドロキシ酪酸濃度は増 加すること、熱発生量は注入揮発性脂肪酸の組成の影響を受けなぃが、

窒素蓄積 量は低プロピ オン酸組成混合液の第一胃内注入時に低くなる ことを認めた。さらに、 グルコースを第四胃内へ注入した場合には、

低プロピ オン組成混合 液の第一胃内注入時にも窒素蓄積の低下が生じ なかった ことから、若 齢子牛におけるプロピオン酸の糖原性物質とし ての重要 性が明らかに なった。一方、同時に行ったエネルギー出納試 験の結果 から、グルコ ースおよび高プロピオン酸組成の揮発性脂肪酸 混合物の 成長のための エネルギー利用効率はそれぞれ72%および60%と 推定した 。また、グル コースの第四胃内注入と高プロピオン酸組成の 揮発性脂 肪酸混合液の 第一胃内注入では、等エネルギー量であっても 窒素蓄積量増加に対する効果が異なっていた。

  4)以上の成果に基づき、  胃内注入法で飼育した子牛は、通常飼育し た子牛の モデルとして 適用できることを示すとともに、第一胃内産生 プロピオ ン酸の若齢子 牛の蛋白質・エネルギー栄養における意義は、

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第一胃吸収能の発達を促進し、動物体に吸収される揮発性脂肪酸量を 増加させること、および糖原性物質として蛋白質の有効利用に寄与す ることにあると結論した。

  以上のように本研究は、精製飼料の胃内注入法という先駆的研究手 法を若齢子牛に適用することによって、第一胃内注入揮発性脂肪酸と 蛋白質・エネルギー栄養との関連を定量的に研究考察し、従来不明確 であった第一胃内産生プロピオン酸の若齢子牛における栄養上の意義 に関する基礎的知見を提示しており、学術的に高く評価されるだけで なく、実用的にも若齢反芻家畜の飼養技術改善に大きく寄与するもの である。

  よって審査員一同は、別に実施した学力確認試験の結果と合わせて、

本論文提出者小櫃剛人は博士(農学)の学位をうけるのに十分な資格 があるものと認定した。

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参照

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