古本説話集における希望表現について
一語を見る程度である。 テキストには、岩波書店刊新日本古典文学大系 『古本説話集』
⑷を用い る。その底本は文化庁蔵本 (梅沢記念館旧蔵) である。複製本
⑸により表 記を確認した。なお、傍線部は原文の表記にもどした。 二、希望表現の構成形式 古本説話集における希望表現と認められる構成形式及びそれぞれのお およその用例数は以下の通りである。 「~ムト思フ」 (一六例)
「~給ヘ」 (六例)
「ホシ」 (一三例)
「願 ネガフ」 (四例)
「望 ノゾム」 (一例)
「祈 イノル」 (一四例)
「乞・請 コフ」 (六例)
「求 モトム」 (五例) 目次
一、はじめに 二、希望表現の構成形式 三、各形式の用法 四、おわりに 一、はじめに 本 稿 は、 別 稿
⑴を 受 け、 古 本 説 話 集 を 研 究 資 料 と し て、 そ れ に お け る 希望表現
⑵の実態を解明しようとするものである。
古 本 説 話 集 は、 『日 本 古 典 文 学 大 事 典 』
⑶な ど に よ る と、 唯 一 の 写 本 で ある梅沢記念館蔵鎌倉中期写本には書名が記されていないが、昭和一八 年 (一 九 四 三 ) に 重 要 美 術 品 に 認 定 さ れ た 際 に 仮 題 と し て 付 さ れ た 「古 本 説 話 集 」 を 通 称 と し て 用 い る こ と が 多 い。 原 書 名 未 詳、 編 者 未 詳 の 説 話 集 で あ り、 そ の 成 立 に つ い て は 諸 説 が あ る が、 大 治 年 間 (一 一 二 六 ~ 一 一 三 一 ) 成 立 が 有 力 で あ る。 前 半 は 世 俗 説 話 四 六 話、 後 半 は 仏 教 説 話 二四話、計七〇話を集録する。今昔物語集・宇治拾遺物語・世継物語と 共通する説話を多く含む。本文は平仮名で表記され、僅かに漢字表記の 古本説話集における希望表現について
柴
田 昭 二
連
仲 友
二
「 バ ヤ」 (九例)
「ガナ」 (一例)
「テシガナ」 (一例)
「ナム」 (二例)
「マホシ」 (二例)
「マシ」 (一例)
古本説話集における希望表現の構成はこれまで考察してきた宇治拾遺 物語などと同じく、慣用形式、名詞・形容詞・動詞形式、終助詞・助動 詞 形 式 に 広 く 分 布 し て い る。 慣 用 形 式 は 「~ ム ト 思 フ 」「~ 給 へ 」、 名 詞 形式は 「願」 、形容詞形式は 「ホシ」 、動詞形式は 「願フ」 「望ム」 「祈ル」 「乞 フ 」「請 フ 」「求 ム 」、 終 助 詞 形 式 は 「 バ ヤ 」「ガ ナ 」「テ シ ガ ナ 」「ナ ム 」、 助動詞形式は 「マホシ」 「マシ」 が見られる。しかし、希望表現の重要な 構 成 形 式 で あ る 「~ ム ト ス 」 お よ び 音 読 形 式 の 名 詞 「欲 」、 助 動 詞 形 式 の 「願ハクハ」 は見られない。なお 「~ムトス」 「~ムズ」 はすべて将然の意 で用いられる。
三、各形式の用法
(一)
慣用形式の用法
1 、「~ムト思フ」
希 望 表 現 と 認 め ら れ る 「~ ム ト 思 フ 」 は 一 六 例 見 ら れ、 主 に 和 歌 と 会 話文に用いられている。
( 1 )代はらむとおもふ 命は惜しからでさても別れむ ほ どぞ悲しき
(上五 四一一頁) 例 ( 1 ) は和歌における用例である。 「わが子に代りたいと思う私の命 は」 の意と解され、希望表現の下位分類の 「願望
⑹を 「説明」
⑺する用法で ある。 ( 2 ) 国 へ 下 り 着 き て、 い つ し か と 文 上 け む と 思 ふ に、 た し か な る 便 り もなし。 (上二八 四三六頁)
( 3 )「我行ひしことは、一切衆生の苦を抜かんと思ひ てこそ、芥子ばか り身を捨てぬ所なくは行ひしか。 」(下五五 四七〇頁)
( 4 )「こ の 辺 に す ま む と 思 ひ て 来 た る に、 家 も な し。 便 り も な け れ ば、 いかゞせまし」 と言へば、 (下六二 四九〇頁)
例( 2 )は 「早く京へ手紙を出したいと思うが、 」の意、例 ( 3 )は 「衆生 の苦を抜きたいと思って、 」の意、例 ( 4 )は 「この辺に住みたいと思って 来たが、 」の意と解され、いずれも従属節に用いられて、 「願望」 を「説明」 する用法である。
2 、「~給へ」 の用法
「~
給 ヘ 」 は 六 例 見 ら れ、 い ず れ も 会 話 文 か 心 話 文 に お け る 用 例 で あ る。
( 5 )「わが頼み奉りたる観音、助け給へ 」と思ふ ほ どに、
(下四八 四五六頁)
( 6 )仏の御前に向きて、 「観音、助け給へ 」と手をすりて惑ふに、
(下四九 四五七頁)
古本説話集における希望表現について
三 (7)「大悲観音、助け給へ」と言ふよりほかにまた申こともなかりければ、(下六七 五〇六頁)例(5)(6)は心話文、例(7)は会話文における用例で、いずれも命令形を取りながら神仏に対して「助けてほしい」という祈りの心情を表し、「希求」⑻を「表出」⑼する用法である。
(8)「疾く法師になさせ給へ」と、涙にむせかへりて、泣く〳〵言ひければ、(上四〇 四四六頁)
例(8)は会話文における用例で、「早く法師にならせてほしい」の意と解され、向かう対象は神仏ではなく、貴い聖人に向かい依頼・懇願する命令形を取りながら人に対する「希求」を「表出」する用法である。
ここで指摘されるのは、古本説話集における「~給へ」の用例は「願クハ」と呼応して用いられていないことである。即ち、「願クハ~給ヘ」の形ではなく、単独の「~給へ」の形で用いられている。考えるに、「願クハ」は元々漢文訓読語で、漢文訓読調の文献に多用されるが、古本説話集は和文脈の文章であり、漢文訓読体の表現「願クハ~命令形」に対応する希望表現と考えたい。
(二)
形容詞、名詞、動詞形式の用法
1 、「ホシ」 の用法
形容詞「ホシ」の用例は一三例見られ、その内「ホシサ」は一例、「ホシガル」が一例含まれる。
(9)鶯よなどさは鳴くぞ乳やほしき小鍋やほしき母や恋しき (上一六 四二二頁)
例(9)は和歌における用例で、「乳がほしいのか。小鍋がほしいのか。」の意と解され、「願望」を「説明」する用法である。
(
10)物のみほしくて、経も読まれず、念仏だにせられず。
(下五三 四六四頁)
例(
れ、これも「願望」を「説明」する用法である。 10)は地の文における用例で、「物を欲がるばかりで、」の意と解さ
(
11)「今二三日の程、馬の草の少し
ほしき。くれてんや」と言へば、
(下五四 四六八頁)
例(
れ、これは「願望」を「表出」する用法である。 11)は会話文における用例で、「馬の草が少し欲しい。」の意と解さ
(
12) さて、物のほしさも失せぬ。(下五三四六五頁)
(
13)「陸奥国より、この馬をたゞ据えて上らせ給つる馬を、よろづの人
のほしがりて、」(下五八 四八〇頁)
例(
接尾語「サ」と複合した名詞用法である。一方の例( 12)は「物を欲することもなくなった。」の意と解され、「ホシ」と
た他人の希望を表現する動詞用法である。 この馬を欲しがって、」の意と解され、「ホシ」と接尾語「ガル」と複合し 13)は、「多くの人が
また、「ホシ」の対象物は、例(
11)における「乳」「小鍋」、例(
おける「馬の草」、例( 13)に
15)における
「馬」を除けば、他はすべて「物 ほし」
四
の慣用的な用例である。
2、「願」の用法
「願
」 は 四 例 見 ら れ、 そ の 内 漢 字 で 表 記 さ れ た 音 読 形 式 の 名 詞 「願 」 は 二例、訓読形式の動詞 「願フ」 は二例見られる。
(
て給ふ。 (下六三 四九三頁)
14) い ま 一 人 は、 后 の 御 裳 の 裾 を ひ き 被 き て 伏 し 給 て、 多 く の 願 を 立
例(
仏教的な内容で名詞用法である。
14)は 「多くの願をお立てになった」 の意と解される。この 「願」 は
(
15
)もろ〳〵のねかひ みな満ちぬることなり。 (下五三 四六四頁)
(
と騒ぎて、 (下五八 四八二頁)
16)「馬 を が な 」 と ね か ひ 惑 ひ け る 程 に、 こ の 馬 を 見 て、 「い か に せ ん 」
例(
より広い 「事物を願うこと」 を表すものである。例 (
15)における 「ねがひ」 は動詞連用形の名詞法であり、仏教的な 「願」
は複合動詞の一部で、実動詞用法である。
16)における 「ねがひ」
3、「望」の用法
「望」
は一例見られる。
(
17
)挙周、のそむ 事有けるに、申文の奥に書きて、 (上五 四一一頁) 例(
17
)における 「のぞむ」 は動詞連体形で、実動詞用法である。
4、「祈」の用法
「祈」
は一四例見られ、希望表現の構成形式において多い存在である。
(
るなり。 (下五二 四六三頁)
18) 人 の い の り は、 貴 き も き た な き も、 た ゞ よ く 心 に 入 り た る が 験 あ
(
19
)「母の尼していのり はすべし」 と、 (下五二 四六三頁)
例 (
18
)(
名詞用法である。
19) における 「いのり」 は 「祈ること」 の意で、動詞連用形の
(
20
)「御いのり せよ」 といふ仰もなかりければ、御しんにも召さず。
(下五二 四六一頁)
(
21
)「それを召していのら せさせ給はば、怠らせ給なむかし」 と申せば、
(下六五 五〇〇頁)
例(
20
)(
21
)は 「祈る」 の意であり、実動詞用法である。
(
言へば、 (下六五 五〇一頁)
22)「そ れ は、 た ゞ 今 参 ら ず と も、 こ ゝ な が ら い の り 参 ら せ 候 は ん 」 と
(
23
)「さらば、いのり 参らせん。 」(下六五 五〇一頁)
例(
22
)(
23
)における 「祈り参る」 は複合動詞形式であり、実動詞用法
古本説話集における希望表現について
五である。
5、「乞」の用法「乞」
は五例見られる。
(
へ」 とも言はめ、 (下五三 四六三頁) 24 ) 雪消えたらばこそ出でてこしき をもせめ、人を知りたらばこそ 「訪
例 (
を求める、即ち托鉢のことである。 24 ) における 「乞食」 は出家者が仏の教えに従って門立ちをして食
(
りけり。 (上二四 四二八頁) 25 ) 今 は 昔、 逢 坂 の 関 に、 行 き 来 の 人 に 物 を こ ひ て、 世 を 過 ぐ す 物 あ
(
26 )「あの男の持ちたる物は何ぞ。かれこひ て、我に得させよ」 と、
(下五八 四七六頁)
(
27 )隣の郡の人も、聞きつゝ、物こふ に従ひつ取らす。
(下六二 四九一頁)
(
びて、例の物こひ に来たりけるを、 (下六五 四九八頁) 28 ) 大 き な る 校 倉 の あ る を 開 け て、 物 取 り 出 で さ す る 程 に、 こ の 鉢 飛
例(
25 )(
26 )(
27 )(
28 )における 「こふ」 はいずれも実動詞用法である。
6、「請」の用法
「請」
は一例見られる。
(
き上がるべき心地もせず。 (下五三 四六三頁) 29 ) 五 六 日 こ ひ 念 ず れ ば、 十 日 ば か り に な り に け れ ば、 力 も な く、 起
例(
動詞形式の実動詞用法である。 29 )における 「こひ念ずれば」 は「仏に祈念する」 の意であり、複合
7、「求」の用法
「求」
の用例は五例見られる。
(
命生くばかりの物をもとへ て賜べ」 と申程に、 (下五三 四六四頁) 30 )「高き位をもとめ 、重き宝をもとめ ばこそあらめ、たゞ今日食べて、
(
31 )「近く水やある」 と走り騒ぎ、もとむ れども、水もなし。
(下五八 四七七頁)
(
32 )御殿籠り入らせ給つれば、水もとめ 候ひつれども、
(下五八 四七八頁)
例(
30 )(
31 )(
「水を求め、 」の意であり、いずれも実動詞用法である。なお、例 ( 32 )は 「高い地位を求め、 」「貴重な宝を求め、 」「物を求め、 」
おける 「求べて」 は原文 「へ」 とあり、音韻変化によるものと解釈する。 30 )に
(三)
終助詞・助動詞の用法
1、「バヤ」の用法
六
古 本 説 話 集 に 「 バ ヤ 」 は 九 例 見 ら れ、 そ の 内 和 歌 に 一 例、 会 話 文 に 二 例、心話文に六例見られる。
(
33) めぐりくる春〳〵ごとに桜花いくたび散りき人に問はゝや
(上三八 四四四頁)
例(
され、 「願望」 を「表出」 する用法である。 33) は和歌における用例で、 「人に聞いてみたいものだ。 」の意と解
(
34)「か く お か し く、 め で た き 御 有 様 を 「人 聞 き け り 」 と 思 し 召 さ れ ん 料に、知られはや 」など言えば、 (上一 四〇四頁)
(
35) 俊賢の宰相、 「内侍になさはや 」とのたまひけるとぞ。
(上一二 四一九頁)
例 (
34)(
侍にして ほ しい」 の意と解され、 「願望」 を「表出」 する用法である。 35) は会話文における用例で、 「御所の方に知られたい」 「内
(
36)「た
ゞ す ゞ ろ に を の づ か ら 物 を 食 は ゝ や 」 と 思 へ ば、 め で な く し 据 ゑて、きとは得ぬ。
(下六八 五一〇頁)
(
37)「手もあらはや
」と思へば、すゞろに出で来。 (下六八 五一〇頁)
例 (
36)(
しい。 」の意と解され、 「願望」 を「表出」 する用法である。 37) は 心 話 文 に お け る 用 例 で、 「物 を 食 べ た い。 」「人 手 が 欲
2、「ガナ」の用法「ガナ」
は二例見られる。
(
一七 四二二頁) 38) 身 投 ぐ と も 人 に 知 ら れ じ 世 の 中 に 知 ら れ ぬ 山 に 見 る よ し も 哉 (上
(
39)「馬をかな
」 と願ひ惑ひける程に、この馬を見て、 「いかにせん」 と 騒ぎて、 (下五八 四八二頁)
例(
38) は和歌、 (
い。 」「馬が ほ しい。 」の意と解され、 「願望」 を「表出」 する用法である。 39) は心話文における用例で、 「身を投げる術が ほ し
3、「テシガナ」の用法「テシカナ」
は一例見られる。
(
40) 十日の国にいたりてしかな (上五 四一〇頁)
例 (
と解され、 「願望」 を「表出」 する用法である。 40) は 和 歌 に お け る 用 例 で、 「十 日 に は あ の 国 に 到 着 し た い 」 の 意
4、「ナム」の用法「ナム」
は和歌に二例見られる。
(
41) 頼みては久しく成ぬ住吉のまつこのたびのしるし見せなむ
(上五 四一一頁)
(
42) 心みに雨も降らなん 宿過ぎて空行く月の影やとまると
古本説話集における希望表現について
七(上六 四一二頁)
例 (
41
)(
用法である。 でも降って ほ しい。 」 の意と解され、他者に対する 「希求」 を 「表出」 する
42) は 和 歌 に お け る 用 例 で、 「霊 験 を し め し て ほ し い。 」「雨
5、「マホシ」の用法
「マホシ」
は二例見られる。
(
ほ しう おぼせど、かくうち合はぬ身の有様なれば、思ひもかけず。
43) 古 め か し う お ぼ し つ ゝ み て お は す る に、 気 高 き 交 ら ひ も せ さ せ ま
(上二八 四三四頁)
(
44
)会はぬまでも、見に行かま ほ しけれ ど、 (下六四 四九五頁)
例 (
43
)(
けれど、 」の意と解され、 「願望」 を「説明」 する用法である。
44) は 「気 高 い 交 じ ら い を し た い と 思 う が、 」「見 に 行 き た い
6、「マシ」の用法
「マシ」
は一例見られる。
(
45
)世中にあらましか ばと思ふ人なきは多くもなりにけるかな
(上三六 四四三頁)
例(
の意と解され、 「希求」 を「説明」 する用法である。
45)は和歌における用例で、 「世の中にもっといて ほ しいと思う人」 「希求」 を「表出」 する。終助詞 「マホシ」 「マシ」 は「願望」 を「説明」 する。 終助詞 「 バ ヤ」 「ガナ」 「テシガナ」 は「願望」 を「表出」 するが、 「ナム」 は 用 法 が 見 ら れ る が、 「望 」「乞 」「請 」「求 」 は 実 動 詞 用 法 の み 見 ら れ る。 と」 を表す 「願ひ」 及び実動詞用法が見られる。 「祈」 は名詞用法と実動詞 見られる。 「願」 は仏教用語としての音読形式の名詞用法と広く 「願うこ それに接尾語と複合した 「ホシサ」 「ホシガル」 で名詞用法、動詞用法が 「表出」 する用法である。 「ホシ」 は主に 「物欲し」 の形で 「願望」 を表し、 は「願クハ~給ヘ」 の形式ではなく、単なる 「~給へ」 の形式で 「希求」 を られ、希望表現の下位分類の 「願望」 を「説明」 する用法である。 「~給へ」 各 形 式 の 用 法 に つ い て 見 る と、 「~ ム ト 思 フ 」 は す べ て 従 属 節 に 用 い れは古本説話集の文体に原因があると考えられる。 読 形 式 の 名 詞 「欲 」、 助 動 詞 用 法 の 「願 ハ ク ハ ~ 給 ヘ 」 は 見 ら れ な い。 こ 古本説話集における希望表現の構成形式は多様にわたる。しかし、音
四、おわりに総じて言えば、古本説話集における希望表現はこれまで考察してきた 説話文学資料の希望表現と小異を有するが、基本的には同じ傾向のもの である。
【参考文献】 川口久雄解題 『重要文化財 梅沢本 古本説話集』 勉誠社 古典資料類従 6
昭和五二年四月発行
【注】 ( 1 )柴田昭二、連 仲友 「希望表現の通史的研究 序説」 『香川大学教育学部研究報 告第 Ⅰ 部第 1 09 号』 平成
である。また、その下位分類として、話者自身の動作・状態に対して向けられ ( 2 ) こ こ で い う 希 望 表 現 と は、 人 の 願 い 望 み に 関 す る、 一 種 の 心 情 的 表 現 形 式
12年 3 月
八
る も の を 「願 望 表 現 」、 他 者 の 動 作・ 状 態 に 対 し て 向 け ら れ る も の を 「希 求 表 現 」 と 称 す る。 さ ら に、 希 望 を 直 接 発 す る 場 合 を 希 望 の 「表 出 」、 そ れ 以 外 の 問い質しや過去などの場合を希望の 「説明」 と称する。現代日本語においては、 「願望」 は「~たい」 の形で、 「希求」 は「~て ほ しい」 の形で表現するのが最も一 般的である。したがって、一人称現在形形式 「一人称~たい」 「一人称~て ほ し い」 はそれぞれ 「願望」 、「希求」 の「表出」 であり、一人称の過去形 「一人称~た か っ た 」「一 人 称 ~ て ほ し か っ た 」、 二 人 称 形 式 「二 人 称 ~ た い か 」「二 人 称 ~ て ほ しいか」 、三人称の 「三人称~たがる」 「三人称~て ほ しがる」 などの形式は、 「説明」 にあたる。 ( 3 )『日本古典文学大事典』 第二巻 岩波書店 一九八四年一月二〇日第一刷発行 ( 4 )『古 本 説 話 集 』 中 村 義 雄、 小 内 一 明 校 注 岩 波 書 店 新 編 日 本 古 典 文 学 全 集
( 9 )注 ( 2 )参照。 ( 8 )注 ( 2 )参照。 ( 7 )注 ( 2 )参照。 ( 6 )注 ( 2 )参照。 発行 ( 5 )『重要文化財 梅沢本 古本説話集』 勉誠社 古典資料類従 6 昭和五二年四月 一九九〇年一一月二〇日第一刷発行 42 (しばたしょうじ 香川大学教育学部教授)
(れんちゅうゆう 広島市立大学客員研究員)