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日本内科学会雑誌第105巻第7号

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Academic year: 2021

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はじめに

 多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)と腎 障害(renal impairment:RI)は古くから密接な 関係があり,1840年代に初めてMMの患者が報 告された数年後にHenry Bence JonesがMMにお ける異常な尿蛋白を報告している.これが後の Bence Jones protein(BJP)であり,kappa(κ) とlambda(λ)の2種類の軽鎖が同定された.正 常な免疫グロブリンを構築する重鎖と軽鎖以外 に も 余 分 に 産 生 さ れ る 遊 離 軽 鎖(free light chain:FLC)は,そのκ/λ比の異常が診断や治療 マーカーとして重要とされている.今回,その FLCに よ る 多 様 なRIの 病 態 と 臨 床 的 特 徴 の ほ か,新たに提唱されたmonoclonal gammopathy of renal significance(MGRS)について概説する.

1.骨髄腫と腎障害の疫学

 RIは新規発症MMの約 2~4 割に認められ,約 1割は透析が必要となり,経過中に約半数の症例 がRIを呈する1).RIは治療対象となる症候性骨髄 腫の重要な骨髄腫診断事象の1つである(表)2) 近年の欧米の報告では,約 5 割の新規MM症例 が 糸 球 体 濾 過 率(glomerular filtration rate: GFR)60 ml/分/1.73 m2未満のRI,つまり慢性腎 臓病(chronic kidney disease:CKD)のステージ 3 以上を合併していたと報告され,この頻度は

多発性骨髄腫の腎病変と

MGRS

要 旨 水野 真一  多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は,その経過中に2人に1人 は腎障害(renal impairment:RI)を合併し,腎障害は予後不良因子であ る.その腎障害はいくつかの障害機序に分かれ,多彩な腎病理像を呈し, 骨髄腫のみならず,MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)の段階でも起こり得る.近年,MGUS合併の腎障害の中で M蛋白が強く腎病態に関与する疾患を新たにMGRS(monoclonal gam-mopathy of renal significance)と提唱し,M蛋白への早期介入が検討さ れ始めており,臓器予後を見据えた視点での評価や血液内科以外からのア プローチも期待される.

〔日内会誌 105:1224~1230,2016〕

Key words 骨髄腫腎,MGUS,MGRS,腎臓内科,蛋白尿

地域医療機能推進機構仙台病院腎臓疾患臨床研究センター

Multiple myeloma:from diagnosis to the up-to-date treatment. Topics:IV. Multiple myeloma with renal impairment and monoclonal gammop-athy of renal significance.

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1990 年からほぼ変化していない3).なおMM発 症時のRIの程度が重度なほど,生命予後も悪化 し,RIは予後不良因子である.

2.骨髄腫腎について

 MMのRIで一番頻度が高い腎病態は円柱腎症 であり,骨髄腫腎とも呼ばれ,急性腎障害で発 症する.遠位尿細管付近で過剰な軽鎖と正常で も 存 在 す るTamm-Horsfall蛋 白(THP) が 結 合 し,円柱を形成することで尿細管を閉塞し,乏 尿を来たす.そして同部位への炎症性細胞の浸 潤による尿細管細胞の傷害が起こり,サイトカ インによるアポトーシスや間質の線維化も進行 し,徐々に慢性腎不全に至る.  MMのRIではFLC自体の腎毒性による直接的 傷害機序も考えられる(図 1)4).本来,血液中 のFLCは低分子蛋白のため容易に糸球体から濾 過されるが,健常者の場合,近位尿細管細胞 (proximal tubular cell:PTC)で再吸収され,ラ イソゾームで処理されるため,ほとんど尿中に は検出されない.MMでは大量のFLCが糸球体で 濾過され,PTCで過剰な再吸収が起きると,酸 化ストレスが生じ,NFκBなどを介して炎症性サ イトカインが産生され,尿細管間質の炎症や線 維化,アポトーシスを誘導し,腎障害が進行し ていく.これにより,PTCの水・電解質,酸塩 基の調節能が崩れ,尿細管性アシドーシスや腎 性糖尿,汎アミノ酸尿を呈するとFanconi症候群 に進展する.なお,Fanconi症候群はM蛋白の沈 着や結晶蓄積による尿細管細胞への障害などあ らゆる原因で起こり得る.また,過剰な軽鎖を 再吸収しきれなくなると,遠位尿細管へ過剰な 軽鎖が流出し,円柱を形成しやすい環境が整 う.この病態を考慮すれば,円柱腎症の発症以 前,つまり,骨髄腫細胞で過剰なFLCが産生さ れている段階からすでに腎組織では潜在的に腎 障害が進行していることになり,現在の骨髄腫 診断事象の基準では腎保護の視点からは課題が 残る.

3.骨髄腫腎の治療

 MM同様の新規薬を併用した治療を行う.新 規薬の中でもボルテゾミブは図1のごとく,FLC 産生を抑えることによる間接的な腎保護作用だ けでなく,NFκBを抑える作用も示唆されている ため,PTCでの炎症を直接抑える作用も期待さ れる.また,同薬剤は腎不全でも用量調整が不 要であるため,腎不全症例では使用しやすい. なお,骨髄腫腎において21日以内にFLCを60% 減少させると 8 割の症例で腎機能の改善を認 め,かつ生命予後も延長したと報告されてお り5),近年,FLCの除去を目的とした血漿交換や 特 殊 な ダ イ ア ラ イ ザ ー を 使 用 し た 血 液 透 析 (high cut-off membrane hemodialysis)も期待さ れているが,まだその明確な治療介入基準はな い.対症療法として補液や尿のアルカリ化,腎 毒性のある薬剤の使用を控えることも重要であ り,尿毒症症状が顕著な腎不全例では透析も検 討する.

表 ‌‌骨 髄 腫 診 断 事 象(myeloma defining events: MDE)(文献2より一部改変)

骨髄腫診断事象(Myeloma Defining Events:MDE) a.腎機能低下:以下のいずれか

1) 推算糸球体濾過率(eGFR)の年35%以上の低下 (他に原因がないこと)

2)ほかに原因がなくeGFR<50 ml/min/1.73 m2 3)腎生検でlight chain cast nephropathyを認める b.貧血:Hb<10 g/dl c.骨病変 d.高カルシウム血症:補正血清カルシウム>11 mg/dl e.症候性粘稠度亢進症状 ただし以下はMDEとみなさない ・ アミロイドーシス,単クローン性免疫グロブリン 沈着症(MIDD)のみで他のMDEを認めない場合 ・年2回を超える細菌感染のみ ・神経症状の存在

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4.M蛋白によるその他の腎障害

 M蛋白が関与する腎障害は前述した円柱腎症 以外にも多数存在し,その腎病態は障害される 部位により図 2のように分類され,障害される 部位により臨床症状も異なり,円柱腎症のよう に尿細管間質が障害される場合は,GFRの低下 がメインとなる.ALアミロイドーシスやmono-clonal immunoglobulin deposition disease (MIDD)のように糸球体が主に障害される場合 は蛋白尿がメインで,時にネフローゼ症候群で 発症する.  これらの腎疾患は,腫瘍細胞から産生された M蛋白やその一部の断片化した蛋白が沈着した り,結晶を形成し蓄積したりすることで障害を 起こす.沈着する線維の形状や特異な構造の違 いにより図 2のような多彩な腎病理診断名とな る.MMによる高Ca血症による二次的な腎障害 や NSAIDs(nonsteroidal anti-inflammatory drugs),造影剤などの腎毒性薬物も腎障害の一 因と考えられ, 特殊なtypeとしてC3 腎症with monoclonal gammopathyも挙げられる.C3腎症 自体は補体系の異常によりC3 のみが沈着する 膜性増殖性糸球体腎炎で,その中でもM蛋白が 補体制御因子に対する自己抗体活性をもつもの が,同疾患として位置づけられている.以下に 代表的なALアミロイドーシスとMIDDについて その特徴を記載する.その他の疾患は非常に稀 図1 軽鎖による腎障害のメカニズムと治療(文献4より一部改変)

FLC:free light chain,THP:Tamm-Horsfall glycoprotein,HCO-HD:high cut-off hemodialysis,ASK-1:apop-tosis signal-regulating kinase 1,MAPK:mitogen-activated protein kinase,NFκB:nuclear factor-kappa B, MCP-1:monocyte chemoattractant protein-1,TGF-β:transforming growth factor-β,CDR3:complemen-tarity determining region 3,NSAIDs:nonsteroidal anti-inflammatory drugs

FLCの過剰産生 酸化ストレス↑ MAPK pathway↑ NFκB pathway↑ 炎症 & 線維化 & アポトーシス 炎症性サイトカインや ケモカインの産生↑ (IL-6, IL-8, MCP-1, TGF-β, etc.)

c-Src↑, ASK1↑ FLCの過剰濾過 過剰なFLCの エンドサイトーシス 糸球体 近位尿細管 細胞 尿細管 間質 【部位】 形質細胞 (骨髄腫細胞) 【病態】 抗腫瘍効果 (間接的腎保護作用) 血漿交換/ HCO-HD 直接的FLC除去 直接的腎保護作用? 尿細管における 再吸収機能障害 近位尿細管で再吸収 しきれなかった過剰なFLC FLCとTHPの結合 遠位尿細管へ Bence Jones蛋白 尿への排泄 乏尿(急性腎障害) [risk factor] 脱水/ 酸性尿 NSAIDs /利尿剤 CDR3の配列 による親和性 炎症性細胞浸潤 THP アミノ酸尿 腎性糖尿 電解質異常 尿細管性 アシドーシス 腎不全 新規薬 ボルテゾミブ? 円柱形成による閉塞 ⇒円柱腎症 Fanconi症候群

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な疾患のため割愛する. 1)ALアミロイドーシス  高齢者のネフローゼ症候群の原因となり,全 身臓器にM蛋白由来のアミロイド蛋白が沈着 し,多彩な全身症状を呈する.FLCの異常比を 呈することが特徴で,病理学的にはコンゴー レッド陽性の結節病変を糸球体に認め,小・細 動脈壁や尿細管への沈着も認める.典型的な軽 鎖型の場合,κ,λの免疫染色で偏りがある.電 子顕微鏡においては,ランダムに錯綜する 8~ 10 nmの細線維構造を認める.無治療の場合, 予後は約 1 年とされ,心アミロイド合併の場合 はさらに不良である. 2)MIDD  腎生検症例の約0.5%に認め6),円柱腎症の合 併も約20%に認める.腎臓以外にも多臓器に障 害を認めることがある.蛋白尿がメインで,約 半数に血尿を伴う.FLCの異常比も8割以上の症 例で認める.病理学的にはコンゴーレッド陰性 の糸球体の結節様病変や膜性増殖性糸球体腎炎 様変化を認める.免疫染色では軽鎖,重鎖のサ ブクラスにて単クローン性の沈着を認める.電 子顕微鏡では基底膜に細線維構造のない細顆粒 状沈着を認める.円柱腎症を伴うMIDDでは腎予 後は不良で約 4 カ月とされる7) 図2 M蛋白の腎障害部位とその代表的疾患およびMGUS-MGRS-Myelomaの関連 M蛋白に由来する腎障害部位は糸球体と尿細管間質に分けられ,前者は蛋白尿,後者は腎機能障害を呈 しやすい.主な代表的疾患は図のごとくである.MGRSの提唱によりM蛋白を産生する細胞を標的とし た早期治療介入が検討されている.

MGUS:monoclonal gammopathy of undetermined significance,MGRS:monoclonal gammopathy of renal significance,PGNMID:Proliferative glomerulonephritis with monoclonal IgG deposits

(臨床症状:蛋白尿↑ >eGFR↓) (臨床症状:eGFR↓>蛋白尿) [新規骨髄腫薬] [血液学的評価] *推奨治療(本邦ではまだ保険適応なし) [ネフロン] [障害部位および障害パターンと病名] MGUS Myeloma MGUS Myeloma 糸球体 尿細管間質 MGRS MGRS ALアミロイドーシス Monoclonal immunoglobulin deposition disease(MIDD) クリオグロブリン腎炎 細線維性腎炎 イムノタクトイド腎症 PGNMID

C3腎症with monoclonal gammopathy

円柱腎症 腫瘍浸潤

Others(脱水, NSAIDs,高Ca血症など) Light chain proximal tubulopathy (±Fanconi症候群/±結晶蓄積) 結晶蓄積性組織球症 MIDD ALアミロイドーシス ○ ○* ○ × ○* ×

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5.M蛋白の質と腎病態

 なぜM蛋白が多様性のある腎病理像を呈する かは,M蛋白の種類や性質,構造の違い,そし て沈着する臓器や部位との親和性,共存蛋白や 液性因子の存在など,あらゆる因子の関連が示 唆されている.例えば,円柱腎症は軽鎖におけ る 超 可 変 領 域 のcomplementarity determining region 3 の配列の違いにより,THPとの親和性 が異なり,M蛋白の「量」ではなく「質」も重 要であることが近年明らかになった8).また, 沈着するM蛋白の特徴として,アミロイドーシ スではλ鎖が多く,中でも腎アミロイドでは軽 鎖のvariable regionのVλ6 サブグループが多く, 逆にMIDDではκ鎖が多く,Fanconi症候群では Vκ1 が多い.

6.MGRSとは

 前述した多彩な腎病態は,MMのみならず, monoclonal gammopathy of undetermined signif-icance(MGUS)でも起こり(図 2),しばしば MGUS合 併 の 腎 障 害 な ど と 報 告 さ れ て き た. MGUSは年に1%程度がMMに移行するとされる が,血液学的に治療対象ではない.MMに進展 することなく,蛋白尿や腎機能障害を呈する MGUS患者は,M蛋白の組織親和性やその腎病 態への関与を考慮すれば,M蛋白量や腫瘍量が 少ない小さなクローンであっても,腎臓にとっ ては異常なクローン,すなわちdangerous small B cell cloneとも考えられてきたが9),M蛋白に対 するMM同様の治療対象にはならず,確立した 治療はなかった.  し か し,2012 年 にMGUS合 併 の 腎 障 害 の 中 で,血液学的にMMの診断および治療介入基準 を満たさずとも,M蛋白が強く腎病態に関与し ている疾患群をMGRSという概念で総称し,そ のM蛋白を産生するクローン細胞を標的とした 早期の治療介入を検討すべきと提唱された10) さらに近年,MGUSだけでなくクローン性B細胞 が産生するM蛋白による腎障害へも,そのB細胞 を標的とした治療が検討されている.ただ, MGRSの有病率や治療後の腎・生命予後などは まだ明らかでなく,今後の前向き臨床研究など が期待される.  当院の後ろ向きの検討では,1,190 例の腎生 検症例において,MGUS合併症例は 21 例,その うち腎生検後にMGRSが判明した症例は 10 例で あった(10/1,190例:0.8%)11).それ以外の11 例はM蛋白が関与しない腎疾患であった.両群 とも腎機能やM蛋白量には差がないにもかかわ らず,MGRS群において有意に蛋白尿が多く, かつ腎組織障害が高度であった.当院の腎生検 症 例 のMGRSの 有 病 率 は わ ず か 1% 未 満 で は あったが,腎障害を伴うMGUS症例の約半数が MGRSであったことからも,蛋白尿を伴うMGUS 症例は注意すべきである.

7.M蛋白患者へのアプローチ

 M蛋白が陽性である患者では,血液学的に腫 瘍量が少ないMGUSであってもMGRSのような疾 患群も存在するため,定期的に採血のほかに, 非侵襲的かつ簡便な尿検査も同時にフォローす べきである.腎臓専門医への紹介基準に関して は,以下のCKDガイドラインと同様である12)  ①高度蛋白尿   ( 尿蛋白/Cr比≧0.5 g/gCr または定性で 2+以上)  ②蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)  ③ GFR 50 ml/分/1.73 m2未満 (ただし以下も参照)  ・40 歳未満はGFR 60 ml/分/1.73 m2未満  ・70 歳以上ではGFR 40 ml/分/1.73 m2未満 ①~③のいずれかに該当するM蛋白症例は腎臓 専門医にコンサルトおよび腎生検を検討すべき である.特にMGRS症例では,糸球体疾患が多く, 腎機能障害が顕在化する前に蛋白尿が初発症状

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となることが多いため,尿検査は重要である.  近年,新規発症のMM患者の高齢化が進んで おり,今後,脳心血管イベント発症後で抗血小 板薬などの休薬が困難で腎生検が施行できない 症例の増加が見込まれる.腎臓内科医が常勤で いる施設も限られ,侵襲を伴う腎生検は実際の 臨床現場ではハードルが高い検査といえる.  ただ,腎生検をしなくとも蛋白尿の性質を評 価することで腎病態が推測できる.実施可能な 施設は限られるが,尿蛋白分画(図 3)を評価 することで円柱腎症は診断がほぼ可能である. さらにアルブミン尿の定量をすることでも,蛋 白尿の主たる原因蛋白がアルブミンなのか免疫 グロブリンなのかを判断できる.なお,一般尿 検査の注意点として,定性検査は尿中のアルブ ミンを検知するため,BJPなどの非アルブミン 尿が排泄される円柱腎症の場合,偽陰性になり やすい.そのため,M蛋白症例では必ず定性だ けでなく,尿定量検査を行うべきである.アミ ロイドーシスやMIDDではアルブミン尿が大量 に出るため,尿蛋白定性および定量でもほぼ一 致した所見となる.なお,尿細管間質マーカー であるβ2マイクログロブリンは尿細管の再吸収 機能が障害されると高値となりやすく,NAG (N-acetyl-β-D-glucosaminidase)は近位尿細管の 逸脱酵素のため,早期の器質的障害を反映する とされる.これらの尿検査を上手く組み合わせ ることで,ある程度の腎病態が把握可能となる.

おわりに

 MMの予後が不良となる要因の 1 つは,進行 した段階で見つかることである.進行した段階 では臓器障害も高度になり,進行した腎不全で は治療選択肢も限られてしまうため,非専門医 がいかに本疾患を早期に疑って専門医へ紹介で きるかも重要な予後規定因子と考えられる.  MMは免疫物質を産生する形質細胞の腫瘍で あるため,免疫疾患的な側面もあり,多彩な症 状を呈する「全身疾患」という特徴を兼ねそろ えた興味深い悪性腫瘍である.そのため,血液 内科が初診となることは稀である.その主訴は, 図3 M蛋白患者における蛋白尿の性質や尿細管間質マーカーによる腎病態の鑑別 蛋白尿の中のアルブミン尿の割合や尿細管間質マーカーの値を組み合わせることで,ある程度の腎病態が推測で きる.ただし,あくまで参考程度であり,確定診断は腎生検が必要であり,他の腎疾患が合併した場合はこの限 りではない. β2MG:β2 microglobulin, NAG:N-acetyl-β-D-glucosaminidase 円柱腎症タイプ 糸球体障害タイプ 尿細管間質障害タイプ 代表疾患例 円柱腎症 アミロイドーシス/MIDD Fanconi 症候群 尿蛋白分画(自験例) 尿蛋白 定性検査 軽度陽性(or 偽陰性) 中~高度陽性 陰性 or 軽度陽性 定量検査 中等度~大量 中等度~大量 ~少量 尿アルブミン定量 ~少量 中等度~大量 ~少量 尿細管間質マーカー (例:β2MG,NAG) ~↑↑ →~↑ ~↑↑ ↑ Alb分画① ②③④ ⑤γ分画↑ ① ②③④ ⑤ ① ②③④ ⑤

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高齢者における腰痛や貧血,健診での尿異常, 腎不全が進めば電解質異常や心不全,高血圧か もしれないし,アミロイドーシスであれば低血 圧や不整脈,神経障害,消化器症状かもしれな い.また,骨折や高Ca血症による意識障害で救 急外来を受診する症例もいる.大多数の内科医 にとって「MM=血液疾患」という印象が強い が,generalistが望まれる現代の医療事情も考慮 すれば,MMは多岐にわたる臨床症状を呈する 「総合内科疾患」と捉えて診療にあたるべきであ る.全身症状を呈するM蛋白症例をみた場合は, 腎機能だけでなく尿検査も評価し,疑わしい場 合は専門医への紹介を検討いただきたい. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし 文 献

1) Davenport A, Merlini G : Myeloma kidney : advances in molecular mechanisms of acute kidney injury open novel therapeutic opportunities. Nephrol Dial Transplant 27 : 3713―3718,2012.

2) 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針.第 3 版,文光堂,東京,2012.

3) Dimopoulos MA, et al : Significant improvement in the survival of patients with multiple myeloma presenting with severe renal impairment after the introduction of novel agents. Ann Oncol 25 : 195―200,2014.

4) 水野真一:骨髄腫の腎障害~成因の多様性,MGRSの意義を含めて~.Pharma Medica 33 : 27―31,2015. 5) Hutchison CA, et al : Early reduction of serum-free light chains associates with renal recovery in myeloma

kid-ney. J Am Soc Nephrol 22 : 1129―1136,2011.

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8) Ying WZ, et al : Mechanism and prevention of acute kidney injury from cast nephropathy in a rodent model. J Clin Invest 122 : 1777―1785, 2012.

9) Merlini G, Stone MJ : Dangerous small B-cell clones. Blood 108 : 2520―2530, 2006.

10) Leung N, et al : Monoclonal gammopathy of renal significance : when MGUS is no longer undetermined or insig-nificant. Blood 120 : 4292―4295,2012.

11) Mizuno S, et al : Clinicopathological characteristics of MGRS and MGUS with renal dysfunction in a single insti-tution. JSH 2013 (abstr PS-1-27).

12) 日本腎臓学会編:CKD診療ガイド 2012.東京医学社,東京,2012.  

参照

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