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博 士 ( 医 学 ) 橋 本 友 幸

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 橋 本 友 幸      学位論文題名

Traumatized Spinal Cord and Cauda Equina Demonstrated     by Computed Tomographic Myelographe (CTM)     in Thoraco‑Lumbar Burst Fractures

(胸・腰椎部破裂骨折におけるCTM による損傷脊髄・馬尾の観察)

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  [緒言]胸腰椎部脊椎損傷における破裂骨折の発生頻度は高く、神経損傷を伴い易い。しかし、

その 手術治療についてはいまだ議 論の余地が多い。破裂骨折 における神経損傷の多くは脊 柱管 内に 突出する椎体骨片によって発 生するとされ、従来、単純CTの所見から突出骨片の大き さや 損傷レベルとその 神経障害について議論されて きた。しかし、胸腰椎レベルには脊髄円錐上部、

脊髄 円錐、馬尾が存在し、同一レ ベルで同じ大きさの突出骨 片でも発生する神経障害の程 度に 差が生じうる。CTMによって脊髄や馬尾の同定 と脊髄末端の確認を行い、圧迫をうけている硬膜 柱の 形態やその断面積と神経障害 の程度や内容を比較した。 また、脊柱後方要素の破壊に 伴つ た硬 膜・神経損傷の可能性につい ても評価した。これらの結 果から破裂骨折の神経障害発 生の 病態把握や手術治 療の方針決定に役立てること を目的とした。

  [ 対 象 と 方 法 ]1985年 か ら1994年 の 期 間 で 受 傷2か 月 以 内 にCTMを 施 行 し た108 例 の 胸 ・ 腰 椎 部 破 裂 骨 折 を 対 象 と し た 。 年 令 分 布 は13〜74歳 ( 平 均46.3歳 ) で 男 性8 O例 、 女 性28例 で あ っ た 。 損 傷 レ ベ ル と そ の 症 例 数 はT12―18例 、Ll―46例 、L2−26例、

L3―8例 、L4ー6例 、L5−4例 で あ っ た 。108例 中68例 に 神 経 障 害 を 認 め た(Tl2―12 例 、Ll−34例 、L2―16例 、L3―3例 、L4ー2例 、L5―1例 ) 。Denis分 類 で はTypeA―26 例 、TypeB―62例 、TypeC一14例 、TypeD−4例 、TypeE−2例 で あ っ た 。 た だ し 、 屈 曲 伸 延 損 傷 と 破 裂 骨 折 の 合 併 損 傷 は 今 回の 調査 か ら除 外し た。CTスキ ャン は全 例Siemens製 Somatomuを 用 い 、 脊 柱 管 に 対 し て 垂 直 に ス キ ャ ン し た 。 ウ イ ン ド ウ 幅 は1000―2000 Hounsfield units、 ウイ ンド ウレ ベ ル′ は100―200units、ス ラ イス 厚は2mmで行 った 。計 測は マ イク ロコ ンピ ュー タ内臓 のデジタイザーを使用し、術 前CTM像上、硬膜柱圧迫の最 も著 しい スライス面での硬膜柱断面積 と圧迫のない本来の硬膜柱 断面積を計測し、その比を算 出し て硬 膜柱圧迫率とした。また、脊 髄円錐上部、脊髄円錐、馬 尾を同定し、それぞれの神経 組織 レベ ル でそ の比 を求 めた 。 脊柱 後方 要素 損 傷に ついても調 査し、造影剤の漏出を評価し た。

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  [結果]脊髄円錐上部での圧迫は16例(うち神経障害合併8例)、脊髄円錐部では60例(神 経損 傷42例)、馬尾レベルは32例(神経損傷18例)であった。脊髄末端は90例で同定さ れた 。このう ち54例はLl椎体レベ ル(13例 は椎体上 半分、41例は椎体下半分)、18例 はLl/2椎問板レベル、12儚亅はL2椎体レベル(8例は椎体上半分、4例は椎体下半分)、

4例 はTl2/Ll椎間板 レベル 、2例 はTl2椎体レベ ルで脊髄 が終わ っていた。神経損傷合 併の68例の神経 組織レ ベル別平 均硬膜柱 圧迫率は脊髄円錐上部で23%、脊髄円錐部で3 7%、馬尾レベルで50%であった。これらの値の間には有意差を認めた。脊髄円錐レベル6 0例に注目して神経損傷群42例と神経損傷のなぃ群18例を比較した。前者の硬膜柱圧迫率 は36.8% (19 ‑‑41% ) 、後 者 は17.3%(10〜24% )で 両 者 問 に統 計 学 的有 意 差 を認めた。神経損傷群42例中34例では脊髄円錐の形態は不鮮明になっており、これらの神 経除圧後の回復は不良であった。脊柱後方要素の破壊は68例(63%)に認めたが、造影剤 の同部への漏出は2例のみ(L4、L5各1例)であった。

  [考察]単純CT画像によって外傷性脊柱管狭窄の状態はよく把握できるが、脊柱管内神経組 織の形態は観察できない。一方、CTM画像では各神経組織の同定が可能となり、より的確な病態 把握ができる。同一程度の外傷性脊柱管狭窄でもそのレベルに存在する神経組織によって異な った神経障害が発生しうる。また、同一レベルの破裂骨折でも脊髄末端の個人差によって神経 障害の程度やその内容に差がでる。結果で示したごとく、93%の症例では脊髄末端はLl一L 2椎体レベルに存在していた。すなわち、脊髄円錐はLlーL2レベルにあり、このレベルより も1椎体の頭側よりには脊髄円錐上部、下位レベルには馬尾が存在するとしても臨床上問題な いものと考えられる。神経組織別での平均硬膜柱圧迫率は脊髄円錐上部23%、脊髄円錐部3 7%、馬尾レベル50%で神経障害が発生していた。また、脊髄円錐レベルでは脊髄円錐の形 状が判別できない症例では除圧後の神経改善が不良であり、粉砕椎体によって圧迫された脊髄 円錐の不可逆的変化を示めしている可能性が考えられる。破裂骨折における神経障害の主因は 粉砕椎体の突出とされ、神経除圧は脊柱管前方から施行することが合理的とされている。しか し、破裂骨折では脊柱後方要素である椎弓や棘突起に損傷が及ぶことが多く、この損傷部位に 硬膜柱が挟み込まれて神経損傷を合併するとなれば、前方除圧では解決されない。今回の結果 から68%の症例に脊柱後方要素の損傷を認めたが、造影剤の同部位への漏出はL4、L5の下 位レベル2例のみであった。この理由として胸腰椎移行部や上位腰椎レベルでは通常、後弯変 形のまま硬膜柱は脊柱管前方に存在し、脊柱後方要素からやや離れた位置にあり、後方要素損 傷部位に挟み込まれる可能性が低いと考えられる。ー方、下位腰椎レベルでは腰椎前弯位を保 持したまま椎体骨片に圧迫され、硬膜柱は脊柱管の後方に移動するため、後方要素の損傷部位 に容易に挟まれることが考えられる。しかし、下位腰椎破裂骨折自体は全体の破裂骨折に占め る割合は少なく、その頻度は低い。

  [結語]胸・腰椎破裂骨折の神経障害は脊柱管に突出した椎体骨片によって発生することが

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ほとんどであり、突出骨片の大きさとそのレベルに存在する神経組織の種類によって障害程度 が左右される。神経障害を合併した多くの胸・腰椎破裂骨折では前方除圧が合理的であり、後 方か ら 神 経除 圧 を 追加 す る 必要 性 の ある 症 例 は 極め て 少 なぃ も の と考 え ら れる 。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Traumatized Spinal Cord and Cauda Equina Demonstrated     by Computed Tomographic Myelographe (CTM)     in  ̄  Thoraco‑Lumbar Burst Fractures

(胸・腰椎部破裂骨折におけるCTM による損傷脊髄・馬尾の観察)

  破裂骨折においてCTMによって脊髄や馬尾の同定と脊髄末端の確認を行い、圧迫をうけてい る硬膜柱の形態やその断面積と神経障害の程度や内容を比較した。また、脊柱後方要素の破壊 に伴った硬膜、神経損傷の可能性についても評価した。受傷2か月以内にCTMを施行した10 8例 の胸 ・ 腰 椎部 破 裂 骨折 を 対 象と し た 。 年令 分 布 は13〜74歳 (平 均46.3歳、 男80 例、 女28例) であった 。損傷レ ベルと 症例数はTl2―18例、Ll−46例、L2―26例、L3− 8例、L4−6例、L5―4例 であっ た。108例中68例 に神経障 害を認め た。硬膜柱圧迫の最 も著しいスライス面での硬膜柱断面積と圧迫のない本来の硬膜柱断面積を計測し、その比を算 出して硬膜柱圧迫率とした。また、脊髄円錐上部、脊髄円錐、馬尾を同定し、それぞれの神経 組織レベルでその比を求めた。脊柱後方要素損傷についても調査し、造影剤の漏出を評価した。

脊髄 円錐上部 での圧迫は16例、脊髄円錐部では60例、馬尾レベルは32例であった。脊髄 末端 は90例で 同定され た。この うち54例 はLl椎体レベル、18例はLl/2椎間板レベル、

12例はL2椎体 レ ベ ル、4例 はTl 2111椎間板 レベル、2例 はTl2椎 体レベ ルで脊髄 が終 わっていた。神経損傷合併68例の神経組織レベル別平均硬膜柱圧迫率は脊髄円錐上部で2 3%、脊髄 円錐部 で3 6.8%、馬尾レベルで50%であった。これらの値の間には有意差を 認め た。脊髄 円錐レベル60例に注目して神経損傷群42例と神経損傷のない群18例を比較 した 。前者の 硬膜柱 圧迫率は3 6.8% 、後者は17.3%で両者間に統計学的有意差を認め た。神経損傷群42例中34例では脊髄円錐の形態は不鮮明になっており、これらの神経除圧 後の回復は不良であった。脊柱後方要素の破壊は68例に認めたが、造影剤の同部への漏出は 2例のみ(L4、L5各1例)であった。脊髄末端の検討から脊髄円錐はLl―L2レベルにあり、

このレベルよりも1椎体の頭側よりには脊髄円錐上部、下位レベルには馬尾が存在するとして も臨床上問題ないものと考えられる。脊髄円錐上部23%、脊髄円錐部37%、馬尾レベル5 0%が神経障害発生の危険域と考えられる。脊髄円錐レベルでは脊髄円錐の形状が判別できな

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志 男

清 和

田 坂

金 宮

授 授

教 教

査 査

主 副

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い症例では除圧後の神経改善が不良であり、粉砕椎体によって圧迫された脊髄円錐の不可逆的 変化を示めしている可能性が考えられる。胸腰椎移行部や上位腰椎レベルでは通常、後弯変形 のまま硬膜柱は脊柱管前方に存在し、脊柱後方要素からやや離れた位置にあり、後方要素損傷 部位に挟み込まれる可能性が低いと考えられる。一方、下位腰椎レベルでは腰椎前弯位を保持 したまま椎体骨片に圧迫され、硬膜柱は脊柱管の後方に移動するため、後方要素の損傷部位に 容易に挾まれることが考えられる。しかし、下位腰椎破裂骨折自体は全体の破裂骨折に占める 割合は少なく、その頻度は低い。胸・腰椎破裂骨折の神経障害は脊柱管に突出した椎体骨片に よって発生することがほとんどであり、神経障害を合併した多くの胸・腰椎破裂骨折では前方 除圧が合理的であり、後方から神経除圧を追加する必要性のある症例は極めて少ないものと考 えられる。

  公開発表において副査の宮坂和男教授から手術方法および硬膜損傷の修復方法さらに神経障 害硬膜圧迫率と症例の関係について質問があった。次いで副査の安田和則教授から脊髄腔造影 とCTMの 撮像方 法と関係 、MRIとCTMと の対比,死体解剖での脊髄末端との比較,突出骨 片の形状と神経障害の関係について質問があった。続いて主査の金田清志教授から受傷の瞬間 の圧迫とCTM測定時の圧迫の違いについて質問があった。いずれの質問に対しても、申請者 は自らの研究結果と過去の研究報告を引用し、論理的な思考と豊富な臨床知識に基づぃて明解 に解答した。

  以上、本研究は脊椎破裂骨折における神経障害発生の病態について多くの臨床例から詳しく 検討された独創的な研究である。手術における治療選択の指針を提示した重要かつ貴重な論文 としてその研究は高く評価され、今後脊椎外科の発展に大いに寄与するものと考える。審査員 一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有 すると判定した。

参照

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