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博士(理学)渡邊 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(理学)渡邊 学位論文題名

A criterion for the existence of subobject classifiers      (分類対象の存在判定条件)

学位論文内容の要旨

  集 合 に お ぃ て 部 分 集 合 と 特 性 関 数 の 間 に は 一 対 一 対 応 が あ る 。 こ の 概 念 の 圏 に お け る 一 般 化 が 分 類 対 象(subobject classifier)の 存 在 で あ る 。 圏 に お け る 分 類 対象 の 存 在 ・ 非存 在 を 調 べ る こ と は 普 通 容 易 で は な い 。 集 合 圏 の 一 般 化 で あ る ト ポ ス を 筆 頭 と し て 、 分 類 対 象 の 存 在 す る 圏 の 多 く は 極 め て 重 要 な 役 割 を 果 た す 。

  本 論 文 で は 、 稠 密 な 小 部 分 圏 を 持 つ 余 完 備 な 圏 に 対 し 、 分 類 対 象 の 存 在 判 定 条 件f必 要 十 分 条 件 ) を 与 え 、 さ ら に 、 分 類 対 象 が 存 在 す る 場 合 に は そ の 構 成 法 を 与 え た 。   余 完 備 な 圏 ど に 小 部 分 圏Cが 存 在 す る と き 、 圏 ど か ら 小 圏 〔 : 上 の 前 層 圏 へ 次 の よ う な 自然 な 共 変 函 手 が あ る 。 ( こ こ でi:Cqど は 包 含 函 手 と す る 。 )

EHど(i(―) ,め

こ の 函 手 は 左 随 伴 を も ち 、 小 部 分 圏Cが 稠 密 で あ る こ と と 右 随 伴 がfullか つfaithfulで あ る こ と は 同 値 で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 し た が っ て 、 稠 密 な 小 部 分 圏Cを 持 つ 余 完 備 な 圏 ど は 、C上 の 前 層 圏 の 反 射 的 部 分 圏(refiective subcategory)で あ り 、 さ ら に 前 層 圏 は 完備 で あ る こ と か ら ど も 完 備 で あ る 。

  完 備 性 か ら 前 層Sub: ど °p→Setが 存 在 す る 。 こ れ は 圏 ど の 各 対 象 に 対 し て そ の 部 分 対 象 (subobject)全 体 の な す 集 合 を 対 応 さ せ 、 射 に 対 し て は 引 き 戻 し に よ る 写 像 を 対 応 さ せ る 反 変 函 手 で あ る 。 ど の 射t:1→Qが ど ( た だ し1は 終 対 象 ) が ど の 分 類 対 象 で あ る こ と は 、 前 層 圏 でtの 引 き 戻 し が 次 の 同 型 を 与 え る こ と と し て 定 義 さ れ る 。

Sub〜= ど(‑,Q) (1)

本 研 究 に よ り ま ず 、 圏 ど に 稠 密 な 小 部 分 圏i:Cqど が 存 在 す る 場 合 に は 次 の(Al)、(A2)が 同 値 で あ る こ と が わ か っ た 。

(Al)圏 〔 : 上 の 前層 圏 で 同 型Sub(i( 一) ) 竺 ど(i( ― ) ,Q)が 成りた っよう などの 対象Qが存 在     す る 。

(A2)圏 ど に 分 類 対 象 が 存 在 す る 。

こ の 結 果 に よ り 、 分 類 対 象 の 存 在 を 示 す 際 に 、 圏 ど の 各 対 象 に つ い て の 議 論 (条 件(1))を 小 部 分 圏 の 各 対 象 に つ い て の 議 論 ( 条 件 (Al)) ヘ 帰 着 で き る こ と に な る 。   し か し 、 具 体 的 な 圏 に お い て 条 件(Al)を 判 定 し よ う と す る 場 合 、Qの 候 補 を 見 っ け る こ

(2)

とが容易でない場合が多く、上の判定条件を使うには候補を見出す方法が必要となる。左随 伴により、小圏C上の前層・自然変換・前層圏上の操作を用いて圏どの対象・射を構成する ことができる。前層圏はトポスなので豊富な圏論的操作を持つ。この枠組を利用して圏どに おいて次の(Bl)、(B2)が構成できる。

(Bl)終対象。

(B2)分類対象の候補となる射。具体的には自然変換ぞ:1→Sub(i(―))(1は終前層)を左     随 伴 で 移 したLfとし て 与 える 、 た だし ぞ は 各C成 分 がi(C)上の 恒等射で ある。

したがって射(B2)は分類対象の存在如何に関わらず常に存在する。

次 の 条 件(Cl)、 (C2)が 同 値 で あ る こ と が わ か っ た 。 (Cl)上で述べた随伴工一Rのunlt珊ub(H―))に対して次が成立する。

XL< o VSub(i(‑)) = idSub(i(̲))                                 (2)

ここ で、自然 変換XL<の各C成分は(B2)の射L<の引き戻しにより与えられるものと する 。

(C2)圏どに分類対象が存在する。

式(2)は、圏どの図式/Sub(i(−))→C→どの余極限錘の各余射影に関する条件として書き 直すことができる。(詳細は本文参照)。具体的な圏を扱う場合、存在判定条件(Cl)を用い る手法はより現実的で効果的である。

  本論文で考察した稠密な小部分圏を持つ余完備な圏は比較的身近に現れる。そのような圏 の例としてはlocally presentable categoryの類が挙げられ、判定条件の適用範囲は広い。応 用として既に次の2つがある。

1.遷移系のfunctional bisimulationの圏に於ける分類対象の存在。(H. Watanabe) 2.トポスを利用した分類対象の存在判定条件、余代数(coalgebra)の圏における存在判   定条件への拡張。(J. Power and H. Watanabe)

(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 主任研究官

辻下 吉田 津田 木下

学 位 論 文 題 名

   知行 一郎

佳樹 (工 業技術院電子総合技術研究所)

A criterion for the existence of subobject classifiers      (分類対象の存在判定条件)

  

近 年 、 ト ポ ス 理 論 の 計 算 幾 科 学 へ の 応 用 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ て い る 。し か し 、そ の 多 く は ト ポ ス か 否 か が 直 ち に 示 さ れ る よ う な 数 学 的 対 象 の 圏 に つ い て 行 わ れ てお り 、 プ口 セ ス 理 論 で 扱 わ れ る 具 体 的 な 圏 の ト ポ ス 判 定 法 研 究 は 、 今 後 の 発 展 が 待 た れ る 状 況 に あ る 。

  

本 論 文 は 、 こ の よ う な 現 況 に あ る ト ポ ス 理 論 に 基 づ く プ 口 セ ス 研 究 の分 野 に おい て 、 小 圏 を 稠 密 な 部 分 圏 と し て 含 む 圏 が 分 類 対 象 を 持 っ た め の 必 要 か つ 十 分 な 条件 を 与 えた も の で あ る 。 部 分 対 象 を 分 類 す る 対 象 の 存 在 は ト ポ ス で あ る た め の 条 件 の 中 で主 要 な もの の ー つ で あ り 、 ま た 、 そ れ が 存 在 す る 圏 で は 「 真 理 値 」 概 念 が 存 在 し 強 カ な 研究 道 具 とな る の で 、 具 体 的 圏 の 分 類 対 象 の 存 在 を 判 定 す る こ と を 可 能 に す る 学 位 論 文 の 結果 の 意 義は 大 き い 。

  

ト ポ ス 理 論 は 、代 数 幾 何の 分 野 でグ ロ タ ンデ イ エ ック に よ り 産み 出 さ れた も の であ る が 、

1970

年 代 に ロ ベ ー ル 等 に よ っ て 整 備 さ れ 、 数 学 の 基 盤 の 役 割 を 担 う 潜 在 カ を 持 っ に い た っ た 。 近 年 、 数 学 お よ び 理 論 計 算 機 科 学 に お い て そ の 潜 在 カ は 次 第 に 現実 化 し はじ め 、 数 学 に お け る 例 と し て は 多 様 体 の 圏 を 含 む ト ポ ス の 上 に 総 合 微 分 幾 何 学 と呼 ば れ る新 し い 有 効 な 微 分 幾 何 学 の 議 論 法 が 利 用 さ れ 始 め て い る 。 ま た 理 論 計 算 機 科 学 で重 要 性 を増 し つ っ あ る 幾 何 学 的 論 理 の 形 式 系 が 、 ト ポ ス を 意 味 の 世 界 に 持 っ こ と に よ り 、研 究 が 大き く 進 展 し て い る 。

  

一 方 、 理 論 計 算 機 科 学 の 中 心 的 な テ ー マ の ー つ で あ る 並 列 分 散 プ ロ セス の 数 学的 な 定 式

化 の 研 究 で は 、 遷 移 系 と 呼 ば れ る 数 学 的 構 造 が 基 盤 的 な 役 割 を 果 た し て おり 、 そ の模 倣 写

像 が な す 圏 の 構 造 の 解 明 は 分 散 プ 口 セ ス 理 論 の 展 開 に お い て 極 め て 重 要 な意 義 を 持つ 研 究

    

3

(4)

テーマとなっている。この圏の特徴としては、稠密な小圏が含まれていることによりその 小圏 上 の準 層 のな す ト ポスの 圏にfull かつ忠 実に埋め込 まれている ことがある 。    学位論文の判定条件を適用することで、遷移系の圏が部分対象の分類対象を持つことが 示された。遷移系の圏は、完備かつ余完備で閉じたモノイダル構造を持つことがわかって お り 、 こ れ に よ り 遷 移 系 の 圏 が ト ポ ス に 近 い 構 造 を 持 っ こ と が 解 明 さ れ た 。    この応用例からわかるように、具体例で有効な判定条件を、分類対象存在について与え た学位申請論文の結果は今後のトポス理論の様々な応用において極めて重要な意義を持っ ている。他方、学位論文が与えた判定法は、既に 30 年余経過しているこの分野で従来知 られていたものとは全く異なった型のものであり、その一般性におぃてもまた有効性にお いても著く、きわめて独創的な業績である。

   これを要するに、著者は、トポス理論を適用するために不可欠な分類対象の存在判定条 件について重要な新知見を得たものであり、強カなトポス理論を用いてプロセス研究を発 展させるのに貢献するところ大なるものがある。

   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照