博士(理学)渡邊 学位論文題名
宏
A criterion for the existence of subobject classifiers (分類対象の存在判定条件)
学位論文内容の要旨
集 合 に お ぃ て 部 分 集 合 と 特 性 関 数 の 間 に は 一 対 一 対 応 が あ る 。 こ の 概 念 の 圏 に お け る 一 般 化 が 分 類 対 象(subobject classifier)の 存 在 で あ る 。 圏 に お け る 分 類 対象 の 存 在 ・ 非存 在 を 調 べ る こ と は 普 通 容 易 で は な い 。 集 合 圏 の 一 般 化 で あ る ト ポ ス を 筆 頭 と し て 、 分 類 対 象 の 存 在 す る 圏 の 多 く は 極 め て 重 要 な 役 割 を 果 た す 。
本 論 文 で は 、 稠 密 な 小 部 分 圏 を 持 つ 余 完 備 な 圏 に 対 し 、 分 類 対 象 の 存 在 判 定 条 件f必 要 十 分 条 件 ) を 与 え 、 さ ら に 、 分 類 対 象 が 存 在 す る 場 合 に は そ の 構 成 法 を 与 え た 。 余 完 備 な 圏 ど に 小 部 分 圏Cが 存 在 す る と き 、 圏 ど か ら 小 圏 〔 : 上 の 前 層 圏 へ 次 の よ う な 自然 な 共 変 函 手 が あ る 。 ( こ こ でi:Cqど は 包 含 函 手 と す る 。 )
EHど(i(―) ,め
こ の 函 手 は 左 随 伴 を も ち 、 小 部 分 圏Cが 稠 密 で あ る こ と と 右 随 伴 がfullか つfaithfulで あ る こ と は 同 値 で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 し た が っ て 、 稠 密 な 小 部 分 圏Cを 持 つ 余 完 備 な 圏 ど は 、C上 の 前 層 圏 の 反 射 的 部 分 圏(refiective subcategory)で あ り 、 さ ら に 前 層 圏 は 完備 で あ る こ と か ら ど も 完 備 で あ る 。
完 備 性 か ら 前 層Sub: ど °p→Setが 存 在 す る 。 こ れ は 圏 ど の 各 対 象 に 対 し て そ の 部 分 対 象 (subobject)全 体 の な す 集 合 を 対 応 さ せ 、 射 に 対 し て は 引 き 戻 し に よ る 写 像 を 対 応 さ せ る 反 変 函 手 で あ る 。 ど の 射t:1→Qが ど ( た だ し1は 終 対 象 ) が ど の 分 類 対 象 で あ る こ と は 、 前 層 圏 でtの 引 き 戻 し が 次 の 同 型 を 与 え る こ と と し て 定 義 さ れ る 。
Sub〜= ど(‑,Q) (1)
本 研 究 に よ り ま ず 、 圏 ど に 稠 密 な 小 部 分 圏i:Cqど が 存 在 す る 場 合 に は 次 の(Al)、(A2)が 同 値 で あ る こ と が わ か っ た 。
(Al)圏 〔 : 上 の 前層 圏 で 同 型Sub(i( 一) ) 竺 ど(i( ― ) ,Q)が 成りた っよう などの 対象Qが存 在 す る 。
(A2)圏 ど に 分 類 対 象 が 存 在 す る 。
こ の 結 果 に よ り 、 分 類 対 象 の 存 在 を 示 す 際 に 、 圏 ど の 各 対 象 に つ い て の 議 論 (条 件(1))を 小 部 分 圏 の 各 対 象 に つ い て の 議 論 ( 条 件 (Al)) ヘ 帰 着 で き る こ と に な る 。 し か し 、 具 体 的 な 圏 に お い て 条 件(Al)を 判 定 し よ う と す る 場 合 、Qの 候 補 を 見 っ け る こ
とが容易でない場合が多く、上の判定条件を使うには候補を見出す方法が必要となる。左随 伴により、小圏C上の前層・自然変換・前層圏上の操作を用いて圏どの対象・射を構成する ことができる。前層圏はトポスなので豊富な圏論的操作を持つ。この枠組を利用して圏どに おいて次の(Bl)、(B2)が構成できる。
(Bl)終対象。
(B2)分類対象の候補となる射。具体的には自然変換ぞ:1→Sub(i(―))(1は終前層)を左 随 伴 で 移 したLfとし て 与 える 、 た だし ぞ は 各C成 分 がi(C)上の 恒等射で ある。
したがって射(B2)は分類対象の存在如何に関わらず常に存在する。
次 の 条 件(Cl)、 (C2)が 同 値 で あ る こ と が わ か っ た 。 (Cl)上で述べた随伴工一Rのunlt珊ub(H―))に対して次が成立する。
XL< o VSub(i(‑)) = idSub(i(̲)) (2)
ここ で、自然 変換XL<の各C成分は(B2)の射L<の引き戻しにより与えられるものと する 。
(C2)圏どに分類対象が存在する。
式(2)は、圏どの図式/Sub(i(−))→C→どの余極限錘の各余射影に関する条件として書き 直すことができる。(詳細は本文参照)。具体的な圏を扱う場合、存在判定条件(Cl)を用い る手法はより現実的で効果的である。
本論文で考察した稠密な小部分圏を持つ余完備な圏は比較的身近に現れる。そのような圏 の例としてはlocally presentable categoryの類が挙げられ、判定条件の適用範囲は広い。応 用として既に次の2つがある。
1.遷移系のfunctional bisimulationの圏に於ける分類対象の存在。(H. Watanabe) 2.トポスを利用した分類対象の存在判定条件、余代数(coalgebra)の圏における存在判 定条件への拡張。(J. Power and H. Watanabe)
学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 主任研究官
辻下 吉田 津田 木下
学 位 論 文 題 名
徹 知行 一郎
佳樹 (工 業技術院電子総合技術研究所)
A criterion for the existence of subobject classifiers (分類対象の存在判定条件)
近 年 、 ト ポ ス 理 論 の 計 算 幾 科 学 へ の 応 用 研 究 が 盛 ん に 行 わ れ て い る 。し か し 、そ の 多 く は ト ポ ス か 否 か が 直 ち に 示 さ れ る よ う な 数 学 的 対 象 の 圏 に つ い て 行 わ れ てお り 、 プ口 セ ス 理 論 で 扱 わ れ る 具 体 的 な 圏 の ト ポ ス 判 定 法 研 究 は 、 今 後 の 発 展 が 待 た れ る 状 況 に あ る 。
本 論 文 は 、 こ の よ う な 現 況 に あ る ト ポ ス 理 論 に 基 づ く プ 口 セ ス 研 究 の分 野 に おい て 、 小 圏 を 稠 密 な 部 分 圏 と し て 含 む 圏 が 分 類 対 象 を 持 っ た め の 必 要 か つ 十 分 な 条件 を 与 えた も の で あ る 。 部 分 対 象 を 分 類 す る 対 象 の 存 在 は ト ポ ス で あ る た め の 条 件 の 中 で主 要 な もの の ー つ で あ り 、 ま た 、 そ れ が 存 在 す る 圏 で は 「 真 理 値 」 概 念 が 存 在 し 強 カ な 研究 道 具 とな る の で 、 具 体 的 圏 の 分 類 対 象 の 存 在 を 判 定 す る こ と を 可 能 に す る 学 位 論 文 の 結果 の 意 義は 大 き い 。
ト ポ ス 理 論 は 、代 数 幾 何の 分 野 でグ ロ タ ンデ イ エ ック に よ り 産み 出 さ れた も の であ る が 、
1970年 代 に ロ ベ ー ル 等 に よ っ て 整 備 さ れ 、 数 学 の 基 盤 の 役 割 を 担 う 潜 在 カ を 持 っ に い た っ た 。 近 年 、 数 学 お よ び 理 論 計 算 機 科 学 に お い て そ の 潜 在 カ は 次 第 に 現実 化 し はじ め 、 数 学 に お け る 例 と し て は 多 様 体 の 圏 を 含 む ト ポ ス の 上 に 総 合 微 分 幾 何 学 と呼 ば れ る新 し い 有 効 な 微 分 幾 何 学 の 議 論 法 が 利 用 さ れ 始 め て い る 。 ま た 理 論 計 算 機 科 学 で重 要 性 を増 し つ っ あ る 幾 何 学 的 論 理 の 形 式 系 が 、 ト ポ ス を 意 味 の 世 界 に 持 っ こ と に よ り 、研 究 が 大き く 進 展 し て い る 。