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博士(医学)木村 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(医学)木村 学位論文題名

温阻血肝を用いた ブ夕同所性肝移植

―温阻血限界とviability 判定の指標について一

学位 論文内容の要旨

    I.はじ めに

  近 年、肝移 植の普 及に伴い ドナ一 不足が深 刻な問 題になっ ており、 −つの解決策として心 臓 死ドナー からの 臓器提供が考えられている。しかし、温阻血時間の限界やその障害の機構、

障 害をうけ た移植 肝のvi abiIity判 定法には 未だ不 明な点が 多い。 そこで心停止後の温阻血 肝 を 用 いた ブタ肝 移植実 験により 、温阻 血限界と 一般的な 移植肝 障害の指 標であ る血清glu tamic oxalacetic transaminase (GOT)値、血清 ヒアルロン酸(HA)値、及び移植肝胆汁排泄量 が 温 阻 血 移 植 肝 のviabiI ity判 定 の 指 標 に な り う る か に つ い て 検 討 を 行 っ た 。

    n.対象と方法

1.動物、 実験群 、全身管 理及び手 術手技 :体重約20kgのブタ(LW)を用い、肝移植実験を温阻 血時 間により 以下の3群に 分け行っ た。I群;0分(n:9)、n群;30分(n:8)、III群;60分

(n 7)。I、m群ではド ナーをKC|投与に て心停止 させ肝 を腹腔内 に放置 して温阻血肝を作 成し た。免疫 抑制は 行わなか った。 ドナ→肝 は門脈及 び動脈 より冷ユ ーロコ リンズ液で湛流 を行 いつつ摘 出した 。肝上部 下大静 脈吻合後 、移植肝 を室温 リンゲル 液でり ンスし、―時的 門脈動脈化(portal  vein  arter ial izat ion: PA)法で血流再開した。移植肝の初期灌流血5m l/kg. 体 重 を 肝 下 部 下 大 静 脈 よ り 流 出 さ せ た 後 、 肝 上 部 下 大 静 脈を デ ク ラン プ し た。

2.検討項 目:レ シピェン 卜の生存 を14日ま で観察し た。GOT値をMDH―uv法、HA値をSBPA法で 測定 し、血流 再開後90分問の移 植肝胆 汁排泄量 を測定 した。開 腹時、移 植肝血流再開時、PA 中肝 動脈血流 再開直 前、門脈 再灌流60分、及び 術後1、3、5、7日に 動脈血 を採取した。PA中 肝動 脈血流再 開直前 に肝静脈 から採 血を行っ た。また 、リン ス排液お よび移 植肝血流再開時 の初期灌流血を採取した。

3. 統計 学 的 検討 : 結 果は 平 均 値土 標 準誤 差で示 し、有意 差検定 は―元配 置分散 分析とSch effe sFtestを用い、p<0.05を有意とした。

    m. 結果.

  I群 は全 例4日 以上 生 存 した 。H群は3頭 が5日 以 上生 存 、1頭 は2日 目に 、 残 りの4頭 は12 時間以 内に死亡 した。m群で |さ全例 が5−30時間で 死亡し た。

  動 脈 血GOT値 は移 植 肝 血流 再 開 後にu、m群 でI群に 比 べ 高 値を 示 したが 、II群とm群の 間 には差 を認めな かった 。‐リンス排液、初期灌流血、肝静脈血でも同様であった。動脈血HA値 は術中 に上昇す るが、 その推移 には3群間で 差を認めなかった。初期灌流血及び肝静脈血HA値 に差 を 認 め ず、こ れより算 出した 移植肝のHA代謝率 にも3群間で差 を認め なかった 。血流 再 開後90分間に胆汁排泄を認めたのは、I群;9/9、1I群;5/8、ni群;2/7であり、胆汁排泄量

‑ 217

(2)

にI群とn、m群との間で有意 差を認めた。

  レ シピ ェン トの 生存 と死 亡が わか れたn群を 、12間以内に死亡したnーA群(4頭)と、2日以 上生存したII一B群(4頭)にわけ検討した。有意差検定にはMann―Wh itney検定を用いた。GOT値 は動 脈血 、リ ンス 排液 、初 期灌 流血 、肝 静脈 血の いずれにも差を認 めなかった。動脈血、初 期灌 流血 、及 び肝 静脈 血中HA値にも群間 に差を認めなかった。u―B群は4頭全例に胆汁排泄を 認めたのに対し、n一A群は1頭のみであり、血流再開後90分聞の胆汁排泄量に有意差を認めた。

    1V.考案

  今 回の 検討から、30分温阻血では半数のレシピエントの生命 維持が可能であるのに対して、

60分 温阻 血で は生 存が 得ら れな い こと が明 らか とな った 。従 来のブタを用いた移植実験では 30分 の温 阻血 でも なん らか の補 助 を行 わな けれ ばレ シピ ェン トの生命維持は不可能とされて きた 。今 回の 検討 が諸 家の 報告 と 異な る点 は術 式にPA法 を用 いたことである。本法には、移 植肝 をレ シピェントの腹腔内にいれてから血流再開までの腹腔 内阻血時間が短縮できること、

無肝 時間 が短 縮で きる こと 、門 脈 の血 流状 態に 左右 され ない 安定した血流再開が可能なこと など の利 点が ある 。移 植肝 はレ シ ピェ ント の腹 腔内 で血 流再 開までの間、体温により温めら れ障 害が 進行 する 。移 植肝 がす で に高 度の 阻血 障害 に陥 って いる温阻血肝移植ではその時間 を短 縮す るこ とが 重要 であ る。 ま た、 無肝 期に は門 脈圧 は時 間とともに上昇することが報告 され てお り、 無肝 時間 を短 縮す る こと も重 要と 考え られ る。 本実験での腹腔内阻血時間は約 25分、無肝時間は約30分であり、著者らの従 来法での成績、腹腔内阻血時間: 75.0土4.6分、

無肝時間: 77.O土4,6分(n=8、データ未発 表)に比べ短縮することが可能であった。諸家の報 告に 比べ て成 績が 改善 され たの は 、本 法を 用い たこ とに よる と考えられた。しかし、温阻血 30分 で の レ シ ピ ェ ン ト の 生 存 は 半 数 で あ り 、 こ れ が 限 界 の 時 間 と 考 え ら れ た 。   血 清GOT値は 肝温 阻血 障害 の程 度、viabit ityを反映するこ とが報告されており、臨床の肝 移植 でも 移植 肝障 害の 指標 とし て 広く 用い られ てい る。 しか し、温阻血30分群と60分群との 問の 推移 に差 を認 めず 、温 阻血30分で の早 期死 亡例 と生 存例 の間にも差を認めなかった。こ れよ り、GOTの 術中 の著 明な 上昇 は移植肝が温阻血をうけた事 を反映するものではあるが、そ のviabil ityを反映はしないことが明らかと なった。

  血 清HA値は 類洞 内皮 細胞 機能 を 反映 する と考 えら れ、 ラッ ト肝移植では冷保存時の移植肝 viabilityを反 映す ると され てい る。 ブタ 肝温 阻血 実験 では2時間までの阻血では上昇した血 清HA値は 血流 再開 後ほ ぼ同 時間 で 前値 まで 回復 する とさ れて いる 。今 回、 全例 が生 存し たI 群で も門 脈再 灌流60分 後の 血清HA値は 未だ 高値 であ り、 短時 間の冷阻血でもHA値からみた類 洞内 皮細 胞機 能は 障害 をう けて い るものと考えられた。ー方、30、60分の温阻血を有したH、 m群 で の 血 清HA値 の 推 移に は 差を 認め ず、 さら にn群で の 生存 例と 早期 死亡 例と の問 にも 差 を認 めな かった。このことより、温阻血肝移植時にはHAは移植 肝viabil ityの指標にはなりえ ないものと考えられた。

  血 流再 開後 の胆 汁産 生は 、ラ ッ トを 用い た温 阻血 再灌 流実 験や温阻血肝移植実験でA TPの 回 復 と 相 関 し 、viabiI ity ‑反 映す ると 報告 され てお り 、今 回の 結果 はこ れと 一致 した 。

    V.  結語

ー 時 的 門 脈 動 脈 化 法 を 用 い た ブ タ 同 所 性 肝 移 植 実 験 を 行 い 、 以 下 の 結 果 を 得 た 。 1.30分の 温阻 血肝 移植 では8頭中4頭のレシピェント が生存可能であったが、60分では7  頭 全例 早期 に死 亡し た 。

2. 術 中 の 血 清GOT値 、HA値 の 推 移 は 移 植 肝 のviabilityを 反 映 し な か っ た 。 3、 血 流 再 開 後 90分 間 の 胆 汁 排 泄 量 は 移 植 肝 のviabiI ityを 反 映 し た 。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

温阻血肝を用いたブ夕同所性肝移植

一 温 阻 血 限 界 とviability判定 の指 標に つい て一

  近年 、肝 移植 の普 及に 伴い ドナ 一不 足が 深刻な問題になっており、一つの解決策として 心 臓死 ドナ ーか らの 臓器 提供 が考 えら れて いる。しかし、温阻血時間の限界やその障害の 機構、障害をうけた移植肝のviability判定法、などにtま未だ不明な点が多い。本研究|よ心 停 止後 の温 阻血 肝を 用い たブ タ肝 移植 実験 により、移植肝の温阻血限界と、血清glutamic 0xalace眦tran閥minase(G(汀)値、血清ヒアルロン酸(HA)値、及び移植肝胆汁排泄量が温阻血 移 植 肝 の 玩 abmワ 判 定 の 指 標 に な り う る か に つ い て 検 討 し た も の で あ る 。   体重 約20瓸の ブ夕 皿W) を用 い、 肝移 植実 験を温阻血時間により以下の3群に分類した。

I群;0分くn=9)、n群;30分(n:8)、皿群;60分くn〓7)。矼、m群ではドナーをKCl投 与にて心停止させ、肝を腹腔内に放置して温阻血肝を作成した。免疫抑制は行わなかった。

ド ナ 一 肝 は 門 脈 及 び動 脈よ り冷ユ 一口 コリ ンズ 液で 灌流 を行 いつ つ摘 出し た。 肝上 部下 大 静 脈 吻 合 後 、 移 植 肝 を 室 温 リ ン ゲ ル 液 で り ン ス し 、 一 時 的 門 脈 動 脈 化Qぱtalvem an畄aIizali。n:P心法で血流再開した。移植肝の初期灌流血5如山培・体重を肝下部下大静脈 より流出させた後、肝上部下大静脈をデクランプした。

  レ シ ピ エ ン ト の 生 存 を14日 ま で 観 察 し た 。GOT値 をMDH−UV法 、HA値 をSBPA法 で 測 定し 、血 流再 開後90分 問の 移植 肝胆 汁排 泄量を測定した。開腹時、移植肝血流再開時、

PA中 肝 動 脈 血 流 再 開直 前、 門脈再 灌流 後60分、 及び 術後1、3、5、7日 に動 脈血 を採 取し た 。PA中 肝 動 脈 血 流再 開直 前には 肝静 脈か ら採 血を 行っ た。 また 、リ ンス 排液 およ び移 植肝血流再開時の初期灌流血を採取した。

  そ の 結 果 、I群 は 全 例4日 以 上 生 存 し た 。n群 は3頭 が5日 以 上 生 存 、1頭 は2日 目 に 、 残 り の 4頭 は 12時 間 以 内 に 死 亡 し た 。m群 で は 全 例 が5.30時 間 で 死 亡 し た 。   動 脈 血GOT値 は 移 植 肝 血 流 再 開 後 にn、m群 でI群 に 比 ベ 高 値 を 示 し た が 、n群 とm 群 の間 に差 を認 めな かっ た。 リン ス排 液、 初期灌流血、肝静脈血も同様であった。動脈血 HA値| よ術 中に 上昇 する が、 その 推移 には3群問 で差 を認 めな かっ た。 初期灌流血及び肝 静 脈 血HA値 に 差 を 認 め ず 、 こ れ よ り 算 出 し た 移植 肝のHA代謝 率に も3群問 で差 を認 めな か っ た 。 血 流 再 開 後90分 間 の 胆 汁 排 泄 量 はI群 とH、m群 の 問 に 有 意 差 を 認 め た 。   レシ ピエ ント の生 存ど 死亡 がわ かれ たn群 を、12時間以内に死亡したn一A群(4頭)と、

2日 以 上 生 存 し た 皿 一B群 (4頭 ) に わ け 検 討 し た 。GOT値 、HA値 と も に 測 定 し た全 ての 時 点 で 群 問 に 差 を 認 め な か っ た 。 胆 汁 排 泄 量 は 矼 一B群 がH一 群 に 比 ベ 有 意 に 多量 であ った。

一 彦

純 和

野 柳

   

   

内 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

   以上より、 PA 法を用いたブタ温阻血肝移植実験では、30 分の温阻血で|よ半数のレシヒ エントの生存がえられ、その障害が境界領域であるのに対して、60 分の温阻血ではレシ ビエントの生存は得られず、障害は不可逆的であると考えられた。また、術中のGOT の 著明な上昇は移植肝が温阻血をうけた事を反映するものではあるが、そのviability を反映 しなぃこと、温阻血肝移植時にはHA は移植肝viability の指標にはなりえなぃことが明ら かとなった。一方、胆汁排泄量は移植肝viabilky の良い指標になるものと考えられた。

   本研究により、移植肝に30 分の温阻血があってもレシピエントの生命維持の可能性があ ること、温阻血肝移植時の移植肝viability 判定の指標としでの、血清GOT 値、HA 値、お よび移植肝胆汁排泄量の意義が明らかになったことは、温阻血肝移植の研究におぃて有意 義なものと考えられる。

   さらに、本研究での成果を基礎として検討を重ねることにより、心停止後の臓器提供に

よ る 肝移 植 が 臨床 に おぃ て も日 常 の治 療 手段 と して普及 することが 期待された 。

   審査にあたって、小御教授より、手術術式に伴う手技上の問題点、灌流装置などを用い

た血流再開以前のviability 判定の可能性、臨床との相違及び臨床応用の可能性、人工肝臓

を用いた移植肝補助の可能性についての貸問があった。次いで、小野江教授から温阻血群

における肝の組織障害の部位、アポトーシス及び免疫系の細胞の障害における役割につい

て の 質問 が あ った 。 いず れ の質 問 に対 し ても 申 請者は概 ね妥当な回 答を行った 。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、申

請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 ける の に充 分 な資 格 を有 す る もの と 判定 し た。

参照

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