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博士(工学)木村秀明 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)木村秀明 学位論文題名

素子特性を考慮した3 次元フルウェーブ回路解析法に関する研究 学位論 文内容の要旨

  近年、半導体技術の進歩に伴う集積回路の超高速化は著しい。それに伴う使用 周波数の高周波化により当該回路においても信号の時間的、空間的波動性が見え 始めており、そのような回路の取り扱いは集中定数的取り扱いから分布定数的取 り扱いへと移行しつっある。特に、分布定数効果による信号の伝搬遅延の問題等 は特性への影響が大きく、このような系の取り扱いの際、電磁界解析法が有効と なる。電磁界解析法は、一般に、準静的解析、周波数領域解析、時間領域解析と 3っに分類できる。準静的解析とは、電磁界解析の段階で時間項を無視し、ラプ ラス方程式を支配方程式とした解析をいい、従来のLSIおよび各種アナログ回 路は、その回路サイズとその動作周波数から集中定数的取り扱いの領域に属し、

配線の遅延効果の問題も定常的な配線容量と配線抵抗、回路の負荷インピーダン スを考慮したゲート問遅延、クロス卜ークの問題として取り扱われている。周波 数領域解析は時間項を陰に含むへルムホルツ方程式に基づく解析であり、時間領 域解析は時間項を陽に含むマクスウェル方程式に基づく解析で、両者は全電磁界 成分を用いて解析を行う点からフルウェーブ解析と呼ぷ場合もある。時間領域に おける数値計算は、現在のディジタルシステムにおいて重要であるパルス伝搬を 扱う場合において、周波数領域計算に比ペ優位で、フーリェ変換を利用して周波 数領域換算も可能である点でも有効な数値計算法である。数値計算法の中でもマ クスウェル方程式の差分表現に基づく時間領域解析法は一般にシミュレーション 法として知られている。シミュレーション法が一般の数値計算法と分類される理 由は、有限要素法、境界要素法、モーメント法等に代表される数値計算法が多く の場合、特定の電磁界モードの固有状態とそれに対応した特性パラメータを計算

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するのが一般 的であるのに対して、シミュレーション法は時間のみを陽なパラメ ータとして状 態を計算する点にあり、あたかも実際に起こる現象を計算機の中に 再現し、そこ で実験を行うと考えてもよい点からである。シミュレーション法と して分類され るマクスウェル方程式に基づく時間領域における数値計算法として は有限差分時 間領域法(FD―TD:Finite―Difference Time―Domain)、伝送線路 行 列法 (TLM:Transmission LineMatrix)、 空間 回路 網 法(SNM:Spatial Net workMethod)が挙げ られる。有限差分時間領域法はマクスウェル方程式を直 接時 間軸上で差分 し逐次的に界分布を求めていく手法で、数値的安定性に問題が生じ ることがある が、計算効率に優れている特徴をもつ。また、伝送線路行列法、空 間回路調法は マクスウェル方程式を満足する電磁界の等価回路網を考え、それを 時間軸上で差 分し逐次的に界分布を求めていく手法で、記憶容量が大きい等計算 効率に難点を もっが、数値的安定性に優れている。最近、これらのフルウェーブ 解析であるシ ミュレーション法をマイクロ波回路の解析に適用する試みが、盛ん に 行わ れて いる。 ICチップ上の回路において信号の波動性が見え始める領 域す な わ ち 回 路 の 物 理長 と信 号の 波長 の比 が1に 近づ く周 波数 は数 十GHz以上 の高 周波領域であ り、この領域では、全電磁界成分を用いたフルウェーブ解析が必要 と な る 。 実 際 、 周波 数が ミリ 波領 域に 近 づく に従 い、MMICチッ プ上 の回 路を 分布定数回路 として考えるべき領域に入り始め、一部、集中定数キャパシタンス、

インダクタン スを併用しつつ、分布定数回路構成のモノリシック化の試みが行わ れ て い る 。 さ ら に 、 近 年 盛 ん に 報 告 さ れ て いるlo OGHZ級 のft、f・aエ を有 する高速集積 デパイスやピコ秒オーダの立ち上がりを持っ電気パルスを発生する フオトコンダ クテイブスイッチの回路応用を考えた場合、デパイスを含めた系全 体 の分 布定 数的取り扱いによるの設計が必須と なると予想され、その意味で、L SIチッ プ上 のモ ノリ シッ ク 回路 に対 するフルウェーブ解析は、今後の高速 回路 技術の柱であ ると言える。

  また、広帯 域な回路の設計において分布定数効果と非線形素子を一体に解析す る 方法 が必 要と なっ てお り 、そ れら は一般に、配線系のLC梯子回路に非線 形素 子の等価回路 を付加することで計算されているが、放射損等の損失の取り扱いや 線路パラメー タの周波数分散特性が考慮されない等の問題がある。それに対して、

最近、非線形 回路解析に対する解析法として非線形部と線形部を切り分けて効率

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よく計算するハーモニックパランス法が提案されている が、基本的に定常状態の 解析で考慮し得る高調波の次数を実質的にあまり多くと れない等の問題があり、

適用できる回路が限定されている。

  そこで、本諭文では、上述の問題の解決のため、従来 において分布定数受動回 路の解析に用いられているフルウェーブ数値計算法であ るマクスウェル方程式の 直接の差分表現である有限差分時間領域法およびマクス ウェル方程式を満たす電 磁界の等価回路の差分表現である空間回路網法に非線形 素子の等価回路を組み込 むことで、集積回路における配線系の分布定数効果およ び素子の非線形特性両者 を考 慮し た統 一的3次元 フルウェーブ回路解析法の提案を行っている。本解析法 により、分布定数回路は物理的な構造、材料パラメータを用いて容易に考慮され、

回路解析とともに従来の電磁界解析が一体化して行われ 、従来から提案されてい る様々な回路解析では困難であった線路の周波数分散特 性および回路からの放射 損等 を含 めた 非綜 形回路の厳密な解析が可能となる 。第1章では電磁界解析法の 分類 、本 論文 の構 成について述べている。第2章では数値計算法である有限差分 時間領域法、空間回路網法にっいて簡単に説明を行い、 空間回路網法については 遅波 特性 を利 用し た可変的空間離散化法について述 べている。第3章では、高周 波帯で問題となる集積回路配線系の導体損、誘電体損お よび放射損等の損失の取 り扱いにっいて述ペ、その取り扱いについてエネルギー 保存則を用いて妥当性を 諭じ てい る。 第4章では 半導体素子の解析においてスカラポテンシヤル、ベク卜 ルポテンシヤルを用いた電界の縦成分、横威分両者を考 慮した厳密な解析法につ いて提案し、従来の電界の縦成分のみを考慮した解析法 との比較を行っている。

第5章で は、 第3章 およ ぴ第4章で の取 り扱 いを 利用 し、 広帯 域な 回路 の回路設 計で必要とされる配線系の分布定数効果および素子の非 線形素子特性を考慮した 統一 的3次元 フル ウェ ーブ 解 析法 につ いて 提案して いる。第6章では、本研究の 総括を行っている。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

深井 長谷川 小柴 吉田

一郎 英機 正則 則信

    学 位 論 文 題 名

素 子 特 性 を 考 慮 し た3次 元 フ ル ウ ェ ー ブ 回 路 解 析 法 に 関 す る研 究

  近 年 、 半 導 体 技 術 の 進 歩 に 伴 う 集 積 回 路 の 高 集 積 化 、 高 周 波化 は 著し <、 それ に 伴 い 回 路 内 部 に お い て も 信 号 の 波 動 性 が 見 え 始 め る 領 域 に はい っ てい る。 回路 の 分 布 定 数 効 果 は 信 号 の 伝 搬 遅 延 問 題 等 に 既 に 現 れ て お り 、 その 意 味で 、回 路の 分 布 定 数 的 取 り扱 いは 回路 設計 に おい ては 必要 不可 欠 なも のと なっ て いる 。ま た、

回 路 設 計 に お い て は 最 近 の 計 算 機 性 能 の 向 上 に 伴 い 、 差 分 法 、有 限 要素 法、 境界 要 素 法 等 の 数 値 計 算 法 の 利 用 が 実 用 的 と な っ て き た 。 数 値 計 算法 の 中で もス ーパ ー コ ン ピ ュ ・ ータ の出 現に 伴い 可 能と なっ たマ クス ウ ェル 方程 式の 差 分表 現に 基づ く 計 算 法 は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法 と し て 、 数 値 計 算 法 の 中 で も 分類 さ れ、 電磁 界解 析 に 用 い ら れ て い る 。 有 限 要 素 法 、 境 界 要 素 法 、 モ ー メ ン ト 法等 に 代表 され る数 値 計 算 法 が 多 く の 場 合 、 特 定 の 電 磁 界 モ ー ド の 固 有 状 態 を 計 算す る のが 一般 的で あ る の に 対 し て 、 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法 は 時 間 の み を 陽 な パ ラ メー タ とし て状 態を 計 算 す る 点 に あ り 、 あ た か も 実 際 に 起 こ る 現 象 を 計 算 機 の 中 に再 現 し、 そこ で実 験 を 行 う と 考 え て も よ い 手 法 で 、 時 間 軸 上 で 現 象 の 可 視 化 が 行え る とい う点 でも 有 効 な 解 析 法 で あ る 。

  本 論 文 は 広 帯 域 な 回 路 設 計 に お い て 必 要 と な っ て い る 配 線 系の 分 布定 数効 果お よ び 素 子 の 非 線 形 素 子 特 性 両 者 を 考 慮 し た 回 路 解 析 を 目 的 と して 、 従来 にお いて 分 布 定 数 受 動 回 路 の 解 析 に 用 い ら れ て き た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 法と し て分 類さ れる 3次 元 電 磁 界 解 析 法 で あ る 有 限 差 分 時 間 領 域 法 お よ び 空 間 回 路 網 法 に 素 子 の 等 価

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回路を組み込む ことにより統一的3次元フル ウェーブ回路解析法の提案を行って いる。

  第1章では、回路設計の立場から見た電磁 界解析法の分類を試み、さらに、本 論文の構成につ いて述べている。第2章では 、数値計算法としてマクスウェル方 程式の直接の差分表現である有限差分時間領域法、マク スウェル方程式を満たす 電磁界の等価回路網の差分表現である空間回路網法について説明を行い、さらに、

微細構造解析に おいて必要となる可変的空間離散化法について述べてい る。第3 章では、回路配線系において問題となる導体損、誘電体 損および放射損等の損失 の3次元電磁界解析法における取り扱い法に ついて述ベ、その妥当性をェネルギ ー保存則により 検討している。第4章では、 高周波帯で問題となると予想される 横波電界を考慮した半導体素子の解析について、スカラ ポテンシヤルとべクトル ポテンシヤルを用いた電界の縦成分および横成分両者を 用いた解析法を提案し、

ステップリカパリーダイオードを例として従来の縦成分 電界のみを考慮した解析 との比較を行っている。その結果、横成分電界は縦成分 電界に比ペ十分小さく、

従来の縦威分電界のみによる解析法で十分であることを示している。第5章では、

配線系の分布定数効果と素子の非線形素子特性両者を考慮した解析を目的として、

分布定数受動回 路の解析に用いられている3次元電磁界解析法である有限差分時 間領域法、空間回路網法に素子の集中定数素子を導入法 を示している。さらに、

本解析法をダイオードおよび卜ランジスタを合むコプレ ーナ線路解析に適用し、

その有効性を示している。

  以上を要するに、本論文は、広帯域な回路設計におい て必要となる配線系の分 布定数効果および素子の非線形特性両者を考慮した解析 法の提案を行い、その有 効性を述ぺたもので、その提案は電磁波工学、回路設計 に貢献するところ大であ る。 よっ て著 者は 、博 士( 工学)の学位を 授与される資格あるものと認める。

参照

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