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博 士 ( 農 学 ) 小 川 茂 男

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 小 川 茂 男

学 位 論 文 題 名

農 業地域 情報におけるりモートセンシング技術の利用

    

に関 する研究

学位論文内容の要旨

  

本論文.は、図58 、表21 、131 ぺージからなる和文論文で、別 に16 編の参考文献が添えられている。本論文の構成は6 章で、

その要旨は次のとおりである。

  

リモートセンシング技術が一般的に利用されるようになっ たが、農業の地域情報を精度よく求める実利用技術はいまだ 発達していない。本論文は、現在運行している衛星データを 用い、北海道における農業地域情報を収集する実利用的なり モ ー ト セ ン シ ン グ 手 法 を 開 発 し た も の で あ る 。

  

I

章「序論」では農業地域情報とりモートセンシングの 現状と問題点を整理し、本論文の背景と目的、使用した衛星 データ、解析のために作成した画像処理システムについて記 述した。

  

すなわち、国際化の中で生き残る農業を確立するためには

、きめ細かな短期的・長期的な農業計画を立案することが重 要である。そのためには詳細な農業地域情報が必要であるが

、農業地域情報の整備や更新には多大な費用を要するため、

省力的で精度の高い手法を確立することが求められている。

そのため重要な農業地域情報で、   しかもりモートセンシング 手法が適用出来る項目について、衛星データ、調査や観測結 果、および収量などの統計データを用いて解析を行った。解 析に先立ち、衛星データの入出カや演算処理、各種画像の重 ね 合 わ せ 社ど が 可 能な よ う に 、画 像 解 析シ ス テ ム『

HIPS

』 を 作 成 した 。

HIPS

は エ ン ジ ニア リ ン グワ ー ク ステ ー シ ヨンを中核としたパソコンを含む構成で、農業地域情報解析 のための実用的画像処理システムといえる。

  

H

章は「土地利用分類と面積の推定」である。解析対象

地域を石狩川流域とし、1987 年6 月

22

日のランドサットTM デー

    

―166 ―

(2)

タ を用 いて 水 田と 畑地 の分 類を 行 い、 水田 面積 の推 定 を行 っ た 。こ の地 域 は日 本で も有 数の 水 田地 帯で あり 、一 筆 当た り の 区 画 が 大 き く 、 ま た 一 戸 当 た り の 耕 作 面 積 も 大 き い 。   解 析 の結 果、 水田 は 高い 精度 で分 類で き るが 、畑 地は 作物 生 育前 期の た め、 コム ギ以 外の 分 類は 不可 能で あっ た 。水 田 地 帯の 分類 結 果と 地上 調査 結果 な どを 比較 する と、 全 体の 分 類 精度 は82%で あっ た が、 水田 と畑 地の 境 界部 分や 農地 の幅 が 狭い 部分 を 除く と、 全体 の分 類 精度 は97%と 高い 値に なっ た 。し たが っ て、 分類 には 境界 部 分の 画素 の適 切な 処 理が 重 要 であ るこ と が明 らか とな った 。 土地 利用 分類 結果 を 市町 村 単 位で 集計 し 、道 路や 用排 水路 な どの 線状 構造 物の 面 積割 合 を 考 慮 し て 推 定 し た 結 果 、 水 田 は 約5% 、 畑地 は約10% の誤 差で推定で きた。  さらに、水田については 線状構造物である 道 路や 用排 水 路な どを 含む 画素 内 の割 合を 計算 し、 水 田面 積 を補正する と、O.9%の誤差で推定できた。 この手法は今まで に 提案 され て おら ず、 現地 調査 デ ータ から 比較 的簡 単 な方 法 で推定できる新しい手法といえる。

  第m章 は 「 土 壌 水 分 及 び 土 壌 腐 植 量 の 推 定」 であ る。 斜網 地 域( 北海 道 東部 の斜 鼠町 から 網 走市 に広 がる 犬規 模 畑作 地 帯 )を 対象 に 、ラ ンド サッ トTMデー タを 用 いて 土壌 水分 と土 壌 腐植 量の 分 布な どの 解析 を実 施 した 。こ の地 域は 日 本有 数 の 少雨 地帯 で 干ば つ被 害を 受け や すく 、土 壌水 分や 土 壌腐 植 量に関する情報は重要な意味を持つ。

  解 析 の結 果、 サン プ ル土 壌の 分光 反射 率 と土 壌水 分の 間に は 高い 相関 関 係が 見ら れた。また、土壌腐植 量の推定には950 nm/650nmと950nm/450nmの反射率比が有効で あった。斜網地 域 の土 壌水 分 の推 定の ため、2種類の土壌のサン プリ、ングを 行い、同日 に観測したランドサットTMデータ .と重回帰分析を 実 施し た結 果 、同 じ土 壌タ イプ で あれ ば有 意性 はみ ら れる も の の相 関性 は 低か った 。こ れは 圃 場レ ベル では 土壌 水 分の 分 布 幅が 狭い こ とや 表面 の土 壌構 造 の違 いな どの ため 、 推定 精 度 が低 かっ た と思 われ る。 また 、 対象 地域 に分 布す る ほば す べ ての 土壌 タ イプ の土 壌腐 植量 と ラン ドサ ットTMデ ータ の解 析結果の間には、高い重相関係数(rニニO. 80**)が得られた。

こ の重 回帰 式 から 斜網 地域 の土 壌 腐植 量分 布図 が作 成 でき 、 詳 細な 分布 状 況が 読み 取れ た。 こ のよ うに 衛星 デー タ から 土

(3)

壌 腐 植 量 が 推 定 でき るこ とが 確か め られ 、斜 網地 域の 土 壌腐 植量分布が明らかになった。

  

1V

章 は 「テ ン サイ の収 量分 布 の推 定と 土壌 区分 図 との 関 連 解 析 」 で あ る 。 第

m

章 で 解 析 し た 斜 網 地 域 に つ い て テ ンサ イ 収 量 分 布 図 を 作成 し、 土壌 との 関 係に っい て解 析し た 。対 象 と し た 斜 網 地 域は 少雨 地帯 で火 山 灰土 壌の 畑が 多く 、 干ば つ の 被 害 を 受 け やす い。 そこ で、

1984

年( 干ば つ年 ) と1988 年 ( 平 年 作 に 近 い年 )に っい て、 衛 星デ ータ から テン サ イの 収 量分 布図 を作 成し 、 両分 布を 比較 した。さらに、第111 章で 求 め た 土 壌 腐 植 量 分 布 図 と 既 存 の 土 壌 図 を 加 え 、

4

種 類 の農 業 情 報 を 重 ね 合 わせ て、 干ば つ年 や 通常 年の 収量 を土 壌 タイ プ別に集計した。

  

解 析 の 結 果 、ラ ンド サ ット

TM

デ ータ とテ ンサ イの 収 量デ ー タの重相関係数は1984 年がO . 85* *、1988 年が0 .76* *であり、

こ の よ う な 方 法 で精 度の 高い 収量 分 布図 が作 成可 能で あ った

。 さ ら に 、

1984

年 と1988 年の テン サ イ収 量、 土壌 の 腐植 量分 布 図 及 び 土 壌 図 から 相互 の関 連性 を 解析 した 結果 、1984 年 で は い ず れ の 土 壌 タイ プと も収 量が 低 い傾 向が あり 、1988 年 で は 土 壌 タ イ プ に よる 収量 の変 動が 認 めら れた 。腐 植量 の 少な い 土壌 タイ プで は干 ば っの 年(

1984

年)と平 年作に近い年(1

988

年 ) に大 きな 収量 差が あ るこ とから、 灌漑が有効な地域と 推定できた。

    

このように、衛星データ の解析結果と他の情報を組み 合わ せ る こ と に よ り 、テ ンサ イに 対す る 斜網 地域 の土 壌の 生 産性 や、その分布を明らかにすることができた。

    

第V 章 は「 冷 害年 にお ける 水田 水温分布と水 稲収量の解析

」 で 、 水 田 水 温 と冷 害と の関 連性 に つい て検 討し た。 す なわ ち 、 大 冷 害 に 見 舞わ れた

1993

年 に つい て、 ラン ドサ ッ ト

TM

デ ー タ か ら 推 定 し た水 田水 温と 、実 測 値や 気象 デー タか ら 推定

した水田水温を用いて水田 害との関連性について検討

87

年のランドサットTM デー

93

年 の 結 果 と 比 較 し た 。 解析の結果、1993 年7 月8 日 た水田水温は、気象データ 間に地域によって差がある

水 温画像を作成し、水 田水温と冷 し た。同様に、平年作 であった19 タ を用いて同様な解析 を行い、19

の ランドサットTM データから求め

か ら推定した日平均水田水温との

も のの、その差は小さく妥当な値

(4)

で あ った 。 求 め た水 田水 温と収 量デー タを比 較する と、北 村 の集落単位のデータで相関係数は0 .45 **であり、石狩川水系 の市町村データで相関係数は

0

. 76* *であった。同様に、

1987

6

22

日の ランド サット

TM

デー タから 求めた水田水温と市町 村の収量データの関係をみると相関係数が0 . 50 **であり、199

3

年ほ ど明確 ではな いが平 年作の 場合で も水田水温の影響を認 める ことができた。

  

ランドサット

TM

データの熱バンドを用い た 水 田水 温 の 検 証例 はな く、し かも冷 害年と 平年作 の年を 比 較する新しい手法で得た知見である。

  

以 上の よ う に 、本 論文 は北海 道の特 定地域 の水田 地帯、 畑 作 地 帯を 対 象 に 、そ れぞ れに重 要な農 業地域 情報に ついて 、 衛 星 デー タ と 地 上調 査デ ータを 加えた りモー トセン シング の 解析手法を確立した実利用的な研究である。

‑ 169

(5)

学位論文審査の要旨

学位論文題名

農業地域情報 におけるりモートセンシング技術の利用

    

に関する研究

  本論 文は、 図58、 表21131ぺー ジからなる和文論文で、別に16 編の参考文献が添えられている。

  農産物自由化の中で、きめ細かな短期的・長期的な農業計画を樹 立する必要がある。そのためには詳細な農業地域情報が必要である が、農業地域情報の整備や更新には多大な費用を必要とし、リモー トセンシング技術の利用が模索されている。  しかし、  リモートセン シング技術による農業地域情報を精度よく求める実利用技術はいま だ充分に発達していない。本論文は、北海道における農業地域情報 収集を目途とする、実利用的なりモートセンシング手法を開発した ものである。

  第I章は 「序論 」で、 リモ ートセ ンシングによる農業地域情報収 集の現状と問題点を整理し、本論文の背景と目的、使用した衛星デ ータ、解析のために作成した画像処理システムについて記述してい る。

  第II章は「土地利用分類と面積の推定」である。解析対象地域を 石狩川流域とし、19876月22日のランドサットTMデータを用いて水 田と畑地の分類を行い、精度が高い水田面積の推定法を開発した。

すなわち、土地利用分類結果を市町村単位で集計し、道路や用排水 路などの線状構造物の面積割合を考慮して推定した結果、水田は約 5% 、畑地 は約10%の誤 差で 推定で きた。さらに、水田の画素内の 道路や用排水路などの割合を計算して、水田面積を補正すると、0.9

%の誤差で推定できた。この手法は今まで提案されておらず、比較 的簡 単 な 現地 調査か ら精度 よく推 定で きる新 しい手 法とい える 。   第m章は 「土壌 水分及 び土 壌腐植 量の推定」である。斜網地域を 対象にランドサットTMデータを用いて、土壌水分と土壌腐植量の分

170

夫豊 明 郁   徹 口田 澤 堀松 長 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(6)

布などの解析を実施した。解析の結果、斜網地域に分布するほばす べての土壌タイプの土壌腐植量とランドサットTMデータの間には、

高い重相関係数(r‑ニ0. 80**)が得られた。この重回帰式から斜網地 域の土壌腐植量分布図が作成でき、詳細な分布状況が読み取れた。

このように衛星データから土壌腐植量を推定できることが確められ

、斜網地域の土壌腐植量分布が明らかになった。

  1V章は「テンサイの収量分布の推定と土壌区分図との関連解析

」である。斜網地域は少雨地帯で火山灰:量二壌の畑が多く、干ぱっの 被害を受けやすい。そこで1984年(干ぱっ年)と1988年(j卩年作に 近い年)の衛星データからテンサイの収量分布図を作成し、さらに 第m章 の土壌 腐植量 分布 図と既 存の土壌図などを重ね合わせ、干ぱ つ年や通常年の収量を土壌タイプ別に解析した。

  解析の結果、ランドサットTMデータから精度の高いテンサイ収量 分布図が作成できた。また、作成した収量分布図、土壌の腐植量分 布図及び土壌図などから、1984年(干ばっ年)はいずれの土壌タイ プとも収量が低く、1988年(平年作に近い年)は土壌タイプによる 収量の変動が大きいことが判明した。このことから、腐植量の少な い土壌タイプでは、干ばっ年と平年作の年に大きな収量差があり、

灌漑が有効な地域と推定できた。

  V章は「 冷害年 にお ける水 田水温分布と水稲収量の解析」であ る。1993年(大冷害年)と1987年(平年作)について、ランドサッ トTMデータを用いて水田水温画像を作成し、市町村の収量などとの 関連性について検討した。1993年のランドサットTMデータから求め た水田水温は、気象データから推定した水田水温との間の差は小さ く、収量と水田水温との相関係数は0.76**であった。同様に、1987 年のランドサットTMデータから求めた水田水温と収量データのと相 関係数は0. 50**であり、1993年ほど明確ではないが平年作でも水田 水温の影響が確認された。ランドサット熱バンドデータを用いた水 田水温の検証例はなく、しかも冷害年と通常年とを比較し、・その現 象を考察した新しい手法である。

  以上のように、本論文は水田地帯、畑作地帯それぞれに重要な農 業地域情報を衛星データから求める、新しい解析手法を確立したもの で、得られた知見は学術的にも実利用的にも高く評価できる。よっ て審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文 の提出者  小川茂男は、博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格が あるものと認定した。

‑ 171

参照

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